日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
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56 巻, 3 号
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委員会報告
学術委員会 血液浄化療法の機能・効率に関する小委員会報告
原著
  • 瀧本 さち, 開 正宏, 都築 通孝, 西川 大樹, 日野 佐智子, 遠藤 信英
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 3 号 p. 85-89
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    集中治療後症候群の予防には早期リハビリテーションが有用だが,大腿静脈への非カフ型(NC)カテーテルにより持続的血液濾過透析(CHDF)を行う患者では安全上の観点から制約が伴う.今回,CHDF患者に対する関節可動域運動(ROMex)が脱返血に及ぼす影響を検討した.2020年4月から12月の間で大腿静脈にNCカテーテルを挿入し,CHDFを施行した5名の患者を対象とした.段階的な角度で屈曲を行った後,下肢屈伸運動を10回行い,脱血圧・静脈圧と脱血不良警報作動の有無,カテーテル挿入部の出血有無を確認した.5症例に対し合計10回のROMexを実施した結果,脱血圧・静脈圧は有意な変動なく推移し,脱血不良警報の鳴動は1回であった.ROMex実施は,大腿静脈に非カフ型カテーテルを留置した患者に対してのCHDF治療に影響を及ぼさないことが示唆された.

  • ―計画導入群と非計画導入群の比較―
    山下 晶穗, 加來 正之, 河端 真弓, 深山 美香, 四元 有吏, 梶原 健吾
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 3 号 p. 91-100
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    新規血液透析導入患者30例を対象に,透析導入期の栄養摂取状況と栄養状態を把握した.導入前治療の有無で計画群/非計画群の2群に分けて比較した.全症例の栄養摂取状況は入院時・退院時ともに必要量を満たしておらず,導入期における慢性的な摂取量不足が示唆された.非計画群11例は計画群19例と比較し,入院日数が長期化しており腎不全症候を有する者が多く,導入期における有意な摂取量減少を認めた.したがって,透析導入時栄養食事指導では,患者が退院後も継続可能な食事療法を実現できるよう,CKD保存期の食生活や透析導入期の栄養摂取状況を踏まえた栄養教育を行う必要があると考える.

  • 宮里 均, 耒田 善彦, 古閑 和生, 井関 邦敏, 比嘉 啓, 古波蔵 健太郎, 諸見里 拓宏, 杉山 諒
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 3 号 p. 101-107
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルスに対するワクチン接種は全世界的に進められ3回目,4回目接種も行われている.新型コロナウイルスによる重症化リスクの高い末期腎不全患者に対して積極的なワクチン接種が進められているが診療に関わる透析医療従事者のワクチン接種について十分なデータはない.沖縄県全透析医療施設(74施設)に依頼し医療スタッフのワクチン接種状況をアンケート調査した.2回接種は96.4%(1,746人中1,683人),3回接種は88.3%(1,139人中1,006人)で受けられていた.2回目接種時58.1%の施設でまた3回目接種時29.2%の施設で職員すべてが新型コロナウイルスワクチン接種を受けていた.3回目接種時のアンケートにてワクチン接種を行わない理由を調査した.副反応が怖いが最も多く33件,ついでワクチンは無効と考える26件,周囲に止められた7件などがあげられた.患者の安全を守るためにもより積極的に新型コロナウイルスワクチン接種を進めていくべきと思われる.

症例報告
  • 三木 郁, 斉藤 丈洋
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 3 号 p. 109-115
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    症例は61歳女性.21歳時に1型糖尿病を発症し,強化インスリン療法を開始した.56歳時に糖尿病性腎臓病による末期腎不全のため血液透析を導入.内因性インスリン分泌が枯渇しており,強化インスリン療法でも血糖コントロールは非常に不安定であり,FGM(flash glucose monitor)を装着した.透析中に呼吸苦を訴えたため,当院へ入院となった.胸部CTにて両肺に多発浸潤影を認めたため,肺炎と診断した.抗菌薬にて治療を開始したところ,第10病日の胸部CTで多発空洞形成を認め,肺化膿症と診断した.肺化膿症は肺葉を超えて多発することは非常に稀であり,一般的に一つの肺葉に留まる.肺膿瘍が急速に広範囲に進展したのは,本症例に特徴的である血糖変動が大きい1型糖尿病が要因と考えられ,さらに同時に不顕性誤嚥が関与した可能性があると考えた.論文検索した限り,過去に同様な症例報告はされておらず,貴重な症例と考え報告する.

短報
  • 樋口 真一, 新野 七恵, 中村 佳子, 小林 克樹
    原稿種別: 短報
    2023 年 56 巻 3 号 p. 117-120
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    【背景】シャント管理に聴診は重要であるが聴診器がない場合がある.スマートフォンは日常携帯していることが多くスマートフォンによるシャント音聴取法を報告する.【方法】スマートフォンの底面をシャント吻合部の上の皮膚に軽く押し当て,録音アプリで録音をする.【結果】経皮的血管拡張術(PTA)を施行した3例の術前後のシャント音を録音した.PTA前に比しPTA後でシャント音は音量が大きく聴取可能であり,聴診と同様の音を聴取できる.【考察】聴診器がない際に代用可能であり,また電話などでの遠隔で聴取が可能となると考える.個人情報の保護には留意が必要である.

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