日本透析医学会雑誌
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52 巻, 10 号
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原著
  • 脇坂 佳成, 三浦 徳宣
    2019 年 52 巻 10 号 p. 569-575
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/30
    ジャーナル フリー

    上腕動脈の超音波検査による抵抗係数 (RI) と上腕動脈血流量 (FV) と体血圧から導いた内シャント推定血流量 (eSF) を考案し, その指標を内シャント血流係数 (SFI) とする. 過去3年間に2回以上経皮経管的血管形成術 (VAIVT) を受けた79症例で評価した. 特異度90%の条件でVAIVT前後のSFIの血流低下に対する感度は, RIやFVよりも勝っていた. その症例の中で脱血穿刺部位の解剖学的状況から脱血流量 (Qb) とシャント血流量が近似すると考える47回のVAIVT直前状態においてSFIと近日の体血圧から算出したeSFの誤差は, Qbの15±22%であった. VAIVT間のSFIの経時的変化からVAIVTの介入時期を予測可能か検討した. SFIの減少速度は約7割の症例で経過中に変動し, 種々の減少パターンを認めた. SFIとeSFは, 内シャント血流量の評価に適するが, VAIVT介入時期の予測に適しない.

  • 永作 大輔, 竹内 孝之郎
    2019 年 52 巻 10 号 p. 577-584
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/30
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症 (YAM値<70%) を合併する当院外来透析患者に対してデノスマブ治療を行った. 対象患者は38名 (男性13名, 女性25名) で平均年齢70.8±13.7歳, 平均YAM値52.1±10.0%であった. デノスマブ投与後, 3年間にわたって骨密度 (橈骨遠位端1/3部) が3ポイント以上増加し, 3年後YAM値は56.8±10.5%に上昇した. また骨代謝マーカーであるTRACP-5b, total P1NPは3年間有意な低下を認めた. 血清補正Ca値の変化量はデノスマブ初回投与時に比し有意に低下していたが, 血清iP値の変化量については統計学的な差を認めなかった. デノスマブによる低カルシウム血症の補正のため, 静注ビタミンD製剤の投与量は有意に増加していた. 骨粗鬆症を合併する透析患者に対して, デノスマブ治療は骨密度改善に有用であった. しかし血清補正Ca値の変動を注意深く観察していく必要がある.

  • 伊藤 恭子, 高橋 愛里, 斎藤 たか子, 宮 政明, 溜井 紀子, 武藤 重明, 安藤 哲郎, 筒井 貴朗, 小川 哲也, 永野 伸郎
    2019 年 52 巻 10 号 p. 585-592
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/30
    ジャーナル フリー

    【目的】シナカルセトをエボカルセトへ切り替え, 血清値, 併用薬剤, 上部消化管 (GI) 症状に対する影響を実臨床下で検討した. 【方法】シナカルセト処方中の血液透析患者147人を, エボカルセトの1mgに一斉に切り替え, 8か月後まで観察した. また, GI症状および服薬アドヒアランスに関するアンケートを実施した. 【結果】切り替えにより, 血清PTHの上昇が認められたが, 血清補正Caの上昇は一過性であり, 速やかに投与前値に復した. 直前のシナカルセト投与量と1か月後のPTHおよびCaの変化量との間に正相関が認められた. また, PTH変化量はCa変化量と正相関し, Caの上昇は骨由来であることが示唆された. 併用薬剤の有意な変化は認められなかったが, 消化管運動改善薬を中止できる症例が散見された. アンケートの結果, GI症状のある患者は切り替え後で減少し, 服薬遵守率は上昇した. 【結語】エボカルセトは, シナカルセトに替わる有用なカルシミメティクスである.

症例報告
  • 重松 武史, 牧尾 健司, 中村 拓生, 佐野 博之, 上村 健登, 西庵 良彦, 宮本 孝
    2019 年 52 巻 10 号 p. 593-598
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/30
    ジャーナル フリー

    症例は75歳男性, 透析歴は17年. 2年前よりγ線滅菌PS膜によるOn-LineHDFを施行し, 安定した経過であったが, ある時期から開始直後に収縮期血圧が70mmHg台へと低下し気分不良を伴う透析困難症となった. まずPS膜の不適合を疑い, HDモードに変更し, CTA膜やEVAL膜 (いずれもγ線滅菌) と膜素材や抗凝固薬を変更したが改善には至らなかった. 治療初期に除水速度=0mL/hやECUMも試したが血圧低下を防ぐことはできなかった. BV計でBV波形を観察したところ, 治療開始直後に異常に上昇する波形が得られ, 膜の不適合が原因で血管透過性が亢進していると判断した. γ線滅菌膜ではなく高圧蒸気滅菌PS膜に変更したところ, 血圧低下や気分不良は消失し安定した治療が行えた. BV波形も異常波形ではなくなった. 今回は同一素材で滅菌法が異なる膜への変更が有効であり治療条件は滅菌法も意識することが重要である. また治療条件変更の有効性の判定に, BV計の波形観察が有用であった.

  • 田島 恵莉香, 富永 大志, 高橋 遼, 吉村 久仁子, 服部 潤, 竹内 康雄
    2019 年 52 巻 10 号 p. 599-604
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/30
    ジャーナル フリー

    カフェイン過量摂取の報告は本邦でも年々増加傾向にある. 本稿ではカフェインの大量服用から急性カフェイン中毒に至ったが, 急性期に血液透析を施行し, 良好な経過をたどった症例を経験したので報告する. 症例は基礎疾患のない32歳女性, 市販の眠気予防薬にてカフェイン24gを自殺目的で摂取後, 嘔吐, 振戦を認め, 当院へ受診となった. 来院時患者は興奮状態であり, 頻脈, 頻呼吸, 振戦, 発汗, 筋緊張の亢進を認めた. 心拍数は142回/分で二段脈を認めた. カフェイン致死量を超える24gを摂取しており, 難治性不整脈の出現が危惧されたため, 血液透析を施行したところ, 速やかに臨床症状は改善し, カフェイン血中濃度も著明に低下した. 致死量を内服した急性カフェイン中毒の症例に対して, 血液透析は有効な治療手段の一つであると考えられる.

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