疎水性胆汁酸であるglycochenodeoxycholic acid (GCDCA) のRLN-8細胞におけるアポトーシス誘発作用を検討した.本実験では, 正常ラットの肝臓より分離・株化された肝細胞 (RLN-8 cell) を用い, GCDCAの各濃度 (100μM, 200μM, 500μM) を2時間から12時間まで処置した.処置後, アポトーシスの評価は, DNA断片化の検出およびformamideによる一本鎖DNA (ssDNA) 測定より行った.また, アポトーシス誘発によりミトコンドリアから細胞質に遊離したcytochrome cおよび細胞質内caspase-8, -9, -3の活性, さらに, ミトコンドリア膜電位の変化を蛍光像により観察した.FasおよびBax αのmRNA発現はRT-PCRで検討した.GCDCAを処置したRLN-8細胞においてDNA断片化が観察され, 処置6時間以降, 処置時間に依存したssDNA濃度の有意な増加が認められた.ssDNAはアポトーシス細胞にのみ選択的に反応する事からRLN-8細胞においてもGCDCAによりアポトーシスが誘導される事が実証された.また, caspase活性においては, GCDCA 200μM, 500μMの処置6時間以降, 無処置細胞に比べ有意に上昇した.ミトコンドリアから細胞質内に遊離したcytochrome c濃度は, 処置4時間以降, 処置時間に依存した増加が認められた.さらに, ミトコンドリア膜に特異的に凝集する蛍光試薬により検討した結果GCDCA処置6時間後のRLN-8細胞は, ミトコンドリア膜電位の変化を示す蛍光像が見られた.mRNAレベルにおけるFasの発現はGCDCA処置2時間後の早期より見られ, また, Bax αの発現はGCDCA 200μMおよび500μM処置4時間以降で, 無処置細胞に比べ発現量が増大した.以上の結果, 疎水性胆汁酸であるGCDCAはRLN-8細胞においても低濃度で早期よりアポトーシス誘発作用を示すことが実証された.更に, RLN-8細胞におけるGCDCAのアポトーシス誘発メカニズムとしては, Fasを介した経路およびBaxによるミトコンドリア膜上のpore形成による経路が示唆された.
抄録全体を表示