日本透析医学会雑誌
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46 巻 , 5 号
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原著
  • 村本 弘昭, 武藤 寿生, 竹内 正義
    2013 年 46 巻 5 号 p. 467-473
    発行日: 2013/05/28
    公開日: 2013/06/08
    ジャーナル フリー
    終末糖化産物(AGEs)は糖尿病や尿毒症において生成が促進され,血管合併症の発現に深く関与していると考えられている.われわれは既報で炭酸カルシウムからセベラマー塩酸塩に変更することにより血清AGEs濃度が低下し,透析患者の血管合併症が軽減する可能性について報告した.しかし,副作用である便秘は無視できない問題と考えられ,今回セベラマー塩酸塩の少量投与による血清AGEs濃度への影響を検討した.3か月以上安定して週3回透析を施行している患者21例を対象に,炭酸カルシウム投与量は変更せずセベラマー塩酸塩1.5 g/日を上乗せ投与し,血清AGEs,脂質,リン,カルシウムおよびインタクトPTH値を経時的に検討した.AGEsは食品中に多く含まれるglucose由来のGlc-AGEsおよび生体内で生成され強い毒性を呈するglyceraldehyde由来のGlycer-AGEsをELISA法で測定した.Glc-AGEsは16.03±10.53 U/mLから24週後5.57±4.40 U/mLと有意に低下した.Glycer-AGEsは開始時の平均値で2群に分けて検討したが,高値群で8.49±1.12 U/mLから24週後6.74±0.84 U/mLと有意に低下し,低値群では変化を認めなかった.Non-HDLコレステロール値は有意に低下し,HDLコレステロール値は有意に上昇した.血清リン値は約0.8 mg/dL低下し,血清カルシウム値には変化を認めなかった.Glc-AGEsは経口的に体内に取り込まれ強毒性のGlycer-AGEsの産生を増強することが報告されており,血清AGEs値の低下はセベラマー塩酸塩による食事中のAGEsの吸着除去効果も考えられるが,そのほかオキシダントなどさまざまな物質の除去による酸化ストレス軽減も影響している可能性が考えられている.今回の検討で,腹部症状を起こしにくい量のセベラマー塩酸塩投与でも有意な血清AGEs値の低下や血清脂質の改善を認め,透析患者の血管合併症を軽減させる可能性を示した.生体へのカルシウムの過剰な負荷を避けるためにも,まず基礎薬として服薬可能な量のセベラマー塩酸塩を投与することは透析患者にとって十分有用性があると考えられた.
  • 越田 善久, 大坪 茂, 雨宮 伸幸, 大貫 隆子, 新田 孝作
    2013 年 46 巻 5 号 p. 475-480
    発行日: 2013/05/28
    公開日: 2013/06/08
    ジャーナル フリー
    アディポネクチンは脂肪細胞より分泌され,肝臓と筋のインスリン感受性を改善することや血管内皮細胞の機能を改善すること,抗炎症作用をもつことなどが報告されている.血液透析患者において,高アディポネクチン値は死亡のリスクを軽減するとする報告と,逆に死亡のリスクを上昇させるという報告があり,一定の見解が得られていない.そこで血液透析患者における血清アディポネクチン濃度と生命予後との関連について検討した.当院の外来維持透析患者122例を後ろ向きに検討した.患者背景,週初めの透析前の血算,生化学データを調べた.アディポネクチンは血中では多量体構造の状態で存在しているが,中でも高分子量(high-molecular weight:HMW)アディポネクチンは最も生理活性が強く,今回の測定対象とした.血清アディポネクチン値の中央値(7.73 μg/mL)によってLow(L)群とHigh(H)群との2群に分け,両群の生命予後をログランク検定にて比較した.各因子の生命予後との相関解析はコックス比例ハザードモデルにて行った.最大観察期間は2.8年で観察期間中の生存率はH群76.8%,L群93.3%でH群において生存率が低値であった(p<0.001).死亡に対するコックス比例ハザード分析は単変量解析では高年齢(p<0.001),BMI低値(p<0.001),低血清アルブミン値(p<0.001),低ヘモグロビン値(p=0.006),高血清C反応性蛋白値(p<0.001),アディポネクチン高値群(p=0.028)が危険因子としてあげられた.多変量解析では生命予後に対する危険因子としては高齢(p<0.001),高血清C反応性蛋白値(p=0.001),低ヘモグロビン値(p=0.006)の順であげられ,アディポネクチン高値群の有意差はほかの因子で補正すると消失した(p=0.450).今回の検討ではアディポネクチンの高値群は,低値群より予後が不良であった.アディポネクチン高値群は死亡の危険因子として単解析であげられたが,年齢や血清C反応性蛋白値,BMI,血清アルブミン値などのほかの因子で補正するとその有意差は消失した.アディポネクチン高値が直接予後を悪化させているのではない可能性が考えられた.
症例報告
  • 大内 雄太, 藤倉 恵美, 金井 秀明, 小野寺 謙吾, 中嶋 俊之, 伊藤 千裕
    2013 年 46 巻 5 号 p. 481-486
    発行日: 2013/05/28
    公開日: 2013/06/08
    ジャーナル フリー
    症例1は83歳,女性.腎硬化症・クリオグロブリン血症に伴う慢性腎不全のため,血液透析導入となる.腰痛を主訴に入院した2病日目より極度の精神運動興奮を伴うせん妄状態となるも,セロトニン・ドパミン受容体拮抗薬のペロスピロン(ルーラン®)内服により速やかに改善した.症例2は77歳,男性.急速進行性糸球体腎炎を原疾患とする慢性腎不全のため,血液透析導入となる.維持透析継続目的の入院4か月後よりせん妄状態が遷延していたが,入院10か月目よりペロスピロン服用開始したところ,徐々にせん妄が軽快した.両症例とも糖尿病を合併しており,ペロスピロンをせん妄の治療および再発防止目的で継続投与したが,薬物の蓄積による過鎮静・錐体外路症状・嚥下障害といった副作用もなく,安全に維持透析を継続することができた.ペロスピロンは血糖を変動させないため糖尿病患者にも安全に使用できる.ほかにも半減期が短い,他剤に比べて腎排泄性が比較的低い,主代謝物にほとんど活性がない,弱いながらも鎮静作用をもつといった薬理学的特性がある.以上の特性により,ペロスピロンは糖尿病を伴う維持透析中の高齢者のせん妄の治療に最適な非定型抗精神病薬であると考えられた.ただし,適応外投与であるので本人および家族によく説明し,定期的に状態を観察することが必要である.
  • 鎌田 正, 落合 美由希, 門屋 佑子, 富田 真弓, 家原 典之
    2013 年 46 巻 5 号 p. 487-491
    発行日: 2013/05/28
    公開日: 2013/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は90歳代,女性.近医で4年前より維持血液透析中であったが,内シャント側の右上肢全体の腫脹が出現したため当科に紹介となった.右肘部周囲から上腕および前腕にかけて腫脹を認め,胸骨右縁の鎖骨直下で血管雑音を聴取した.中心静脈の狭窄による静脈高血圧を疑い,外来診察室でポータブルエコーによる超音波検査を施行した.リニアプローブを用い,右鎖骨上窩にプローブをあてて中心静脈を走査したところ,腕頭静脈との境界部付近の鎖骨下静脈に狭窄を認めた.同日中に造影CTを施行し同様の所見を得て,5日後に経皮的血管形成術を施行した.治療翌日には上肢腫脹はほぼ消失し,血管雑音も聴取されなくなり,超音波上も狭窄の改善を認めた.適切な超音波プローブを使用し描出法を普段から訓練すれば,超音波による中心静脈中枢側狭窄の診断も可能である.
  • 中島 惠仁, 小池 清美, 深水 圭, 楠本 拓生, 玻座真 琢磨, 松元 貴史, 上田 誠二, 奥田 誠也
    2013 年 46 巻 5 号 p. 493-499
    発行日: 2013/05/28
    公開日: 2013/06/08
    ジャーナル フリー
    ロサルタン,フロセミドによる中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)を発症し救命しえた1例を経験した.症例は76歳,男性.慢性腎不全と高血圧の教育入院中にTENを発症した.原因薬剤中止後も改善せず,ステロイド内服とステロイド外用薬に加え,ステロイドパルス療法,血漿交換を施行し,口腔内膿瘍合併に対しヒト免疫グロブリン大量静注療法(Intravenous immunoglobulin:IVIg)を併用した.リンパ球幼弱化試験(DLST)陽性と臨床経過よりロサルタン,フロセミドを原因薬剤と判断した.TENの原因薬剤としてロサルタンは本邦初,さらにフロセミドもまれであるため報告する.腎不全患者で薬疹が疑われた場合は速やかに被疑薬を中止し,薬疹が改善しない場合は重症薬疹を考え迅速に対症することが重要と考えられた.
委員会報告
Letter to the Editor
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