日本透析医学会雑誌
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34 巻, 6 号
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  • 第45回日本透析医学会コンセンサスカンファレンスより
    今田 聰雄, 高光 義博, 長谷川 廣文, 稲本 元, 関田 憲一, 佐藤 千史, 林 純, 大薗 英一
    2001 年 34 巻 6 号 p. 1063-1069
    発行日: 2001/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 和久 昌幸
    2001 年 34 巻 6 号 p. 1071-1078
    発行日: 2001/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    本研究では, 慢性維持透析症例を対象に心機能と予後に関する検討を行った. 第1の研究は, 慢性維持透析症例422例の心エコー所見を検討した. 透析症例は心エコー上心室中隔壁厚13.2±2.2mm, 左室後壁厚13.2±2.0mmと左室肥大を示した. 死亡例と生存例との心エコー所見の比較では, 死亡例で左室駆出率 (EF) の有意な低下 (54.6±15.5% vs 59.5±10.6%), 左室拡張終期径 (53.4±12.2mm vs 50.5±7.7mm)・左室収縮終期径 (40.2±12.9mm vs 35.8±7.6mm) の拡大を認めた. このことから, 第2の研究では, EFを用い, 維持透析患者死亡症例76例を対象に検討を行った. 心機能低下の指標はEF≦40%とした. 対象症例を3群に分類した. I群 (10例) は透析導入初期からEF低下し持続した症例, II群 (11例) は透析経過中にEF低下し持続した症例, III (55例) は経過中EF低下を認めなかった症例であった. I群は平均年齢61歳, 平均透析期間36.1か月であり, 10例全例が心疾患で死亡し, 基礎疾患として6例が糖尿病であった. IIは平均年齢69.1歳, 平均透析期間75.4か月で, 10例が心疾患で死亡し, 突然死例が6例と多く, 糖尿病が4例であった. III群は平均年齢70.2歳, 平均透析期間は69.6か月であり, 心疾患死は9例であり, 糖尿病を40%に認めた. Kaplan-Meier法による生存率の検討ではI群がII, III群に比べ初期から有意に低下しており, I群の累積生存率50% 3か月に対してII群26か月, III群25か月であった. また, II群の心機能低下時点から死亡までの期間による検討では, 累積生存率50% 16か月と短かった. 今回の研究では透析導入早期心機能低下例と経過中に心収縮力障害を生じた症例が存在した. 早期心機能低下例は高率に心疾患で死亡しており, 糖尿病例が多かった. 経過中に心収縮力障害を生じた症例も, 高率に心疾患で死亡していたが, 突然死例が多いのが特徴であった.
  • 岡野 裕子, 土谷 健, 安藤 稔, 寺村 正尚, 二瓶 宏
    2001 年 34 巻 6 号 p. 1079-1087
    発行日: 2001/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    赤血球レベルでの鉄欠乏状態を的確に把握しうる指標として注目されつつある網赤血球ヘモグロビン含量 (content of reticulocyte hemoglobin: CHr) を透析患者で測定し, その診断的有用性, 臨床的応用性に検討を加えた. 当院および関連施設の透析患者265名を対象として採血し, CHr, ヘマトクリット (Ht), トランスフェリン飽和率 (TSAT), および従来の鉄指標を同時に測定した. まず, TSATが20%未満および血清フェリチン値100ng/ml未満の症例を鉄欠乏状態と定義し, 透析患者におけるCHrによる鉄欠乏診断のための基準値を統計的に算定した. また, 鉄欠乏性貧血と診断された症例の鉄補給時のCHrとHtの動態も同時に観察した. rHuEPO (recombinant human erythropoietin) 使用HD患者の平均CHrは32.4±2.1pg, rHuEPO不使用HD患者の平均CHrは31.7±2.4pg, rHuEPO使用CAPD患者では32.0±2.0pgであり, HD患者のCHrはTSAT, 血清トランスフェリン・レセプター (sTfR) 値と相関した. rHuEPO使用HD患者の鉄欠乏の基準値を32.2pgとすると, 診断感度は73.8%で特異度は75.5%であった. CHrにより鉄欠乏状態と判断された症例は鉄剤投与 (週1回, 40mg投与) によく反応し, 2か月以内にCHr (17人中14人) およびHt (17人中13人) に上昇が認められた. これにより, 患者群の総rHuEPO使用量は平均値で約24IU/kg/週減少した. また, 単位CHr (1pg) の上昇に必要な平均鉄補充量は約200mgであった. CHrはHtと同時に自動測定でき, リアルタイムに透析患者の貧血と赤血球レベルでの鉄欠乏の状態を把握できる鋭敏な指標である. そしてその簡便性ゆえに経時的変化のモニターへの応用や拡張性 (EPO投与量の調節, 鉄投与量の予測) で優れていると考えられる.
  • 早川 邦弘, 名嘉 栄勝, 青柳 貞一郎, 宮地 系典, 石川 博通, 畠 亮, 田中 重光, 田中 新樹, 田島 知行
    2001 年 34 巻 6 号 p. 1089-1093
    発行日: 2001/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    現在までに我々が経験した透析患者に発生した前立腺癌の症例をまとめ報告する.
    [対象と方法] 1999年2月より2000年7月までの間に当院および関連施設で前立腺癌と診断され, 加療をした維持血液透析患者を対象とした. [結果] 1年6か月の間に5症例の前立腺癌を診断し, 治療した. 対象患者の年齢は65歳から86歳. 平均透析歴は46.8か月 (13-71か月年) であった. 透析導入の原疾患は慢性糸球体腎炎3例, 多発性嚢胞腎1例, 糖尿病性腎症1例であった. 全例にCAB (complete androgen blocking) 治療を行い, 1例を除いて著効を得た. 早期診断と治療経過に関しては, 健常人と同様に血中PSAの測定が有用であった. [結論] 慢性血液透析患者の前立腺癌において, 早期診断と治療経過に関して血中PSAの測定が健常人同様有用な指針であった. また, 治療ではCAB治療が短期的に良好な結果であったが, 長期的な薬剤投与の影響については今後の検討が必要と考えた.
  • 望月 英樹, 横田 眞二, 金子 一也, 黄 英茂, 石井 純一郎, 勝田 真行
    2001 年 34 巻 6 号 p. 1095-1099
    発行日: 2001/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は27歳, 男性. ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群のため1983年よりCAPD導入となった. 12年後の1995年にSEPと診断され, 血液透析に変更し, 栄養管理はTPNあるいは経腸栄養剤のみで行われた. 1997年11月末頃より, 動悸, 息切れを自覚. その後, 労作時の前胸部痛, 呼吸困難, 透析開始直後の急激な血圧低下を認めるようになった. 心臓超音波検査では左室駆出率は30%と著しく低下していた. 当初心不全の原因は不明であったが, 微量元素欠乏症の可能性も疑い, セレン血中濃度を測定したところ25μg/l未満 (測定限度以下) であった. セレン欠乏症に伴う拡張型心筋症を疑い, 亜セレン製剤の経静脈的投与を開始した. 胸部症状はセレン投与開始後, 徐々に軽快し, 心臓超音波検査上も左室駆出率の改善を認めている.
    SEPは, CAPDの最も重篤な合併症の一つである. TPNを中心とした内科的治療は, 現在一応の効果を収めつつある-方で, 長期にわたるTPNにおいては各種の微量元素の欠乏から, 種々の合併症を引き起こす可能性が危惧されている. 生体に必須な微量元素の一つであるセレンの欠乏は, 拡張型心筋症による心不全をきたすとされる. 現在市販されている経腸栄養製剤, 中心静脈栄養剤のセレンの含有量は極めて低く, 長期間にわたる経腸栄養法, TPNにおいてはセレン欠乏症が合併する可能性を常に念頭に置かなければならないと思われた.
  • 鐘江 香, 筬島 明彦, 渡辺 勇次郎, 穴井 博史, 瀬川 賀世子, 須田 健, 太田 孝行, 岩本 昌子, 田中 弘, 椛島 成利, 田 ...
    2001 年 34 巻 6 号 p. 1101-1105
    発行日: 2001/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    プロスタグランディンE1 (PGE1) は動脈硬化による末梢循環不全に対し有効とされている. 今回我々は閉塞性動脈硬化症 (ASO) を合併した血液透析患者に対し透析中にPGE1投与を行い有効であった症例を経験した.
    症例は71歳男性. 1995年よりASOによる下肢痛, 間歇性跛行を生じ, 96年と97年にそれぞれ左右の大腿-膝窩バイパス術施行された. 99年4月より末期腎不全のため血液透析を開始した. この際右下肢痛および間歇性跛行を認め, IADSAによりバイパス吻合部近位側の右総腸骨動脈に狭窄が証明された. 6月7日狭窄部に対して動脈内ステント留置を行い症状は軽減, さらにPGE1の透析中投与を行ったところ, 下肢痛は消失, 歩行距離も著明に改善し, なおかつ治療終了後もこの効果は持続した.
    通常PGE1は投与に長時間を要し, 外来患者への投与は困難であることが多い. リポ化製剤は短時間投与が可能であるが, 投与量は少量とならざるを得ない. しかし今回の投与法を用いれば大量のPGE1を外来透析患者にも投与することが可能となり, 維持透析患者のASOに対する有用な治療法となり得るものと考えられる.
  • 永井 雅昭, 他田 正義, 榎本 克己, 各務 博, 丸山 弘樹, 鈴木 栄一, 荒川 正昭, 下条 文武
    2001 年 34 巻 6 号 p. 1107-1110
    発行日: 2001/06/28
    公開日: 2010/03/16
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    症例は38歳, 男性. 33歳時から糖尿病性腎症による腎不全のため維持透析を受けていた. 1997年12月中旬から乾性咳嗽が出現し, 近医で治療を受けたが改善せず, 胸部X線写真で間質性肺炎を指摘されたため, 1998年1月27日, 当院に入院した. 入院時, 酸素毎分7l吸入下でPaO2 76 Torrと, 低酸素血症が認められ, 胸部CTでは, 両肺にびまん性に斑状の濃度上昇と小葉中心性に粒状影が認められた. 薬剤性の肺臓炎を疑い, 末梢血リンパ球刺激試験およびリンパ球遊走阻止試験を行った結果, 卵殻カルシウムが陽性であった. 以上から卵殻カルシウムが原因の過敏性肺臓炎と考えられた. 卵殻カルシウムの内服を中止したところ, 自覚症状, 血液ガス所見, 胸部X線所見が改善した. 卵殻カルシウムは, 腎不全患者の血清リン値のコントロールのため広く使用されている. これまでほとんど副作用の報告がなかったが, 内服時の飛沫吸入により過敏性肺臓炎が起こり得ると考えられた.
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