日本透析医学会雑誌
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30 巻, 4 号
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  • 第41回日本透析医学会ワークショップより
    平野 宏, 臼井 昭子
    1997 年 30 巻 4 号 p. 219-222
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 梅田 優, 小畑 卓司, 三村 嘉寿男, 西前 尚美, 野上 浩實, 野上 耕太郎
    1997 年 30 巻 4 号 p. 223-227
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    腎機能障害時, 血中Ca, P値の異常や副甲状腺ホルモン (iPTH) レベルの変化がみられる. これらの関連性について我々は糖尿病性腎症を合併していない保存期腎機能障害患者で重回帰モデルを用いて数式による説明を試みた.
    P=2.463+0.025urea+0.005iPTH, r2=0.909 Ca=9.785-0.012urea-0.002iPTH, r2=0.783 Ca×P=29.589+0.144urea+0.009iPTH, r2=0.648 iPTH=-190.06+69.07P-0.005CCr, r2=0.797 1,25VD3=16.99-1.12P+0.277CCr, r2=0.544重回帰式の有意性は分散分析で確かめた.
    以上の結果は保存期腎機能障害患者の血中Ca, Pの異常は腎障害 (urea) の程度, 血中iPTHの上昇が重要な要因であることを示した. またiPTH値の上昇, 1,25VD3値の低下はPの上昇および残腎機能 (CCr) により説明しうることが示された.
  • 長澤 康行, 中山 祐治, 藤田 芳正, 田中 善, 藤井 正満, 梶本 好輝
    1997 年 30 巻 4 号 p. 229-235
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    近年ビタミンK2の投与による退行期骨粗鬆症の患者の骨量増加作用が報告されビタミンKと骨代謝障害の因果関係が注目されているが, 透析患者の骨代謝異常に対するビタミンKの関与は未だ十分に検討されていない. 我々は, 透析患者における血漿ビタミンK濃度を測定し, 各種臨床パラメーターと比較検討した.
    対象は, 維持透析患者47名, このうちHD患者18名 (男性10名, 女性8名, 年齢45.1±9.3歳, 27歳-62歳, 透析期間12か月-108か月), CAPD患者29名 (男性16名, 女性13名, 年齢47.7±10.4歳, 23歳-68歳, 透析期間4か月-236か月) である. 血漿のビタミンK濃度はK1 (Phylloquinone), K2 (Menaquinone-4,7) を測定した.
    結果は, 1) 血清Phylloquinone濃度は0.73±0.54ng/mlで, 全員が測定感度以上であった. Menaquinone-4は47例中44例が測定感度以下であった. Menaquinone-7濃度は1.18±0.84ng/mlで, 47例中23例が測定感度以下であった. Phylloquinone濃度はMenaquinone-7の測定感度以下群が0.94±0.90ng/mlと感度以上群の1.70±1.35ng/mlに対して低値を示した (p<0.05). 2) HD患者とCAPD患者との間において, また, 男女間においては, ビタミンK濃度には差を認めなかった. 3) Phylloquinone濃度とintact-PTHとは, 正の相関を認めた (p<0.05). また, Phylloquinone濃度はintact-PTHが90pg/ml以上の群が0.82±0.80ng/mlと90pg/ml以下の群の0.55±0.56ng/mlに対して高値を示した (p<0.05). 女性の透析患者においてMenaquinone-7と腰椎側面の骨密度とは負に相関した (p<0.05). 4) 血漿ビタミンK濃度と体重当たりのPCRとの相関を認めなかった.
    透析患者におけるPhylloquinone濃度, Menaquinone-7濃度は従来の健常人の報告に比して低値を示し, ビタミンK投与が透析患者の骨代謝を改善する可能性があると考えられた.
  • 斉藤 誠一, 亀田 政克, 荻野 夏美, 武田 佳子, 阿部 直之, 梅津 洋子, 山下 恵美
    1997 年 30 巻 4 号 p. 237-240
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    シャント状態を観察するため, コンタクトサーモグラフィーとシャント造影を20例 (シャント狭窄5例, 拡張不全5例, 複雑な血管走行10例) に施行し, 両者を比較検討した. その結果, 狭窄例では3例 (60%), 拡張不全例では5例 (100%), 複雑な血管走行例では9例 (90%), 計17例 (85%) で血管走行や血管狭窄部を血管造影と同様に描出することが可能であった. 描出が不十分であった3例は皮膚の凹凸が高度な症例 (2例), 皮下脂肪の厚い症例 (1例) であった. また, 良い描出を得るためのポイントは, 観察時に室温を低くし皮膚をアルコールで十分に冷却すること, 症例によっては駆血を併用することであった. 以上より, コンタクトサーモグラフィーは, シャント状態の初期の観察やスクリーニング的に観察把握したい場合, 簡単で場所を選ばず, 容易に施行できる有用な方法であった.
  • 桜林 耐, 高江洲 義滋, 萩野下 丞, 竹田 徹朗, 宮崎 滋, 甲田 豊, 湯浅 保子, 酒井 信治, 鈴木 正司, 高橋 幸雄, 平沢 ...
    1997 年 30 巻 4 号 p. 241-247
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    目的: 血液透析の循環血液量 (BV) に対する影響を検索する第一歩として, 除水のない条件で検討した. 方法: クリットラインモニター (IN-LINE DIAGNOSTICS社製) で慢性血液透析10症例の無除水血液透析施行中のヘマトクリットを計測し, BVの変化を算定した. BVの変化 (ΔBV) を, mono-exponential関数: ΔBV(%)=A×〔1-exp(-B×t)〕-C×t, t: time (hour) で近似し, 各係数を臨床指標と比較検討した. 結果: 1) 全症例でBVの増加を認めた. BVの変化は上の近似式と良好に相関した (0.92<r<0.99, p<0.0001). 2) BVの増加率を表わす係数Aは8.66±2.92で, 体外循環充填量 (200ml) と回路回転血液量 (180から200ml/分) との和の全血液量に対する割合に相当した. また係数Aは胸部X写真の心胸比 (CTR) (r=0.88, p=0.0008), 透析開始前血清アルブミン濃度 (r=0.80, p=0.03) と有意に正相関した. 3) BVの増加速度を表わす係数Bは2.02±0.77で, BV増加は2時間で全増加量の99.9%に達した. 4) 係数Cは-1.64から1.06とばらつき, 臨床指標との相関はなかった. 結論: 無除水血液透析ではBVは経時的に増加した. この推移はmono-exponential関数に良好に近似され, その増加量が体外循環に必要な血液量にほぼ等しく, CTRや血清アルブミン濃度に正相関したため, BV増加の機転は体外循環に喪失する血液の補填であると考えられた. 近似式の係数Aは, BV増加の程度を表わし, hydrationやplasma refillingを反映する指標として有用であると考えられた.
  • 中川 芳彦, 太田 和夫, 春口 洋昭, 内田 靖子, 村上 徹, 提嶋 淳一郎, 仁科 裕之, 小池 太郎, 阿部 正浩, 廣谷 紗千子, ...
    1997 年 30 巻 4 号 p. 249-256
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析での穿刺部分をE-PTFE繊維とE-PTFEシートで二重に被覆したE-PTFEグラフト (Diastat®) が透析用人工血管として開発され, 今回, 我々はこれを臨床応用した. 症例は1995年7月から1996年8月までにDiastat®を移植した維持透析患者65名で, 54.9±11.5歳, 透析歴は平均10.8±7.4年であった. 人工血管の移植部位は, 前腕11例, 前腕から上腕にかけてが36例, 上腕部が14例, 大腿部4例であった. 術中のDiastat®の取り扱いに関しては, トンネリング時にループを大きくして植え込まないと人工血管が屈曲する傾向が認められたこと, 移植後早期の血栓除去術の際に, 切開部の縫合前に補強繊維を一部切除したうえで2層に縫合閉鎖する必要性のあることが指摘されたが, その他には従来のグラフトのそれと異なることはなかった. Diastat®移植後の浮腫は, アンケート調査によると61.3%の症例で「軽い」, 30.6%の症例で「普通」と回答を得られた. Diastat®穿刺使用後の止血時間は, 延べ128回の調査中64回 (50%) が5分で止血を完了し, 20分以上を要したのは10回 (7.8%) のみで, 従来のグラフトよりも迅速に止血された. Diastat®の10か月開存率は74%で, 従来のE-PTFE人工血管と同等であった. 最長14か月までの観察期間中, グラフトの構造上の問題に起因する特記すべき合併症は発生しなかったが, グラフトの器質化に伴う穿刺抵抗の変化について長期にわたる追跡調査が必要と思われた. Diastat®は, 術後の浮腫が軽微であることから早期からの穿刺使用が可能であり, 穿刺後の止血も迅速に完了することより, 従来の製品よりも透析用として有用であることが示唆された.
  • 松井 豊, 松井 育子, 高橋 栄男, 尼木 純子, 友國 隆, 安田 隆彦, 谷岡 恒雄, 今井 哲也, 井上 喬之
    1997 年 30 巻 4 号 p. 257-263
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    維持透析患者のシャント血管, 特に慢性的穿刺部とそこから離れた病変部位の病理組織学的検討 (HE染色, アザン染色, エラスチカーワンギーソン染色, アルデヒド・フクシン染色, HE・コッサ反応重染色, 免疫組織化学染色) を7例で行った. シャント血管は動脈化静脈となり, 全ては血栓を伴う慢性静脈炎であった. 内膜は偏心性の線維性肥厚を示し, 中膜は弾性板が著しく断裂され平滑筋細胞は萎縮変性から腫大増殖まで様々な所見がみられた. 外膜は線維性硬化を伴う出血性外膜炎であった. 特徴的な3点は 1) 肥厚した内膜に泡沫化細胞を認めなかった, 2) 抗α-actinモノクローナル抗体で染色したところ内膜の肥厚部を始め多くの病変部で平滑筋細胞が遊走し増殖していた, 3) 持続する慢性全血管炎で特に外膜の強い炎症と細胞浸潤である. 血管病変の発生機序には穿刺に起因した内皮損傷と血栓, 全血管炎そして平滑筋細胞の増殖が重要と考えられた. また穿刺部以外の全血管にも閉塞性病変が進展することには外膜炎が関与する可能性が示唆された. ACE genotype解析の結果, DD型はなかった. 今後はシャント不全に対して積極的なマネージメントを行い安定した維持透析療法が可能となるようシャント血管病変の病理組織学的検討をさらに重ねる必要がある.
  • 荒木 英雄, 大門 正一郎, 松田 哲久, 宮崎 良一, 藤田 幸雄, 紺井 一郎
    1997 年 30 巻 4 号 p. 265-269
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者において, 糖尿病性ケトアシドーシス (DKA) を発症した稀な1例を経験したので報告する. 症例は46歳, 男性. 25歳時より糖尿病を指摘され, 1987年, インスリン依存性糖尿病 (IDDM) を診断されていた. 1994年8月, 糖尿病性腎症を原疾患として血液透析を導入. 1995年10月, 上気道炎症状の増悪に伴い経口摂取不能となったがインスリン投与を自己判断にて中止したところ, 血糖値1467mg/dlと著明な高血糖, アシドーシス, 高ケトン血症を呈し, DKAを発症した. 血清Na値は118mEq/lと低値を示した. 意識レベルはGlasgow Coma Scaleにて14点で, 意識障害は非常に軽度であった. インスリン大量投与では, 血糖の低下は認められず, 血液透析療法施行にて速やかに血糖値, アシドーシスの改善を認めた. 透析患者のDKAは, 高血糖および高尿素窒素濃度のため高浸透圧血症を認めるが, 浸透圧利尿をきたさないため脳細胞の脱水をきたしにくく, 意識障害が軽度であることが特徴と考えられた. また, インスリン投与の効果が著しく弱く, 血液透析療法以外では改善は困難と思われた.
  • 稲熊 大城, 前田 智美, 加藤 博久, 春田 良雄, 工藤 信隆, 伊藤 一孝, 佐藤 和一, 戸田 聡子, 藤田 豊, 市原 利彦, 公 ...
    1997 年 30 巻 4 号 p. 271-275
    発行日: 1997/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    安定した血液透析を施行するためには, 良好なブラッドアクセスを維持することが必要である. 最近, PTAをはじめとする各種interventional techniqueが発達し, ブラッドアクセスの長期開存に寄与しているものの血管のqualityの問題で急性閉塞をきたすこともしばしばみられる. 今回, 我々は人工血管使用による内シャントの急性閉塞に対してパルススプレー法による血栓溶解を試みた.
    症例は74歳男性で慢性腎炎による慢性腎不全のため平成3年から慢性維持透析を受けている.度重なるシャントトラブルのため左上腕動静脈間ならびに左鎖骨下静脈と上大静脈間に人工血管を使用し内シャントとしていた. 平成8年6月14日透析のため来院するもシャントが閉塞しており, 血管造影施行後にパルススプレー法による血栓溶解療法を行った. ウロキナーゼを合計60万単位使用にて治療後約1時間で血流は再開し, 以後の透析で使用可能であった.
    今後, 高齢者, 糖尿病ならびに長期透析患者の増加が予想され, シャントトラブルも増すものと思われる. その場合シャントの再建が困難なことも少なくない. したがって今回の症例のような急性閉塞に対して, パルススプレー法は比較的簡便でかつ安全で成功率も高いことから, 試みてみるべき方法の一つであると考える.
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