昭和医学会雑誌
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55 巻, 4 号
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  • ―経時的病理組織学的及び細胞生物学的研究―
    浜本 鉄也
    1995 年 55 巻 4 号 p. 307-313
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    末梢膵管を閉塞する目的で液状寒天をモルモットの膵管に注入し惹起される膵障害について3日から6カ月まで経時的に光顕的, 電顕的及び免疫組織学的に検索した.実験早期には閉塞部位より上流の膵管及び腺房の内腔の拡張, 腺房細胞の変性, 壊死, 脱落がみられ, 又間質には未分化な間葉組織の増殖がみられた.電顕的には腺房細胞は粗面小胞体の腫張, 嚢胞化が最も著しい所見であった.更に時間が経つと小葉の一部には増殖再生性小膵管様構造の集簇がみられ, それらは電顕的には始め脱分化腺房細胞や増殖性腺房中心細胞からなり, 次第に膵管上皮に置換されていく傾向がみられた.実験後1カ月では外分泌細胞の萎縮, 脱落が著しく, 又間質には繊維化及び脂肪化の両者がみられた.実験後6ヵ月では小葉の荒廃が進行し, 又間質には広範な脂肪化がみられた.又膵管内石灰化が実験後3日で出現し以後高頻度にみられた.PCNA抗体を用いた免疫組織染色で外分泌細胞のPCNA陽性率 (LI) 及び同時に行った核分裂細胞の陽性率 (MI) は実験後3日: LI20.1±4.0, MI1.2±0.2, 実験後1週間: LI34.0±4.5, MI0.5±0.1, 実験後2週間LI26.1±8.2, MI0.4±0.1, 実験後1カ月: LI6.2±4.9, MI0.5±0.3であり, この結果実験後3日で外分泌細胞に明らかな増殖・再生能が発現し, それは実験後1週間でピークに達し, 又実験後1カ月で比較的急激に低下することが判明した.以上, 末稍膵管閉塞後の病理組織変化は外分泌細胞の変性・萎縮・壊死・脱落, 間質の繊維化及び脂肪化を示し, 又比較的早期より膵管内石灰化が出現し経過と共に高頻度に出現し, 更に実験早期には腺房細胞を含めた外分泌細胞は比較的高い増殖・再生能を示すことが理解された.これらの結果から本実験は慢性膵炎の経過を考える上で有用なモデルであると考えられ, 又臨床的には慢性膵炎と可及的早期に診断し可逆的病変の時期に治療をすることが重要であると考えられた.
  • 渡井 有, 岡松 孝男, 福岡 大太郎, 尾崎 毅, 河谷 正仁
    1995 年 55 巻 4 号 p. 314-318
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Aganglionosis腸管の組織学的特徴は, 壁内神経叢の欠如であるが, 同時に直腸の筋層内に肥大・増生した交感・副交感神経線維束が出現することが, 古くから指摘されている.本研究においては, ヒトHirschsprung病の実験モデルである先天性aganglionosis rat (n=10) とcontrol群として同腹の健常rat (n=10) を対象に, aganglionic segmentの知覚機能を検索するために, 直腸内に挿入したバルーンにより拡張, 刺激を与えることで, 脊髄内に出現する癌遺伝子のc-fosの分布, 発現数を計測し, 検討した.結果は, 一切片一片側当たりの出現数がaganglionosis ratでは22.5±15.9個 (mean±SD) , control群では57.6±34.0個と有意差を認めた (t-検定: 95%: p<0.001) .すなわち, Hirschsprung病で増生している神経線維の知覚機能は, 低下している可能性が示唆された.
  • 倉林 幹雄, 新川 淳一, 田中 滋城, 秋田 泰, 八田 善夫, 三田村 圭二
    1995 年 55 巻 4 号 p. 319-326
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラットでは, 十二指腸内の胆汁の存在がCholecystokinin (CCK) 分泌や膵外分泌に影響を与えることが報告されているが, ヒトにおいて, 胆汁の存在がCCK分泌に及ぼす影響について検討した報告は少ない.閉塞性黄疸における胆汁外瘻症例は, ヒトにおいて胆汁のCCK分泌の制御機構への関与を確認できる最適な病態の一つである.Radioimmunoassay (RIA) 法によるCCK測定では血漿中の非特異的干渉物質の影響が認められ, ラット遊離膵腺房を用いてのアミラーゼ放出によるbioassay法でのCCKの測定では, 胆汁酸によるアミラーゼ放出の増強が指摘され, 閉塞性黄疸症例でのCCK測定に問題を残していた.そこでSep PakC18 Cartridgeを用いてCCKを血漿から抽出することにより, RIA法に影響を及ぼす血漿中の非特異的干渉物質を除去し, CCK-8N端特異抗体OAL-656により, CCKの高感度測定系を開発した.この測定系を用いて, 胆管癌による肝外閉塞性黄疸をきたし, 胆道ドレナージ (PTCD, ENBD) を施行した10症例を対象とし, 胆道ドレナージ前後, 試験食負荷前後の血中CCK濃度を測定し, CCK分泌動態を検討した.胆道ドレナージ後, 空腹時血中CCK濃度は健常人と比較して高値で推移した.試験食負荷による血中CCK濃度の検討では, 胆道ドレナージ前には健常人と比較してCCK分泌の著明な高反応と血中CCK濃度の持続的な上昇を認めた.ドレナージ後には反応性は低下したが, 血中CCK濃度の上昇は健常人と比較して遷延した.以上の結果より, ヒトにおいても十二指腸内の胆汁の存在がCCK分泌に影響を及ぼしていると考えられた.
  • 岩崎 章宣, 滝田 誠司
    1995 年 55 巻 4 号 p. 327-335
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    未熟児養護の急速な進歩に伴い, 在胎期間が短くて出生する極小未熟児における亜鉛欠乏症が注目されている.また, 血清亜鉛濃度は比較的短期間の亜鉛欠乏状態を反映するのに対し, 毛髪亜鉛濃度は比較的長期の亜鉛欠乏状態を反映すると考えられている.今回, 極小未熟児の亜鉛欠乏状態を検討する目的で, 乳児期における血清および毛髪の亜鉛濃度の測定を行った.血清亜鉛濃度は, 超未熟児11例, 出生体重1000以上1500g未満の未熟児 (1000~1500gの未熟児) 13例の計24例の極小未熟児において生後6カ月の期間測定した.平均血清亜鉛濃度は, 1000~1500gの未熟児群においても超未熟児群においても生後1カ月以内の時期は比較的高値を示し (86.9~92.0μg/dl) , 生後11~15週にかけて減少し (49.5~54.6μg/dl) , その後徐々に僅かに増加する傾向を示した.両群において各時期の血清亜鉛濃度には統計的有意差は認めなかった.経静脈栄養施行群 (経静脈内の亜鉛投与量は70μg/day) と非施行群とを比較すると, 生後6~10週の時期に平均血清亜鉛濃度は経静脈栄養施行群が65.8±14.3μg/dl, 非施行群が57.3±10.8μg/dlとなり施行群が有意に高い値 (P<0.01) を示した.また, 有意差は認めなかったものの, 体重増加が良好な群では, 生後の経過とともに血清亜鉛濃度の減少が強く生後6カ月近くなっても増加傾向を認めなかった.極小未熟児群の測定値を受胎後週数にて見ると, 血清亜鉛濃度は出生から受胎後35~36週にかけて急激に減少し, その後は僅かに減少する症例, 僅かに増加する症例, ほとんど変化しない症例などがあった.血清亜鉛濃度の平均値の推移を見てみると受胎後35~36週にかけて急激に減少しその後は暫くほぼ平坦となり, 受胎後44週より徐々に増加する推移を示した.また, 毛髪亜鉛濃度は未熟児において生後から乳児期後半にかけて測定し, 出生体重別に推移を検討した.有意差は認めなかったものの生後0カ月における毛髪亜鉛濃度は出生体重が小さい群ほど高く, また在胎週数が少ない群ほど高い傾向にあった.生後数力刀間は比較的高い濃度を示し, その後次第に減少し, 6カ月以降急激に減少する推移を示した.血清亜鉛濃度と毛髪亜鉛濃度との間には相関関係を認めなかった.
  • 伊藤 英幸, 山口 克彦, 須永 進
    1995 年 55 巻 4 号 p. 336-342
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラット新生仔に低酸素負荷 (5% O2, 30分間) を行い, 低酸素性虚血が脳synaptosomal membraneのCa2+, Mg2+-ATPase活性とATP dependent Ca2+ uptakeに及ぼす影響について調べ, 以下の結果を得た.低酸素負荷により脳synaptosomal membraneのCa, Mg AT Pase活性は, 対照群23.03±7.21 (mean±SD) (nmol Pi/mg Protein/min) に対し, 負荷後15分で6.35±6.17, 30分では5.51±2.60と対照群に比べ著しい低下 (それぞれp<0.001, p<0.001) を示し, 脳神経細胞のCa維持機構の障害を認めた.また, 低酸素負荷によりラットsynaptosomal membraneのATP dependent Ca2+ uptakeは, 対照群10.31±4.90 (pmol/mg Protein/min) に対し, 負荷後15分で2.73±0.50に低下し, 30分では5.61±3.50と回復傾向が見られたが, いづれも有意に低値を示していた (それぞれp<0.01, p<0.05) .障害は負荷中よりも負荷後の回復期に強くみられたため, 再灌流によるO2 radicalの関与が考えられた.次に, NOラジカル (・NO) 合成阻害剤であるNw-Nitro-L-Arginine-Methyl-esterを低酸素負荷前90分に腹腔内投与し, これらの障害に・NOが関与するか否かについて検討を行い, 以下の結果を得た.Ca2+, Mg2+-ATPase活性は, L-NAME投与により低酸素負荷でみられた障害は軽減し, 負荷後5分, 15分ならびに30分ではそれぞれ26.50±10.86, 19.64±4.68, 21.75±2.59 (nmol Pi/mg Protein/min) と, いづれの活性値も低酸素群より有意に上昇を示した (p<0.001, p<0.001, p<0.001) .また, Ca2+ uptakeは, 負荷後15分ならびに30分では, 8.42±4.99, 7.63±0.50 (pmol/mg Protein/min) と低下を認めたが, 低酸素群より増加を示し (p<0.001, p<0.001) , 対照群との間に有意の差は認めなかった.以上の結果から考察すると, 低酸素負荷によりラット脳synaptosomal membraneにおけるCa2+, Mg2+-ATPase活性の障害はL-NAMEにより軽減され, その結果, 細胞質ゾルからendoplasmic reticulumへのCaイオン流出はほぼ正常近くになり, Caイオンの細胞膜での維持機構は保持されると推察される.そして, 低酸素性虚血に起因する脳障害を軽減させる薬剤としてL-NAMEは有用と考えられた.
  • 池田 弘人
    1995 年 55 巻 4 号 p. 343-352
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    口蓋裂患者36例 (両側口唇口蓋裂11例, 片側口唇口蓋裂19例, 単独口蓋裂6例, 年齢平均14歳) および健常人17例 (年齢平均15歳) についてDEXA (Dual energy X-ray absorptiometry) 法を用いて頭蓋顎顔面骨の骨塩密度を計測し, 比較検討した.計測領域は顔面骨正面X線像を眼窩上縁と梨状孔下縁を境界に頭蓋冠部, 顔面部, 顎部に分けた.口蓋裂患者と健常人との比較では, 頭蓋冠部, 顔面部, 顎部の骨塩密度のいずれにおいても有意差はなく, 年齢別に10歳以下, 11-15歳, 16歳以上に分けた結果でも両者間に有意差はなかった.また, 口蓋裂患者を裂型別に両側口唇口蓋裂, 片側口唇口蓋裂, 単独口蓋裂に分け, 比較したが裂型間の各部位の骨塩密度に有意差はなかった.さらに, 口蓋裂患者, 健常人のそれぞれに男女間の各部位での骨塩密度の比較をおこなったが有意な性差はなく, 口蓋裂患者と健常人との間での比較においても男女とも有意差はなかった.つぎに, 口蓋裂患者および健常人それぞれに年齢, 身長, 体重と頭蓋冠部, 顔面部, 顎部の骨塩密度との相関関係を調べた.口蓋裂患者では年齢と頭蓋冠部 (p<0.001) , 年齢と顎部 (p<0.03) , 体重と頭蓋冠部 (p<0.003) に有意な相関を認めた.健; 常人においては体重と顎部 (p<0.03) , 身長と顎部 (p<0.04) において有意な相関を認めた.以上より口蓋裂およびそれに対する手術侵襲は頭蓋顎顔面骨の骨塩沈着過程に明らかな障害は与えないと考えられた.また, 口蓋裂患者では年齢と頭蓋冠部, 年齢と顎部および体重と頭蓋冠部の骨塩密度に有意な相関を認めたのに対し, 健常人ではこれと共通の相関を認めなかったことから口蓋裂患者の頭蓋顎顔面骨のとくに骨膜性骨化部では年齢と骨塩密度は直線的相関をなし, 特徴的な骨形成沈着様式をたどるのではないかと推察された.
  • 野崎 伸次
    1995 年 55 巻 4 号 p. 353-360
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    平成5年6月より平成6年3月までの間に昭和大学病院精神科を受診し, DSM-III-Rによってpanic disorderと診断された76例を対象として, その臨床的特徴や転帰について評価を行った.精神分裂病, 感情障害など他の精神障害を合併した症例や初診の直前1カ月間に抗不安薬, 抗うつ薬を定期的に服用していた症例は除外した.治療にはまずalprazolamが用いられ, 効果や副作用を勘案しながら増量し, 治療効果が乏しいと判断された症例にはさらにimipramineが追加された.個々の症状に関しては, 治療前, 4週後, 8週後, 12週後, 24週後にそれぞれ評価が行われた.パニック発作の頻度, 予期不安あるいは恐怖症性回避の重症度により臨床的な判断から軽快群と遷延群の2群に分け, 背景因子や個々の症状について比較した.これらにより以下のことが示唆された. (1) 女性で発症年齢が高い傾向にあった. (2) 40歳以降で発症した群 (晩期群) では女性が多く, 治療開始前のパニック発作の頻度が少ない傾向にあった. (3) パニック発作の頻度, 予期不安, 恐怖症性回避の重症度は, 治療後に有意に改善されていた. (4) 遷延群では受診時および発症時年齢が低い傾向があり, また治療開始前のパニック発作の頻度, 特に状況誘因発作の頻度が高く予期不安も重症であった.
  • 伊達 淳, 新井 一成, 丸岡 義史, 草野 満夫, 副島 和彦, 神田 實喜男
    1995 年 55 巻 4 号 p. 361-371
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    良性胆道疾患の外科治療において十二指腸乳頭機能の評価をすることは, 治療上および遠隔成績の面でも極めて重要である.各施設において積極的に胆道内圧測定が行われ報告されているが, 施設により評価は様々で一定の見解をみていないのが現状である.さらに最近の内視鏡下外科手術の普及により術前の乳頭機能評価が一層重要になってきている.今回十二指腸鏡下に胆道内圧を測定し, 下部胆管造影所見, 総胆管径, 傍十二指腸憩室の有無, および乳頭部形態との関係について比較検討を試みた.その結果, 乳頭部形態, 特に開口部所見と胆道内圧との関係に興味深い知見が得られた.胆管圧に関しては顆粒型, 裂口型, 縦口型と徐々に高くなり, 閉鎖不全型では極めて低くなった.収縮期圧では裂口型で他の3群より有意に高くなり, 基礎圧は縦口型で高くなり閉鎖不全型で有意に低くなる傾向がみられた.これは顆粒型から裂口型, 縦口型へと乳頭炎が進行し, 最終的に乳頭機能不全の一つの終末像として閉鎖不全型の状態になっていく病態を表しているものと考えられ, 乳頭形成術や胆路変更を含めた付加手術の適応決定に際して有用な所見であると考えられた.
  • 鈴木 淳一
    1995 年 55 巻 4 号 p. 372-379
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ヒトの臍帯ヘルニアは, fetal typeとembryonal typeに分類される.一般にembryonal typeは胚芽期の腹壁障害により発生するとされているが, 合併奇形も高率で治療上も困難なことが多い.腹壁の形成機構は未解決な点が多く, 胚芽期の正常の腹壁形成を明らかにすることが必要である.本研究では, 腹壁および胸壁の表面外胚葉細胞 (腹壁上皮および胸壁上皮とする) の増殖に着目し, 細胞増殖のより高い部位の発生異常がより重篤な胚芽期の臍帯ヘルニアを起こすと仮定して, 胚芽期の腹壁を経時的に検索し, 『腹壁の部位による細胞増殖率の違い』について検討した.ラット胎仔 (Wistar, 胎齢12~15日; 各日齢で3個体ずつ) の腹壁を対象に, Proliferating Cell Nuclear Antigen (PCNA) のモノクローナル抗体の免疫染色により, 腹壁上皮における増殖細胞を経時的に検索した.検索に当たって, 便宜的に, ラットの腹側体壁を臍帯を基準として, 胸壁, 上部腹壁, 下部腹壁, 左右の側腹壁の5領域に区分した.これらの領域の細胞増殖率は『PCNA陽性細胞数/領域内全細胞数』として算定した.この結果, 4胎齢を通して胚芽期のラット胎仔腹壁には部位による細胞増殖率の違いが認められた.すなわち, 1) 上部腹壁と下部腹壁の正中領域が最も活発に増殖 (70%以上) していること, 2) 上・下部腹壁に比べると側腹壁の細胞増殖率はやや低い (50%前後) が, 背側から上皮の多層化が進んでいること, 3) 臍帯近傍や羊膜との移行部では増殖細胞の増加は起こっていないこと, 4) 一方, 胸壁上皮では比較的高い増殖率 (60%前後) を保っているが, 胸壁と上部腹壁とのPCNA陽性細胞数も出現パターンも横隔膜を境として画然と違っていることが明らかになった.これらの結果に基づくと, 1) 上・下部腹壁の高い増殖率は, この部位が上皮の供給源となっており, この部位の発生異常 (障害) はより重篤な胚芽期の臍帯ヘルニアにつながることを示唆している.とりわけ, より, 早期の発生異常は臍輪形成不全と脱出臓器を伴う巨大ヘルニアを招くことになる.また, 2) 上皮の増殖パターンに基づくと, 上部腹壁の発生は胸壁より, むしろ, 左右の側皺の吻側部に由来する可能性が考えられた.
  • 斎藤 ゆり子, 星山 佳治, 山本 和郎
    1995 年 55 巻 4 号 p. 380-391
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    騒音感受性と性格尺度との関連を明らかにするため, 道路沿道に居住する主婦393人を対象に, 健康度ならびに日常生活に対するトラブルイベントとCAS: Cattel Anxiety Scale (キャッテル不安診断検査1) ) による調査を行なった.騒音感受性は因子分析の結果, 「騒音型」, 「振動型」, 「大気汚染型」, ならびに「不安型」に大別された.また, 性格尺度を測る8つの項目を主成分分析したところ, 「議論をする時, 自分の考えが正しいと確信するまで言うのを控えることができる」および「話をしているうちにいらいらして人に思いがけないことをいってしまうことがある」の2項目は, 他の6項目と明らかに異なっていた.そこで「議論をする時…」に「はい」かっ「話をしているうちに…」に「いいえ」と回答したものをI群, 前者の質問に「いいえ」または後者の質問に「はい」のいずれかに回答したものをIII群, 残りを中間に属するII群の計3群に大別した.これら騒音感受性と性格尺度との関連をカイ2乗テストならびにMantel-Haenszel法による有意差検定を行なった結果, 騒音型と性格尺度との間に多くの項目において有意な関連性が認められた.しかしその他の型との間には1, 2の項目を除いて関連性はほとんど認められなかった.さらに, 性格尺度は健康度とも有意な関連性が認められたことから, 更に健康要因との疫学的な関連性について研究を行なう必要がある.いずれにしても, 騒音感受性と性格尺度との間に強い関連性が認められたことから, 今後, 環境騒音と有訴率や健康度との関連性についての調査にあたっては, 被調査者の性格尺度の項目が必要であると考える.
  • 曽我 恭司, 野嵜 善郎, 田角 勝
    1995 年 55 巻 4 号 p. 392-398
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    起立性調節障害 (Orthostatic Dysregulation: 以下ODと略す) は思春期前後に多く発症する自律神経失調症の一つであり, 交感神経, 副交感神経の不均衡により, 起立時の血圧低下などの体循環の変化に伴い脳循環が変化するために, めまいや立ちくらみなどの症状が生じると考えられている.近赤外分光法を用いてOD児の起立試験時における脳血液量を測定し, 体循環の変動との関係を検討した.小児起立性調節障害研究班において定められた診断基準に基づいてODと診断された9歳から15歳までの19例, 男児8例, 女児11例を対象とした.近赤外分光法によって測定された酸素化ヘモグロビン (以下oxyHbと略す) , 還元型ヘモグロビン (以下deoxyHbと略す) , 脳血液量の変化は次の4つの型に大別することができた.Type 1 : 0xyHb, deoxyHb, 脳血液量にはいずれも変化を認めない.Type 2 : oxyHbが減少し, deoxyHbには変化を認めず, 脳血液量は減少する.Type 3 : oxyHbは減少し, deoxyHbは増加し, 脳血液量には変化を認めない.Type 4 : oxyHbには変化を認めずdeoxyHbは増加し, 脳血液量は増加する.コントロール群では脳血液量に変化を認めたものは1例もなかった.OD群ではoxyHb, deoxyHbおよび脳血液量に変化が認められなかったもの (Type 1) は3例だけであった.脳血液量の減少を来したもの (Type 2) は8例であった.脳血液量に変化を認めなかったもの (Type 3) 5例と脳血液量の増加を来したもの (Type 4) 3例は相対的にoxyHbが減少し, deoxyHbが増加しており, 脳静脈血のうっ滞が存在することが考えられた.臨床症状および起立試験の陽性率は各タイプ間には明らかな差は認められなかった.また各タイプ毎に心拍数, 収縮期血圧, 脈圧, 平均血圧の変化量を検討したが有意差を認めなかった.塩酸ミドドリンを2週間以上継続内服している児5例に対しても同様の検査を行ったところ, 症状の改善とともに, 脳血流の変化, oxyHbの減少の改善を認めた.oxyHbの減少の改善が症状の改善と関係のあることが考えられた.以上, OD児において起立試験時に脳循環が変化することが確認された.しかしODの脳循環の変化を体循環の変化のみから説明することはできず, 脳循環の受動的な変化以外に脳血管自体の反応性その他の要因の関与が示唆された.またODの脳貧血症状発現と脳循環の変化との関係は明らかにできなかった.
  • 池田 東美明, 世良田 和幸, 武田 昭平, 外丸 輝明
    1995 年 55 巻 4 号 p. 399-405
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    乳房切断術例にイソフルレン深麻酔による低血圧麻酔を施行し, 循環動態とともに糖質代謝系への影響を検索するため血糖, 血漿インスリン, 乳酸, ピルビン酸, 遊離脂肪酸を測定した.3~4%のイソフルレンを吸入させ収縮期圧を80~90mmHgに下降させた群を低血圧群とし, 通常の1~2%のイソフルレンを吸入させ低血圧にしない非低血圧群と比較検討した.平均動脈圧は, 当然のことながら低血圧群が非低血圧群より有意の低下を示した.心拍数は, 非低血圧群では有意の変化を示さなかったが低血圧群では低血圧前値に比し有意の増加を示し, 両群間に有意差がみられた.血糖値は, 両群とも低血圧前値に比し有意の増加を示し, 低血圧群が非低血圧群より有意の増加を示した.血漿インスリンは, 低血圧前値に比し, 低血圧群は有意の変化はなく, 非低血圧群は低血圧60分値で有意の低下を示した.乳酸は両群とも低血圧前値に比し有意の増加を示し, 低血圧群は非低血圧群より有意に高値であった.ピルビン酸は, 両群とも有意の変化を示さなかった.結果としてL/P比は低血圧中は低血圧群が, 非低血圧群より有意に高値となった.遊離脂肪酸は, 低血圧群では, 低血圧前値に比べて有意の増加を示し非低血圧群に比べて有意の増加を示した.低血圧群では, 非低血圧群に比し, 血糖, 乳酸, L/P比, 遊離脂肪酸の上昇傾向を示したが, 従来の低血圧麻酔法と比べても過度の上昇を示さず, イソフルレン低血圧麻酔は, 糖質代謝の面からも安全で有用な方法と考えられた.
  • 劉 延慶, 佐原 正明, 久光 正, 高橋 章, 河井 博明, 石井 誠, 米山 啓一郎, 田中 滋城, 荒井 誠, 三田村 圭二, 久武 ...
    1995 年 55 巻 4 号 p. 406-410
    発行日: 1995/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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