近年ビタミンK
2の投与による退行期骨粗鬆症の患者の骨量増加作用が報告されビタミンKと骨代謝障害の因果関係が注目されているが, 透析患者の骨代謝異常に対するビタミンKの関与は未だ十分に検討されていない. 我々は, 透析患者における血漿ビタミンK濃度を測定し, 各種臨床パラメーターと比較検討した.
対象は, 維持透析患者47名, このうちHD患者18名 (男性10名, 女性8名, 年齢45.1±9.3歳, 27歳-62歳, 透析期間12か月-108か月), CAPD患者29名 (男性16名, 女性13名, 年齢47.7±10.4歳, 23歳-68歳, 透析期間4か月-236か月) である. 血漿のビタミンK濃度はK
1 (Phylloquinone), K
2 (Menaquinone-4,7) を測定した.
結果は, 1) 血清Phylloquinone濃度は0.73±0.54ng/m
lで, 全員が測定感度以上であった. Menaquinone-4は47例中44例が測定感度以下であった. Menaquinone-7濃度は1.18±0.84ng/m
lで, 47例中23例が測定感度以下であった. Phylloquinone濃度はMenaquinone-7の測定感度以下群が0.94±0.90ng/m
lと感度以上群の1.70±1.35ng/m
lに対して低値を示した (p<0.05). 2) HD患者とCAPD患者との間において, また, 男女間においては, ビタミンK濃度には差を認めなかった. 3) Phylloquinone濃度とintact-PTHとは, 正の相関を認めた (p<0.05). また, Phylloquinone濃度はintact-PTHが90pg/m
l以上の群が0.82±0.80ng/m
lと90pg/m
l以下の群の0.55±0.56ng/m
lに対して高値を示した (p<0.05). 女性の透析患者においてMenaquinone-7と腰椎側面の骨密度とは負に相関した (p<0.05). 4) 血漿ビタミンK濃度と体重当たりのPCRとの相関を認めなかった.
透析患者におけるPhylloquinone濃度, Menaquinone-7濃度は従来の健常人の報告に比して低値を示し, ビタミンK投与が透析患者の骨代謝を改善する可能性があると考えられた.
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