日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
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57 巻, 2 号
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委員会報告
  • 中井 滋, 菊地 勘, 若井 建志, 和田 篤志, 阿部 雅紀, 花房 規男
    原稿種別: 委員会報告
    2024 年 57 巻 2 号 p. 51-67
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー

    【目的】2022年末のわが国の透析患者総数は,初めてその実数を減らした.この背景を明らかにする.【対象】WADDAシステムから値を入手した.2022年末値は学会報告資料を用いた.各年調査値は施設数に基づく回収率で補正した値を用いた.一般人口統計値は総務省統計局e-Statを利用した.【方法】性・年齢別に有病率(透析患者数/人口10万人),罹患率(年間導入数/人口10万人年),そして死亡率(年間死亡数/年間平均患者数)を比較した.死因別死亡数推移も検討した.【結果】増加基調にあった65歳以上の有病率は2020年以降減少した.罹患率は終始減少基調であった.減少基調であった死亡率は2020年以降全年齢で増大した.2020年以降,感染症死亡数,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎死亡数が急増した.【結論】2022年末透析患者数減少には,2020年以降のCOVID-19肺炎死亡数増加が影響したと考えられた.

原著
  • 水島 伊知郎, 菊地 勤, 平山 崇, 須田 拓也, 柘植 俊介, 藤井 博, 宮城 恭子, 宮崎 良一, 岩田 恭宜, 川野 充弘
    原稿種別: 原著
    2024 年 57 巻 2 号 p. 69-77
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー

    IgG4関連疾患(IgG4-RD)は潜在性に腎不全を引き起こす.血液透析患者における高IgG4血症,IgG4-RDの頻度を調査することを目的に,対象者227例において血清IgG4値を測定し,平均血清IgG4値が34 mg/dL(範囲3~329)で2.2%にIgG4≥135 mg/dL,5.3%にIgG4≥105 mg/dL(基準値上限)を認めた.年齢,性別,生活習慣,悪性腫瘍などの既往・併存症,各血液検査値について,線型回帰分析により血清IgG4値との関連を探索したところ,男性,低CH50血症,総Cho低値,抗核抗体陽性,非高血圧,喫煙歴が関連していた.高値例12例に対して診療録を精査し,IgG4-RDによる腎不全症例1例を認めた.透析患者における高IgG4血症は男性,喫煙,免疫異常を示唆する所見などと関連し,高値例の一部に潜在性患者も存在する.腎不全の原因としてIgG4-RDも考慮する必要がある.

  • 渡邉 幸康, 渡邉 嘉一, 岸部 伊吹規, 斉藤 浩次, 新井 綾夏, 切通 慎太郎, 道園 ルリ子, 栗原 研二
    原稿種別: 原著
    2024 年 57 巻 2 号 p. 79-91
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー

    透析患者で,下肢CT石灰化スコアという新指標を導入した.両側総腸骨動脈,外腸骨動脈,浅大腿動脈,膝窩動脈,後脛骨動脈の総和(L)を測り,同部位両下肢石灰化領域の総和(C)を計測し,C÷L×100(%)を下肢CT石灰化スコアと定義した.PAD(末梢動脈疾患)有群はHDLコレステロールが低く,血糖値が高く,ABI・SPP(足底)・PVR(足首)・PVR(足底)が低く,下肢CT石灰化スコアは高かった.下肢CT石灰化スコアは年齢,透析歴,脈圧,冠動脈カルシウムスコア,頸動脈プラークスコア,baPWVと正相関し,HDLコレステロール,ABI,PVRと負の相関を認め,重回帰分析では冠動脈カルシウムスコア,頸動脈プラークスコア,ABIが有意な独立変数であり,下肢CT石灰化スコア60%以上群は60%未満群に比べて生存率が低く,総死亡Cox比例ハザード分析で,下肢CT石灰化スコアが有意として認められ,下肢CT石灰化スコアは下肢動脈石灰化進展と生命予後を予測する上で有用な指標である.

症例報告
  • 長山 尚平, 田代 渉, 川井 有紀, 國井 綾奈, 馬場 健寿, 川﨑 敬子, 古宮 士朗, 湯藤 潤, 松元 一明, 岩本 彩雄, 田村 ...
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー

    88歳女性.20XX年5月抗GBM抗体型急速進行性糸球体腎炎(RPGN)の診断で入院.入院時に急性腎障害(AKI stage 3)であり緊急血液透析(HD)導入を行い,RPGNに対してPSLと血漿交換(PE)併用を行った.入院第5病日に意識障害を認め,入院時より投与中のセフトリアキソン(CTRX)による抗菌薬関連脳症(AAE)を疑い,第6病日の血中CTRX濃度は198.7μg/mLと高値を認めた.CTRXの投与を中止し,CTRXの分布容積の小ささと蛋白結合率の高さからPE併用による除去効果増強を期待したが,PEによる減少は認めなかった.HD施行後一時的な血中CTRX濃度減少を認めたが翌日にはリバウンド現象と思われる血中濃度の再上昇が認められ,結果的に有効な薬物除去は得られなかった.第13病日には意識レベルの改善が得られ,血中CTRX濃度も減少した.高齢のAKIを伴う患者はAAEのリスクを複数有していることも多く,個別の患者背景と病態を考慮した治療を行う必要があると考えられた.

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