日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
44 巻, 7 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 岩渕 仁, 中原 徳弥, 岡本 真智子, 浅野 学, 小口 健一, 黒川 清, 山西 八郎, 舘田 一博, 山口 惠三
    2011 年 44 巻 7 号 p. 617-622
    発行日: 2011/07/28
    公開日: 2011/08/26
    ジャーナル フリー
    感染症は本邦における透析患者の死因として第2位にあげられる.なかでも敗血症は直接生命を脅かすものとして最も警戒すべき感染症である.最近9年間に自施設で経験した敗血症症例を集積し解析を行った.延べ205名の患者に計465回の血液培養検査を試み,陽性率は23.7%であった.この結果73例が臨床的に敗血症と診断された.患者背景として糖尿病合併は46例,カテーテル留置ありは47例であった.菌種については球菌:桿菌の比率は約4:1であり,最も頻度の高い菌種はブドウ球菌であった.メチシリン耐性ブドウ球菌の検出頻度は増加していた.転帰については過半数の38例が経過中に死亡した.メチシリン耐性菌がそのうちの24例を占め,致死率の高さが再認識された.また多変量解析の結果,危険因子としてCRPならびに血小板数の減少が死亡リスクを高めることが判明した.
  • 原 道顯
    2011 年 44 巻 7 号 p. 623-628
    発行日: 2011/07/28
    公開日: 2011/08/26
    ジャーナル フリー
    手首上腕血圧比や指上腕血圧比は,動脈硬化の進行に伴い低下するが,測定時の状態や合併症によっても変化する.今回,維持透析患者73例を,血液透析中に各々30回,上腕血圧,手首血圧,第2指基部血圧を測定し,2,190個のデータとして,影響する因子を検討した.各血圧比に影響する因子を,1)測定ごとに変化する測定因子(上腕収縮期血圧,上腕脈拍,血液透析の前半・後半)と,2)症例ごとに変化する動脈硬化因子(年齢,透析歴,喫煙・糖尿病・脂質異常症・心血管系合併症の有無,高血圧は正常血圧例が少なく除外)と,3)症例ごとに変化するその他の因子(心房細動・測定側の内シャント術遺残の有無)に分け検討した.これらの因子間と因子を構成する要素間には独立性が仮定され,また,各血圧比と要素との関係は2変量の関係から連続尺度では直線関係があって単回帰分析で解析でき,順序尺度・名義尺度では平均値の変化があって独立した2群の差の検定で解析できたことより,血圧比は各要素を説明変数とする質的変数を含む重回帰分析で解析できると考えられた.実際,重回帰分析の解は2,190個のデータをよく説明するものであった.
  • 安藤 誠, 前島 愛子, 角田 朋美, 辻田 知圭子, 藤井 佑希, 福島 正樹
    2011 年 44 巻 7 号 p. 629-635
    発行日: 2011/07/28
    公開日: 2011/08/26
    ジャーナル フリー
    【目的】下肢の循環不全がひき起こす深部静脈血栓症の理学的予防法として用いられる間欠的空気圧迫法(IPC)は機械的圧迫により下肢からの静脈還流を増加させる.われわれは,下腿のIPCが血液透析(HD)中の末梢循環および全身の循環動態に及ぼす影響について検討した.【方法】末梢循環はパルスオキシメータの原理を応用した灌流指標(PI)を用いて下肢末梢で評価し,全身の循環動態は,連続的ヘマトクリット測定装置による循環血液量変化率(%ΔBV)と総蛋白濃縮度(%ΔCPV)を用いて評価した.同時に,IPCによる末梢循環の変化が溶質除去に及ぼす影響についてもクリアスペース率(CSR)およびKt/Vを用いて検討した.【結果】%ΔBVはHD開始から直線的に低下し,PIはHD開始60分以後経時的に低下した.IPCの施行により%ΔBVの低下はHD開始60分以後で有意に抑制され,PIの低下はHD開始180分以後で抑制される傾向にあった.また,HD中のPIの時間平均値と尿素窒素,クレアチニンのCSRとの間には有意な相関関係を認めたが,IPCによるCSRとKt/Vの上昇は認めなかった.【考察】HD中の末梢循環の改善は全身の循環動態に影響を及ぼすが,溶質除去については有意な改善がみられない.HD中における下腿のIPCは,末梢循環を改善し循環血液量の低下を抑制することで全身の循環動態を安定させるものと考えられた.
症例報告
  • 福島 栄, 竹本 文美, 草野 英二
    2011 年 44 巻 7 号 p. 637-641
    発行日: 2011/07/28
    公開日: 2011/08/26
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性,現病歴:56歳時に2型糖尿病に起因する末期腎不全で血液透析を導入され通院透析中であった.発症2か月前より右下肢痛が増悪して,整形外科で治療を受けていたが,症状は軽減せず,糖尿病性神経障害による疼痛の診断で麻酔科を受診した.同科にて末梢性神経障害性疼痛治療薬のリリカ®(一般名:プレガバリン)を1日量150mg,2回分服で処方され服用を開始した.服用開始後3日目より浮遊感,傾眠,脱力感が出現し,服用4日目に当院の救急外来に搬送され神経学的所見,理学所見,頭部CT,血液検査,服薬歴からプレガバリンの過量投与による副作用症状と考えられた.プレガバリンは蛋白結合能が低く透析性が高いため治療としては,連日3日間の血液透析を施行,3回目の透析治療後に症状はほぼ消失した.治療前のプレガバリンの血漿中濃度は,17.4μg/mLで通常維持量での最大血漿中濃度の2.8倍に達していた.また血液透析による薬物濃度低下率は60%を上回っていた.プレガバリンは,腎排泄型薬剤であり,透析患者を含む腎機能障害患者には用法用量を遵守して使用される必要がある.また,過量投与に際しては血漿中に遊離型が多く存在し血液透析が有効と考えられた.
  • 山田 琢, 吉澤 威勇, 上田 裕之, 大塚 泰史, 加藤 尚彦, 栗山 哲, 細谷 龍男
    2011 年 44 巻 7 号 p. 643-648
    発行日: 2011/07/28
    公開日: 2011/08/26
    ジャーナル フリー
    Calciphylaxisは,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)に合併する骨・ミネラル代謝異常(mineral and bone disorder:MBD)の一型で,その発症要因は不明とされる.今回,われわれは長期透析を受けている白人男性で,下腿皮膚の有痛性多発性潰瘍により受診し,皮膚生検にて確定診断に至った一例を経験した.Calciphylaxisは難治性のCKD合併症であるが,本症例においてはチオ硫酸ナトリウムを投与したところ,有痛性皮膚潰瘍の著明な改善を観察した.本疾患は,CKD-MBDとしてもまれな病態であるものの,長期血液透析患者の増加とともに注目されてきており,透析医にとってその病像を認識する必要があると思われる.
  • 越智 文美, 若井 幸子, 中山 一誠, 安井 由紀子, 加賀 俊江, 雫 淳一, 阿部 恭知, 遠藤 真理子, 小倉 三津雄, 新田 孝作
    2011 年 44 巻 7 号 p. 649-654
    発行日: 2011/07/28
    公開日: 2011/08/26
    ジャーナル フリー
    維持透析療法において,透析患者の高Ca血症は骨ミネラル代謝異常の一部であり,高頻度に認められる.また,それにより血管石灰化,ひいては,心血管イベントをひき起こす.透析患者における高Ca血症の原因として,Ca製剤の過剰投与,活性化ビタミンDの過剰投与,高度の二次性副甲状腺機能亢進症などを第一に考え治療を行った.しかし,これらの治療に抵抗性の高Ca血症を呈し,精査を行い,サルコイドーシスの診断に至った維持透析の症例を経験したので報告する.症例は64歳,男性.2004年,多発性嚢胞腎からの慢性腎不全にて維持透析導入.二次性副甲状腺機能亢進症に対して,沈降炭酸Ca,塩酸セベラマー,アルファカルシドールを内服し,コントロール良好であった.2006年夏頃より高Ca血症,intact PTHの低下を認め,アルファカルシドールを中止したが,2007年5月頃よりCa 11.8mg/dLと上昇し,沈降炭酸Ca減量中止とした.8月にはCa 12.4mg/dLとなり,低Ca透析に変更,エルカトニン投与を開始した.12月両側肺門リンパ節の腫脹,ツベルクリン反応陰性,Ga集積像陽性,気管支肺胞洗浄にて総細胞数,リンパ球の増加,CD4/CD8比の上昇を認め,サルコイドーシスの診断に至り,副腎皮質ステロイド治療を開始し,すみやかにCa値は正常化した.維持透析患者の高Ca血症はミネラル代謝異常の一部であるが,治療抵抗性の場合,鑑別診断としてサルコイドーシスも考慮すべきである.
Letter to the Editor
feedback
Top