日本透析医学会雑誌
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31 巻, 9 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 第42回日本透析医学会ワークショップより
    川崎 忠行, 秋葉 隆
    1998 年 31 巻 9 号 p. 1237-1242
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 櫻井 祐成, 栗原 怜, 竹内 正至, 大和田 一博, 小野田 教高, 米島 秀夫, 秋葉 隆
    1998 年 31 巻 9 号 p. 1243-1249
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    最近, 慢性透析 (HD) 患者における骨の代謝回転を正常に保つ上に必要な副甲状腺ホルモン (PTH) が十分に分泌されていない副甲状腺機能低下症 (Hypo) が極めて高頻度に認められることが明らかとなった. しかし, Hypoの長期にわたる経過は明らかにされていない. 今回, 当施設で1989年と1995年にIntact (I)-PTHを測定していたHD 92症例について, [絶対的Hypo群: I-PTH<60pg/ml, 相対的Hypo群: 60≦I-PTH<160pg/ml, Normal群: 160≦I-PTH<300pg/ml, Hyper群: 300pg/ml≦I-PTH] の4群に分類して, Hypoの発生頻度とI-PTHの推移, および骨密度への影響について検討した. 透析液のCa濃度は一定であった. 絶対的Hypo患者の比率は, 1989年の53/92例 (57.6%) から1995年には22/92例 (23.9%) へと減少 (p<0.001) し, {絶対的+相対的} Hypo患者としても74/92例 (80.4%) から57/92例 (62.0%) へ減少 (p<0.01) していた.
    1989年に絶対的Hypoに属した53例中32例 (60.4%) が1995年にはより高値の群 (Normal群へ3例, Hyper群へ5例) へ移行していた. 血清CaとPは1989年と1995年で差はなく, また各年の4群間においても有意の差を認めなかった. 炭酸カルシウムの平均投薬量は1989年が3.2g/日, 1995年が3.5g/日と差を認めなかったが, 活性型ビタミンD (vit. D) の平均投薬量は, 1989年の0.30μg/日から1995年の0.16μg/日へと減少 (p<0.0001) していた. 腰椎骨密度 (L2-4BMD) については, 1989年が0.93±0.15g/cm2, 1995年が0.94±0.19g/cm2と有意の変化を認めなかった. 両時点ともに絶対的Hypoに属した17症例でのL2-4BMDの5年変化率も低下を認めなかった. 以上, この5年で当施設における絶対的Hypo例の60.4%にPTH分泌能の改善が認められ, 絶対的Hypoの発生頻度は明らかに低下していた. vit. D投薬の減量とHypoの発生頻度の低下との間に関連が推測された. 一方, 絶対的Hypoが長期間持続しても腰椎骨密度の低下は認められなかった.
  • Shinya Nakamura, Chao Long Yang, Kaori Nakayama, Masato Kayama, Koshin ...
    1998 年 31 巻 9 号 p. 1251-1257
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    rHuEPO (EPO) 投与の副作用には高血圧症がある. その成因の一つには貧血の改善による血液粘稠度の亢進があげられる. 今回, 我々はEPO投与直後ならば赤血球数の増加はないであろうという想定で本薬剤の昇圧作用の検討を行った. 対象は透析患者29名, 慢性腎不全保存期患者15名の2群. 生食でEpoetin-βを溶解し, 前者に3,000U, 後者に6,000U (総量2.0ml) を静注し, その前後で血圧測定と採血を行った. なお持続性降圧剤は前日夜から, 通常の降圧剤は当日早朝中止させ, 仰臥位で安静60分後に開始し, さらに60分安静をとらせた. なお対照は全く同じ方法で生食2.0mlを静注した.
    また血圧測定のほか, 前後でnoradrenaline, adrenaline, aldosterone, reninなどの昇圧物質やendothelin-1 (ET-1) の採血を行った. 結果: 末梢血液所見は2群ともまたその対照群でも, 予想通り前後間で全く変動がなかった. 血圧 (前, 30, 60分; mmHg) は透析群142.7/76.5, 145.1/78.6, 150.9 (p<0.05)/79.5. 保存期群139.5/74.8, 147.5/83.2 (p<0.05), 154.3 (p<0.005)/85.1 (p<0.005), 平均血圧 (前, 後) は透析群98.6, 103.3, 保存期群96.3, 108.1 (p<0.005) であった. なお対照群では全く上昇しなかった. ET-1は透析群 (前vs後) で15.4±3.5 vs 18.1±4.2pg/ml, 保存期群でも13.7±4.3 vs 16.3±4.4pg/mlと上昇した (p<0.05). 両対照群は前, 後間で全く変動しなかった. また昇圧物質は前後で2群とも, またその両対照群でも上昇がなかった. EPO投与により60分後に血圧とET-1の上昇をみたが, この血圧上昇の成因には, 一般に考えられている貧血の改善の関与は少なく, むしろ本薬剤の直接作用かET-1の関与が想定される.
  • 長見 英治, 古川 康隆, 堀 和芳, 斎藤 晃, 山崎 英隆, 市川 久志, 青木 康之, 堀川 哲彦, 犬丸 達也, 新井 貴士, 百瀬 ...
    1998 年 31 巻 9 号 p. 1259-1266
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析中の除水によって起こる著しい血圧低下を早期発見するための新しい透析監視システムの研究として, 血液回路の動脈および静脈の圧差 (AV圧差) と分光法的非観血的hematocrit (Ht) 測定装置CRIT-LINEモニターでの連続的なHt (CLM-Ht) を測定し, 収縮期血圧 (SBP) との関係を12症例に実施し以下の知見を得た. 1) 年齢別, 原疾患別にかかわらずAV圧差およびCLM-Htの変化率とSBPの間に有意な負の相関関係があった. 2) AV圧差およびCLM-Htの変化率の上昇を+20%未満にとどめることで透析中の著しい血圧低下を防ぐことができた.
    以上よりAV圧差およびCLM-Htを連続的に測定することは透析監視システムとして臨床上有用であると考えられた.
  • 岸川 英史, 山中 幹基, 坪庭 直樹, 古賀 実, 西村 憲二, 小角 幸人, 辻村 晃, 北村 雅哉, 高原 史郎, 松宮 清美
    1998 年 31 巻 9 号 p. 1267-1271
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全患者に高率に起こるといわれている男性性機能障害の腎移植による変化を調べるため, 当科にて施行した男性腎移植患者に対し, 性機能に関するアンケート調査を行い, 57例の回答を得た. うち42例で血中luteinizing hormone (LH), follicle-stimulating hormone (FSH), prolactin (PRL), testosterone (T), free T値を測定した. 性交頻度は血液透析時, 腎移植後ともに低く, 全体としては腎移植にて顕著な増加は認めなかったが, 透析療法中に性機能障害のため性交不能であった9例のうち6例が腎移植後性交可能となったが, これらの症例の腎移植時年齢はいずれも40歳以下であった. 勃起能, 射精状態を含めた性機能では11例で腎移植後改善を認めた. 性機能の改善群と非改善群で血清クレアチニン値, 免疫抑制法, 透析期間, 血中ホルモン値等について検討したが, 有意差は認めなかった. 血中ホルモン値は移植後ほぼ正常値に復していた. 以上より慢性腎不全患者における性機能障害の要因は内分泌系以外に加齢により不可逆的になる血管系, 神経系などめ変化が考えられ, 性機能の回復には早期の腎移植が望ましいものと思われた.
  • 阿部 薫, 椎名 充, 星野 正信, 山本 明広, 芝本 隆, 秋葉 隆
    1998 年 31 巻 9 号 p. 1273-1278
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    目的: 水道水中に含まれるエンドトキシン (ET), ベータグルカン (BG), ペプチドグリカン (PG) を指標としてハイフラックス膜 (HFM) 通過の有無を検討した.
    方法: HFM透析器はセルローストリアセテート膜 (FBF, ニプロ), ポリメチルメタクリレート膜 (BKF, 東レ), ポリスルホン膜 (PSN, 川澄およびAPS, 旭メディカル) で対照に再生セルロース膜 (RCM, 旭メディカル) を用いた. 血液側, 透析液側ともに注射用蒸留水で洗浄後0.05%ETフリーアルブミン溶液にて再循環した. 循環5分後に開始時測定を行い透析液側に水道水を接続しendotoxin specific test (ES), high sensitive test (HS), silkworm larvae plasma test (SLP) を用い経時的にET, BG, PGを120分まで測定した. 測定は和光純薬ES, HS, SLPキットおよびMT-358を用いた. ES活性はETのみ特異的に反応し, HS活性はET, BGに, SLP活性はBG, PGに反応することから分別測定した.
    結果: ES活性は全膜とも血液側の検出限界以下と透析液側の活性減少を認めた. HS活性は全膜とも血液側の上昇と透析液側の低下を認めた. RCMの血液側で活性は最も高値を示し, 次いでPSN, BKF, FBF, APSの順であった. SLP活性は全膜とも血液側および透析液側の上昇を認め, RCMの血液側で最も高値を示し, 次いで, PSN, FBF, APS, BKFの順であった.
    結語: ES活性からETはHFMおよびRCMの膜通過は確認できず, 透析液側の膜面に吸着を認めた. HS活性からBGはHFMを通過する可能性が考えられ, RCMでは膜素材由来のBGの溶出が確認された. SLP活性物質の血液側上昇はBGおよびPGの膜通過のみでは説明できず, 何らかの遊離活性化物質または産生機序の存在が推測された. また, 水道水にSLP活性反応が示されることより, 水道水を用いた実験系の有用性が示唆された.
  • 田中 寛, 吉本 充, 河合 誠朗, 大町 哲史, 藤井 孝祐, 草嶋 久生, 町田 正明, 百々 研次郎
    1998 年 31 巻 9 号 p. 1279-1283
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    ニューキノロン系抗菌薬であるfleroxacin (FLRX) の体内動態を, 5例の維持血液透析患者において検討した. 本剤100mgを単回服用後, 血清中未変化体は2.4時間でピーク濃度1.87μg/mlに達した. 血中半減期は非透析時31.9時間, 透析時6.62時間であり, 透析クリアランスは69-74ml/分と健常人における腎クリアランスに匹敵し, 4時間の透析による薬物の除去率は28%であった. 今回の成績から, 血液透析患者の非透析時の血中半減期が著明に延長し, 健常人の約3倍に達することおよび本剤が充分な透析性を有することが示唆された. また, 単回投与の結果から反復投与時の血清中濃度をシミュレートすると, 週3回の血液透析を施行する場合, FLRX 100mgを1日1回投与する方法が至適投与方法と考えられた.
  • 槙林 弘之郎, 辻 博子, 大橋 誠治, 土井 俊夫, 武曾 恵理, 篠山 重威, 松島 宗弘, 内田 三千彦, 金津 和郎
    1998 年 31 巻 9 号 p. 1285-1290
    発行日: 1998/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチ (RA) に対してmethotrexate (MTX) 低用量パルス療法を施行し, 早期に汎血球減少症となった維持透析患者の2症例を経験した. 症例1:46歳, 女性, 血液透析歴16年. RAの治療にMTX 5.0mg/週で2回投与した後, 突然大量の性器出血をきたし, 緊急入院となった. 入院時の白血球数200/μl, Hb 3.8g/dl, 血小板数3.5万/μlと汎血球減少症をきたしていた. MTXによる骨髄抑制と考え, granulocyte colony stimulating factor (G-CSF) 製剤, 赤血球, 血小板輸血, 抗生剤の投与を行った. 第12病日に白血球数3,600/μlと正常化した. 症例2:49歳, 女性. 血液透析歴9か月. RAの治療目的にて入院した. Prednisolone, NSAIDs投与にても関節痛が改善しないため, MTX低用量パルス療法を施行した. MTXを2.5mg/週で2回投与した後に白血球数300/μl, Hb 5.8g/dl, 血小板数1.3万/μlと汎血球減少症をきたした. MTXによる骨髄抑制と考え, G-CSF製剤, 赤血球, 血小板輸血, 抗生剤, leucovorinの投与を行い, 第19病日に白血球数6,700/μlと正常化した. MTXは腎不全症例では排泄遅延のため, 副作用が強くでる可能性がある. MTXの50-60%がアルブミンと結合するため, 通常の血液透析ではMTXの除去は不十分で血中濃度が高値となりやすい. また, 本症例のごとくMTX少量投与で短期間のうちにアレルギー反応と思われる副作用が発現しているため, 透析患者においても副作用の出現のリスクが高く, MTXは少量投与であっても使用しないほうが望ましいと思われる.
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