Access作製困難のためSOFT-CELL
®を1年11か月間使用し途中カテーテル出口部感染症を併発したが, 良好な透析とQOLを維持する症例を経験した. 症例は41歳女性でアレルギー性血管炎のためblood access作製困難がみられ, 4年間で11回の内シャントを作製した. Great saphenous veinとfemoral arteryを端側吻合した左鼠径部・伏在静脈表在化シャントが閉塞したので, 自己血管によるaccessを断念し, 右胸壁の皮下トンネルから右鎖骨下静脈を経由して上大静脈内にcatheter (PDLK-5512 PC小児用挿入長12cm) を留置した. 留置後10か月でcatheter皮膚挿入部に膿瘍が形成されたが保存的に治癒した. 透析量の各指標はaccess troubleを繰り返す1997年1-7月は平均Kt/V 1.094, TAC
BUN 53.2, nPCR 1.276で, catheter留置後の1998年は年平均Kt/V 1.50, TAC
BUN 50.5, nPCR 1.31と改善した. 体重増加, 心胸比, ドライウエイト, 平均Hctに大差はないが, 透析を機能的に評価すると留置後は栄養摂取が良好で年間を通して透析量が十分に確保され, 結果的に尿毒症性物質の血中濃度は低く維持された. 留置されたcatheter先端が (1) 上大静脈内にfloatingするため抗血栓性が発揮でき, (2) 返血 (動脈) 側口が右房口前にあり, その2.5cm手前に採血 (動脈) 側口が位置するため良好な機能が発揮できたと推測できた. 加えて (3) 皮下トンネルのDacron cuff周囲に皮下組織バリアーが形成されるため抗菌性を発揮できたと推測された. 不安定な自己血管のblood accessではunderdialysisと入院によるQOL不良をきたしたが, SOFT-CELL
®による透析となってからは良好な透析量の確保と高いQOLの維持が可能となり長期使用でも有益であった. SOFT-CELL
®はaccess作製困難の症例に対して恒久的accessとして使用できる可能性があると考えられる.
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