日本透析医学会雑誌
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40 巻, 11 号
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原著
  • ―平成15および18年のアンケート結果の比較―
    稲葉 洋子, 斎藤 雅文, 西岡 正登, 吉矢 邦彦, 宮崎 哲夫, 吾妻 眞幸, 山梨 利顕, 足立 陽子, 申 曽洙, 寺杣 一徳, 宮 ...
    2007 年 40 巻 11 号 p. 889-895
    発行日: 2007/11/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    兵庫県透析医会危機管理委員会では, 県下の透析施設における院内感染対策と危機管理に関する現状把握や啓蒙活動の一環として, 平成15年および18年にアンケート調査を行った. いずれも, 60%を超える回答率であった. 幸い, 平成18年には肝炎ウイルスの新規感染は報告されなかった. エリスロポエチンシリンジ製剤の使用率は74%から93%へ, ルアロック採用率は62%から96%へ, 生食置換返血法は37%から57%へ改善した. 一方, 感染対策委員会を設置している施設割合が91%から88%へ, 危機管理委員会を設置している施設割合が88%から84%へ減少した. また, 認知症に由来するアクシデントが15件報告された. 平成18年には災害時のスタッフ派遣についても設問し, 兵庫県透析医会として医師31名・看護師98名・臨床工学士62名の派遣が可能との回答であり, 災害対策への意欲の高いことが示された.
  • 山本 壱弥, 小林 直之, 松永 篤彦, 齊藤 正和, 米澤 隆介, 忽那 俊樹, 石井 玲, 松本 卓也, 福田 倫也, 守屋 達美, 増 ...
    2007 年 40 巻 11 号 p. 897-906
    発行日: 2007/11/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    維持血液透析 (HD) 中に生じる血圧低下の原因として, 自律神経障害による血管収縮能の低下が関与することが知られているが, HD中の血圧低下の発生機序を詳細に検討し自律神経障害との関係について言及した報告は極めて少ない. 本研究は, 最大エントロピー法を用いてHD中の心拍変動を解析し, HD患者における透析時低血圧の発生機序について検討した. 日中にHD治療を受けている慢性腎不全患者56例を対象とし, HD中の血圧変化によって2群に分類した. すなわち, HD開始時の収縮期血圧と比較して, HD中の収縮期血圧の低下が30mmHg未満の患者を血圧不変群, 収縮期血圧が30mmHg以上低下した患者を血圧低下群とした. HD中は30分毎に血圧と心拍数を測定し, 患者背景因子として年齢, 性別, BMI, 糖尿病合併の有無, dry weight, 左室駆出率, BNPを調査した. 除水量はHD前後の体重変化をHD後の体重で除した除水率で評価した. 動脈硬化度の指標として, HD開始前に動脈波伝播速度 (PWV) を測定し, 身体活動量は国際標準化身体活動量質問表 (IPAQ) を使用して1週間の消費エネルギーを推定した. 自律神経活動の評価は, HD開始前にHolter24時間心電図を装着し最大エントロピー法にて心電図RR間隔の心拍変動解析を行い, 高周波成分 (HF) を副交感神経活動, 低周波成分 (LF) とHFとの比 (LF/HF) を自律神経活動のバランス, エントロピーを心拍変動の乱雑性の指標とした. 患者背景因子は両群間で有意差を認めず, 血圧低下群は, 血圧不変群と比較してPWVが有意に高値を (p<0.05), 1週間の身体活動量は有意に低値を示した (p<0.01). 血圧不変群はHD中にHF, LF/HF, エントロピーが有意に増加したが (それぞれp<0.01, p<0.01, p<0.05), 血圧低下群はHD中にHF, LF/HFは有意な変化を示さず, エントロピーは有意に低下した (p<0.05). HD中の血圧低下の出現機序として, 動脈硬化性病変の進行に起因する末梢血管の収縮・拡張能の障害に加えて, 自律神経障害による血圧維持の代償不全が主な要因であると思われた.
  • 小松 まち子, 日下 まき, 久米 惠司, 南 幸, 水口 潤, 川島 周, 島 健二
    2007 年 40 巻 11 号 p. 907-912
    発行日: 2007/11/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    維持血液透析中の患者233名 (非糖尿病 (N) 154名, 糖尿病・食事療法併用 (DM-Diet) 25名, 糖尿病・薬物療法併用 (DM-Drug) 54名) を対象にブドウ糖100mg/dLを含む透析液を用いた透析の開始前 (HD前) と終了前 (HD後) の血糖値を測定し, 透析中の血糖変動の実態を調査した. 透析中に摂食しない場合では, N群, DM-Diet群の血糖値はHD後に有意に低下し (p<0.0001), 摂食した場合に比してHD後血糖が有意に低く, 透析前後の血糖落差 (血糖差) も有意に大であった (p<0.05). 摂食しない場合のHD後血糖は, すべての群の約90%以上の対象者でHD前より低下し, N群の80%で100mg/dL未満, 12%で70mg/dL未満に, DM-Diet群の75%で100mg/dL未満になり, いずれも摂食した場合に比較して有意に高率であった (N群 : p<0.0001, DM-Diet群 : p=0.009). 次に, 血糖変動に関与する因子の検討を目的に, 透析中に摂食しないN群をHD後血糖と血糖差により, 1A : HD後血糖≧70mg/dLかつ血糖差<25mg/dL (31名), 1B : HD後血糖≧70mg/dLかつ血糖差≧25mg/dL (20名), 2A : HD後血糖<70mg/dLかつ血糖差<25mg/dL (2名), 2B : HD後血糖<70mg/dLかつ血糖差≧25mg/dL (6名) と分類し, 血清インスリン値 (Ins), 腎実質容積を比較した. Insは各群とも透析後に有意に低下し, 血糖差と透析前Insに有意の正相関があり, 1B群のHD前Insが1A群より有意に高値であった. 腎実質容積は各群間で差がなかった. 以上より, 透析中に摂食しない場合, 透析液にブドウ糖が添加されていても, 糖尿病, 非糖尿病例ともに低血糖に対する注意が必要であり, 透析前Ins高値が透析中の血糖低下の一因と考えられた.
症例報告
  • 伊藤 建二, 福島 隆生, 中下 尚登, 玉井 路加子, 木脇 祐聡, 安部 泰弘, 小河原 悟, 村田 敏晃, 斉藤 喬雄
    2007 年 40 巻 11 号 p. 913-918
    発行日: 2007/11/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    メシル酸ナファモスタット (nafamostat mesilate : NM) は出血傾向を有する患者や術後などの血液透析の際に, ヘパリンに代わる抗凝固薬として使用されている. 比較的安全性の高い薬剤であるが, 近年NMによる重篤なアレルギーも報告されている. われわれは, NMを抗凝固薬として用いた血液透析の際に異なった症状のアレルギー反応を示した2症例を報告する. 症例1は54歳女性. ループス腎炎による末期腎不全のため血液透析に導入され, 透析歴は24年であった. 変形性頸椎症の手術前の透析でNMを使用した後に38度台の発熱がみられた. 症例2は64歳女性. 腎硬化症による末期腎不全のため血液透析に導入され, 透析歴は9年であった. 増殖性網膜症に対する硝子体手術後の透析でNMを使用した際にアナフィラキシーショックを発症した. 両者とも過去にNMの投与歴があったが, その際に明らかな異常はみられていなかった. これらの2例と過去に報告された35例を合わせて, 体外循環に関連するNMアレルギーの特徴を検討した. 透析導入の原疾患や透析歴, ダイアライザーなどに明らかな特徴はなかったが, 記載されている限り全症例で過去にNM投与歴があった. さらに, アレルギー症状別に特徴を検討したところ, ショック群では好酸球増多が少ないがリンパ球幼若化試験がほとんどの症例で陽性であり, 発熱群では透析歴が有意に長く, CRPの陽性率が高かった. さまざまな透析の状況で, NMの使用機会は増えているが, 現時点ではアレルギー発症の予測は困難であり, NM使用の際には常に注意が必要である.
  • 前野 七門, 中西 正一郎, 神田 孝一, 静川 裕彦, 辻 幸子, 寺江 聡, 大越 隆一, 竹山 吉博, 作田 剛規, 松村 欣也
    2007 年 40 巻 11 号 p. 919-924
    発行日: 2007/11/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    われわれは糖尿病性腎症による腎不全症例に生じた急性可逆性パーキンソニズムの2症例を経験したので報告する. 【症例1】56歳, 男性症例で, 突然構音障害・動作緩慢・歩行困難が出現したが, 約8か月で寛解した. 発症時脳magnetic resonance imaging (MRI) 上T2強調画像で大脳基底核に対称性異常高信号を認めたが, 2か月後異常信号はほぼ消失していた. 【症例2】66歳, 男性症例で, 突然脱力, 構音・嚥下障害, 歩行障害が出現したが, 約7か月で寛解した. 発症時MRI上大脳基底核にT2強調で対称性異常高信号を認めたが, 5か月後異常陰影はほぼ消失していた. 文献的にはアジア人の糖尿病性末期腎不全症例での報告が多く, 病因は大脳基底核の血流障害や尿毒症物質, 代謝異常の影響などが推察されるが詳細は不明である. 病像は橋外髄鞘融解症にも類似点が多く, 関連性について今後の検討が必要と思われる. 予後は良好なことが多いが, 合併症による死亡例もあり注意を要する.
  • 塩津 弥生, 八田 告, 丹田 修司, 立川 弘孝, 槙 系, 澤田 克徳
    2007 年 40 巻 11 号 p. 925-929
    発行日: 2007/11/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 男性. 既往は特になし. 肺炎球菌敗血症を発症, 急速に播種性血管内凝固症候群 (DIC), 多臓器不全に至った. 明らかな感染巣は認めず, CT上脾臓のサイズが小さく, 末梢血にてHowell-Jolly小体を認めたため, 急激な敗血症発症に脾臓低形成の関与が疑われた. 敗血症, 急性腎不全に対して持続的血液濾過透析 (CHDF), ポリミキシンB固定化カラムを使用したエンドトキシン吸着療法 (PMX-DHP) を施行, さらに肝不全に対して血漿交換などの集中的血液浄化を行ったが第14病日に死亡した. 脾臓は血液中に含まれる微小異物に対する最初のフィルターとなっており, また肺炎球菌莢膜多糖体抗体を産生している. 脾機能が低下した症例では莢膜を有する肺炎球菌感染が重症化しやすく, 本邦でも脾摘後重症感染症の報告は散見される. しかし成人の脾臓低形成における報告はほとんど認めず, 稀少な症例と考え報告する.
  • 大城 望史, 石川 哲大, 山下 正博, 水沼 和之, 福田 康彦, 田中 一誠
    2007 年 40 巻 11 号 p. 931-936
    発行日: 2007/11/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は74歳, 男性, 透析歴は11年. 食欲不振, 低血糖のため近医より当院に紹介入院となった. 腹部CT検査にて, 両側副腎の腫大を認め, コルチゾールは8.6μg/dLと正常値であったが, ACTHは328pg/mLと著明な上昇を認めたことから, 原発性副腎不全と診断した. Hydrocortisone 20mg/日の投与を開始したところ, 低血糖は是正され, 劇的な食欲の改善が得られた. それに伴い, ドーパミンは96pg/mLから16pg/mLに, ノルアドレナリンは1,117pg/mLから216pg/mLにいずれも改善した. 右上顎腫瘍の生検にてdiffuse large B-cell lymphomaと診断され, またGaシンチグラフィーにて右上顎のほか, 特に縦隔や両側副腎に高集積を認め, 副腎原発悪性リンパ腫による副腎不全であったと考えられた. 副腎原発悪性リンパ腫はまれな疾患ではあるが, 両側性のことが多く, 副腎不全をきたすことが多い. 維持血液透析患者に副腎原発悪性リンパ腫あるいは副腎不全をきたした症例は, 検索した限りでは報告がない. 副腎不全時のカテコールアミン代謝に対しても考察を加えて報告する.
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