日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
56 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
委員会報告
  • 馬場園 哲也, 金崎 啓造, 宇都宮 一典, 古家 大祐, 綿田 裕孝, 繪本 正憲, 川浪 大治, 深水 圭, 久米 真司, 鈴木 芳樹, ...
    原稿種別: 委員会報告
    2023 年 56 巻 11 号 p. 393-400
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    わが国では2014年に改訂された糖尿病性腎症病期分類が広く用いられてきた.最近では,高齢化や肥満者の増加,糖尿病や高血圧症に対する新規治療薬の開発などを背景に,糖尿病患者に合併した腎臓病が多様化していることが指摘されている.そこで糖尿病性腎症合同委員会では,腎症病期分類を再度改訂する必要性を検討した.現時点では,アルブミン尿や推算糸球体濾過量に基づく2014年分類を変更する必要性を示唆する新たなエビデンスが発出されていないことから,今回の改訂では2014年分類の基本的な枠組みは変更しないこととした.ただし,日本腎臓学会のCKD重症度分類や国際的な表記との整合性を重視し,病期名を「正常アルブミン尿期(第1期)」,「微量アルブミン尿期(第2期)」,「顕性アルブミン尿期(第3期)」,「GFR高度低下・末期腎不全期(第4期)」,「腎代替療法期(第5期)」へ変更した.

原著
  • 高井 奈美, 中林 吉雄, 川島 昭一, 水野 正司, 小出 滋久, 春日 弘毅, 坂 洋祐, 酒井 英巳子, 稲熊 大城, 伊藤 恭彦
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 11 号 p. 401-409
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    【目的】高齢腹膜透析(PD)患者を支えるためのassisted PD普及を妨げる要因を検討するため訪問看護ステーションのPD受け入れ状況の実態調査を実施.【方法】愛知県下の訪問看護ステーション368施設にアンケート調査を実施.【結果】回収数は132施設で,内訳はPD実施施設は37,PD検討中施設59,PD受け入れを検討しない施設20だった.PD患者の年間訪問割合は常に携わっている施設は20%だった.その他の施設はPD患者を看る機会が年に数例程度だった.訪問看護師による受け入れ条件は,「服薬管理」,「精神的サポート」が1番多く,次いで「バッグ交換」,「出口部ケア」だった.受け入れ見合わせ項目は,「Automated PD(APD)サイクラー準備」,「APD機器準備などの操作見守り」だった.【結論】assisted PDの要となる訪問看護師が不安なくPD患者を受け入れることができるためには,PD診療施設の医療スタッフとの共同訪問やケア方法の共有といった連携や多職種連携が求められる.

  • ―沖縄県内の透析施設におけるアンケート調査―
    新川 葉子, 田中 元子, 諸見里 拓宏, 石田 百合子, 比嘉 啓, 田名 毅, 古波蔵 健太郎, 井関 邦敏
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 11 号 p. 411-419
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    透析患者に発生する悪性腫瘍についてはまだ不明な点が多い.沖縄県内56透析施設で2015年から2019年に透析治療を行った患者を対象に,これまでの悪性腫瘍の罹患歴・治療歴についてアンケート調査を行った.5年間に診断された透析導入後の悪性腫瘍は408例で,男性263例,女性145例だった.男性では大腸がん,腎臓がん,肺がんの順に多かった.女性では乳がん,腎臓がん,大腸がんの順に多かった.肺がんは透析導入直後の高齢導入症例に多く,喫煙率も高かった.男女とも腎臓がんの割合が多かったが,その平均年齢は65.6±11.1歳,透析導入から悪性腫瘍発症までの期間は中央値で11.6年であった.透析導入前に診断された悪性腫瘍も含めた解析では,悪性腫瘍の診断は透析導入0~5年,導入5年前~導入までの順に多く,とくに導入前後1年の期間で多かった.透析患者に発生する悪性腫瘍の特徴を全国でも明らかにして,適切な悪性腫瘍対策を講じることが今後必要だと思われる.

  • 安藤 誠, 望月 精一, 島田 典明, 浅野 健一郎
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 11 号 p. 421-428
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    血液透析(HD)による除水が部位別多周波数生体電気インピーダンス法(sMF-BIA)で測定されるHD患者の体水分量(TBW)と体脂肪量(FM)におよぼす影響を明らかにするために,HD患者67名の除水量とTBWおよびFMとの関係をHD前後で調べた.男女ともに,除水量とTBWの変化量の平均値はほぼ一致したが,除水量の増加に伴って両者の値の乖離が増大する傾向にあった.また,HD後の除脂肪体重水分含有率(TBW/FFM)を生理的な基準値の0.73と仮定した場合,HD前のFMはHD後のFMから除水量の約37%に相当する重量分だけ低い値として理論的に推定可能であり,男女ともに推定値と測定値とでよく一致した.以上の結果から,HDによる大量の除水はsMF-BIAによるTBWの測定値に影響を与え,過剰な体液量の貯留によるTBW/FFMの上昇は,FMの測定値に影響をおよぼすことが示唆された.

  • 奥田 康輔, 高橋 梓, 古澤 洋一, 髙橋 秀明
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 11 号 p. 429-435
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    血液透析(HD)患者におけるモデルナ社製COVID-19ワクチン3回目接種前後のAbbott社製S1-RBD IgG抗体価を測定し,抗体価に影響を与える因子を検討した.ワクチンは2回目まではファイザー社製BNT162b2(ファイザー)を使用し,2回目接種6か月後に3回目にモデルナ社製mRNA-1273(モデルナ)を接種した.抗体価は接種前で中央値275(149~571)AU/mLから,接種1か月後で29,737(14,984~46,185)AU/mL(108.1倍)と著明に上昇した.重回帰分析では,接種後抗体価はステロイド内服者で低く,BMI 30以上の患者を除くとBMIが低い患者ほど低値だった.ステロイド内服者と痩せを認める透析患者では,ワクチン接種後もより感染防護に配慮する必要があることが示唆された.

症例報告
  • 平井 太郎, 米山 優洋, 小俣 正子, 波田野 典子, 石井 良昌, 後藤 巨木, 香取 秀幸
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 11 号 p. 437-441
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    41歳男性.腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)を導入し約1年経過後にStreptococcus salivariusによるPD関連腹膜炎を発症した.その原因としては重症歯周炎による血行感染が示唆された.腹膜炎発症を予防するためには,口腔の診察とそのケアも重要であると考えられる.

  • 阿部 哲也, 青山 東五, 川村 沙由美, 櫻林 俊, 宮坂 竜馬, 山崎 拓也, 松田 友香理, 佐野 景子, 鎌田 真理子, 和田 幸寛 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 11 号 p. 443-447
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,女性.40歳頃から高血圧を指摘,50歳頃に血清Cr 1.2 mg/dLと腎機能低下を認めた.腎機能は次第に増悪し66歳時に当院紹介,腎代替療法として,腹膜透析を導入した.67歳時に両側血管新生緑内障と診断され,68歳時に左眼に対して線維柱帯切除術が施行された.視力障害による腹膜透析管理困難や洗い効率の低下のため,ハイブリッド透析導入のため入院した.眼圧上昇を防ぐため,グリセレブを使用し,低効率で血液透析を開始した.開始2時間後に右眼痛を認め眼科でアルコールブロックが施行された.再度血液透析を試みたが,同様に右眼痛を認めたため,血液透析継続は困難と判断した.腹膜透析では眼痛は認めなかった.血液透析導入により緑内障発作が顕在化したことから,不均衡症候群と同様の機序で眼圧上昇がおこることが考えられた.眼圧コントロール不良な緑内障症例における腎代替療法として,腹膜透析は安全に施行できることを経験したので紹介する.

feedback
Top