昭和医学会雑誌
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43 巻, 4 号
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  • 諸星 利男, 永山 剛久, 神田 実喜男, 勝股 真人, 八田 善夫
    1983 年 43 巻 4 号 p. 421-425
    発行日: 1983/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 大村 和久
    1983 年 43 巻 4 号 p. 427-443
    発行日: 1983/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    腰椎椎間関節は, 滑り運動と開排運動によって弧状運動を行っている.高位別に異なる椎間関節軟骨面の形態は, 方向性のある滑り運動に適し, 椎間運動に特性を生じさせるが, 窩部での骨性の制動も特性に大きく関与している.又, 窩部での軟部支持組織の余裕は滑り運動と共に, 開排運動も行いうる形態である.著者は, 腰椎の各椎間関節における関節軟骨の形態および加齢的変化を観察し, 合せて椎弓, 窩部, 関節包, 靱帯部にも検討を加え, これより各椎間関節の機能と疼痛発生の機序を考察した.1) .椎間関節軟骨面は, 下位になるにつれて前額化し, 一方, 前彎のため水平化の傾向を認める.L2/3間を除き関節軟: 骨面は下位で大きく, 特に横径が延長している.又, 対応する関節面では, 上椎間関節面が大きい.軟骨面の加齢的変化は, 上位では, L2/3間に強く認められ, 消耗性変化が主体である.下位ではL4/5, L5/S間の辺縁部を中心に, 強い消耗性変化と増殖性変化を認めた.2) .上位の関節軟骨層は前額面部の中間部で厚く, 上方および下方で菲薄化する.下位で軟骨層は全体に薄く, 又, 内側下方の椎弓移行部では菲薄化が著しい.軟骨下骨層でも, 前額部に硬化層の肥厚が認められ, 特に内側下方で著しい.又, 骨堤様変化を, 上下方および内外側に認め, 下位になると骨堤の幅が増大する.これらの変化は, 下位で滑り運動の減少によって増大する開排運動と, 関節面の水平化によって生ずる関節面への圧の増大によって生じたものと考えられる.3) .滑膜絨毛は, 上方窩部と下方窩部に存在するが, 下位で発達し, 特に下方窩部のものが大きい.滑膜絨毛の尖端は滑膜ヒダとなり, 菲薄化し関節裂隙に介在する関節が多く, 60関節中33関節に認められた.又, 下方窩部内での滑膜ヒダのimpingementによる変化が, 60関節中11関節にあり, 上方窩部のimpingementによる変化に先行して生じている.滑膜ヒダの関節裂隙への介在は, 関節軟骨の消耗時に生じ, それは機能的役割を果していると考えられる.一方, 窩部内の椎弓と関節突起間のimpingementは, 椎間の不安定性によって生じるもので, 下方窩部では, 滑膜ヒダが基部附近までimpingementされ, 関節包は強く刺激されるために, 関節包の神経を介した疼痛を生ずると考えられる.又, 更に, 不安定性が増大すると上方窩部でのimpingementが生じるが, 下位腰椎脊柱管の側方窩部の形態では, その部を走行する神経根が, 黄靱帯や関節包を介してのimpingementの刺激を受け易いために根性座骨神経痛を生じうると考えられる.
  • 水間 正澄
    1983 年 43 巻 4 号 p. 445-458
    発行日: 1983/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨端や骨幹端における靱帯, 腱の線維と骨の結合様式については古くはSharpey線維としていろいろ研究されてきている.教室の服部, 大野らにより走査型電子顕微鏡 (Scanning electron microscopy以下SEMと略す) によるこれらの部位の観察は既に報告された.しかし, 骨幹部骨表層と骨膜の結合についてSEMによる詳細な報告は殆んどない.よって著者は胎児の大腿骨と脛骨, 高度挫減や血行障害により切断された小児, 成人大腿骨, 脛骨, 腓骨ならびに中手骨を用いて骨表層と表層線維との結合状態を骨幹端部, 骨幹部にわけ, その横断面, 縦断面につき光学顕微鏡, SEMにてそれぞれの部位につき微細構造を観察した.胎児骨では, 20週胎児の表層骨梁は連続性を欠き, その配列は粗である.骨表層線維と骨梁との関係は骨梁凸面に付着する線維が多く, 凹面には血管を有しているものが多く, 線維はこれをとり囲んでいる.しかし結合様式には部位による差は認められない.40週胎児では骨梁間の間隔はせばまってゆき, しだいに平坦となってくる.そして骨幹端部, 骨幹部の部位による差がはっきりとしてくる.すなわちこの時期になると表層骨梁はたがいに癒合し陥凹, 小窩, 管腔構造を形づくるようになり表層線維は骨梁内に埋入しているもの, 小窩辺縁に付着するもの, 小窩内の血管と連絡するものなど多彩となる.この小窩は骨幹端部に多く, この中に血管を有するものが多い.骨幹部では小窩をもたずに直接骨梁内へ侵入する線維 (Sharpey線維) が多くなる.成人骨の観察では, 層板構造が完成されていて骨幹端, 骨幹の差異が明らかになる.骨幹端部では小窩が多くみられ小窩内に血管を有するものが多い.この血管の周囲を線維がとり囲み骨と結合しているものがある.また血管と結びつける線維があり網目状に血管をとり囲んでいるが骨との結合力は弱い.そのほか直接骨の膠原線維へ移行するものがある.骨幹部にも小窩はみられるが, この小窩は比較的浅くその数も骨幹端部に比べて少ない.この小窩へ侵入する線維は集束して直接骨膠原線維へと移行するものもあるが各個に平らな骨面に一定の角度をもって入るものがみられた.それらは骨の外層板近くまで達して骨膠原線維へ移行している.表層線維の骨への付着様式は胎生40週で概ね成人のそれに近くなる.骨表層線維には直接骨の線維に結合するものと血管を包むように結合するものがある.成長に伴ない骨幹部の線維に被われた血管は少なくなり, それら表層線維は骨膜表層線維となり骨幹端で靱帯, 腱へ移行しているように思われる.成人の靱帯, 腱は骨膜を貫通して直接骨に埋入結合するものもみられた.
  • 福沢 啓一
    1983 年 43 巻 4 号 p. 459-470
    発行日: 1983/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    著者は膝蓋骨の内部構造をあきらかにし, ひいては膝蓋骨の機能を考察しようと本研究を行なった.実験に供された膝蓋骨は切断肢より摘出しこれをアルコール溶液で脱水処理した後, ポリエステル系樹脂で包埋し, 500μmの連続薄切々片を作製し, 軟X線撮影装置にて撮影し骨梁形態, 骨梁走行を観察した.水平面の骨梁により三種に分けられた.第1は関節面に直交する骨梁, 第2は関節面に沿って平行に横走する骨梁, 第3は膝蓋骨前面を横走する骨梁で内側部よりも外側部の方が厚くなっている.矢状面の骨梁は4種に分けられた.関節面下では第1に関節面に直交する骨梁, 第2は内側, 外側関節面に平行に横走する骨梁, 第3は関節面下部で膝蓋骨尖部へ斜走する骨梁, 第4は膝蓋骨前面で膝蓋骨を縦走し外側部で基部が最も厚くなっている.前額面の骨梁は前二者の組合せと考えられ, 水平面, 矢状面の骨梁とは形態が異なり網目状構造を呈す.この網目は膝蓋骨関節面下で横径が大で, 中層部では縦径が大で, 尖部ではこの網目が尖端に集まるようにみられた.膝蓋骨の骨梁は他の長骨や短骨の骨梁と同様圧迫力と張力とにより生じるものが主体である.膝蓋骨関節面下にみられる圧迫骨梁は膝蓋骨前面に近づくと横と縦の引張り骨梁が優位となり明瞭でなくなる.この引張り骨梁は筋力の方向へ向かうので静力学的影響よりもむしろ動力学的影響が強いように思われる.なお膝蓋骨の動きは膝屈伸に際しては上下運動が主であるようにみえるが骨梁走行は縦方向のみならず横方向と関節面に直交する骨梁がみられた.骨梁の形態からみて前額面表面に近い引張りによる骨梁は太く連続し層板構造を示し引張りの方向に対して十分に耐え得る構造を呈し, 関節面に直交する圧迫による骨梁は密度は高いが細く, 骨梁と骨梁とが連絡し多方向からの力に耐え得る構造を呈しているようである.従って膝蓋骨の骨梁は, 長管骨と異なり圧迫より引張りの骨梁が優位の構造と考える.この事から膝蓋骨は膝屈伸の際, 大腿骨顆部関節面をテコ作用の支点として働き, 膝関節の屈曲時には大腿骨顆部関節面を滑走する事により膝関節の安定化とひいては大腿骨, 脛骨の運動を円滑にする働きがあるものと考えた.
  • 水上 忠弘, 水野 健朗, 糸川 正
    1983 年 43 巻 4 号 p. 471-479
    発行日: 1983/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    高血圧症は脳血管障害, 心疾患の重要な危険因子の1つであり, その治療には一般療法と薬物療法とがある.今回, 本態性高血圧症患者に対して一般療法のなかの食事療法を施行し, その効果を観察した成績である.対象は従業員約3000人の一事業所において, 4年間, 定期健康診断により高血圧を指摘された患者180例のうち, 夜勤, 出張等により一定の食事療法継続に堪え得なかった脱落者を除いて薬物による治療中の者27例, 薬物治療を受けたことのない未治療者19例, 計46例について検討した.全例男性であり, 20~29歳の間の患者6例, 30~39歳7例, 40~49歳17例, 50~59歳16例であり, 血圧は本療法開始前2回測定を行ない, その平均値が収縮期圧150mmHg以上, 拡張期圧90mmHg以上とした.本療法施行前に胸部X線, 心電図, 眼底検査, 尿, 血清生化学検査を行ない合併症を調査し重症度を検討した.その重症度は東大三内科合同高血圧研究班の分類により判定したが, その指数は6以下の軽症43例, 7~10の中等症3例であった.食事指導の期間は11週間とし, 食事内容は調味料として1日8g食塩, 1800カロリーの低カロリー食を目標として普通の労働にたえる栄養所要量の食品構成とした.食品は香川式食事法により食品の組み合せをバランス良く適量摂るようにした.食塩は調味料を使わずとも1日約29は摂取することになるので毎日の食事内容を記録させ, 毎週1回食事記録から食塩およびカロリー計算を実施した.本食事療法施行後ほとんど全例において血圧は下降し, 体重も減少傾向を示した.ことに標準体重を越えた群, 及び薬物療法を受けていなかった高血圧者群では血圧の下降は顕著であった.また食品からの食塩摂取量を詳細に計算できた34例は本療法施行後, それまでの多量の食塩摂取量から脱し少ない食塩摂取量に慣れてきて, それとともに血圧も下降安定する傾向があった.本研究は一事業所において勤務中の集団の患者に対して, 食事療法の効果を観察できた点に意義があると思われる.しかし本態性高血圧症の治療が生涯にわたる長期のものであり, いかに本療法を長期間実行できるかという点に問題があり, 今後施行者の追跡調査が指導者の拡大とともに必要であると考えられる.
  • ―烏山病院在院者および通院者―
    志村 豁
    1983 年 43 巻 4 号 p. 481-492
    発行日: 1983/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    精神病者の自殺に関し, 諸家の報告があるが, 開放管理下の自殺についてのものはない.現下, 精神医療は開放療法, 地域医療の時代にあり病者の生活圏は拡大している.この状況下で精神病者の自殺の実体を知ることは自殺防止の観点からも重要なことである.昭和大学烏山病院における開放療法20年間の在院者の自殺28例 (うち分裂病25例) 通院者の自殺36例 (うち分裂病20例) であった.本研究では分裂病の自殺例について年齢, 季節, 開放体制との関係, 自殺の場所, 手段, 動機について分析, 検討した.正確なデータはないが, 一般に精神病者の自殺率は一般人 (0.015~0.02%) の20倍あるいはそれ以上という報告に比べると当院在院者のうち10数%に自殺未遂歴のある者が年々漸増しているにもかかわらず, 自殺者は調査期間中年間0~2名とかなり少い.自殺者の年齢は20歳~30代に多く, 罹病期間でみても5年未満と15年未満に多い.これは分裂病の初発時の不安定期と, 妄想型, 緊張型の発病時期, 再発型分裂病の自殺が関連している.閉鎖体制から開放体制となり生活圏が拡大しても自殺数は変らなかった.開放療法当初に, 閉鎖病棟での自殺が見られたが, 開放体制の完成した昭和42年以降は閉鎖病棟での分裂病の自殺は0である, 季節との関係については, 春秋が多いとされる一般の自殺が分裂病の場合は特徴はみられなかった.自殺時間では開放病棟の場合は昼間帯に多く, 閉鎖体制の病院との違いを示し, 自殺場所については, 開放下では外出, 外泊の盛んな関係もあり院外の自殺が多く, 手段は交通機関, 墜落などがみられた.これは死を決した病者がおかれた環境下で選べる手近で確実な手段を実行した結果であり, 閉鎖環境の縊死の多いのとの差が見られた.手段と年齢, 疾病とには特徴的関係はない, 自殺の動機は (1) 精神病状による自殺 (2) 了解可能な自殺, (3) 了解不能な自殺に分類した.通院者の自殺は, 1例の了解可能な自殺以外は精神病状による自殺で地域での治療体制が重要なポイントであることが明らかとなった.精神症状の改善により自殺の危険性は減ずるが, 了解可能な自殺例では家族をはじめ病者をとりまく人々の協力が重要であり, 了解不能な自殺は病者の直前の言動を分析すると何らかの「自殺のサイン」がみられ, 看過することなく対応することが最重要であることが判る, なお, 今回の調査以降, 烏山病院のデータによると自殺事故はない, 他方, 外来通院者の自殺事故が増加する傾向にあることは地域精神医療の重大なテーマであろう.
  • ―気管支喘息の多発した家族集積性の高い非定型精神病の1家系について―
    板橋 仁
    1983 年 43 巻 4 号 p. 493-508
    発行日: 1983/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    精神分裂病のなかに, その症状, 経過の面よりみればかなり異質な臨床類型を含んでいるという議論は以前からなされており, こんにち, 同期性予後良好ないわゆる非定型精神病の存在が認められるようになっている.著者らは, 昭和大学付属烏山病院 (以下, 当院とする) において常染色体優性遺伝モデルをとる非定型精神病に該当する1家系を観察しているが, さらにその家系には気管支喘息も多発しているという特徴がみられる.今同の研究は, 遺伝学的異種性の想定されている精神分裂病のうち最も疾患単位らしい条件を備えている非定型精神病を, 合併多発している気管支喘息という身体病の内科学的検索を参考とすることにより, その遺伝学的位置づけをより明らかにしようと考えたものである.ここで精神分裂病, 気管支喘息の一般集団における発病危険率がそれぞれ低い点を考え合わせると, その両疾患の関連を調べるには, 本家系のような多発家系のメンバーなどの危険率の高い資料を選ぶことは意味のあることと考えられるが, 現在までそのような報告はみられない.濃厚な遺伝関係を有する特異な本家系研究から, 精神病については非定型精神病の遺伝学的独立性をさらに強く示唆し, 家系研究によって精神分裂病のなかに遺伝学的異種性の存在を認める満因の研究, あるいは双生児研究によって同様の結論を導き出している井上の研究を裏づけるものとすることができた.気管支喘息については, その症状, 経過が精神病ほど印象的ではないためか, 家族歴を詳しく聴取しても家系の喘息の有無を正確にはつかめなかった.遺伝学要因も考えられている, 喘息発作の発生機序のなかで最も基本的な気道の過敏性をも参考として本家系における気管支喘息の特徴を見出そうと助めたが, 症例数の限られていることもあり, 知り得た情報が充分とはいえず, その遺伝まで結論づけることはできなかった.結局, 精神病, 気管支喘息ともにその遺伝モデルが解明されていない段階では, 今回対象とした1家系研究のみで両疾患の遺伝学的関連についての期待は満たされず結論づけられなかった.しかし, 偶然によるものか当院だけでも, 遺伝子型により強く規定されている可能性が認められるようになってきている非定型精神病と気管支喘息とが共に多発した家系が, 今回の家系を含め3家系認められている.もし, このような家系が特異なものではなく他の多くの病院でも見出せるとすれば興味あるものといえる.すなわち, 本研究のごとき身体病理の研究を推し進めることが非定型精神病の疾病学的位置づけ問題解決の喘緒となり, 精神分裂病, ひいては内因性精神病の概念を疾病学的見地から純化し疾病分類再構築をしていく基礎となるものと考えられるからである.
  • 須沢 忍, 舩冨 等, 田口 進, 八田 善夫
    1983 年 43 巻 4 号 p. 509-515
    発行日: 1983/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    血中amylaseの動態に関して, 膵, 腎, 泌尿生殖器, 肺, 唾液腺, 肝など諸臓器が関与している.amylaseを産生するorganの解明は進んでいるが, amylaseのregulationに関しては今だ未知の点が多い.そこで著者らは, amylase作用の一つである糖代謝の面に着目し, 糖代謝とamylaseの関連を明確にする目的で臨床的, 基礎的検討を行った.まず臨床的に50g 0GTT施行時, 血中amylaseの変動を検討した結果, 約半数に血中amylaseの低下を認め, さらにこの場合, 血糖上昇率とamylase低下率は負の相関々係にあった.またこれは50% glucose 20ml使用のIVGTTにても同結果であった.しかしamylaseの変動はinsulinやglucagonとは関連性がなかった.以上を裏付けるべくratを用い基礎実験を行った.glucose負荷では臨床と同様amylaseの低下を認め, 投与量に比例し, 血糖上昇率, amylase低下率も大であった.galactose投与でも同様の傾向を認めたが, glucoseに比して弱い作用である.他の糖質 (二糖類, 多糖類) の投与でも同様の結果であった.fructose (ケト糖) 投与ではamylaseの変動はみられなかった.このことからalde-hyde基の関与を想定し, 生体代謝過程に存在するacetaedehyde, glyceraldehydeおよびethanolを投与したところamylaseの低下を認めた.一方糖代謝に関連あるinsulin, glucagon, adrenalinを負荷した揚合, 血糖に変動をみるもamylaseの変動はなかった.以上の結果からaldehyde基がamylase低下に関与していると想定された.しかしglucoseが最も強い効果を示し, 糖の酸化的リン酸化の経路に組みこまれる諸物質でamylaseに対する影響が全く異なっていた.また臨床でOGTTに際してamylaseの最低値を示す時間が, glucoseの最大値に一致あるいは先行しており, 経静脈負荷による検討では, glucoseと他の糖質では作用発現時間が異なっていた.このことは血中amylaseの低下は, glucoseに比較的特異的であり, amylase低下を単に糖の代謝系のみによって説明することは難しく, 他の因子の存在を考慮しなければならない.一方では肝切除によってamylaSeの変動が全く認められなかったことは, 肝が血中amylaSeのregulatorとしての役割をはたしているといえるであろう.
  • 小島 和彦
    1983 年 43 巻 4 号 p. 517-532
    発行日: 1983/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    幼小児期に, 足底部熱傷のために, 遊離植皮術を適応された足部の発育について検討した.対象症例は, 生後7カ月より4歳までの間に, 足底部全域を遊離植皮術で再建し, かつ発育完了期, およびそれ以降までの経過観察が得られた10症例である.各症例ごとに, 遊離植皮術を受けた患足と, 対照としての健足とを, 足長, 足幅, 足高, 足底面積の実測, X線像による骨の計測, Computerized Tomography像による軟部組織と骨組織の量的計測, 等を行い, 足の発育に対する足底部への遊離植皮の影響の一端を明らかにすることができた.足底部再建手術において, 遊離植皮術の適応は, 体重負荷に必要な足底部皮下組織が残存していて, 皮膚のみの欠損の場合に限られている.損傷がこのように比較的軽微であっても, 遊離植皮術によって再建された足部は, その発育過程において, 損傷されていない健足との間に, 足長, 足幅, 足高, 足底面積のいずれにも差が生じ, 発育完了期 (男性15歳, 女性14歳) まで, 少しずつ, その差を拡大していく傾向が認められ, 発育が抑制されていることを示している.また, 受傷より発育完了期までの経過が長いほど (受傷年齢が小さいほど) 健足患足間の発育差が大きいことが理解された.発育抑制の生ずる部位については, X線像, C.T.像の解読, 計測によって行い, 発育抑制は, 中枢側に比し, 末梢側ほど大きく, また, 直接受傷した部にある移植皮膚, および皮下軟部組織に顕著な発育抑制が認められるほか, 支持組織としての骨の発育もが, 軟部組織ほどではないにせよ, やはり抑制されているという結果が得られた.
  • ―CT像にて前頭頭頂葉に病巣が認められた一例の報告と考察―
    川畑 信也, 本多 虔夫
    1983 年 43 巻 4 号 p. 533-537
    発行日: 1983/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    83歳女性に脳硬塞後右上下肢のHemiballismが出現した.入院時右上下肢のHemiballism, 失見当識独語, 徘徊, 不穏, 右上肢の深部反射消失が認められ, 少量のレゼルピン投与にて第18病日目に不随意運動は完全に消失し退院となった.CTスキャン上, 左前頭頭頂葉に低吸収域を認めたが, 視床下核には明らかな病変は認められなかった.従来Hemiballismの責任病巣としては視床下核 (Luys体) が強調されてきたが, その他の部位の侵襲によっても同症状が起こることが議論されており, 本症例もその事実を裏付けるものであると考える.また予後も以前は不良と思われていたが, 近年予後良好な症例の報告も散見され, 本例も予後良好な一例と思われる.Hemiballismの責任病巣, 予後に関して文献的考察を加えたので報告する.
  • 川畑 信也, 平田 信人, 渋谷 誠二, 大生 定義, 若山 吉弘, 樋口 道生
    1983 年 43 巻 4 号 p. 539-545
    発行日: 1983/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    多彩な皮膚症状と髄膜炎とが同時に発症したクリプトコッカス症の一例を報告した.神経学的には意識障害を認める以外に特に所見なし.皮疹は丘疹, 紅斑, 潰瘍, 腫瘤等と多彩な性状を呈していた.髄液と皮疹とからCryptococcus neoformansを検出, アンホテリシンBと5-FCとの併用療法にて臨床症状の改善, 髄液中の菌の陰性化が得られた.髄液蛋白・細胞数の改善傾向は認められらかったが, 髄液中の糖値は比較的早期に正常化し, 改善の指標となりうると考えられた.
  • 中牧 剛, 友安 茂, 広瀬 信夫, 船富 等, 鶴岡 延熹
    1983 年 43 巻 4 号 p. 547-551
    発行日: 1983/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は81歳男性.家族歴, 既往歴に特記すべき事なし.昭和55年9月貧血を指摘され入院.肝2横指, 脾2横指触知.WBC 6900, RBC 171×104, Hb 6.8, Ht 22.0, Ret 439%., Pl 28×104好中球過分葉 (+) , 総ビリルビン3.0 (直ビ1.3) , LDH 1158 (1型46%) , ハプトグロビン, C3, C4, CH50低下, 抗DNA抗体陽性, 51Cr赤血球寿命10日.骨髄ではMIE=0.7, 巨赤芽球なし.クームス試験は直接, 間接ともに陰性であったが, 他の溶血性貧血を診断しうる検査はすべて陰性であったので, クームス試験陰性自己免疫性溶血性貧血と診断, 副腎皮質ステロイドにより貧血改善緩解退院した.また血清VB12, 葉酸値正常, 他に巨赤芽球性貧血の合併を示す所見なく, 好中球過分葉も貧血の改善と共に消失した.その原因は不明であるが, 単なる偶然とは考えにくく特記すべき事に思われた.
  • 滝川 宗一郎, 藤巻 悦夫, 森 義明, 北條 博, 宮岡 英世, 山崎 富士雄, 扇内 幹夫, 山上 繁雄, 葛西 邦博, 柳沢 宏実, ...
    1983 年 43 巻 4 号 p. 553-560
    発行日: 1983/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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