透析患者の閉塞性動脈硬化症 (ASO) 診断の指標として, ankle pressure index (API) と経皮的酸素分圧 (TCPO
2) の有用性を検討した. 当院の通院透析患者320名を対象に, 問診によりFontaine分類に基づく自覚症状の有無を調査し, 併せて両下肢のAPIを測定し, Fontaine II度以上例には下肢血管造影を施行した. TCPO
2は臥位安静時およびトレッドミル負荷による変化を観察した. 全対象患者中, Fontaine II度以上例は66名 (20.6%) を占め, API正常値 (0.9-1.2) 群は148名 (46.3%), 境界値 (0.7-0.9または1.2以上) 群は125名 (39.1%), 異常値 (0.7未満または測定不能) 群は47名 (14.7%) であった. 各群におけるFontaine II度以上例の比率は, API正常値群 (16/148名, 10.8%) に比べ, 異常値群 (23/47名, 48.9%)・境界値群 (27/125名, 21.6%) ともに有意に高値を示した. 下肢動脈狭窄の発生率は, API正常値群 (6/16名, 37.5%) に比べ, 異常値群 (20/22名, 90.9%)・API値1.2以上群 (8/10名, 80.0%) で有意に高かった. 安静時TCPO
2は, Fontaine III度 (35±22mmHg) 群では同II度 (47±18mmHg) 群に比べ有意に低下していた. Fontaine II度群では, 同I度 (50±14mmHg) 群との差はなかったが, 運動負荷によりTCPO
2の有意な低下 (
Δ18±16mmHg vs
Δ4±12mmHg) と負荷前値への回復時間の遅延 (7±5分vs 1±1分) を認めた. APIは透析患者のASO診断の有用な指標であるが, 境界高値・正常値者でもFontaine II度以上例および下肢動脈狭窄を認める場合も多く, 現時点では, 運動負荷によるTCPO
2の低下と回復時間の遅延が最も有用な指標であると思われた.
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