気管支喘息が好酸球浸潤を中心とした慢性の気道炎症と定義されて以来, 治療においても吸入ステロイドやロイコトリエン拮抗薬を中心とした抗炎症療法に注目が集まっている.テオフィリンも昨今, 抗炎症作用を有することが報告されているがその組織病理学的, 機能的検討は少ない.今回我々はモルモット気管支喘息モデルを用いてテオフィリンのもつ抗炎症作用をプランルカストと比較検討した.卵白オボアルブミン (以下OVAと略す) を用いて感作を成立させた喘息モデルモルモットにOVAチャレンジ (吸入) 及び投薬 (プランルカスト10mg/kg/d, テオフィリン7mg/kg/dともに経口) を29日目から33日目, 36日目から40日目まで行い, その前後での気道過敏性の変化, 病理組織学的変化を非感作群 (n=6) , 感作群 (n=6) , プランルカスト投与群 (n=6) , テオフィリン投与群 (n=6) の4群間で比較検討した.好酸球浸潤 (好酸球数/一気道断面) : テオフィリン群の区域気管支で上皮下層p<0.01, 平滑筋層p<0.01と感作群と比較して明らかな好酸球浸潤の抑制がみとめられた.また, 平滑筋層においてはプランルカスト群と比較しても明らかな好酸球の浸潤抑制をみとめた (p<0.01) .細気管支では薬剤投与による好酸球浸潤の抑制はみとめられなかった.気道壁 (μm
2) : 区域気管支で感作群と比較してテオフィリン群でp<0.05と明らかな壁肥厚の抑制がみとめられた.しかしながら区域気管支のその他の群間, および細気管支での各群間には統計学的な差はみとめられなかった.気道過敏性 (倍) : チャレンジおよび投薬前後での気道過敏性の変化を検討した.感作群と比較してプランルカスト投与群でp<0.05, と気道過敏性の改善がみとめられ, テオフィリン投与群ではp<0.1と改善傾向がみとめられた.
以上よりテオフィリンはモルモット気管支喘息モデルにおいて好酸球の浸潤を抑え, 気道壁の肥厚を抑制し, 気道過敏性の改善を認めることが判明した.また, テオフィリンの抗炎症作用は区域気管支で顕著にみとめられた.好酸球浸潤に関してはステロイド吸入療法では効果の期待できない区域気管支の平滑筋層にも有効であることが判明した.今後, 長期コントローラーとしてテオフィリンの抗炎症作用に一層の期待がもたれる.
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