血液透析患者の動脈硬化におけるケモカイン・接着因子・Fas抗原の臨床的意義について検討した. 血液透析患者 (HD群): 70例, 非血液透析患者 (non HD群): 25例について, 頸動脈エコーで, 頸動脈内膜中膜複合体 (IMT), Max IMT, フォルムPWV/ABIで上腕・足首脈波伝播速度 (baPWV), 上下肢血圧比 (ABI) を, 胸部X線から大動脈弓石灰化係数 (AACI) を測定した. ついで, 血清中monocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1), soluble vascular cell adhesion molecule-1 (sVCAM-1), soluble intercellular adhesion molecule-1 (sICAM-1) およびsoluble Fas (sFas) 抗原をELISA法で測定し, 心・脳血管系合併症の有無, 一般検査所見, 各種動脈硬化マーカーとの関係を検討した.
HD群ではnon HD群に比べて, 有意に血清MCP-1, sVCAM-1, sICAM-1, sFas濃度が高く (それぞれ, p<0.0005, p<0.0001, p<0.05, p<0.0001), 虚血性心疾患 (IHD) 合併群は有意に血清MCP-1, sVCAM-1濃度が高く (それぞれ, p<0.05, p<0.05), 脳血管障害合併群は有意に血清MCP-1濃度が高かった (p<0.01). また, HD群において, MCP-1, sVCAM-1, sICAM-1, baPWVはlog高感度CRPと有意に正の相関を示し (それぞれ, r=0.259, p<0.05; r=0.236, p<0.05; r=0.279, p<0.05; r=0.350, p<0.005), MCP-1, sVCAM-1, sICAM-1, sFasはbaPWVと有意に正の相関を示した (それぞれ, r=0.298, p<0.05; r=0.271, p<0.05; r=0.241, p<0.05; r=0.249, p<0.05). さらに, IHDを従属変数とした重回帰分析の結果から, MCP-1, sVCAM-1が有意の独立した説明因子として採択され (それぞれ, p<0.01, p<0.05), baPWVを従属変数とした重回帰分析ではsVCAM-1が有意の独立変数として採択された (p<0.05).
血液透析患者では, 慢性炎症, ケモカイン, 接着因子, アポトーシスに関与する血清マーカーの上昇が認められ, これらは動脈硬化に関与する新たなマーカーとなりうる可能性が示唆された.
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