CAPD療法の長期継続施行を妨げる重要な合併症の一つに除水能の低下がある. その原因として, 酸性透析液や高浸透圧透析液の長期頻回使用が指摘されている. そこで, 腹膜保護作用があるとされているコンドロイチン硫酸 (sodium chondroitin sulfate: CHS) を浸透圧物質とした透析液を作製した. そして, 動物モデル (CAPDラビット) を用いてin vivoで, また, 培養ヒト腹膜中皮細胞を用いてin vitroでその有用性を検討した. 既存のグルコース透析液 (PERITOLIQ
®: P135, P250, P400) を対照として, それぞれに浸透圧を一致させたCHS135, 250, 400の透析液, およびCHS 1.5%を含有する浸透圧290mOsm/Lの透析液を作製した. 1群を3羽としたCAPDラビットの腹腔内にそれぞれの透析液を150m
l注入し, まず, 24時間経時的に排液量を測定した. 次に, 1日1回, 150m
lの液交換を4週間継続して, 週に1回の腹膜平衡試験 (PET) を施行し, 腹膜機能の推移を調べた. 一方, CHS透析液の細胞傷害性を検討するために, 培養ヒト腹膜中皮細胞をそれぞれの透析液で6時間培養して,
51Crの放射活性を測定した. その結果, 対照としたPERITOLIQ
®透析液は3種類とも, 経時的に注入した透析液が減少して, 24時間後の排液は得られなかった. しかし, CHS透析液は, 濃度依存性に除水量が増加して24時間後でも除水量は維持されていた. さらに週に1回施行したPET検査における排液量は, CHS250とCHS400は測定不能, P250とP400は約70%の減少, P135とCHS135の減少は約40%, CHS 1.5%は, 約15%と排液量の減少は僅かであった. 培養ヒト腹膜中皮細胞を用いた細胞傷害性は, 対照およびCHS透析液とも浸透圧が高くなるほど高度であった. 以上の実験結果から, CHS透析液は低浸透圧でも長時間の排液が得られること, またpHも容易に中性化できることから, 有用な浸透圧物質であると考えた.
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