本研究の目的はデイサービス (DS) を利用したassisted PDを施行した患者の1年間のPD実施状況と満足度を調査しその有用性を検討することである. 対象は高齢者腹膜透析患者11名のうち, 1年間DSを継続利用した患者8名 (年齢 : 78.5±6.4歳, 性別 : 男性4名, 女性4名, BMI: 22.3±3.2) とした. 透析量, 採血データ, 有害事象の発生, 家族の満足度調査, 医療経済的側面の検討も行った. 観察期間中, 患者の全身状態や透析治療状態は安定しており, 腹膜炎, 有害事象の発生も確認されなかった. Assisted PD患者のみを対象としたDSでは事業所単体での採算性の確保は困難であったが同一法人の一般の利用者向けのDSと合併した後, 採算性が確保された. 医療経済面に課題が残るが, 家族の介護負担感における満足度は高かった. 今後さらにDSを利用したassisted PDの有用性について検討する必要がある.
【目的】エボカルセトの導入期の有効性と安全性を検討した. 【対象と方法】二次性副甲状腺機能亢進症を合併した当院通院中の維持血液透析患者でシナカルセト塩酸塩 (シナカルセト) 12.5~50mg/日投与中の57例にシナカルセト中止後, エボカルセト1mg/日から投与開始した. intact PTH (iPTH) は60~240pg/mLを管理目標値とし, 12週観察した. 【結果】12週後のエボカルセト投与量は1mg, 2~4mg/日がそれぞれ42.1%, 49.1%で, ビタミンD製剤追加は5.3%であった. iPTH値≤240pg/mLの症例は0, 12週後がそれぞれ71.9%, 64.9%で, シナカルセト37.5mg/日以上投与例で減少した. 補正Ca値7.5mg/dL以下を呈したのは1例で, 上部消化管症状は認めなかった. 【結語】シナカルセト50mg/日の症例ではiPTHの上昇を認める症例もあるが, エボカルセトは安全で有効と思われた.
透析アミロイドーシス (DRA) の原因蛋白は不可逆性にunfoldしたアミロイド化β2ミクログロブリン (A-β2M) であるが, そのアミロイド化の過程で部分的にunfoldした中間体の存在が確認されている. 今回, 血液透析患者の血清中β2MをLC/MS分析で解析した. 保存期腎不全患者, 導入期血液透析患者, 長期血液透析患者の血清β2Mでは+7価から+10価までの4個の荷電スペクトラムが確認された. 一方, 正常β2Mでは+7価, +8価に, A-β2Mでは+9価, +10価にピークを認めたため, (9価+10価) / (7価+8価) をMS Index (MS-I) として検討した. MS-Iは保存期1.70±0.13, 導入期1.90±0.13, 長期1.79±0.25と各患者群で差を認めなかった. アミロイド組織ではMS-Iは4.15, 7.33と高値であった. LC/MS分析でも血液透析患者の血清中にアミロイド原性を有するA-β2Mは認められず, 血管外に移行した中間体β2Mの一部でunfoldingが進行し, これが蓄積してDRAが発症するというshuttle仮説に合致する結果であった.
糖尿病性腎臓病 (DKD) 由来腎不全患者2例を対象に, 血液濾過透析 (HDF) 施行中におけるアミノ酸 (AA) の動態を, 腎不全用AA製剤投与 (IVAA) 施行の有無別に検討した. HDF施行によるAAの体外への喪失はIVAAの非施行時に13~15g, 施行時に16~17gであった. 体内プールからのAA流出量は, IVAAの非施行時12~13g, 施行時1~2gであった. 必須AAの体内プールから血中への移動については, IVAA非施行時は約4gの流出, 施行時は約4.5gの流入であった. なお非必須AAについては, IVAA施行時においても流出総量が約6gに達した. AAの体内プールからの大量流出は蛋白異化を促しサルコペニアにつながるため, 特に広範な代謝異常を伴う糖尿病合併患者では, 透析操作に伴うAA喪失の抑制は重要な課題と考えられる.
透析患者は末梢動脈疾患 (PAD) の発症率が高く, 早期診断や適切な治療介入がなされない場合は重症下肢虚血 (CLI) に至る. そのため透析患者においてPADを早期に診断することは臨床上極めて重要である. しかしながら, 透析患者においては動脈壁の石灰化によりCT angiographyでの動脈病変の正確な評価が困難で正確なPADの診断が難しい場合が多い. 今回下肢血管超音波検査 (LUS) でのドプラ波形の評価を行ったことによりCLIに至る前の段階でPADと診断することが可能であった2症例を経験したのでここに報告する. LUSにおいても, 透析患者においては動脈壁の石灰化により観察箇所が限定されてしまう欠点を有するが, 非侵襲的な検査法であり, PADの早期診断のため積極的に行うべき検査法であると考えられる.