奈良県立医科大学泌尿器科および関連施設で構成する奈良泌尿器腫瘍研究グループのデータファイルに1985年以降登録された腎細胞癌1,170例のうち, 透析患者に発生し腎摘除術を施行した腎細胞癌35例の臨床病理学的特徴とその治療成績について検討した. 平均年齢は58.0±9.9(SD) 歳で, 男性: 27例, 女性: 18例, 手術時の平均透析期間は101.1±65.5か月で, 25例 (71.4%) が多嚢胞化萎縮腎 (ARCD) を合併していた. 偶発癌が27例で, 血尿・腹部腫瘤などの症候癌が8例であった. TNM分類は, T1a: 23例, T1b: 6例, T3a: 4例, T3b: 2例で, N1: 1例, N2: 2例, M1: 3例であった. 組織学的異型度は, Grade 1: 9例, Grade 2: 21例, Grade 3: 5例であった. 組織型は, 淡明細胞癌: 16例, 乳頭状腎細胞癌: 9例, 顆粒細胞癌: 4例, 嚢胞随伴性腎細胞癌: 4例, 嫌色素細胞癌: 2例, であった. 術後, 6例にインターフェロン療法が施行されていた. 予後は, 有転移症例の2例が癌死, 5例が他因死, 術後肺転移での再発を1例に認めたが生存中である. 5年全生存率は, 全35例で79.4%, ARCD合併群は76.7%, ARCD非合併群は91.7%であったが, 両群間に有意差はなかった. 各病期別の生存率比較では, 非透析患者の腎細胞癌と透析患者の腎細胞癌に差はみられず, 有転移症例は予後不良であった.
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