【目的】ポリミキシンB固定化ファイバーを用いた直接血液灌流法 (PMX-DHP) の間質性肺炎の急性増悪に対する有効性を検討した. 【方法】間質性肺炎の急性増悪に対してPMX-DHPを行った14例を対象として, PMX-DHP施行前後の動脈血酸素分圧/吸気酸素濃度比 (PaO2/FiO2; P/F ratio), バイタル所見, 血液検査所見を評価した. また, PMX-DHP施行60日後の生存例 (6例) と死亡例 (8例) で比較検討した. 【結果】バイタル所見や血液検査所見は施行前後に有意な変化を認めなかったが, P/F ratioは中央値158 [interquartile range (IQR) 124-232] から197 (IQR 142-245) と有意な上昇を示した (p=0.010). 生存群と死亡群の両群間で臨床的パラメーターに有意差はなかった. 生存群における発症からPMX-DHP施行までの日数は6.5日 (6.0~7.0日), 死亡群では12日 (8.5~21.5日) であり, 生存群のほうが早期にPMX-DHPを開始していた (p=0.036). 【結論】早期のPMX-DHP施行は間質性肺炎急性増悪の生命予後改善に有効である可能性がある.
【目的】週3回の透析中運動療法を3か月 (12週) 間実施し, その有効性および運動継続率を検討した. 【方法】透析導入後6か月以上経過した維持透析患者8例 (男性5例, 女性3例) に対し, 週3回の透析中運動療法を3か月 (12週) 間実施し, 各種血液検査データ・下肢筋力・運動耐容能・QOL・運動継続率をその前後で比較検討した. 【結果】3か月 (12週) 間の運動継続率は100%であった. 大腿四頭筋筋力のみ有意な上昇 (p<0.05) を示し, その他有意差はみられなかった. 患者アンケートでは, 8例中6例で肯定的・意欲的な結果が得られた. 【結語】透析中運動療法は, 運動継続率が高く今後の長期的な介入により身体機能維持・向上およびQOL向上に期待できる可能性がある.
全国HIV拠点病院に定期通院しているHIV感染者 (HIV患者等) を対象に慢性透析を受けている患者数について調査した. 2014年度は, 20,448人中92人 (0.45%, 52施設) : 北海道・東北10, 関東 (東京) 55 (34), 中部 (名古屋) 13 (7), 近畿 (大阪) 9 (5), 中国・四国3, 九州・沖縄2. 2015年度は, 21,184人中103人 (0.49%, 52施設) : 北海道・東北7, 関東 (東京) 59 (38), 中部 (名古屋) 23 (12), 近畿 (大阪) 10 (6), 中国・四国2, 九州・沖縄2が該当した. 調査時, 2014年度に593人 (2.9%), 2015年度に604人 (2.9%) の血友病薬害被害者 (薬害被害患者等) が通院中であり, このうち慢性透析中の患者は, 2014年度10人 (1.7%), 2015年度15人 (2.5%) で, 透析患者比率はHIV患者等全体に比べ, 4倍高い. 拠点病院と連携して一般クリニックにおいて通院透析ができている薬害被害患者2例の現状も紹介する. 本研究により, 薬害被害患者等を含む最新のHIV陽性透析患者数が明らかになった.
症例は76歳男性の維持血液透析患者で, 右大腿骨頸部骨折で当センターに入院となり右大腿骨人工骨頭置換術を受けた. 術前後のセルローストリアセテート (CTA) 膜ダイアライザーを用いた血液透析返血時に生理食塩水がダイアライザーを通過した直後から静脈側透析回路および静脈側チャンバーにカイロミクロン凝集による回路内白濁を認めた. 本症例の静脈側透析回路内カイロミクロン凝集の機序として骨折に伴う高炎症状態によるカイロミクロン凝集亢進およびダイアライザーによるカイロミクロン吸着が関与していた可能性が示唆された. 重症骨折合併急性期の血液透析施行に際しては返血時にカイロミクロン凝集による透析回路内白濁に注意する必要がある.
症例は71歳女性. 多発性囊胞腎による慢性腎不全で1985年5月血液透析を導入された. 2008年頃より囊胞感染を繰り返していた. 2012年11月に血小板数が4,000/μLに減少し, 出血傾向を認め, 特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) と診断した. プレドニゾロン40mg/日の投与を開始し血小板数は改善傾向であったが, 囊胞感染が再燃し, 再び血小板数が減少した. ピロリ菌感染は認めず, 脾臓摘出が困難な全身状態であった. ステロイド単剤での管理は困難であると考えエルトロンボパグオラミンを開始するもDダイマーの上昇を認めたため中止した. ダナゾールを開始したところ血小板数は低下せず安定したため, プレドニゾロンは2.5mg/日まで漸減した. 長期にわたりダナゾールの副作用はみられず, 33か月後も再発を認めなかった. 腎代替療法中の患者におけるITPはまれであり, 治療指針は存在しない. ダナゾールは透析患者に合併したITPの治療選択肢になり得ると考えられた.
71歳男性. 透析歴2年. 発熱, 前胸部痛を主訴とし, 酸素化低下と胸部単純X線で左肺野の浸潤影を認め, 肺炎の診断で緊急入院となった. 細菌性肺炎を疑い, セフトリアキソンの投与を開始したが, 第4病日, 炎症反応の上昇, 浸潤影の拡大を認めた. 非定型肺炎の合併を疑い, シプロフロキサシン (CPFX) を追加した. 第5病日, 無尿のため血清を代用した尿中レジオネラ抗原検出試薬による検査 (抗原検査) を行ったところ, 陽性であった. 導尿にて少量の尿が採取され, 尿中抗原陽性も確認した. レジオネラ肺炎と診断し, CPFXからレボフロキサシンへの変更にて軽快, 治癒し, 血清の抗原検査で陰性化を認めた. 透析患者は, レジオネラ肺炎の診断に用いられる尿の採取が困難であることが多い. 無尿の透析患者においては, レジオネラ肺炎の診断に, 血清を代用した抗原検査が有用である可能性が示された.
症例は80歳の男性, 糖尿病性腎症により, 2014年5月に血液透析導入された. 糖尿病に対して2014年11月よりビルダグリプチン (VDG) 100mg/日を投与された. 2015年6月に右上腕シャント部と左上肢前腕部に掻痒を伴う浮腫性紅斑, 水疱とびらんの皮膚症状を認めた. ステロイド軟膏による治療で経過観察するも緊満性水疱が現れ, びらんがさらに広がり, 皮膚症状が増悪した. 皮膚科を受診, 生検の所見ならびに抗BP180抗体が高値であったことにより水疱性類天疱瘡 (BP) と診断, 塩酸ミノサイクリン (MINO) 100mg/日とプレドニゾロン (PSL) 20mg/日の治療開始となった. 2か月後に皮膚症状が治癒傾向にあり, MINOを中止, PSLの投与量を漸減後中止した. しかし6か月後に右上腕シャント部に強い掻痒, 水疱とびらんの皮膚症状の再燃を認めた. MINOとPSLによる治療を再開した. この頃にVDGの薬物有害反応 (ADR) による国内でのBPを発症した症例の報告がありVDGを中止した. 皮膚症状の改善によりMINOを中止, PSLも漸減し, 中止した. 8か月経過したが皮膚症状の再燃はなかった. VDGの副作用による維持血液透析治療中に発症したBPの1症例を経験したので報告する.
透析患者の前立腺癌に対する手術療法は侵襲が大きかったため, これまで行われることは少なかった. 今回, 透析患者の前立腺癌に対してロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術 (robot-assisted laparoscopic prostatectomy: RALP) を2例経験した. 患者1 : 63歳男性. 慢性糸球体腎炎のために血液透析導入 (透析歴16年). 前立腺生検で前立腺癌 (cT1cN0M0) の診断となり, RALPを行った. 手術時間は4時間55分, 出血量20mLであった. 術後8日目に合併症なく退院した. 患者2 : 67歳男性. 糖尿病性腎症のために血液透析導入 (透析歴3年). 前立腺生検で前立腺癌 (cT2cN0M0) の診断となり, RALPを行った. 手術時間は4時間30分, 出血量160mLであった. 術後8日目に合併症なく退院した. 透析患者の前立腺癌には手術療法も考慮されうる. またRALPは低侵襲であり有用であると考えられた.