昭和医学会雑誌
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49 巻, 4 号
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  • 堀江 正浩
    1989 年 49 巻 4 号 p. 331-337
    発行日: 1989/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    膝半月板損傷の重要な診断法のひとつに関節造影がある.しかし, 造影された画像を正しく読影するにはある程度熟練を要する.今回半月板単独損傷として手術された54例の, 術前関節造影所見と手術所見とを比較し, 読影時どんな点が見誤りやすいかを, 内側半月板と外側半月板との差, あるいは断裂型による差などについて検討した.54例のうち, 誤読もしくは判読困難な例は9例あった.その判読困難な例は, 断裂面が複雑な形態を示す場合 (バケツ柄状断裂, 縦断裂) と, 逆に断片があまり転位しない場合 (半月辺縁剥離) とにみられた.画像の診断率を高めるには, 造影法と読影法の画一化が重要である.
  • 土屋 真弓, 武重 千冬
    1989 年 49 巻 4 号 p. 338-350
    発行日: 1989/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    経穴を低頻度刺激して出現する鎮痛 (AA) は下垂体の除去で出現しなくなるが, 経穴から下垂体に到る求心路の最上部は弓状核中央部にあり下垂体と連絡する.一方AAを発現する下行性痛覚抑制系の最上部は弓状核後部 (P-HARN) にあり, 中央部と近接して存在する.一方鎮痛抑制系破壊後非経穴部の刺激で出現する鎮痛 (NAA) も下垂体の除去で出現しなくなり, 非経穴から下垂体に到る求心路の最上部は視床下部前部 (NAA-AH) にあるが, P-HARNは鎮痛発現に共通に働く.AAとNAAの求心路の活動で, P-HARNが働く機序と下垂体との関係を検索した.痛覚閾はラットの尾逃避反応により, 薬物の脳内への微量適用は挿入したカニューレを介して行い, 下垂体は経耳的に除去した.P-HARNへのナロキソン微量適用で用量依存的にAAの出現は阻止され, また同部へのモルヒネまたはβ-エンドルフィンの微量適用により用量依存的に鎮痛が出現した.AA無効群の動物に閾値量を僅かに越えるモルヒネまたはβ-エンドルフィンをP.HARNに投与し針刺激を与えると有効群と同程度の鎮痛が出現した.下垂体除去後, 消失したAAは, 閾値量を僅かに越えるモルヒネまたはβ-エンドルフィンをP-HARNに投与し経穴部に刺激を与えると復活した.NAA発現の求心路のNAA-AHあるいはP-HARNにデキサメサゾンを微量投与するとNAAは用量依存的に拮抗され, 同部へのACTH投与で用量依存的に鎮痛が出現した.下垂体除去後閾値量を僅かに越えるACTHをP-HARNに投与し非経穴部の刺激を与えるとNAAは復活したが, NAA-AHへの投与ではNAAは復活しなかった.AAおよびNAAはハロペリドールのP-HARNへの投与で用量依存的に拮抗され, 同部へのドーパミンの投与で用量依存的に鎮痛が出現した.以上の結果より, AAでは弓状核の中央部と後部, およびNAAではNAA-AHとP-HARNとの間には神経性の連絡があり, この間のシナプス伝達はドーパミンと予想された.経穴および非経穴刺激で下垂体を介する機序でβ-エンドルフィンとACTHが遊離され, これらがそれぞれ弓状核におけるAAおよびNAAのドーパミンシナプス伝達にシナプス前性に働くことおよびAAの脊髄上位でAA無効群を有効群に転化するモルヒネの作用点は弓状核でβ-エンドルフィンがシナプス前性に働く部位であることが示唆された.
  • 山田 孝一
    1989 年 49 巻 4 号 p. 351-360
    発行日: 1989/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    筋線維構成と筋の機能との関係を探る一環として, オットセイ下咽頭収縮筋の筋線維構成を検査し, ヒトおよびニホンザルと比較してその特徴を明らかにした.材料はオットセイの雌10頭 (平均年齢7.0歳平均体重31.6kg) から得られたもので, 咽頭を喉頭とともに摘出, 10%中性ホルマリン中に保存した.次いで咽頭収縮筋を剖出, 観察の後, 下咽頭収縮筋の中腹部で筋線維走行に直角に全長にわたって筋断片を採取, ゼラチン包埋, 凍結薄切した.これらの切片についてSudanB1-ackB染色を施し, 筋線維を赤筋線維, 白筋線維, 中間筋線維の3型に分別し, 断面の筋線維数および筋線維断面積を計測した。結果: 1) オットセイの下咽頭収縮筋は中咽頭収縮筋の尾側に接するが, 両者間に筋層の重畳は認められないで筋の吻側端から輪状に走行していた.2) 咽頭収縮筋は縫線部長平均58.7mmでヒトの約40%長であり, 下咽頭収縮筋部はその内の約52%を占めていた.また, 筋層の厚さの平均は2.8mmでヒトの1.6倍, 筋重量は左右合わせて平均で6.59であった.3) 筋線維については, 筋腹横断面積は305.0mm2, 1mm2中の筋線維数781, 筋線維総数236, 885の平均で, 1mm2中の筋線維数はヒトおよびニホンザルのそれとおおよそ等しかった.また, 3筋線維型の比率の平均は白筋線維55.7%, 中間筋線維26.4%, 赤筋線維は17.9%で白筋線維はすべての例で50%以上であった.4) 筋線維の太さの平均は, 白筋線維1271.7μm2, 中間筋線維720.3μm2, 赤筋線維551.3um2で, その分布型は白筋線維, 中間筋線維, 赤筋線維の順に右方に偏する正規分布型を示し, 白筋線維は低く, しばしば右方に第2峰が見られた.5) 筋線維の密度は全線維の平均で76.4%, その内白筋線維54.4%, 中間筋線維14.3%, 赤筋線維7.7%で, 全例とも同順位であった.すなわち, オットセイの下咽頭収縮筋は吻側端から輪状走行となり, 層が厚く, 白筋線維の発達が著しいことから, 速収縮性で蠕動運動が強いと解することが出来た.
  • 辻 まゆみ, 児玉 恭子, 小口 勝司
    1989 年 49 巻 4 号 p. 361-365
    発行日: 1989/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Zinc N- (3-aminopropionyl) -Lhistidine (Z-103) の膜作用についてL-carnosineおよび硫酸亜鉛を比較対照として検討した。動物は, 体重約160g, 6週齢のSD系雄性ラットを用いた.50%低張性溶血試験において, Z-103および硫酸亜鉛は4×10-5Mから溶血阻止作用がみられ, その強度は両化合物で同程度であったが, L-carnosineは10-3Mで20%の溶血阻止作用がみられた.初代培養肝細胞において, L-carnosineおよび硫酸亜鉛を処置した肝細胞よりもZ-103を処置した肝細胞からの酵素逸脱抑制作用は強かった.また, 表面張力およびDPPC liposome bilayerの相転移温度に対する作用は, ほとんど認められなかった.今回の実験において, Z-103の膜作用は, 硫酸亜鉛の膜作用と類似しており, Z-103がL-carnosineと亜鉛のキレート化合物であることより, Z-103の膜作用はL-carnosineにも存在するが, おもに亜鉛により生じたものと推察された。また, Z-103による膜安定化作用は, 界面活性作用および膜流動性に変化を与えなかったことより, 膜のlipid bilayerに作用するのでなく, 主に, キレート化した亜鉛が膜のamino acidに作用する可能性が, 推測された.
  • 山岡 成章
    1989 年 49 巻 4 号 p. 366-379
    発行日: 1989/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    体組成の年齢的変化を明らかにするために, 発育期における第4腰椎椎体高のCT写真の観察を行い, 成人と比較してその特性を明らかにした.また, 骨格筋についてはおのおのの発達状況を検討した.研究対象は2~17歳の幼児期から青年期に至る46名 (男性26, 女性20) であり, 観察は写真計測により, 総断面積と皮下脂肪, 腹腔, 筋および骨の断面積の計測を行い, 筋は腹直筋, 側腹筋, 腰方形筋, 固有背筋, 大腰筋に区分し, おのおのの断面積を比較観察した.結果は次のごとくである.1) 発育期の総断面積の増加は男性では10~14歳期まで著明であったが, 女性では15~17歳期にも著明でそのまま成人最高期につながる傾向が認められた.2) 個々の構成要素について見ると, 皮下脂肪の増加は男性では10~14歳期まで, 女性では15~17歳期まで続き女性に著明であった.筋と骨は男女とも15~17歳期まで増加したが, 筋では男性の方が女性よりも著明であった.以上については総断面積比も同様な傾向を示していた.3) これに対して腹腔は男女とも発育期には加齢的に増大したが, 総断面積比は逆に減少して15~17歳期には最低に達し成人20歳代と等しく, 2~4歳期は最も高くて成人の70歳代と等しかった.4) 各年代における組織構成の特徴を見ると, 男性では10~14歳期までは腹腔, 筋, 皮下脂肪, 骨の順に大で成人の40歳代以降と等しく, 15~17歳期は筋, 腹腔, 皮下脂肪, 骨の順で成人の20歳代および30歳代と等しかった.これに対して女性では10~14歳期までは男性と等しく, 15~17歳期は皮下脂肪, 筋, 腹腔, 骨の順で20歳代と等しかった.5) 発育期の筋の増大は各筋男女とも連続的で, 15~17歳期には成人最大年代に比べて腹直筋は大であったが, 他の筋は男性では小で, 女性では一般に等しく固有背筋のみ小であった.すなわち, 男性では腹直筋以外のすべての筋が, 女性では固有背筋のみが成人期にも著しく増大すると考えられた.6) 男女各年齢期とも側腹筋, 固有背筋, 大腰筋, 腹直筋, 腰方形筋の順に大であったが, 腰方形筋は成人に比べて相対的に劣っていた.7) 他 (McGilleta1.) と比べて成人では体組成において皮下脂肪が, 筋では大腰筋と腹直筋がそれぞれ劣る傾向が見られたが, 大腰筋との差は発育期から大で基本的な体型の差が考えられた.
  • 唐津 邦利
    1989 年 49 巻 4 号 p. 380-385
    発行日: 1989/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    健康な日本人成人104名 (男性17, 女性87: 平均年齢51歳) について, 人体カリウム40Kを計測し, 体格指数, 皮脂厚, LBM (Lean Body Mass) との関係を検討するとともに, 他と比較して日本人体質の特徴を検討した.結果は次のごとくである.1.人体カリウム40K値は, 男性で122±15g, 女性で82±10gであり, 男性は女性の約1.5倍であった.なお, 女性について年齢層別にみると, 高年層 (60歳以上) では低値を示し, 高齢者で減少する傾向がうかがわれた.2.LBMは, 男性で52±5kg, 女性で40±6kgで, 年齢層別には, 壮強期がやや大であり, %Fatは, 男性で14±4%, 女性で25±7%と女性が優位であった.3.カリウム40K値と体組成との相関関係をみると, LBMとの間では男女共高く, 皮脂厚と体密度とでは, 女性にのみ有意な相関が見られた.4.カリウム40K値と体格指数との関係をみると, ケトレー (W/H) とカウプ (W/H2) 指数では男女共比較的高い相関関係が見られた.5.本研究のカリウム40K値からLBMの推定予知式は, 男性用Lm=0.309K+14.054 (r≒0.9) , 女性用Lf=0.302K+15.388 (r≒0.6) , 共通用L=0.310K+14.071 (r≒0.8) , より簡易な式としては, 男性用Lm=40K/2.4, 女性用Lf=40K/2.0となった.6.本式と, Forbesらの式およびBoddyの式による計算値を比較すると, 両者による場合共, 本式によるよりも低値になったが, Boddyの式とは有意な差がなかった.
  • 門倉 光隆, 谷尾 昇, 虫明 孝康, 横川 秀男, 斎田 清彦, 村上 厚文, 井上 恒一, 舟波 誠, 山本 登, 高場 利博, 荒井 ...
    1989 年 49 巻 4 号 p. 386-389
    発行日: 1989/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    高齢者に対する外科治療は, 近年めざましいものがあるが, とくに慢性膿胸ではその基礎疾患や併存疾患に伴って, 呼吸機能低下が著明となった症例にしばしば遭遇することがあり, その治療法選択は慎重でなければならないと考えている.慢性膿胸に対する治療は長期におよぶことが多く, ことに高齢者では手術適応とされず, 持続的なドレナージ状態のまま, 長期入院を余儀なくされる症例もみうけられる.当科ではかかる症例に対して, バルーン・カテーテル挿入によるドレージを行い, 皮膚固定の簡略化とともに, 従来からの胸腔ドレーン留置に起因する疼痛の緩和など, 管理法の工夫によって入院期間の短縮化を計っている.今回, その適応, 挿入方法ならびに管理法などについて報告する.
  • 宮坂 圭一, 菱田 豊彦
    1989 年 49 巻 4 号 p. 390-394
    発行日: 1989/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    レーザー照射 (Nd-YAG) を, 進行癌7例, 進行癌術後再発3例, 早期癌9例に行った.進行癌では7例中3例がMRの効果であり, 狭窄の改善が3例, 止血効果は4例に認められた.また, 進行癌の術後再発では3例中1例に狭窄の改善を認めた.進行癌ではレーザー照射による延命効果は認めないが, 狭窄の改善, 止血効果は期待できる.早期癌では, 9例中5例がCR, 1例がPRの効果であった.CRの内訳は, IIa+IIc型早期癌2例, IIc型早期癌2例, IIa型早期癌1例であった.早期癌に関して, 隆起性病変には, strip biopsy, polypectomyが有効であるが, 陥凹性病変にはレーザー照射が有効な治療法といえる.
  • 症例報告および自験8例の病理組織学的検討
    国村 利明, 三枝 利徳, 諸星 利男, 神田 実喜男, 松村 堅二
    1989 年 49 巻 4 号 p. 395-400
    発行日: 1989/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    64歳女性で著しい肝内銅沈着を伴ったPBCの1症例を経験したので, 比較検討の対象として同じく典型的なPBCの8例を加え, 合わせて病理組織学的に肝組織の検索を行った。本症例の1回目の生検肝組織はStageIIIを呈し, ロダニン染色にて銅は小葉周辺部肝細胞に瀰慢性に沈着しており, クッパー細胞, グリソン鞘内マクロファージにも認められた.2回目の生検肝組織では前同よりも進行したStageIIIで銅沈着は前回と同部位により著明に認められた.剖検肝組織はStage IVを呈し偽小葉周辺部肝細胞を中心にクッパー細胞, グリソン鞘内マクロファージに高度の胆汁欝滞を伴って認められた.対象として加えた8例を合わせて分析した結果, 銅沈着は小葉周辺部肝細胞を中心に認められStageの進行とともに著明となる傾向が認められたが, 血清銅値, 胆汁欝滞の程度とは直接的な関係はみられなかった.従来, 銅沈着を肝細胞以外に認めたとする報告はないが, 本検索ではクッパー細胞, グリソン鞘内マクロファージにも認められた.このことは長期におよぶ胆汁欝滞により胆汁の類洞への漏出や小葉間結合組織への逆流が生じた結果と考えられた.以上より, 肝組織への銅沈着には小葉問胆管の崩壊による長期におよぶ胆汁欝滞が大きく関与していると考えられた.
  • 森保 幸治, 横川 秀男, 太田 宏, 山本 登, 高場 利博
    1989 年 49 巻 4 号 p. 401-404
    発行日: 1989/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性, 他院にて僧帽弁逸脱症候群の外来followup中に全身倦怠感を主訴に同院に入院した, 精査の結果僧帽弁腱索断裂と診断され, 保存的に治療を行ったが左心不全症状増強し, コントロール不能となったため, 当科に転科し緊急僧帽弁置換術を施行した.術中所見では前尖の後交連側のstrut chordaが断裂しており, 前尖の約1/3が翻転する状態であった.術後心機能は順調に改善し第47病日目に退院した.粘液変性を原因とする僧帽弁逸脱症候群は, 弁尖の翻転による腱索への過度の張力負荷が常にかかっており, また長期に経過する場合は, 心臓自体に負荷に対する適応が出来上がっていることが多く症状の発現は緩徐なことが多い.僧帽弁逸脱症候群の経過観察中は, 十分定期的な検査を行い, 逆流量が増加傾向を示す場合, また臨床症状が増悪する場合時期を逸せず外科的処置を行うべきものと考えられた.
  • 橋本 俊明, 平良 雅人, 大坪 天平, 西島 久雄
    1989 年 49 巻 4 号 p. 405-408
    発行日: 1989/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    単科精神病院において分裂病性欠陥状態で長期経過中の分裂病患者が, 一過性に失見当識, 健忘, 思考滅裂あるいは散乱などの意識障害様の病像を呈し, 回復後, 脳器質性欠陥状態を感じさせる病像を呈するに至った2症例を経験した.これらより, 分裂病患者に脳器質性疾患を合併しうること, それにより痴呆化しうること, その治療として抗精神病薬の増量は悪化を招き, 同薬の減量ないし中止や脳循環改善剤, 脳代謝改善剤の投与などが有効であること, 脳器質性病変は必ずしも肉眼でとらえ得るものではなく, 多発性梗塞やその前段階としての動脈硬化や微小梗塞などの存在も無視できないと考えられた.
  • 中山 貞男, 小口 勝司, 鈴木 誠, 岡崎 雅子, 小口 勝司, 呉 育興, 王 〓, 桜井 淑子, 笠原 多嘉子, 小口 勝司, 臼杵 ...
    1989 年 49 巻 4 号 p. 409-414
    発行日: 1989/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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