家庭血液透析の至適透析液供給方式を検討した. 透析液の作製方式には, 連続的に作製するon-line式と, あらかじめ必要量を作製しておくbatch式があるが, 経済性と透析液組成の安定性の面で優れているbatch式を我々は採用した. 次に透析液の循環方式として, recirculation式とsingle-pass式を理論的に比較したところ, 透析効率はsingle-pass式のほうが高く, 血液流量 (Qb) が200m
l/分, 透析器のoverall mass transfer-area coefficientが600m
l/分のとき, 尿素分布容積30
lで1週間当たりのKT/V=3.6を達成するのに, 240分週3回透析で60
lの透析液が必要と考えられた. これらの結果に基づき, Qb 200m
l/分・透析液流量 (Qd) 250m
l/分のsingle-pass batch式週3回透析を, 2名の男性腎不全症例で行い, Qd 500m
l/分の通常の透析と比較検討した. ダイアライザーには1.6m
2のポリスルフォン膜を用いた. 透析効率の評価には, 尿素窒素 (UN) とクレアチニン (Cr) の溶質動態をvariable-volume two-compartment modelを用いて解析した. 二種類の透析治療の間で, 平均溶質濃度に有意差はみられなかったが, Qdの減少により, UNの不均衡補正後のKT/V (KT/Ve) は0.943から0.852へ10%低下し (P=0.053), CrのKT/Veは0.709から0.676へ5%低下した (P=0.153). このUNのKT/Veの低下は, 240分透析では30分の透析時間の延長で代償可能と考えられた.
家庭透析の透析液供給方式としてQd 250m
l/分のsingle-pass batch式は, 充分実用に耐えるものと考えられた. タンク容量は300分までの透析時間の延長も考慮して, 週3回透析で約80
lが必要と思われた.
抄録全体を表示