日本透析医学会雑誌
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33 巻, 8 号
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  • 硬化性被嚢性腹膜炎の発症機序と予防手段に関する予備的検討
    中山 昌明, 山本 裕康, 寺脇 博之, 大井 景子, 上條 武雄, 横山 啓太郎, 川口 良人, 細谷 龍男
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1137-1142
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    CAPD中止後の腹膜変化に関しては十分な臨床データはない. 長期CAPD施行例を対象に, CAPD中止後からの腹膜透過性の変化を検討した. 対象は5例で (男性1例/女性4例, 平均年齢: 52.4歳, 平均CAPD継続期間: 99.4月, 離脱理由: 全例除水不良), 血液透析に移行後もテンコフカテーテルを留置して腹腔洗浄を行い, 1か月おきに腹膜平衡試験 (PET) を施行した (平均観察期間は平均8.8か月). 観察期間中のPETでのクレアチニン (排液/血液) 比の変動は, 2例で経時的に低下, 1例で持続的に上昇, 2例で上昇後に低下を示した. 以上より, 長期CAPD中止後の腹膜透過性の変化パターンには, 少なくとも, 透過性が低下する群と, 透過性が亢進する群の2群が存在する可能性が示唆された. この変化の持つ臨床的意味は今後の検討課題と考えられる.
  • 大友 貴史, 雨宮 守正, 井岡 崇, 佐々木 信博, 吉田 泉, 大野 修一, 江幡 理, 安藤 康宏, 本間 寿美子, 武藤 重明, 草 ...
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1143-1148
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    目的: 糖尿病性腎症と慢性糸球体腎炎は透析導入の原疾患として, 多くを占める基礎疾患であり, その特徴を理解し導入することは極めて重要である. そこで, 自治医科大学における透析導入時特徴の比較検討を行った. 対象: 自治医科大学透析センターにおいて, 1989年から1998年までの10年間に血液透析に導入した719人の中で糖尿病性腎症群 (DM群) 234人と, 慢性糸球体腎炎群 (CGN群) 272人につき, 導入時の臨床症状, 血液検査などの比較検討を行った. さらに1989, 90年に導入した群と1997, 98年に導入した群の比較を行うことにより, 近年における導入患者の特徴を検討した. 結果: 対象症例の平均年齢はDM群57.6歳, CGN群52.5歳とDM群で有意に高齢であった. また1989年ではDM群28.6%, CGN群45.5%であった導入症例の割合は, 1994年以降DM群が上回る導入となった. 臨床所見ではDM群はCGN群に比べ導入時の尿素窒素, クレアチニンが有意に低く, 臨床症状において体液過剰を示す例が多かった. 反面CGN群では消化器症状を示す例が多かった. さらに89, 90年に導入した群と97, 98年に導入した群を比較すると, 導入時年齢ではDM群で3.3歳高齢化し, CGN群では8歳の高齢化がみられた. 臨床症状はDM群では上記と同様の傾向であったが, CGN群では近年消化器症状を示す例は減少し, むしろ体液過剰を示す例が増加した. 考察: これまでの報告同様, DM群ではCrが低値のうちから体液過剰などの臨床症状を示し導入となる症例が多かった. また導入患者の高齢化が進み, CGN群で著明であった. 今後は疾患別特徴に加え, 高齢者導入の特徴も合わせて検討する必要があると思われた.
  • 早川 邦弘, 名嘉 栄勝, 青柳 貞一郎, 宮地 系典, 石川 博通, 畠 亮, 塩田 潤, 田中 重光, 田中 新樹
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1149-1152
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    我々はすでに内シャント吻合部に発生した動・静脈瘤に対し, 内シャントを温存する動・静脈瘤形成術を報告した. 今回, 本術式を施行した症例の長期予後について検討した.
    対象は1995年7月から1999年8月までの間に本術式を施行した10例である. 術式は内シャント動・静脈瘤の正常血管構築を保っている部分を残し, 仮性の瘤を形成している部分の壁を適切なサイズに形成した後に折りたたむように連続, 結節縫合で補強, 同部分のシャント血流を温存した. 全例で予定通りの手術を施行することができた. 1例は術後7か月で血管形成部に血栓による内シャント血流不全を生じ, 内シャントの再建を行った. しかし, 残りの9例は術後25か月の観察期間中, 良好なシャント血流を維持することができた. 観察期間中に瘤の再発, または新たな部位の瘤形成をみた症例はなかった.
    今回の結果から, 本術式は長期においても内シャント温存の点から意義のある術式であると考えた.
  • 松井 豊, 松井 育子, 日下部 典生, 高橋 栄男, 友國 隆, 谷岡 恒雄, 井上 喬之
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1153-1158
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    Access作製困難のためSOFT-CELL®を1年11か月間使用し途中カテーテル出口部感染症を併発したが, 良好な透析とQOLを維持する症例を経験した. 症例は41歳女性でアレルギー性血管炎のためblood access作製困難がみられ, 4年間で11回の内シャントを作製した. Great saphenous veinとfemoral arteryを端側吻合した左鼠径部・伏在静脈表在化シャントが閉塞したので, 自己血管によるaccessを断念し, 右胸壁の皮下トンネルから右鎖骨下静脈を経由して上大静脈内にcatheter (PDLK-5512 PC小児用挿入長12cm) を留置した. 留置後10か月でcatheter皮膚挿入部に膿瘍が形成されたが保存的に治癒した. 透析量の各指標はaccess troubleを繰り返す1997年1-7月は平均Kt/V 1.094, TACBUN 53.2, nPCR 1.276で, catheter留置後の1998年は年平均Kt/V 1.50, TACBUN 50.5, nPCR 1.31と改善した. 体重増加, 心胸比, ドライウエイト, 平均Hctに大差はないが, 透析を機能的に評価すると留置後は栄養摂取が良好で年間を通して透析量が十分に確保され, 結果的に尿毒症性物質の血中濃度は低く維持された. 留置されたcatheter先端が (1) 上大静脈内にfloatingするため抗血栓性が発揮でき, (2) 返血 (動脈) 側口が右房口前にあり, その2.5cm手前に採血 (動脈) 側口が位置するため良好な機能が発揮できたと推測できた. 加えて (3) 皮下トンネルのDacron cuff周囲に皮下組織バリアーが形成されるため抗菌性を発揮できたと推測された. 不安定な自己血管のblood accessではunderdialysisと入院によるQOL不良をきたしたが, SOFT-CELL®による透析となってからは良好な透析量の確保と高いQOLの維持が可能となり長期使用でも有益であった. SOFT-CELL®はaccess作製困難の症例に対して恒久的accessとして使用できる可能性があると考えられる.
  • 畦倉 久紀, 大林 孝彰, 成田 眞康, 鶴田 良成, 成田 幸夫
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1159-1163
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    1型ヘルパーT細胞 (Th1) はinterferon-γなどのサイトカインを産生し, 主に細胞性免疫に関与し, 2型ヘルパーT細胞 (Th2) は, interleukin-4などを分泌し, 主に液性免疫に関与するとされている. 最近, アレルギー疾患などでTh1/Th2バランスの検討がなされており, 敗血症でも報告されている. 今回, 我々は敗血症性ショック患者5例においてPMXを施行し, その前後でのTh1, Th2の変化と治療反応性との関連性について検討した. 症例1は57歳男性で糖尿病性腎症であり重症肺炎による敗血症, 症例2は68歳男性で慢性腎炎由来の透析患者で肺炎による敗血症であり, いずれも起炎菌は緑膿菌であった. また, 症例3は51歳男性で糖尿病性腎症由来の透析患者であり術後に敗血症 (感染巣不明) となり, 症例4は76歳男性で腎硬化症由来の透析患者で下肢壊疽感染により敗血症となったが, いずれも起炎菌はメチシリン抵抗性黄色ブドウ状球菌 (MRSA) であった. 症例5は糖尿病で腸腰筋膿瘍により敗血症となったが, 起炎菌は不明だった. この5例にPMXを施行し, 症例1, 2は治療に対する反応が遅延し, 症例3, 4, 5は迅速に反応しショック状態を脱した. PMX前後でのTh1, Th2の変化と治療反応性との関連性の検討では, PMX治療前のTh1/Th2バランスにおけるTh2の優位性は認められず, 遅延反応群は迅速反応群よりTh1前値はやや高く, Th2前値は著高を示しPMX後に減少する傾向を認めた. 以上より全体ではPMX前後でTh1, Th2は一定の変化傾向を認めなかったが, Th1, Th2の治療前値は敗血症性ショック患者におけるPMXの治療反応性を決定する要因になり得ると考えられた.
  • 坂本 英雄, 小橋川 啓, 門脇 昭一, 深貝 隆志, 井上 克己, 小川 良雄, 島田 誠, 吉田 英機
    2000 年 33 巻 8 号 p. 1165-1168
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析患者に発生した膀胱nephrogenic adenomaの1例を経験したので報告する. 症例は80歳女性, 4年前に糖尿病性腎症の診断で血液透析開始. 以後, 頻回に膀胱炎症状を起こし治療を受けていた. 1995年9月尿意切迫, 肉眼的血尿出現, 膀胱炎の診断で治療を行うも, 血尿持続. 膀胱鏡検査で左側壁に白色調の非乳頭状・有茎性の腫瘤を認めた. 骨盤部CTでは径1cmの膀胱腫瘍で経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行した. 病理組織学的に間質に好中球およびリンパ球の浸潤を伴い, 粘膜固有層に一層の立方上皮からなる嚢胞状・腺管様構造を認め, nephrogenic adenomaと診断した. 既往に頻回の膀胱炎による治療歴を認め, 発生原因として化生性変化が考えられた.
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