日本透析医学会雑誌
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38 巻, 7 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 渡辺 幸康, 斉藤 浩次, 矢野 新太郎, 三橋 秀基, 清水 幸博, 小野 久米夫, 野島 美久
    2005 年 38 巻 7 号 p. 1325-1336
    発行日: 2005/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者の動脈硬化におけるケモカイン・接着因子・Fas抗原の臨床的意義について検討した. 血液透析患者 (HD群): 70例, 非血液透析患者 (non HD群): 25例について, 頸動脈エコーで, 頸動脈内膜中膜複合体 (IMT), Max IMT, フォルムPWV/ABIで上腕・足首脈波伝播速度 (baPWV), 上下肢血圧比 (ABI) を, 胸部X線から大動脈弓石灰化係数 (AACI) を測定した. ついで, 血清中monocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1), soluble vascular cell adhesion molecule-1 (sVCAM-1), soluble intercellular adhesion molecule-1 (sICAM-1) およびsoluble Fas (sFas) 抗原をELISA法で測定し, 心・脳血管系合併症の有無, 一般検査所見, 各種動脈硬化マーカーとの関係を検討した.
    HD群ではnon HD群に比べて, 有意に血清MCP-1, sVCAM-1, sICAM-1, sFas濃度が高く (それぞれ, p<0.0005, p<0.0001, p<0.05, p<0.0001), 虚血性心疾患 (IHD) 合併群は有意に血清MCP-1, sVCAM-1濃度が高く (それぞれ, p<0.05, p<0.05), 脳血管障害合併群は有意に血清MCP-1濃度が高かった (p<0.01). また, HD群において, MCP-1, sVCAM-1, sICAM-1, baPWVはlog高感度CRPと有意に正の相関を示し (それぞれ, r=0.259, p<0.05; r=0.236, p<0.05; r=0.279, p<0.05; r=0.350, p<0.005), MCP-1, sVCAM-1, sICAM-1, sFasはbaPWVと有意に正の相関を示した (それぞれ, r=0.298, p<0.05; r=0.271, p<0.05; r=0.241, p<0.05; r=0.249, p<0.05). さらに, IHDを従属変数とした重回帰分析の結果から, MCP-1, sVCAM-1が有意の独立した説明因子として採択され (それぞれ, p<0.01, p<0.05), baPWVを従属変数とした重回帰分析ではsVCAM-1が有意の独立変数として採択された (p<0.05).
    血液透析患者では, 慢性炎症, ケモカイン, 接着因子, アポトーシスに関与する血清マーカーの上昇が認められ, これらは動脈硬化に関与する新たなマーカーとなりうる可能性が示唆された.
  • 太田 美由希, 平田 純生, 和泉 智, 古久保 拓, 藤田 みのり, 山本 忠司, 山川 智之
    2005 年 38 巻 7 号 p. 1337-1339
    発行日: 2005/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析患者におけるアルミニウム (Al)骨症・Al脳症は周知されており, 有効成分にAlを含有する医療用医薬品は透析患者に対して禁忌と位置づけされている. しかし, 添加物に関しては規制がなく, また, 添加物の添加量は原則的に公開されないのでAl含有量は不明である. そこで, 有効成分としてAlが含有されずに添加剤にAlが表示されている一般用医薬品中のAl含量を測定した.
    大正漢方胃腸薬®微粒, タケダ漢方胃腸薬K®末, カネボウ漢方胃腸薬H®の1日服用量あたりのAl含有量はそれぞれ27.6mg, 47.1mg, 29.1mgであったが, 対照のAl測定値が理論値より低かったため, 各製品のAl含有量は今回の測定値よりも高いことが推察された.
    Alは自然界に広く存在するため食品・飲料・薬剤などから容易に摂取されるが, 食品や飲料による摂取を完全に防ぐことはできないため, 透析患者では薬剤からのAl摂取を防ぐことが重要と考えられる. Alが蓄積しやすい透析患者では治療目的以外の理由でAl含有製剤を摂取することは有意義ではないと考えられるため, 今後もこのような医薬品について情報収集し, Al含有量が高い医薬品については患者へ情報提供できるような改善策を講じることが望ましいと考えられた.
  • 心理学的コーディネーションをめざして
    窪田 基予子, 松野 直徒
    2005 年 38 巻 7 号 p. 1341-1344
    発行日: 2005/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 石川 晃, 近藤 靖司, 久米 春喜, 横山 大司, 花房 規男, 野入 英世, 藤田 敏郎, 北村 唯一
    2005 年 38 巻 7 号 p. 1345-1349
    発行日: 2005/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    一側腎に同時に腎細胞がんと移行上皮がんが認められた透析患者の1例を経験したので報告する. 症例は66歳男性. 腎不全の原疾患は糖尿病性腎症. 透析歴は25年. 2004年5月, 無症候性肉眼的血尿が出現. 近医で腹部単純CTを撮影. 萎縮しかつ嚢胞が多発した右腎に径約6cmの腫瘤性病変がみつかった. 精査加療目的で同年7月28日, 当科外来初診. 9月6日, 入院. 9月14日, 右腎腫瘍の診断で全身麻酔下に根治的右腎摘除術を施行. 術後の経過は良好であった. 摘出腎の病理学的検索の結果, 術前に指摘されていた径6cm大の腫瘤 (腎細胞がん: 淡明細胞がん+顆粒細胞がん, grade 2>3, INFα, pT1b) に加え, 径3cm大の腫瘤 (腎細胞がん: 淡明細胞がん+顆粒細胞がん, grade 2>1, INFα, pT1a) と径1cm大の腫瘤 (移行上皮がん, grade 3) が確認された. 組織学的にいずれの腫瘍にも明らかな静脈およびリンパ管浸潤は認められず, 切除断端は腫瘍細胞陰性であった. 患者の希望と病理学的検索の結果を踏まえ, 術後, 抗がん剤, インターフェロンなどは投与せず, 経過を観察している.
  • 森山 学, 徳永 亨介, 宮澤 克人, 田中 達朗, 鈴木 孝治, 森田 恭子, 今村 秀嗣, 石川 勲
    2005 年 38 巻 7 号 p. 1351-1354
    発行日: 2005/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は慢性腎不全で外来経過観察中にCT scanで発見された腎癌患者である. 腫瘍径 (45mm×50mm×55mm) が大きいことから腫瘍核出術は困難と判断し術後の人工透析治療を目的に左前腕に内シャント作製した. マイクロ波組織凝固装置 (microwave tissue coagulator: 以下MTC) を用いて血流遮断なく腎部分切除術を施行したところ, 周術期の緊急透析のみで維持透析を必要としなかった. 現在も透析治療回避し外来的に通院経過観察となっている.
  • 絹野 裕之, 河合 盛光, 蜂谷 春雄, 国谷 等, 湊谷 功, 五十嵐 保史, 高川 順也, 中村 暁, 川崎 聡, 高畠 裕司, 加藤 ...
    2005 年 38 巻 7 号 p. 1355-1359
    発行日: 2005/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 男性. 1975年より症候性てんかんのため, 抗てんかん薬による治療を受けており, 最近はフェニトインを服用していた. 2002年6月上旬より悪心・嘔吐, ふらつき感が出現し増悪するため, 当科緊急入院となった. 入院後, 眼振, 複視, 舌のもつれ, 歩行障害, 傾眠傾向が出現したため, フェニトイン中毒を疑った. フェニトインの血中濃度を測定したところ45.8μg/mLと著明に上昇していたため, フェニトイン中毒と診断した. そこで, フェニトインを中止し, 強制利尿, 下剤の投薬を行ったが症状は改善しなかったため, 治療開始8時間後, 活性炭血液灌流療法を施行した. フェニトイン血中濃度は治療前45.6μg/mLから治療後26.0μg/mLに低下し, 速やかに症状は改善した. その後, 後遺症を認めなかったため, 10日後に退院した. 症候性てんかんの患者に発症したフェニトイン中毒について文献的考察を加えて報告する.
  • 駒場 大峰, 井垣 直哉, 高嶋 基嗣, 後藤 俊介, 土居 久子, 門口 啓, 竹本 利行, 田中 真紀, 前田 賢吾, 来田 和久, 杉 ...
    2005 年 38 巻 7 号 p. 1361-1366
    発行日: 2005/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者のカテーテル感染症は深刻な問題であり, 感染が重篤化しやすく, 死亡例も報告されている. 今回われわれは, 糖尿病性腎症による血液透析患者にMRSA (methicillin-resistant Staphylococcus aureus) 敗血症および化膿性脊椎炎を発症し, 2か月に及ぶ原因不明の腹痛発作を繰り返した-症例を経験した. 症例は72歳男性で, 肺水腫による呼吸困難を呈し来院した. 内シャントより血液透析を導入したが, 第14病日にシャント閉塞をきたしたため, ダブルルーメンカテーテルを留置し, 同部位から血液透析を継続した. 第35病日に悪寒, 発熱を認め, 血液培養よりMRSAを検出し, MRSAカテーテル感染症と診断した. カテーテルを抜去し, 塩酸バンコマイシンの全身投与を行ったが治療に難渋し, 約2か月に及ぶ激しい腹痛発作が出現した. MRIを含め各種画像検査を繰り返し行ったが原因不明であり, 第120病日頃より背部痛が出現した. 神経学的異常所見は認められなかったが, Gaシンチグラムでは腰椎に集積亢進を認め, MRIでは第12胸椎から第1腰椎にかけて骨破壊像を認め, 化膿性脊椎炎と診断した. 抗生剤の全身投与に加え, 局所ドレナージ, 洗浄を行い, 発熱, 腹痛発作は改善した. 本例はダブルルーメンカテーテル留置を契機にMRSA敗血症を発症し, 化膿性脊椎炎を併発したものと考えられた. 腹痛の原因は不明であったが, 糖代謝異常による微小循環障害, 黄色ブドウ球菌細胞表面蛋白によるサイトカインネットワークの活性化, 菌血症による微小血栓の関与が想定された. 黄色ブドウ球菌感染は骨破壊をきたし, 合併症として化膿性脊椎炎を惹き起こすことが知られている. 透析患者に黄色ブドウ球菌カテーテル感染症を発症した際は, 化膿性脊椎炎の合併も念頭に入れて, 診療にあたるべきである.
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