長期透析患者に後天性多嚢胞化萎縮腎 (acquired cystic disease of kidney, ACDK) が発生することはよく知られている. 今回外傷などの誘因なく発生したACDKの自然破裂の3例を経験した. 症例1は54歳, 男性. 1994年11月5日血液透析終了し帰宅後 (透析終了後約2時間後) より左側腹部痛出現し, 次第に増強, 11月6日午前1時来院. 精査, 加療目的にて入院となった. 腹部CTにて両側腎に多発性の嚢胞を認め, 左腎の著明な腫大, および後腹膜腔へ広がる血腫を認め, ACDKの自然破裂と診断した. Htの低下, Kの上昇を認め, メシル酸ナファモスタットを用いて血液透析を施行し, 保存血800m
lを輸血した. 以降貧血の進行を認めず, 11月23日退院となった. 症例2は51歳, 男性. 1993年10月12日血液透析終了し, 帰宅後より左側腹部痛出現し, 次第に増強. 10月13日外来受診. CTにて左腎の著明な腫大を認め, ACDKの自然破裂と診断. 症例1と同様メシル酸ナファモスタットを用いて血液透析を施行し1000m
lの輸血, 安静にて全身状態は改善. 症例3は41歳, 男性. 1997年1月16日午前8時頃より左側腹部痛を認め外来受診. 腹部CTにて左腎の著明な腫大と後腹膜腔への血腫の進展を認め, 加療目的に入院. 高K血症に対し, メシル酸ナファモスタットを使用し血液透析施行するも開始1時間後より血圧低下し, プレショック状態となったため透析を中止. 貧血に対して保存血計1200m
lを輸血し, 安静にて全身状態の改善を認めた. 透析患者が腹痛を訴える場合, ACDKの自然破裂を考慮する必要があり, 緊急性を有する重篤な合併症である. 症状とCTより診断は比較的容易であるが, 貧血が進行すれば致死的となりうるため早急かつ的確な判断が求められる疾患である.
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