低分子量ヘパリン (low molecular weight heparin, LMWH) は, 従来のヘパリン (unfractionated heparin, UFH) に比較して同一の抗Xa活性のもたらす凝固時間の延長作用が軽度であるため, 体外循環に十分な抗凝固作用を得ながら出血の危険を軽減できると期待される. また, LMWHはUFHよりも半減期が長く透析開始時の単回投与が可能であるとされているが, 単回投与では投与後早期に過剰な抗凝固が起こるおそれがあり, 凝固時間の不必要な延長が少ないというLMWHの長所が活かされない. そこで, 持続投与を必要とせず, 単回投与よりも安全であろうと思われる, LMWH分割投与法の有用性を検討した.
安定した血液透析患者9名に対して, まず透析開始時にLMWHの単回投与を行い, その用量を回路内凝血の程度を指標に減量し, 最少必要量 (U/kg/h) を決定した. 次にLMWHを透析開始時と透析時間の半分経過の時点の2回に分けてbolusに静注し, さらに減量を試みた. 各投与法での最低用量使用時の, LMWH投与30分後の活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT) と全血凝固時間を測定した.
LMWH総投与量は分割投与時で単回投与時よりも全例で減量し得た. 分割投与時のAPTTは, 1回目投与30分後42.0±16.0sec, 2回目投与30分後40.1±4.7secであり, いずれも単回投与30分後 (65.0±33.7sec) よりも有意に短縮していた. 全血凝固時間については有意差はなかったが同様の傾向にあった.
LMWH分割投与法は, ポンプによる持続投与を要さない点において単回投与法と同様の長所を有しながら, 出血性合併症の危険を軽減し得るというLMWHの利点を単回投与法よりも大きく活かせる, 有用かつ安全な投与法である可能性がある.
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