日本透析医学会雑誌
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29 巻, 11 号
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  • 第41回日本透析医学会ワークショップより
    大平 整爾, 阿岸 鉄三
    1996 年 29 巻 11 号 p. 1447-1456
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 若林 良則, 藤田 陽介, 三浦 靖彦, 中野 広文, 西村 元伸, 土田 弘基, 山田 研一, 重松 隆, 川口 良人, 酒井 紀
    1996 年 29 巻 11 号 p. 1457-1462
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    低分子量ヘパリン (low molecular weight heparin, LMWH) は, 従来のヘパリン (unfractionated heparin, UFH) に比較して同一の抗Xa活性のもたらす凝固時間の延長作用が軽度であるため, 体外循環に十分な抗凝固作用を得ながら出血の危険を軽減できると期待される. また, LMWHはUFHよりも半減期が長く透析開始時の単回投与が可能であるとされているが, 単回投与では投与後早期に過剰な抗凝固が起こるおそれがあり, 凝固時間の不必要な延長が少ないというLMWHの長所が活かされない. そこで, 持続投与を必要とせず, 単回投与よりも安全であろうと思われる, LMWH分割投与法の有用性を検討した.
    安定した血液透析患者9名に対して, まず透析開始時にLMWHの単回投与を行い, その用量を回路内凝血の程度を指標に減量し, 最少必要量 (U/kg/h) を決定した. 次にLMWHを透析開始時と透析時間の半分経過の時点の2回に分けてbolusに静注し, さらに減量を試みた. 各投与法での最低用量使用時の, LMWH投与30分後の活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT) と全血凝固時間を測定した.
    LMWH総投与量は分割投与時で単回投与時よりも全例で減量し得た. 分割投与時のAPTTは, 1回目投与30分後42.0±16.0sec, 2回目投与30分後40.1±4.7secであり, いずれも単回投与30分後 (65.0±33.7sec) よりも有意に短縮していた. 全血凝固時間については有意差はなかったが同様の傾向にあった.
    LMWH分割投与法は, ポンプによる持続投与を要さない点において単回投与法と同様の長所を有しながら, 出血性合併症の危険を軽減し得るというLMWHの利点を単回投与法よりも大きく活かせる, 有用かつ安全な投与法である可能性がある.
  • 前野 七門, 中西 正一郎, 高松 恒夫, 町野 倫太郎, 北原 学, 丸 彰夫, 森田 穣
    1996 年 29 巻 11 号 p. 1463-1467
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性で, 右腎盂腫瘍に対して腎尿管全摘術施行後MRSA腸炎から敗血症性多臓器不全 (septic MOF) を発症し, 短時間の持続血液濾過透析 (short time CHDF), 血漿交換等にて加療した. その後下血が出現したため内視鏡検査を施行するも出血源は同定できなかった. 経時的に増悪する下血に対し血管造影検査を施行し, 小腸出血と診断し, 上腸間膜動脈内vasopressin持続動注およびnicardipine・octreotide併用投与を施行し止血・救命し得た.
    消化管出血を伴うseptic MOF症例に対し, CHDFを中心とする全身支持療法と血管造影検査・vasopressin持続動注を中心とした薬物治療はひとつの有効な手段であると思われた.
  • 湯浅 健司, 西川 宏, 福森 知治, 松本 茂, 小松 文都, 山本 晶弘, 寺尾 尚民
    1996 年 29 巻 11 号 p. 1469-1474
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    recombinant erythropoietin (r-HuEPO) 維持投与中で, Ht30%以上に維持できている血液透析患者 (r-HuEPO反応良好群) のうち鉄欠乏 (フェリチン (Frt)<50ng/ml) と診断した8名を対象に, 含糖酸化鉄静注を施行し, r-HuEPO投与量を意図的に減量し, 節約できるかを検討した. その際現状のHt値を大きく低下 (前値の10%以内) しないよう維持することに留意した.
    観察期間は投与前後3か月間とした. 鉄剤投与前, 1週当たり総r-HuEPO投与量は, 4,500±1,984単位, 鉄剤投与3か月後は, 1,875±992単位と有意に減量できており (p<0.01), 3か月後r-HuEPO投与量は, 投与前の41.6%であった. 投与後RBC, Hb, Fe, MCV, MCHC, Feには有意な変動はなかった. Frt, FeSIは鉄剤投与後有意の増加を (p<0.01, p<0.05), UIBCは有意の減少 (p<0.01) を認めた. Htは3か月後に有意に低下したが, 8例中2例で投与3か月後のHt値低下がみられたためであり, r-HuEPO投与量の大幅な減量がその原因と考えられた.
  • 金澤 良枝, 木村 佳子, 小倉 誠, 岡田 知也, 韓 明基, 高橋 宏実, 篠 朱美, 北條 敏夫, 中尾 俊之
    1996 年 29 巻 11 号 p. 1475-1478
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血清リン値のコントロールには, リン摂取制限による食事療法が基本である. 本研究はリン摂取量に対する透析間血清リン上昇度 (ΔP) の数量的解析を試み, これに基づいてリン摂取許容量を明らかにした.
    対象は残腎尿量100ml/日以下の維持透析患者13名, 平均年齢46.9±8.0歳, 透析歴77.2±36.1か月である. 対象者では週の終わりの透析後から週の初めの透析前 (中2日間) の食事摂取量調査, および透析後, 透析前の血清リン値を測定した. この間は, リン吸着薬の服用を中止とした. 対象者の1日平均リン摂取量は770±102mg/日であった. 透析前血清リン値は平均8.6±2.2mg/dl (4.3-11.6mg/dl) で, ΔPは平均6.5±2.3mg/dl (2.4-9.6mg/dl) あった. リン摂取量と透析前血清リン値, およびΔPとは相関関係を認めなかった. 透析前体重1kg当たりのリン摂取量とΔPは有意 (r=0.862, p<0.001) の相関関係を認め, Y=0.68X-2.88と表現された.
    以上より, 血液透析患者のΔPはリン摂取量と透析前体重によって規定されており, 目標とするΔPに対するリン摂取制限量は下記の式により求められると考えられた.
    PI=1.47×preBW (ΔP+2.88) PI; リン摂取量 (mg/日) preBW; 透析前体重 (kg) ΔP; 透析間血清リン上昇度 (mg/dl)
  • 中島 一朗, 赤松 真, 渕之上 昌平, 阿岸 鉄三, 太田 和夫, 小俣 正子, 佐中 孜, 二瓶 宏
    1996 年 29 巻 11 号 p. 1479-1484
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    CAPD導入患者9例とCAPDカテーテルの位置異常をきたした1例の計10症例に対し, それぞれ腹腔鏡下CAPDカテーテル留置術 (LPC) ならびに腹腔鏡下カテーテル位置変更術を施行した. なお前者のうち1例には, 腹腔鏡下胆嚢摘出術 (LC) と癒着剥離術を同時に行った. LPCは, 全身麻酔下に, 骨盤をかなり高位とした仰臥位で開始した. 臍部にφ10mmトロカールを留置し, 炭酸ガスによって気腹後腹腔鏡をセットした. その後トロカールを留置した対側の腹直筋中央部に約3cmの皮膚切開を加え, 後鞘と腹膜を一括して二重のタバコ縫合をかけてCAPDカテーテルを挿入した. その際用いるスタイレットの硬度を利用して腹腔鏡下に小骨盤腔へと誘導した. 小骨盤腔内に留置されたことを確認後内部カフを固定し, 皮下トンネルを作製した. 最後に腹腔内を再度確認したのち, 腹腔鏡を抜去して臍部を縫合閉鎖した.
    LPC施行例8例, 腹腔鏡下カテーテル位置変更例1例さらにLCと癒着剥離後のLPCを同時に行った1例の計10症例に留置したCAPDカテーテルの先端は, いずれも術後の腹部X線写真によって小骨盤腔内の存在が確認された. CAPDカテーテル留置後液漏れを示した症例はなく, 血液透析離脱までに要した日数は最短で4日, 最長で12日であり, 平均7.7±2.5日であった.
    術後の早期合併症は, 2例に創部感染を, 1例に出口部感染を認めたが, いずれも保存的治療にて軽快した.
    以上より腹腔鏡下にスタイレットの硬度のみを利用してCAPDカテーテルを確実に小骨盤腔内に誘導することができ, また小切開法と併用することによりカテーテルをしっかりと固定することが可能となった. その結果血液透析離脱までの日数を短縮できることが明らかとなった.
  • 中島 史雄, 木村 文宏, 鈴木 智史, 瀬口 健至, 大道 雄一郎, 浅野 友彦, 辻 明, 早川 正道, 中村 宏
    1996 年 29 巻 11 号 p. 1485-1489
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全の血液透析導入時に, 内シャントが十分発育するまでの期間, 大腿静脈カテーテルを一時的ブラッド・アクセスとして使用する際の問題点について検討した. 対象は, 大腿静脈にダブル・ルーメン・カテーテルを留置して血液透析を行った患者124名 (男性71名, 女性53名, 年齢21-87歳) で, 170本のカテーテルを用いて, 合計1,474回の透析を行った. 留置期間は3-92日間 (平均26.4日) であった. 124名中56名の患者で何らかの問題点を認めた. 内訳は発熱 (27名) と血流不全 (21名) が圧倒的に多く, 多量の出血や血腫, 自然抜去, 動脈穿刺, 強い疼痛等がこれに次いだ. 従って感染予防に努力することが最も効率よく合併症を軽減する方法と思われた. 大静脈血栓, 後腹膜血腫, 深部血腫等の重篤な合併症はみられず, 死亡あるいは透析不能となった患者もなかった. 最も多い合併症である38℃以上の発熱をみた27名の患者についてさらに検討すると, 38.5℃以上が11名あり, 4名は血液培養で菌が同定された. 発熱は大腿静脈穿刺後2-49日, 平均14.1日目にみられた. 次に, 発熱とカテーテル留置期間との関係を知るために, 5日毎に区切った留置期間毎の発熱発生率を検討したが留置期間と発生率の間に相関はみられなかった. また血液培養陽性であった4例の内訳は, 留置後5日で1例, 20日で2例, 22日で1例であった. 発熱予防のために一定期間毎にカテーテルを交換する施設もあるが, 以上の結果からは, 感染の頻度がそれにより減少するかは疑問であると思われた. 一方, 発熱時の血液培養での陽性例が4例みられ, そのうち3例が20日以上の長期留置例であった事実の解釈は例数が少ないため困難であり, さらに対象を増やしての検討が必要と思われた.
  • 前山 達也, 池田 裕次, 酒見 隆信, 大塚 容子, 田中 勝男, 十時 忠秀
    1996 年 29 巻 11 号 p. 1491-1494
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    各種液流量の計量およびフィードバック機構を備えた, 持続血液濾過透析用ベッドサイド・コンソールの精度テストを行い, 本システムの有用性を臨床の場での使用経験を含めて報告した. 以前我々が使用していたベッドサイド・コンソールは, ローラーポンプの回転数のみによる濾液量制御システムのため, 設定値との間の誤差が大きく, 大量の液置換に伴い, 水・電解質バランスに大きな異常をきたす可能性があり, 厳重な管理を必要とする集中治療の領域においては多くの問題を擁していることが示された.
    今回テストを行った新システムにおいては, 同様にローラーポンプを用いた方法ではあるが, 定期的に各ポンプの流量を測定し, ポンプの回転速度の調整を行うフィードバックシステムを備えている. in vitroのテストの結果から, 誤差率0.2%という優秀な結果が得られた. また実際の臨床使用においても, さまざまな外因を是正しながらin vitroテストと同様の誤差率が得られた.
    このように優秀な装置である反面, 実際の臨床使用において複雑な制御であるがゆえのいくつかのトラブルも経験し, より一層の改良が期待された.
  • 加藤 政雄, 杉浦 美宏, 神谷 映里, 櫻井 尚, 新 典雄, 宮本 晃子, 大橋 篤, 村上 和隆, 長谷川 寛, 川島 司郎
    1996 年 29 巻 11 号 p. 1495-1501
    発行日: 1996/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    過酢酸は殺菌作用と洗浄作用を持つ消毒剤であるが, これを血液透析終了後の透析液回路の消毒と洗浄に用いた場合の有用性について検索した. まずはじめに, 過酢酸原液の過酢酸と過酸化水素の濃度を滴定法により測定した. 過酢酸原液の含有量は過酸化水素30%, 過酢酸6%であった. 次いで過酢酸原液で個人用透析機を消毒し, その洗浄排液中の過酢酸の残留濃度を測定した. 消毒時の過酢酸濃度は0.131%, 30分の洗浄後0.008%, 60分の洗浄後0.005%以下であった. この結果より水洗時間は60分ほどで充分と考えられた. 次に過酢酸の殺菌効果を次亜塩素酸Naと比較するために大腸菌などの細菌を殺菌する試験管内実験を行った. 種々の濃度に希釈した過酢酸と次亜塩素酸Na溶液に約109cfu/mlの細菌を含む各種の細菌液を注入した. この溶液から検体を経時的に取り出して, BHIブイヨン2mlで37℃, 48時間培養し, その殺菌効果を見た. 0.1%の過酢酸溶液はCandida albicansに対し30秒で殺菌効果があり, 次亜塩素酸Naは5分で殺菌効果があった. 多人数透析機とその透析液供給回路を0.1%の過酢酸で消毒した後, 洗浄液の細菌数とエンドトキシン濃度を測定した. 細菌数は消毒前5-66cfu/mlから消毒後0-1cfu/mlに, エンドトキシンは123.9±37.3EU/lから66.2±23.0EU/lに減少した. 過酢酸の洗浄効果を評価するために洗浄後の排液側のシリコン管の内表面をポンソー3Rと亜硝酸銀で染色し, それぞれ蛋白とCaの除去効果を見たが, 蛋白, Caの残存は観察されなかった. また, 走査電顕による観察でもシリコン管の表面に残渣は見られなかった.
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