日本透析医学会雑誌
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43 巻 , 7 号
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原著
  • 萩原 誠也, 名和 伴恭, 佐川 保, 種田 紳二, 三澤 和史, 土田 健一, 秋元 祐子, 坂東 秀訓, 中山 秀隆, 園田 智子, 萬 ...
    2010 年 43 巻 7 号 p. 543-550
    発行日: 2010/07/28
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
    【目的】 糖尿病性腎症を基礎疾患とする血液透析患者では消化管運動機能低下により機能性ディスペプシア(functional dyspepsia;FD)が多く認められる.これに対し近年,漢方薬である六君子湯の有効性が報告されている.今回われわれは糖尿病性腎症を基礎疾患とする血液透析患者のFDに対する六君子湯の有効性を検討した.【方法】 対象は糖尿病性腎症を基礎疾患とする血液透析患者でFDと診断されオメプラゾール20 mg/日の6か月以上の投与が無効であった15名.文書同意を得た後,六君子湯投与前と投与4週間後に,FD症状の質問を加えたGSRS(gastrointestinal symptom rating scale),WHOQOL26の質問票を用いて,患者の消化器症状および生活全体のquality of life(QOL)を評価した.【結果・結論】 GSRSによる評価では,FDの症状だけでなく腹痛,酸逆流,消化不良,下痢,便秘全ての症状で有意な改善効果が認められた.WHOQOL26による評価では,心理学的領域および生活全般領域で有意なQOLの改善が認められた.また,血液検査による評価での総蛋白の有意な上昇と,心胸郭比の低下が認められ,栄養状態が改善された可能性があることが示唆された.六君子湯は,糖尿病性腎症を基礎疾患とした血液透析患者の,FDをはじめとする機能性消化管障害に対する安全かつ有効な治療の選択肢となり得ると考えられた.
  • 鈴木 一之, 井関 邦敏, 中井 滋, 守田 治, 伊丹 儀友, 椿原 美治
    2010 年 43 巻 7 号 p. 551-559
    発行日: 2010/07/28
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
    透析条件・透析量と生命予後の関係を明らかにするため,日本透析医学会の統計調査結果を用いて,後ろ向き・観察的な研究を行った.2002年末の週3回施設血液透析患者を対象に,事故・自殺を除く死亡をエンドポイントとして,患者の透析条件・透析量と2003年末までの1年死亡リスク,および2007年末までの5年死亡リスクについて,ロジスティック回帰分析を行った.2002年末の平均的透析条件は,透析時間239分,血流量(Qb)192 mL/分,ダイアライザ膜面積(膜面積)1.55 m2,透析液流量(Qd)486 mL/分であった.また,尿素の標準化透析量(Kt/V urea)は平均1.32,指数化しない透析量(Kt urea)は平均40.7 Lであった.予後解析の結果,透析時間は240分以上270未満を基準として,それより透析時間が短い患者群で死亡リスクが高く,透析時間が長い患者群で死亡リスクが低い傾向を認めた.Qbは200 mL/分以上220 mL/分未満を基準として,それよりQbが少ない患者群で死亡リスクが高く,Qbが多い患者群で死亡リスクが低い傾向を認めた.膜面積は1.2 m2未満の患者群で死亡リスクが高かったが,それ以外の膜面積と死亡リスクの関係は明確ではなかった.透析量はKt/V urea 1.4以上1.6未満またはKt urea 38.8 L以上42.7 L未満を基準として,それより透析量が少ない患者群では死亡リスクが高く,それより透析量が多い患者群で死亡リスクが低かった.以上の傾向は,残腎機能がないと仮定が可能な,調査時点で透析歴5年以上の患者で顕著であった.一般的な週3回血液透析では,平均的な透析条件・透析量よりも,透析時間の延長やQbの増加によって透析量を増大させることが,患者の生命予後の改善につながる可能性が示唆された.
  • 堀口 幸夫
    2010 年 43 巻 7 号 p. 561-567
    発行日: 2010/07/28
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
    Vascular accessの問題は血液透析療法にとっては古くて新しい問題でもある.糖尿病に伴う腎不全患者の増加は患者の高齢化と動脈硬化の増加をも招き益々困難な症例が増加してきた.1980年頃より米国Renal Systemsによりvascular access deviceとして開発され提供されたHemasiteは皮膚穿刺なき透析としてわが国にも1983年頃より輸入され使用されるようになった.1984年より2005年までわれわれも総計約43例のHemasite埋め込み症例を経験した.これら症例にみられたさまざまな合併症や問題発生原因の解明を行った結果,その主な原因はshunt(分岐)された血液量が過大になり易くHemasiteに流入する過大なshunt血流が静脈壁と動脈壁に大きな影響を及ぼし,さらに大きな心負荷となりさまざまな症状を起こしていることがわかった.Hemasiteに血流を制御する部分を組み込むことにより種々の合併症を防ぐとともにHemasiteの持つ優れたシリコンゴム隔壁による止血弁機能を保持しつつ1回の埋め込み手術で長期間使用可能な新しいHemasite型vascular accessを開発することは透析医療に大きく貢献できるものと考え計画・設計・試作を行った.
  • 岡本 貴行, 宮崎 美紀子, 都筑 優子, 西澤 欣子, 窪田 実
    2010 年 43 巻 7 号 p. 569-573
    発行日: 2010/07/28
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
    【目的】 腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)カテーテルの腹腔内挿入に際し,スタイレットはPDカテーテルに腰をもたせるための器具として標準的に使用されている.しかし,スタイレットの使用により腹腔内臓器の損傷を起こす可能性があり,全長の長いPDカテーテルに用いると操作性が悪く術中汚染のリスクを伴う.そこで,安全にPDカテーテル留置を行うため,スタイレットを使用せずPDカテーテルを腹腔内の正位置に挿入できるか否かを検討した.【方法・対象】 平成18年11月から平成22年3月の41か月間に王子病院で施行した連続した119例のPDカテーテル挿入術をスタイレットを用いずに行った.スタイレットを装着していない先端がストレートのPDカテーテルを,腹膜に開けた小孔の尾側を鉗子で持ち上げて用手的に腹腔の前腹壁に沿わせて挿入した(ノンスタイレット挿入法).【結果】 ノンスタイレット挿入法で正位置に挿入できた症例は115例であった.挿入に要する時間はわずか2~3秒であった.4例はPDカテーテルの挿入が不確実であったためにスタイレットを使用した.この4例は肥満患者で腹壁が厚く,PDカテーテルが腹膜に対して垂直方向にしか挿入できなかった症例であった.全症例ともに術中の腹腔内臓器損傷を起こすことはなく,PD開始時のカテーテル機能に問題は認めなかった.【結論】 PDカテーテル挿入時にノンスタイレット挿入を119例に試み,115例に適正に挿入できた.驚くべきことに殆どの症例でスタイレットは不要であることが示された.ノンスタイレット挿入法はその容易性・確実性および合併症の少なさから優れた手技であると考えられる.
  • 岡本 聡子, 藤森 明, 岡田 志緒子, 坂井 誠, 當銘 克之, 深川 雅史
    2010 年 43 巻 7 号 p. 575-579
    発行日: 2010/07/28
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
    【目的】3D-CTで大動脈石灰化を定量し,1年間の変化に関与する因子を検討する.【方法】胸部造影CT(GE社製Light Speed 16)検査を行い,気管分岐部より尾側10 cmの胸部大動脈の体積と石灰化部分の体積をAdvantage Workstation 4.2を使用して算出した.石灰化体積/動脈体積を石灰化指数(CS)とした.CSの1年間の変化を観察できた当院の血液透析患者46名(男29,女17),平均年齢69.7±9.0歳,平均透析歴8.4±6.6年を対象とした.【結果】CS変化量(ΔCS)は1年間の平均血清補正CaとPの積,Whole PTH,頸動脈内膜中膜複合体最大厚(Max IMT),脈波伝播速度(PWV),年齢とは正相関した.ステップワイズ重回帰分析を行ったところ,ΔCSの説明変数としてCa・P積,Whole PTH,Max IMTの3因子が選択された.平均血清補正Ca,P,骨密度,低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC),オステオカルシン(OC),ucOC/OC比,ペントシジン,透析歴,LDLコレステロール,1年間の平均収縮期血圧とは相関しなかった.CS変化量は男女,糖尿病有無,ビタミンD静注治療有無,シナカルセト投与有無,喫煙有無では差がなかった.【結論】血管石灰化進展に関与する因子としてCa・P積,PTH,Max IMTが重要であることが示唆された.
  • 関谷 紀貴, 中村 裕也, 柳澤 如樹, 菅沼 明彦, 今村 顕史, 味澤 篤, 安藤 稔
    2010 年 43 巻 7 号 p. 581-586
    発行日: 2010/07/28
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
    Highly active antiretroviral therapy(HAART)によりhuman immunodeficiency virus(HIV)感染者の生命予後は改善したが,長期生存に伴う合併症として慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)や末期腎不全(end-stage renal disease:ESRD)が問題となりつつある.本研究では,長期にわたる治療期間中にCKDからESRDに至ったHIV感染者の臨床的特徴を報告することを目的とした.都立駒込病院外来に通院しているHIV感染者の中で,2009年8月時点でESRDに至った10症例を対象とした.患者の臨床的特徴,透析導入までの期間,HIV感染コントロール状態,合併症,腎毒性を有する薬剤の曝露歴を診療録を用いて検討した.性別は全て男性,透析導入時の平均年齢は50.7±9.1歳,末梢血CD4陽性リンパ球数は340±185 cells/μL,HIV-RNA量は全例50 copies/mL未満であった.導入時血清クレアチニン値は6.6±1.6 mg/dL,eGFRは8.7±2.6 mL/min/1.73 m2であった.HAART開始から透析導入までの平均期間は8.1±2.9年であり,HAART開始時にCKDを有した3例は,その他の患者よりも4年早く透析導入に至った.透析導入後の死亡例は3例で1例は3年後,2例は数か月後に死亡した.HAART導入後に糖尿病は5例(50%)から7例(70%),高血圧は3例(30%)から9例(90%),高脂血症は1例(10%)から6例(60%)に増加した.腎毒性を有する抗レトロウイルス薬の代表であるTenofovir disoproxil fumarate(TDF)の内服歴は1例もなく,Indinavir(IDV)の内服歴は2例にあった.その他の腎毒性のある薬剤では,trimethoprim-sulfamethoxazole(ST)合剤の内服歴が4例,nonsteroidal anti-inflammatory drugs(NSAIDs)の内服歴が3例にあった.ESRDに至ったHIV感染者10例は,HAART開始前から半数に糖尿病を合併しており,平均約8年で透析導入となった.TDF内服歴を持つ患者は皆無であった.既存の糖尿病とHAARTによる代謝性合併症の増加がCKD進行に関係している可能性がある.
症例報告
  • 目黒 浩昭, 森 弘司, 福島 鼎, 草野 英二
    2010 年 43 巻 7 号 p. 587-594
    発行日: 2010/07/28
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
    当院での腹膜透析施行例において,多発性嚢胞腎(以下ADPKD)患者3例中の1例は左陰嚢水腫と右横隔膜交通症,1例はカテーテル周囲のリークと右横隔膜交通症,1例は臍ヘルニアと同部位からの感染によると思われる腹膜炎を発症し腹膜透析継続を断念した.ADPKD患者に対する腹膜透析に関しては賛否両論があるが,3例のADPKD患者においては,残存機能の保持が期待でき,食事制限の少ない,QOLの維持が可能で患者満足度の高い腹膜透析が可能と判断し実施した.結果的には上述の合併症を発症したが,これら腹腔内圧上昇に伴うと思われる合併症に着目して,症例の検討を通して適否の基準となりうるような指標がないかを模索した.そこで,施行が容易で客観性の高いCTが適否診断の方法になりうると考え,当院で施行した他の腹膜透析患者6例も含め,腹腔内容積と腎の容積をCT画像から算出し比較した.3症例に共通した特徴として巨大化した嚢胞化腎を有しCTによる腹腔内容積に対する腎の容積比率は,3症例とも対照群(他疾患による腹膜透析施行例)に比して著しく高い値を示した.さらにADPKD患者は潜在的に,コラーゲン代謝の異常から,膜構造や腹壁構造に脆弱性を有するとされ,ADPKD以外の腹膜透析患者群に比較して,腹圧上昇に基づく合併症が起こりやすいことは予測されうるものであった.未だに,巨大な腎を有するADPKD患者における,腹膜透析の適否に関する客観的指標は示されていない.CTによる腹腔内容積に対する腎の容積比率は,腹腔内圧上昇に伴う合併症発症予測の観点から,ADPKDの患者への腹膜透析導入の是非および,導入する場合の腹膜透析の様式等を考える上での客観的指標になりうると思われる.しかし少数例の検討であり今後の症例の蓄積と検討を要する.特にADPKD患者間での比較調査が必要と思われる.
  • 中澤 哲也, 石川 勲, 羽山 智之, 森田 恭子
    2010 年 43 巻 7 号 p. 595-600
    発行日: 2010/07/28
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.1997年,慢性糸球体腎炎による慢性腎不全のため腹膜透析開始.2005年,血液透析に移行.2007年,被嚢性硬化性腹膜炎を発症し,パルス療法に引き続き維持ステロイド療法を行っていた.また心房細動,慢性心不全のため循環器内科医から継続加療を受けていた.2009年10月17日,上気道の違和感を自覚し18日になり発熱を認めたため,時間外外来受診した.簡易検査でインフルエンザA陽性であり,oseltamivir(タミフル®)と解熱剤の処方を受けたが,19日になっても発熱は改善せず,倦怠感と食欲不振が増強し,呼吸困難感も自覚するようになったため入院した.入院時体温は38.3℃で,室内気でSpO2 78%と著しい低酸素血症を認めた.胸部CTでは両側肺に非区域性にスリガラス状陰影が広がっており,両側に胸水も認めた.インフルエンザ感染による肺炎に加え,うっ血肺の要素があると診断し,zanamivir(リレンザ®)の吸入,ステロイド増量(メチルプレドニゾロン40 mg/日)透析による除水を行ったところ,2病日から自覚症状の改善がみられ,5病日にはX線所見も改善した.入院後行った痰のPCR検査にてパンデミック新型インフルエンザ(A/H1N1pdm)感染が確定した.透析患者が新型インフルエンザに感染し急速に肺炎・呼吸不全が進行した症例を経験した.背景にステロイド服用と心疾患の既往があったことから,このような症例では急速に肺炎・呼吸不全の進行がみられる危険性がある.
  • 八幡 真弓, 中屋 来哉, 相馬 淳
    2010 年 43 巻 7 号 p. 601-608
    発行日: 2010/07/28
    公開日: 2010/08/31
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,男性.2008年8月頃より全身浮腫と呼吸苦が出現したため前医受診,Cr 3.33 mg/dLと腎機能障害がみられ9月当院紹介入院となった.高度蛋白尿と血尿がみられ,さらに腎機能の悪化がみられたため,ネフローゼ症候群を伴う急速進行性腎炎症候群と診断し腎生検を行った.25個の糸球体のうち23個で細胞性ないし線維細胞性半月体形成がみられ,IgGが係蹄壁へ線状に沈着していた.MPO-ANCA,PR3-ANCAは陰性だったが抗GBM抗体が57 EUと陽性であり,抗糸球体基底膜(glomerular basement membrane:GBM)抗体型腎炎と診断した.入院時よりのステロイド療法に加え第15病日より血漿交換を開始したが,第17病日に突然の全身痙攣発作が出現しその後意識障害が続いた.頭部MRIにて両側側頭葉から後頭葉,脳幹,視床,尾状核,両側小脳半球を中心にT1強調画像で低信号,T2強調画像・フレア像で高信号を示す病変が多発していた.原疾患が関与した脳症と考えられ,抗痙攣薬を投与しつつ,血漿交換,ステロイドパルス,シクロフォスファミドパルスを行った.抗GBM抗体が陰性化した第24病日頃から痙攣発作や意識障害はみられなくなり,退院前の頭部MRIでは多発病変はほぼ消失していた.腎機能は回復せず維持透析となったが,その後抗痙攣薬なしで痙攣はみられていない.本例はその画像や臨床経過からreversible posterior leukoencephalopathy syndrome(RPLS)に相当すると考えられた.ただし,ANCA陰性のGoodpasture症候群で中枢神経系障害を呈した例が稀ながら報告されており,それらは全て抗GBM抗体に関連した中枢神経系血管炎とされている.従って本例においても後者である可能性は否定できなかった.いずれにしても本例はANCA陰性の抗GBM抗体型腎炎において中枢神経系障害を合併した稀な報告例である.
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