「血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012」に基づき,わが国ではグリコアルブミン(glycated albumin:GA)を用いて糖尿病透析患者の血糖コントロールを評価している.心血管イベントの既往歴のない症例では暫定的な目標値としてGA値20.0%未満が推奨された.心血管イベントの既往歴を有する症例や低血糖傾向のある症例では24.0%未満が提案されている.近年,わが国から透析患者のGA値と生命予後に関する臨床成績もいくつか報告されてきた.また,透析導入に伴い,血糖値やHbA1c値が正常化し,血糖降下薬が不要となる現象があり,“Burnt-out diabetes”と呼称されている.糖尿病透析患者においてはBurnt-out diabetes,とくにHbA1c<5.0%と低値であることが予後不良であると報告されているが,その頻度や予後はHbA1cのみならずGAと組み合わせて評価することが重要である.
第1回沖縄県人工透析研究会は1983年に開催,2023年で第4回大会を迎えた.2020年2月に始まった新型コロナ感染症の蔓延により2020年は休会を余儀なくされたが,2021年より種々難題を抱えながら再開している.当初は一般演題,特別講演のみであったが透析施設数が増加するにつれて現況報告,腎移植・CAPD分科会報告が加わっている.大会長の提案でワークショップ,シンポジウム,特別企画も加わっている.一般演題は総数で計1,635題:医師492題(30.1%),技師415題(25.4%)および看護師728題(44.5%)である.2008年に発足した沖縄県透析医会とも協力してさまざまな調査や行政との連携も進めている.危機管理(台風,地震,水不足,停電,COVID-19)およびスタッフ不足・教育は喫緊の課題である.これまでの研究会プログラムを振り返り今後の研究会や透析医療についても考察する.
66歳女性.Alport症候群を原疾患に入院3年前に腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)を導入.入院当日,排液混濁および発熱を主訴に外来受診.好中球優位の排液細胞数増多を認めPD関連腹膜炎の診断にてセファゾリン(CEZ)+セフタジジム(CAZ)の腹腔内投与を開始.3日目,排液細胞数は減少せず排液混濁も改善は認めなかった.4日目よりメロペネムの腹腔内投与に変更.当初排液培養は陰性に思われたが,増菌によりBacteroides ovatusおよびEggerthella lentaが検出された.以後排液細胞数は減少に転じたが11日目に再燃.治療抵抗性のPD関連腹膜炎として14日目にカテーテル抜去,PD離脱に至った.内因性PD関連腹膜炎の原因となる腸内細菌には,第一選択となるCEZ+CAZに抵抗性のものも少なくない.中でも稀な起炎菌による腹膜炎を経験したので,文献的考察を交えて報告する.