日本透析医学会雑誌
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44 巻, 12 号
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第56回日本透析医学会シンポジウムより
第56回日本透析医学会シンポジウムより
原著
  • 脇川 健, 藤田 淳也, 西平 綾子
    2011 年44 巻12 号 p. 1155-1161
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/01/25
    ジャーナル フリー
    一般人口におけるレストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)の有病率は,欧米で5~10%,日本で2~5%と報告されているのに対し,透析患者におけるRLSの出現頻度は4.8~32.2%と,明らかに高い有病率の報告がなされている.だが,本邦で透析患者を対象とした疫学調査は少数しか報告されていない.本邦では,プラミペキソール塩酸塩水和物(以下,プラミペキソール)が2010年1月特発性RLS治療薬として初めて認可された.そこで,われわれは血液透析患者103名(男性56名,女性47名)を対象に,RLS診断基準を用いて有病率を調査した.また,プラミペキソール投与の有効性についても検討した.有効性の判定には,国際レストレスレッグス症候群評価尺度(IRLS)とVisual Analogue Scale(VAS)を用いた.103名の透析患者のうち,RLSの4つの診断基準をすべて満たしたのは18名であった(有病率は17.5%).この18名のうち,プラミペキソール服用に同意された患者は9名で,内服前後のIRLSスコアの平均値は投与前25±6.9点,1週間後18.3±9.1点,1か月後14.7±7.7点で,1か月後のIRLSスコア平均値は投与前と比較して有意に低下した.内服前後でのVASスコアの推移は,投与前68.8±12.2mm,1週間後36±19.7mm,1か月後28.3±24.5mmと1週間目から有意差をもって低下した.プラミペキソール服用により,IRLSスコア,VASスコアの改善が経時的に認められた.以上より,血液透析患者におけるRLSの有病率は高率であった.プラミペキソール投与により,RLSの症状改善が認められたことから,プラミペキソールは血液透析患者におけるRLS治療に有用であることが示唆された.
症例報告
  • 仲山 實, 知念 隆之, 山里 将浩
    2011 年44 巻12 号 p. 1163-1169
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/01/25
    ジャーナル フリー
    60代の男性.維持血液透析患者で,アレルギー疾患の既往はなく,炭酸ランタン(La)の慎重投与とされる肝機能障害,消化管疾患はなかった.炭酸Laを内服後,高度の低アルブミン(Alb)血症が出現したが,炭酸Laの中止後,急速に改善した.99mTc-HSA蛋白漏出シンチグラフィーで回腸からの蛋白漏出が確認され,蛋白漏出性腸症(PLE)と診断された.造影CTスキャンで蛋白漏出部位と一致する回腸に,壁肥厚と内腔の狭小化が認められた.また上部,下部消化管の内視鏡検査と生検,検便などから,寄生虫疾患は除外された.低Alb血症から回復した時の造影CTスキャンでは,回腸の肥厚所見は消失していた.また,回復後の炭酸Laの再投与によって,末梢血好酸球増多が確認された.臨床経過からPLEの発症に炭酸Laの関与が考えられたが,炭酸Laの投与で好酸球増多が起こること,CT画像で好酸球性腸炎に特徴的な小腸壁の肥厚が認められたこと,寄生虫など他の疾患が除外されたことなどから,PLEの原因として好酸球性腸炎が疑われた.塩化ランタンのラットへの投与実験で胃粘膜下に高率に好酸球の浸潤と末梢血の好酸球増多が観察され,また回腸の絨毛上皮にあるTight junction(TJ)の電子顕微鏡観察の染色剤としてランタンは一般的に使用され,TJから透過することがin vitroの実験で認められている.さらに炭酸Laの動物実験でも腸管への蓄積が認められ,薬剤の臨床使用の有害事象に好酸球増多があるなどの知見も炭酸Laによる好酸球性腸炎の発症の可能性を示唆している.自験例も,薬剤の中止で軽快した臨床経過から炭酸Laによる好酸球性腸炎と考えられた.炭酸Laによる蛋白漏出性腸症を伴った好酸球性腸炎の報告はまだないが,使用にあたって念頭におく必要があると考え報告した.
  • 大河原 晋, 伊藤 淳一, 武田 隆, 須貝 昌博
    2011 年44 巻12 号 p. 1171-1176
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/01/25
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の女性.多発性嚢胞腎による慢性腎不全のため血液透析(HD)を施行中であった.recombinant human erythropoietin(rHuEPO)9,000IU/週使用中であるにもかかわらず貧血の管理に難渋をし,erythropoiesis stimulating agent(ESA)低反応性貧血として輸血で対応することもあった.2006年9月にはHb 6.6g/dLまで低下を認めるとともに血清亜鉛(Zn)濃度が52μg/dLと低値を示し,Zn欠乏症に伴うESA低反応性貧血と診断しpolaprezinc 150mg/日の内服を開始とした.polaprezinc内服後,貧血の著明な改善を得るとともにnormalized protein catabolic rate(nPCR)の上昇も認めた.その後,rHuEPOを減量するも貧血管理は安定し,polaprezinc内服開始から4年を経過した現在,血清Zn濃度も87μg/dLと安定して推移をしている.慢性腎不全症例においてZn欠乏は時にみられる合併症であり,ESA低反応性貧血とともに食欲低下,味覚障害など栄養障害にも関与することが知られている.本症例においてもpolaprezincを使用したZn補充により貧血および栄養状態の改善を得ることが可能であった.さらに,polaprezincの長期にわたる内服においても問題となる事象を認めることはなかった.
  • 平尾 圭市, 松浦 友一, 伊従 正博
    2011 年44 巻12 号 p. 1177-1183
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/01/25
    ジャーナル フリー
    Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edema(RS3PE)症候群は1985年にMcCartyらが高齢者においてリウマチ因子陰性かつ多関節炎をきたす病態として提唱されたが,維持透析患者での発症例の報告は少ない.われわれは維持透析患者でRS3PE症候群が疑われた症例を経験したので報告する.症例は2004年から維持透析中の71歳,女性.2009年1月左第5趾中足骨骨折で入院し,手術を施行した.術後の経過は順調であったが,2月中旬より発熱を認め,原因を精査したところRS3PE症候群が疑われた.ステロイド治療にて浮腫および関節痛は改善したが,その後の治療経過で悪性腫瘍に随伴したRS3PE症候群も疑われた.高齢者で比較的急速に発症した対称性の四肢の圧痕性浮腫を認めた場合,鑑別疾患としてRS3PE症候群を考慮する必要がある.
  • 安田 圭子, 佐々木 公一, 倭 正也, 川上 遊貴, 大畑 達哉, 三代 千恵, 岩本 匡史, 渕脇 栄治, 楽木 宏実, 猪阪 善隆, ...
    2011 年44 巻12 号 p. 1185-1191
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/01/25
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性.高血圧症,慢性腎臓病に対して近医で加療されていた.全身倦怠感を主訴に他院へ入院したが,尿量が乏しく,6日後に当院へ転院となった.当院転院時,血清クレアチニン(Cr)3.61mg/dL,尿素窒素(BUN)94.2mg/dLであった.両下肢blue toeを認めており,コレステロール結晶塞栓症(CCE)による急性腎不全,心不全と考え腎代替療法を開始.下肢皮膚生検の結果,CCEと診断した.プロスタグランジン製剤,HMG-CoA還元酵素阻害薬の投与に加え,計10回のLDLアフェレシスを施行したところ下肢の色調は改善したが,腎機能の回復はなく,第48病日からステロイド(PSL 20mg/日)の投与を開始した.その後,経時的に腎機能回復し第97病日に血液透析(HD)を施行したのを最後にHDから離脱した.本症例を含め,当院でのCCE症例14例についての診断時の検査所見と予後との関連性について検討を加え,報告する.
  • 安藤 忠助, 織部 智哉, 森 健一, 渋谷 忠正, 野村 威雄, 佐藤 文憲, 三股 浩光
    2011 年44 巻12 号 p. 1193-1197
    発行日: 2011/12/28
    公開日: 2012/01/25
    ジャーナル フリー
    正常人の9割以上に感染し無症候性に経過するBKウイルス(BKV)は腎移植後の免疫抑制療法下の5~20%の患者に再活性化をきたしBKV腎症(BKN)を起こす.その50~80%の症例で移植腎機能廃絶をきたすため注意を要する疾患である.今回,免疫抑制剤管理にて移植腎機能廃絶を回避したBKNの1例を経験したので報告する.症例はPCKによるCRFで血液透析歴10年の63歳,男性.妻をドナーとするABO適合右腸骨下生体腎移植施行.免疫抑制剤はタクロリムス(Tac),ミコフェノール酸モフェチル(MMF),メチルプレドニゾロン(MP),バシリキシマブ(Basi)の4剤併用通常プロトコールで導入した.術後経過は良好で術後14日目にsCr 0.98mg/dLで退院.Tac trough:7~10ng/mL,MMF 1,500mg/日,MP 4mg/日で維持し月に1回尿細胞診を施行していた.術後5か月目で倦怠感,尿量減少を自覚しエコーにて拡張期移植腎血流途絶,sCr 1.46mg/dLであり緊急入院となった.精査の結果ドナー特異抗体(DSA)陰性,CMV陰性,尿細胞診にてデコイ細胞検出,血中BKウイルスDNA陽性,移植腎生検にて急性拒絶,BKNとの診断であった.経済的な理由によりシドフォビル治療は行えず,病理結果を踏まえてMPパルス療法,グロブリン投与,投与の後にTac trough:3~5ng/mLに下げ,MMFを減量,ミゾリビン(MZ)に変更し最終的にはMZも中止した.グスペリムス塩酸塩(DSG)投与後sCrは一時6.2mg/dLまで上昇したがMZ中止後徐々に低下し,術後12か月目の現在,尿細胞診にてデコイ細胞は陰性化しsCr 1.7mg/dLで現在安定している.BKNに対する確立された治療法がないため,早期発見と早期免疫抑制剤の減量が基本といわれている.自験例のようにBKNによる高度腎機能障害を生じても免疫抑制剤管理で移植腎機能廃絶が回避できる症例があることが示唆された.また疾患特異性は低いものの,エコー所見はBKNの臨床経過とも相関があり疾患の状態把握に有用と思われた.
委員会報告
Letter to the Editor
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