脳動脈瘤の形態や部位によっては, 脳動脈瘤破裂予防のために必ずしも確実かつ安全なneck clippingや柄部結紮ができず, やむなくcoatingやwrappingを行わざるをえないことも少なくない.Super BondC&Bは, 4-META含有MMA-TBB・O系レジンで, 強い接着性と循い為害作用を特徴とした歯科汎用接着剤である.一般に頭蓋骨欠損の人工骨に使用しているレジンと比べて発熱性がないという特性を有し, 硬化時間も非常に短いが, 一方優れた耐久性と強度および硬度は同等である.脳動脈瘤破裂は, 血管内圧と血管外圧のunbalanceによって起るものであろうから, 動脈瘤を破れないようにするには血管内圧に耐える物質で動脈瘤を覆なければならない.従辛の高分子化学物質はsoftで伸びるという特性があり, それが珍重されていたが, 長期間にはそれが亀裂を起して出血を招いていた.そこで, 我々は拡大しない硬性のSuper BondC&Bでcoating, wrappingをするという考えに至った.実験には, 体重300~350g, Wistar雄ラットの腎動脈分岐部と総腸骨動脈分岐部との間の腹部大動脈50検体50箇所に, 体重8~12kg, 雑種成犬の頭蓋内血管 (中大脳動脈M
2~M
3) 10検体20箇所を用い, 手術用双眼顕微鏡を用いて各々にSuper BondC&Bをほぼ血管全周にcoating, wrappingした.観察期間は, 腹部大動脈では1カ月, 2カ月, 4カ月の3群に分けて観察し, 中大脳動脈では4カ月を経過したものを1群とし, 肉眼的および組織学的観察を行なった.その結果, Super BondC&Bは炎症性細胞浸潤および異物反応は少ないた龍生体内に使用可能であり, 補強剤として十分な強度をもち, 材質自体に経時的変化が少ないことが証明された.ところが, 頭蓋外の血管である腹部大動脈では, 外膜に持続的な出血を生じ, これは, 大動脈という強い拍動により, 外膜へ持続的な大きな外力がかかるために起るものと思われた.しかし, この出血は経時的に消退傾向にあり, むしろ線維化が徐々に増加傾向にあるので, 血管壁を強化させる可能性を有しているともいえる.ところで, 脳血管に対する反応をみると, 外膜の出血は認められず, 肉芽組織の増生や線維化は少量認められるのみであった.血管壁への侵襲は少なく, Super BondC&Bそのものの劣化もないことより, coatingおよびwrapping物質としては最適と考えられた.したがって, 将来臨床応用が十分可能であることが示唆された.
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