日本透析医学会雑誌
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35 巻 , 13 号
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  • 東 尚子, 安藤 稔, 土谷 健, 秋葉 隆, 二瓶 宏
    2002 年 35 巻 13 号 p. 1549-1555
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    アレルギー性疾患, 炎症性疾患の病態が, helper T細胞のサブタイプの分化によりコントロールされる細胞性, 液性免疫系のバランスの破綻に関係していることが知られてきた. 本研究は, 免疫系の異常を持つことが指摘されている慢性腎不全患者においてもこのhelper T細胞のサブタイプ (Th1, Th2) 分化に異常が存在するか否かについて検討することを目的とした.
    対象は28名の非糖尿病性の維持血液透析患者と年齢を一致させた健康成人 (コントロール) 12名である. 11名の血液透析患者は, C型肝炎ウイルスに対する抗体 (HCV) が陽性であった. Helper T細胞のサブタイプ (Th1, Th2) の同定には, 細胞の分泌するサイトカインを直接蛍光色素標識されたモノクローナル抗体で染色し, それをフローサイトメーターにより解析する, いわゆる細胞内サイトカイン分析法を用いた. Th1細胞は, CD 4陽性・IFN-γ陽性・IL-4陰性とし, Th2細胞は, CD 4陽性・IFN-γ陰性・IL-4陽性とした.
    全血液透析患者では, 患者とコントロール間にTh1, Th2の有意差を認めなかったが, Th1/Th2比は患者群において有意に上昇 (Th1優位の偏位) を認めた. また, コントロール, HCV陰性患者群 (17名), HCV陽性群 (11名) の3群間で検討すると, Th1は健常コントロールとHCV陽性患者群間でのみ有意な上昇を認めた (p=0.01). Th2には各群間に有意差はなく, Th1/Th2比は, コントロールとHCV陽性患者群間においてのみTh1上昇に伴うと考えられる有意な上昇を認めた (p=0.01). したがって, 全血液透析患者での結果にはHCV感染有無が大きく影響していたと考えられた. また, 血液透析操作による影響を検討するため, 7名のHCV抗体陰性患者で, 血液透析前後での変化を観察したが, 有意な変化は認められなかった.
    結論: 一般に血液透析患者では, helper T細胞分化による細胞性, 液性免疫系の振り分け機構は正常に維持されているが, HCV感染に起因すると考えられるTh1/Th2バランスの異常 (Th1優位) が認められる症例もある. 血液透析操作自体はTh1/Th2バランスに影響を与えないものと思われる. 血液透析患者における免疫異常の病態解明には, helper T細胞振り分け前後での個々の免疫担当細胞レベルでの機能を検討する必要があると考えられた.
  • 大橋 宏重, 小田 寛, 大野 道也, 渡辺 佐知郎, 琴尾 泰典, 松野 由紀彦
    2002 年 35 巻 13 号 p. 1557-1561
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    腹膜透析 (PD) は血液透析 (HD) に比較して体液量の急激な変化が少なく, 心機能が低下した透析患者の血液浄化法としてすぐれた方法である. しかしながら, PD患者で心肥大は頻度の高い合併症であり, 心血管系合併症による脱落例はHD患者と同様に多く認められる. 今回, PD患者を対象に非観血的な方法である123I metaiodobenzylguanidine (MIBG) ならびに123I β-methyl-p-iodophenyl-pentadecanoic acid (BMIPP) 心筋シンチグラフィーを施行し, その心肥大の特徴について検討した.
    持続携行式腹膜透析法 (CAPD) を中心としたPD患者45名 (平均年齢52.6歳) を対象とした. 基礎疾患は全例, 慢性糸球体腎炎である. また, 心臓超音波検査を行うとともに心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP), 脳性ナトリウム利尿ペプチド (BNP), 遊離カルニチンを測定した.
    左室心筋重量の増大しているPD症例は84.4%で収縮機能は比較的良好に保たれていた. 左室心筋重量はMIBGならびにBMIPP心筋シンチグラムの心臓/上縦隔集積比 (H/M) と負の相関を, 年齢, ANP, BNPと正の相関を示した. 心筋シンチグラムでの欠損はMIBGで37.8%に, BMIPPで62.2%に認められた. 広範な欠損 (diffuse defect) を呈するPD症例の左室収縮機能は低下し, とくにBMIPP心筋シンチグラムでdiffuse defectを示した症例で遊離カルニチンが低下していた.
    以上の結果より, 心肥大を有するPD患者では心臓交感神経機能と心筋脂肪酸代謝が障害され, 予後に大きな影響を与えている可能性が示唆された.
  • 塚本 雅俊, 保元 裕一郎, 穂満 博文, 吉留 悦男, 池田 徹, 有馬 暉勝
    2002 年 35 巻 13 号 p. 1563-1567
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    糖尿病血液透析患者にαグルコシダーゼ阻害剤acarboseを投与し, 血清脂質への影響を検討した. acarboseの適応と考えられ同意を得られた患者合計14人を対象とした. 男性5人, 女性9人, 平均年齢61±2.2歳, 平均透析期間8.8年, body-mass index平均19.0±0.8であった. acarbose (投与量150mg/day 10人, 300mg/day 4人) を6か月間投与し, 投与期間前後での血糖, HbAlc, immuno-reactive insulin (IRI), 総コレステロール, HDLコレステロール, 中性脂肪, 遊離脂肪酸, アポリポ蛋白分画, Lp (a) を測定した. LDLコレステロールはFriedwaldの式にて算出した. 空腹時の血糖, IRIは有意な変化は認めなかった. 食後2時間においては, 血糖, IRIともに有意に低下していた (p<0.05, p<0.05). ヘモグロビンAlcは有意な変化は認めなかった. 総コレステロール, HDLコレステロール, LDLコレステロールともに有意な上昇を認めた (p<0.01, p<0.05, p<0.05). 中性脂肪は低下傾向を認めたが有意ではなかった. Lp (a) は有意な低下を認めた (p<0.05). apoA1, apoC2, apoC3は, 有意に上昇していた (p<0.05, p<0.05, p<0.01) が, apoA2, apoB, apoEには変化を認めなかった. acarboseには糖尿病血液透析患者の低HDLコレステロール, 高LP (a) 血症を是正する作用があると考えられた.
  • 村田 美知子, 岡田 一義, 中野 昌代, 貝沼 成子, 大塚 恵子, 松本 あゆみ, 野村 峰子, 奈倉 勇爾, 松本 紘一, 高橋 進
    2002 年 35 巻 13 号 p. 1569-1575
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    当院では残存腎機能が比較的維持されている腹膜透析 (PD) 患者において, 1週間に1日以上の休息日を設けたPD処方を行っている. 今回, PD休息日が患者のQOLにどのように影響しているのか, また, 今後の看護支援のあり方について検討した.
    対象および方法: 外来通院している腹膜透析患者のうち, 1週間に1日の休息日を実施している7名を対象とし, 受け持ち看護師の患者資料をもとに個々の患者と面接を行い, 休息日についてのアンケート調査を実施した. また, 過去に休息日を有するPDを行っていた5名にもアンケート調査を実施した.
    結果: 休息日により6名は行動範囲が拡大され交遊時間も延長し, この中で5名が大きな精神的なゆとりを得ることができた. また, 休息日に貯留液がないために違和感を感じている患者, 休息日は治療日よりも食事や水分制限に注意が必要になってくることに不安を感じている患者, 休息日に透析不足や溢水などが起こるのではないかという不安を感じている患者がそれぞれ4名いたが, 全例休息日のある透析処方に満足していると回答した. 過去に休息日を有するPDを行っていた症例の検討では, 毎日PDを行うことにより, 全例, 行動範囲が縮小し, 交遊時間が短縮し, ストレスが増加したと回答した.
    結論: PD休息日により, 目的に合わせたQOLの向上が得られていることが, 明らかになった. 今後, この治療を患者の不安なく行うためには, 援助者自身のカウンセリング技術や指導内容をさらに充実させる必要がある.
  • 市川 靖子, 稲葉 道子, 武林 祥裕, 中島 理晋, 朝倉 久美子, 中島 桂子, 須賀 孝夫, 遠藤 正之, 黒川 清, 堺 秀人
    2002 年 35 巻 13 号 p. 1577-1581
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は77歳, 男性. 糖尿病性腎症による腎不全のため1999年7月17日に左前腕内シャントを造設し血液透析導入となった. 2001年6月23日よりシャント部局所の炎症所見および発熱, 血液検査上炎症反応所見を認め同日当院に入院となった. 入院当日, 血液培養採取した後, cefazolin (CEZ) 1g/日の投与を開始した. また, シャント部安静のため大腿静脈にダブルルーメンのカテーテルを留置して血液透析を施行した. 第4病日に頸部から肩の痛みが出現した. 第5病日にシャント部局所の炎症所見は速やかに消失し解熱傾向となったが, C-reactive protein (CRP) は23.2mg/dLまで上昇. また, 入院時の血液培養よりMethicillin Resistant Staphylococcus aureus (MRSA) が検出されたため, 同日より抗生剤をvancomycin (VCM) へ変更した. 第9病日に発熱は消失したがCRPは21.6mg/dLと高値維持しており, 血液培養による薬剤感受性検査の結果に従いarbekacin (ABK) 75mg/日およびgentamicin (GM) 40mg/日も追加し併せて3剤投与を開始した. 頸部の画像検査を試みたが痛みが激しく施行できなかった. 第21病日に頸部痛が軽減したため頸部CTを施行した. 頸部CT上はC3下縁からC7レベルのretropharyngeal spaceに膿瘍が確認され, 咽後部膿瘍と診断した. 第22病日より徐々にCRPは低下し, 頸部症状も改善傾向となった. 第52病日にはCT上膿瘍は消失, CRPは陰転化した. 第77病日に抗生剤投与を中止したが, その後も炎症の再燃徴候は出現しなかった. 近年, 高齢者および糖尿病の透析導入症例が増加している. 本症例は重症感染症のリスクが高い患者への感染症対策を再考させられた症例であり, かつ頻度の少ない咽後部膿瘍の症例であるため報告した.
  • 菅野 義彦, 松本 郷, 田中 尊臣, 茂木 健, 鈴木 洋通
    2002 年 35 巻 13 号 p. 1583-1585
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    Sodium arginate (アルロイドG®) は局所止血効果を示し, 血液透析患者でも消化性潰瘍などに対して広く処方されているがこれまで大きな副作用は報告されていない. 血清リン値のコントロールのため沈降炭酸カルシウムを服用している血液透析患者において, 消化器症状に対してsodium arginateを投与したところ食事の傾向は不変であるにもかかわらず血清リン値の上昇を認めた. また消化器症状の改善に伴い投与を中止したところ血清リン値は下降した. Sodium arginateのリン含量は0.025mg/40mLで血清リン値に影響を及ぼした可能性は低く, アルギン酸とカルシウムが金属塩を形成したために沈降炭酸カルシウムのリン吸着作用が減少したためと考えられた. しかし実験を行ったところ沈殿は認められずむしろsodium arginateのゲル形成に沈降炭酸カルシウムが巻き込まれて効果を発現できなかったものと考えられた.
  • 成川 暢彦, 阿部 貴弥, 北端 有紀子, 岡本 昌典, 芝地 栄登, 畑村 育次, 小畑 拡嗣, 根木 茂雄, 秋澤 忠男
    2002 年 35 巻 13 号 p. 1587-1590
    発行日: 2002/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 男性. 既往歴は45歳時, 糖尿病を指摘されインスリン療法開始. 51歳時, 糖尿病に起因する腎不全のため血液透析導入. また, 51歳頃より数回の心筋梗塞歴がある.
    平成11年5月中旬頃より陰茎先端に陰茎ヘルペスがみられ, 二次感染を併発し, 陰茎部に潰瘍と壊死を形成した. また, 無痛性心筋梗塞を発症したため当院に転院となった. 転院時, 亀頭先端は黒色に変色, 陰茎根部に潰瘍を形成し, 強い疼痛を訴えた. しかし, 感染は認めず, 亀頭部先端も炭化していたため, 内科的治療で経過観察を行っていたが, 入院8日目に心筋梗塞の再発にて死亡した. 剖検では陰茎部の血管に強い動脈硬化と血栓形成を認めた.
    一般に糖尿病透析患者は, 透析導入の時点で高度な動脈硬化を有している. 本症例においては, 糖尿病, 腎不全に加え血糖コントロールの不良, 長時間持続した高リン血症が, 動脈硬化病変をさらに増悪させ, 陰茎壊死に陥ったと考えられる.
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