日本透析医学会雑誌
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33 巻, 6 号
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  • 長岡 由女, 松本 博, 中尾 俊之, 岡田 知也, 韓 明基, 日高 宏実, 吉野 麻紀, 山田 親行, 篠 朱美
    2000 年 33 巻 6 号 p. 1029-1034
    発行日: 2000/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    腹膜透析患者において, エリスロポエチン (EPO) 低反応性の一つの要因として溶血をとりあげて検討を行った. 外来の腹膜透析患者47名を対象に, 血中haptoglobin (Hp) 値が低値を示したものを溶血ありと判定した. そのうえで溶血の有無とerythropoietin製剤 (rHuEPO) 投与量, 透析効率生化学的パラメーターとの関連を検討した.
    血中Hp値が測定感度以下 (10mg/dl以下) の患者を4名 (8.5%) 認めた. この4名を溶血群とし, 43名の非溶血群と統計学的に検討した. その結果溶血群は非溶血群に比較し有意に若年であり, 血清乳酸脱水素酵素, 網状赤血球数が有意に高値を示し (540.0±132.8 vs 405.5±105.0IU/l, p<0.05, 28.7±6.6 vs 18.0±9.0%, p<0.05), hemoglobin値は有意に低値を示した (8.7±0.8 vs 9.8±1.0g/dl, p<0.05). rHuEPOは溶血群で1か月平均33000±6000単位投与したのに対し, 非溶血群では20230±12490単位と溶血群で投与量が多い傾向を示した (p=0.051). 血清尿素窒素は溶血群で高い傾向であったが, 血清クレアチニン, intact parathyroid hormone (iPTH), weekly Kt/V, weekly Ccrは溶血の有無における差は認められなかった.
    以上より腹膜透析におけるEPO低反応性の原因の一つとして比較的高頻度に溶血が関与している可能性が考えられた. この溶血と生化学的パラメーターとの関連は認めなかった.
  • 湯村 和子, 内田 啓子, 若井 幸子, 川嶋 朗, 伊藤 恭子, 三和 奈穂子, 小林 英雄, 本田 一穂, 新田 孝作, 二瓶 宏
    2000 年 33 巻 6 号 p. 1035-1040
    発行日: 2000/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析 (HD) を施行した全身性エリテマトーデス (SLE) 16例 (女性15例, 男性1例), 年齢は24-47歳の臨床像, 治療, 予後について検討した. 腎生検は, 14例に施行し12例がび漫性ループス腎炎 (LN) であり, 2例は膜性LNであった.
    これらの患者を腎不全の進行状態から, A, BおよびCの3群に分類した. A群 (n=6) はrapidly progressiveとした. SLEおよびLN発症より透析導入までの期間は短く進行性に腎不全に至った. 導入時, CH50は低値で免疫学的活動性は高く, 治療も大量のステロイド剤投与を行い, 全例血漿交換療法の併用, 3例でステロイドパルス療法も施行していた. 治療後は, 免疫学的異常と腎機能の改善を認めた. B群 (n=3) は, acute on chronicであった. A群に準じた治療を行いHD離脱したが, 1例が早期に急死した. 他の2例が再導入となった. C群 (n=7) は, chronicとした. SLEあるいはLN発症よりHD導入までの期間が最長240か月, 180か月の症例もあり, LNが慢性の経過で腎不全に至った群である. 6例の腎組織型はいずれもび漫性LNであり, 全例高血圧を認め, 糖尿病も2例に合併していた. 導入時のCH 50で評価するSLEの免疫学的活動性はA群に比し低く (p<0.01), ステロイド剤の投与量も少量 (p<0.001) であった. HD導入後のSLEの再燃は, 3例に認められ, ステロイド剤の増量を必要とした. 1例は, 維持透析10年目に脳出血で死亡した. A群は, C群に比しても血清クレアチニン値は平均5.4±1.8mg/dlと低値 (p<0.02) で透析を施行し, 血漿交換療法やパルス療法を併用することで免疫異常や腎機能の改善がもたらされた. C群は, いわゆるburn outの状態で導入となるが, 維持透析経過中のSLEの再燃には注意を要する.
    このようにSLE患者のHD施行は種々の病態で行われる. 臨床所見や腎生検を考慮し, 適切な時期に併用治療も含めたHD施行が予後の改善をもたらすと考えられた.
  • 幼児oxalosisに対する血液浄化の経験から
    清水 幹夫, 芝田 正道, 星野 敏久, 金子 岩和, 谷口 由枝, 白髪 宏司, 伊藤 克己, 峰島 三千男, 阿岸 鉄三
    2000 年 33 巻 6 号 p. 1041-1043
    発行日: 2000/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    oxalosisの幼児に対し, 生体肝腎非同時移植を施行し, 肝移植から腎移植前までの50日間, 再溶出する体内蓚酸塩除去を目的とした持続的血液浄化法も含むHF, HDFを施行した. この際, 低流量域における操作条件で安全に治療可能となるよういくつかの技術的工夫を試み, さらにこの時の溶質除去効率についても検討した.
    HF, HDFにおける透析液流量 (QD), 補充液流量 (VS), 濾過流量 (VF) のそれぞれの出入量は定量筒輸液セットと輸液ポンプを組み合わせ流量バランスを保った.
    血液流量 (QB)=20ml/min, 透析液流量=40ml/min, 補充液流量, 濾過流量=0.28l/hrでの治療開始1hr目のUreaおよびβ2-MGのクリアランス (CL) はそれぞれ16.9ml/min, 7.0ml/minであった. なお, 7hr 40minのHDFを施行した結果, 透析液排液と濾過液中に合わせて31.2mgの蓚酸塩が除去されていた.
  • 山田 徹, 西田 泰幸, 高橋 義人, 石原 哲, 出口 隆, 宇野 雅博, 小林 覚
    2000 年 33 巻 6 号 p. 1045-1048
    発行日: 2000/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性腎疾患や逆流性腎疾患に基づく透析症例中には尿路力テーテル管理を必要とする症例もあり, しばしば認める血尿への対処に苦慮することがある. 血尿の中には尿路悪性腫瘍に起因するものもあり重大な注意を要する. 今回我々は, 長期腎瘻力テーテル留置中の透析患者に発生した腎盂扁平上皮癌の症例を経験したので報告する.
    症例は, 50歳女性, 右無形成腎および左尿管狭窄による閉塞性腎症のため23歳時より左腎瘻留置され, 37歳時より血液透析を導入された後も2週毎に腎瘻カテーテルの交換を受けていた. 1998年3月, 持続性の血尿を主訴に受診し, 画像診断にて腎盂内の血腫とともに充実性腎盂腫瘍が疑われた. 尿細胞診は陰性であったが, 扁平上皮癌の腫瘍マーカーである血中squamous cell carcinoma抗原が高値を示したため扁平上皮癌による左腎盂腫瘍と診断した. 臨床病期はT4 N2 M1であったが, 血尿のコントロールのため左腎摘除術を施行した. 病理診断はsquamous cell carcinoma+transitional cell carcinoma, pT3であった. 血中squamous cell carcinoma抗原は術前152ng/mlから2.2ng/mlに低下し, 術後経過は良好で術後22日目に退院した, しかし, 肺転移巣の急速な進展のため術後37日に死亡した. 長期カテーテル留置例には時に扁平上皮癌が発生することが知られているが, 確定診断時には進行癌となり, 予後不良であることが多い. したがって長期尿路力テーテル留置例の肉眼的血尿に対しては, 尿路上皮癌の発生を常に念頭におき尿路の検索を行うことが肝要である.
  • 山下 愛, 田中 謙二, 鶴田 伸子, 松永 高志, 渋谷 恒文, 加藤 雅人, 山本 一郎
    2000 年 33 巻 6 号 p. 1049-1051
    発行日: 2000/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は45歳男性. 17歳の時, 腎臓病のために入院治療を受けたが, 詳細は不明. 20歳の時に耐性菌による肺結核に罹患. 1990年に肺アスペルギルス症の治療を受けた際にはじめて腎機能障害を指摘された. その後, 末期腎不全となったため, 1993年から当院にて維持血液透析を続けていた. B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスのキャリアーであったが, 肝機能は正常であったため, 年一回の腹部超音波検査で経過をみていた. 1997年肝臓S6に約3cmのmassを認め, 肝細胞癌と診断. 1997年6月にSMANCS/Lipiodol動注療法とエタノール局注療法 (PEI) を施行し, 局所再発はみられていなかった. 1998年8月よりα-fetoprotein (AFP) の上昇がみられ, 同時に腹壁に腫瘤が認められたため, 腹直筋への転移と診断した. 外科的切除により, AFPは正常化し, 現在まで再発はみられていない. 肝生検やPEI後に穿刺部の腹壁に転移をきたした報告は多くみられるが, 本例では穿刺部位と異なる場所であり血行性転移と考えられた. 肝細胞癌の腹直筋への転移は極めて稀と考えられるため報告した.
  • 田口 直美, 長谷部 佳子, 山中 泰子, 武久 弘子, 中山 栄純, 佐藤 千史, 秋葉 隆, 丸茂 文昭, 栗原 怜, 小笠原 陽
    2000 年 33 巻 6 号 p. 1053-1058
    発行日: 2000/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は, 外来透析患者の旅行経験を把握し, 旅行に際し患者自身が躊躇したまたは懸念された事項を検討することにあった.
    東京都近郊の2施設で血液透析を受けている外来通院患者を対象に, 無記名自記式調査票を配布した. 調査票の質問項目は, 透析歴や合併症の有無等の一般属性に加え, 旅行経験, 旅行に関して懸念された事項とした. 旅行経験は日程に透析を含まない旅行 (以後透析なし旅行) と透析を含む旅行 (以後透析旅行) に分けて尋ねた. 透析旅行に際して懸念された事項は, 調査票中に具体的な項目を列挙し, その各項目について,「気になる」~「気にならない」の4つの選択肢をそれぞれ設けて回答を促した.
    340名中311名 (施設A 86名, 施設B 256名) から調査票を回収し. (91.5%), 306名分 (有効回答率98.4%) を解析対象とした. 平均年齢は53.9±10.5歳, 平均透析歴は7.9±6.3年であった. また, 全体の76.2%が旅行に出るのが好きと回答した. 透析なし旅行は各年代で男女とも50%以上が経験し, その関連要因は疲労感の自覚, 日常生活管理の自己評価, 透析歴であった. 年齢や性別, 合併症の有無とはいずれも関連を認めなかった. 一方透析旅行経験者は81名で, 旅行目的, 現地職員との意志疎通, 同行者への遠慮, 透析歴, 透析なし旅行経験が関連要因として抽出された.
    以上より, 透析なし旅行は年齢を問わず経験者が多く, 患者は疲労感の自覚といった状況認識を的確に下しながら旅行を楽しんでいた. しかし透析旅行に関しては慎重であり, 特に旅行目的が出張以外の場合は躊躇する傾向が強い. 透析患者の旅行に対して, 看護婦が理解を示し積極的に支援する姿勢が求められると同時に, 施設間での連携も望まれると考えられた.
  • 阿岸 鉄三, 春口 洋昭
    2000 年 33 巻 6 号 p. 1059-1068
    発行日: 2000/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
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