先に異種蛋白を担体としたphenobarbital抗原をウサギに免疫して, 抗phenobarbital抗体を得, その特異性に関する報告をした.この研究の当初の目的は, 薬剤過敏症の原因薬剤としてのphenobarbitalの抗原性を検索することにあったので, 自己または, 同種の蛋白を担体とした免疫反応を調べることは, 興味のあることであった.今回はウサギ血清アルブミンに結合させるハプテンの数をちがえた五種類の抗原を調製して, Freundの完全アジュバントと共にウサギに一回免疫し, 間接血球凝集 (PHA) 価を測定することにより, 抗ハプテン抗体および抗担体抗体産生のkineticsを調べた.ホルマリン処理ウサギ赤血球 (FRE) に, Phenobarbitalをジアゾ結合させたものを用いてハプテン抗体を測定した.タンニン酸処理FREに免疫原をcoatingした感作血球を用いて, 免疫原に対する抗体価を追跡し, このPHAのphenobarbitalによる阻害を行い, 抗担体抗体の凝集価とした.免疫原における担体分子当りの結合ハプテン数は, 平均1, 2, 4, 10, 20個であるが, いずれの抗原で免疫したウサギでも免疫後6週目には抗ハプテン抗体を検出できた.このことは, 抗体産生のcooperative theoryに従えば, 担体として用いられた同種アルブミンが, 異物と認識されるに足る構造変化を受けていることを推測せしめる.免疫原感作血球によるPHAのハプテン阻害の結果, ハプテン数の少い抗原で免疫された群ほど担体に対する抗体 (抗NAD抗体) は顕著に認められ, 同種アルブミン分子上に, ハプテンのdiazocouplingによって新たな抗原決定基が生じたことを示した.
抗NAD抗体は, 結合ハプテン数20個/担体分子の抗原で免疫された群では検出できなかった.
抗ハプテンおよび抗NAD抗体産生のkinetics patternは, 免疫原における結合ハプテン密度に依存して変る傾向があるが, その密度の小さい抗原で免疫された群で, 免疫の後期 (6週目) に向って抗体価が上昇していくことが観察された.
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