日本透析医学会雑誌
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38 巻, 8 号
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  • 中司 敦子, 神崎 資子, 岩田 康義, 高木 章乃夫, 池田 弘, 福島 正樹
    2005 年 38 巻 8 号 p. 1385-1390
    発行日: 2005/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    糖尿病性腎症の保存期腎不全の期間と透析導入時の臨床像, 腎不全進行に関与した因子について検討した. 糖尿病性腎症による末期腎不全で当院で血液透析導入となった58症例 (男性36例, 女性22例, 平均年齢62.8±10.6歳) について, 血清クレアチニン値2.0mg/dLの時点から透析導入までの期間が2年未満のA群と2年以上のB群とに分け, 臨床的に比較検討した. A群はB群に比し約10歳平均年齢が低く, 有意に尿蛋白量が多く, 血清アルブミン値が低く, 腎サイズが保たれていた. 一方, B群は脳梗塞の合併率が高かった. また, 重回帰分析で, 保存期腎不全の期間は, 高年齢と腎長径が小さいことと正の相関を示した. これらよりA群は細小血管症である糖尿病性糸球体硬化症が, また, B群では大血管症である腎硬化症が主に関与した病態と考えられた. 個々の症例における保存期腎不全の期間は, これら2つの病態の関与の程度の違いを反映しているものと考えられる. 高齢者の糖尿病透析患者が増加している近年, 腎硬化症が糖尿病性腎症の進行に大きな影響を与えている.
  • 沼澤 理絵, 久木田 和丘, 澤村 祐一, 中尾 康夫, 米川 元樹, 川村 明夫
    2005 年 38 巻 8 号 p. 1391-1395
    発行日: 2005/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    ダイアライザーのアルブミン漏出量の違いがグリコアルブミン (GA) 値に与える影響を検討した. 2種類のダイアライザーPS [ポリスルホン膜, 透析一回あたりアルブミン漏出量2.85g], またはMRC [表面改良セルロース膜, 透析一回あたりアルブミン漏出量1.7g] を1年間使用した46名を対象とし, 糖尿病の有り (DM) 無し (nonDM), および使用ダイアライザーによってnonDM-PS群 (n=13), nonDM-MRC群 (n=12), DM-PS群 (n=11), DM-MRC群 (n=10), の4群に分類した. ダイアライザー使用開始前, 2か月後, 6か月後, 12か月後の各時点でGA値を測定し, その推移を比較した.
    GA値の変動は使用ダイアライザーで違いがみられた. nonDM-PS群およびDM-PS群ではいずれもダイアライザーの使用開始2か月後においてGA値が有意に低下し, その後6か月にかけて有意に上昇して開始前のレベルに戻った. nonDM-MRC群およびDM-MRC群では経過を通じて有意な変動は認められなかった. ダイアライザーのアルブミン漏出量増大によってGA値は短期的に低下するが, 長期的にはアルブミン代謝回転などの諸因子により相殺される可能性が示唆された.
  • 新妻 晋一郎, 中浜 肇, 中村 敏子, 吉原 史樹, 加藤 とあこ, 稲永 隆, 中谷 敏, 河野 雄平
    2005 年 38 巻 8 号 p. 1397-1402
    発行日: 2005/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    ドブタミン負荷心エコー (DSE) は, 虚血性心疾患 (IHD) の診断に有用であり, 心血管事故の発症予測に有効であると報告されている. 以前当施設においても慢性腎不全患者のIHDの診断に有用であることを報告した. 今回DSEを施行した慢性腎不全患者の心血管事故の予後について検討した. 対象は慢性腎不全患者40例 (Cr 4.8±0.4mg/dL) (慢性糸球体腎炎12例, 糖尿病性腎症17例, 腎硬化症9例, その他2例) である. ドブタミン負荷により壁運動異常が認められなかったM群, 壁運動異常が認められたA群, 不整脈, 頻脈, 血圧上昇や低下のため検査を中断したS群の3群に分け, 2004年1月までの心血管事故の予後を検討した. 追跡調査が可能であったのは38例 (A群8例, M群14例, S群16例) であり, 平均年齢は65±10歳, 平均追跡期間は24±9か月であった. 心血管事故 (心不全増悪, 血行再建を要する虚血性心疾患) の発症はM群 (14%) に比較してA群 (75%) とS群 (69%) において有意に多かった (p<0.04). DSEは慢性腎不全患者における心血管予後推測に有用であることが示唆された.
  • 維持透析患者のHIT抗体陽性は血液凝固のリスクファクターとなりうるのか?
    小西 修二, 小西 秩英子, 竹下 薫, 松川 誠, 多鹿 順子, 伴 孝仁, 福田 淑子, 岡留 哲也, 東 敬子, 岡本 久美, 三上 ...
    2005 年 38 巻 8 号 p. 1403-1408
    発行日: 2005/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    抗PF4/heparin複合体抗体 (HIT抗体) 陽性のheparin使用中の維持透析患者においてHITを発症せずに経過していたが, 突然の透析器の凝固およびシャント閉塞直後に血液回路内凝固をきたしHITを発症した2症例を経験したので報告する. 症例1は68歳, 女性. 2001年に血液透析導入し, 抗凝固剤はheparinを使用していた. 2002年4月にHIT抗体を測定し, 陽性であったが著変なく経過していた. 同年8月に透析器に多量の残血を認めた. Low molecular weight heparinに変更するも残血は同様であった. 以後, nafamostat mesilateを使用し残血は消失したが, 現在もHIT抗体は陽性である. 症例2は71歳, 男性. 1996年に血液透析導入となり, 抗凝固剤にはheparinを使用していた. 2000年, 2003年, 2004年と3度のシャント閉塞の既往あり. 2002年4月にHIT抗体を測定し, 陽性であった. 3度目のシャント閉塞をきたした次の透析時も抗凝固剤にheparinを使用したが透析開始30分後に血液回路内凝固により回路交換を余儀なくされた. この時のHIT抗体も陽性であったためHITと診断し, 次回の透析から抗凝固剤はnafamostat mesilateに変更したが透析開始3時間後に血液回路内凝固により透析を中止した. 以後の透析よりargatrobanを使用し残血なく経過しているがHIT抗体は現在も陽性である. Heparin使用初期におけるHIT発症の頻度は3.9%と報告されている. 2002年に当院の維持透析患者129例に対してHIT抗体の測定を行った. その結果, HIT抗体陽性者は5例 (3.9%) であった. HITはheparin使用初期にのみ発症するのではなく, HIT抗体を有する症例が維持透析患者にも存在し, 本症例のように維持透析期において突然HITを発症する症例が存在することを常に念頭においておく必要がある.
  • 吉雄 陽子, 宮崎 正信, 中沢 将之, 西岡 克章, 新里 健, 坂本 一郎, 原田 孝司, 大園 恵幸, 河野 茂
    2005 年 38 巻 8 号 p. 1409-1414
    発行日: 2005/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    わが国での透析患者は年々増加し, また高齢化の一途をたどっており, 多数の合併症を有する患者が増えていることが予想される. 透析患者が腹痛を訴えた場合, 消化器疾患が原因であることが多いが, 中には腎自然破裂や大動脈解離の場合もあり, 早急な判断が必要となることがある. 今回, 大腸憩室炎の経過中に腎自然破裂を合併し, 腹痛と腹部腫瘤の鑑別に苦慮した症例を経験した. 症例は64歳男性. 透析歴12年. 2002年大腸憩室炎の既往あり. 2003年2月7日血液透析後に下血が出現. 貧血の進行と黒褐色便, 腹痛を認めたため大腸憩室炎など消化管病変が疑われた. その後腹痛の増強と, 新たに左側腹部に圧痛を伴う腫瘤を触知するようになり, 貧血もさらに進行しショック状態となったため当院入院となった. 腹部CT検査と左腎動脈造影検査の結果, 左腎破裂との診断にて左腎動脈塞栓術を施行し, 輸血を行ったところ次第に全身状態は改善した. また入院時便潜血反応陽性であり, 消化管出血の精査を行ったところ, 腸管内に多発する憩室と凝血塊を認め, 経過から大腸憩室炎による消化管出血が疑われた. 絶食・安静にて消化管出血と腹痛は改善している. 透析患者が腹痛を訴えた場合, 頻度的には虚血性腸炎や大腸憩室炎など消化管疾患であることが多いが, このほか, 大動脈解離や腎破裂など消化管以外の疾患の鑑別もすることが重要である.
  • 2005 年 38 巻 8 号 p. e1
    発行日: 2005年
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
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