日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
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57 巻, 7 号
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原著
  • 篠崎 信人, 臼井 直人, 小野﨑 彰, 阿部 義史, 岡村 大介, 小島 将, 佐藤 陽一, 白井 信行, 三上 健太, 長島 瑞希, 山 ...
    原稿種別: 原著
    2024 年57 巻7 号 p. 285-292
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/28
    ジャーナル フリー

    血液透析(HD)患者の通院手段と身体活動量(PA)との関連を検討した.8施設401例のHD患者を,通院手段により徒歩(公共交通機関含)群,自家用車群,送迎群の3群に分類した.PAは国際PA調査票(IPAQ Short Version)で評価し,低身体活動(Low)に該当する場合をPA低下と定義した.PA低下と通院手段の関連を全対象および年代別に解析した.身体機能を含む共変量で調整後も,徒歩群に比べて自家用車群,送迎群はPA低下と関連を示した(p<0.05).年代別では,壮年者(65歳未満)は自家用車群(p=0.04),前期高齢者(65~74歳)は送迎群(p<0.001)が,徒歩群と比較してPA低下と関連を示した.一方で後期高齢者(75歳以上)は,通院手段とPA低下の間に関連はなかった.壮年~前期高齢HD患者では,透析施設への通院手段が,身体機能から独立してPA低下の一因であることが示された.

  • 加藤 未沙稀, 鈴木 麻斗香, 服部 彩華, 野本 恵美, 草津 綾美, 伊藤 恭彦, 今井 美恵
    原稿種別: 原著
    2024 年57 巻7 号 p. 293-301
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/28
    ジャーナル フリー

    腹膜透析(PD)は患者教育が重要であり,指導には専門的知識の習得が求められる.PD導入時,病棟看護師のPD経験値はさまざまで指導の均一性が保たれていない現状があった.患者指導を適切なレベルに保つため,若手病棟スタッフへの教育方法の確立が重要と考えた.スタッフがPDの基礎知識・手技を定着することを目指し,『PD指導評価表』を用い,実際に行った患者指導を振り返ることを目的とし『リフレクションシート』を用いた.『PD指導評価表』のみでは,患者の個別性が反映されない知識の確認のみに陥る傾向があるが,『リフレクションシート』を併用することで,患者の個別性を反映した指導の重要性を学ぶことができると考える.PD導入期指導における若手スタッフ教育において,本『PD指導評価表』と『リフレクションシート』を用いた教育は効率的かつ有効な一指導法と考える.今後,この教育方法による患者指導の質向上への寄与を把握したい.

症例報告
  • 大寺 紗夜, 牧田 実, 川村 拓朗, 古川 將太, 島本 真実子
    2024 年57 巻7 号 p. 303-309
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/28
    ジャーナル フリー

    58歳女性.35歳で腎ドナーとして右腎を摘出した.その後,婦人科疾患術後の癒着性イレウスのため,回腸瘻およびS状結腸瘻を造設された.回腸瘻の排液が過剰なため,容易に脱水症となり入退院を繰り返した.頻回の点滴治療で四肢の末梢静脈が荒廃し,中心静脈カテーテルや皮下植込み型中心静脈ポートを留置するも,カテーテル感染を度々起こした.脱水による急性腎不全を繰り返し末期腎不全に至った.X年,自己血管での血液透析を希望され,エコーガイド下内頸静脈直接穿刺法による単針透析で治療を開始した.透析効率を向上させるため動脈表在化を作製し,上腕動脈から脱血を行い,内頸静脈へ返血し透析を継続している.本症例はバスキュラーアクセスの選択に苦慮した維持透析患者であるが,内頸静脈直接穿刺法はエコーを使用し安全に実施可能であり,末梢血管が荒廃したりカテーテル感染が懸念されたりする症例では,有用な方法である.

  • 伊崎 智彦, 服部 敬太, 石川 稜恭, 森 希, 山﨑 倫子, 渡邊 智治
    2024 年57 巻7 号 p. 311-317
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/28
    ジャーナル フリー

    非結核性抗酸菌(NTM)による腹膜透析関連腹膜炎(PD関連腹膜炎)の発症は稀であり,とくに迅速発育抗酸菌(rapid growing mycobacterium:RGM)による症例の報告は限られている.われわれは,Mycobacterium abscessus(M. abscessus)によるPD関連腹膜炎をクラリスロマイシン(CAM)耐性を考慮した抗菌薬選択により治療が奏効した1例を経験したため報告する.患者は50歳の男性で,PD関連腹膜炎の診断で入院した.抗生剤による初期治療を行ったが改善に乏しく,第3病日にNTMのcolonyの発育を認めたため迅速発育菌による腹膜炎と判断し,イミぺネム(IPM),アミカシン(AMK),シプロフロキサシン(CPFX)の三剤併用療法を行った結果,炎症反応の改善を認めた.RGMにはCAM耐性が報告されており,M. abscessusにおいては,79.3~93.8%の頻度で耐性を獲得しているとされている.耐性機序に関しては,erm遺伝子やrrl遺伝子の関与が明らかになっており,M. abscessusの亜種によって耐性化率に差がある.NTMの中でもRGMの頻度が高く,NTMを疑った際は,RGMを考慮した抗菌薬選択を行うべきである.

  • 大宮 千明, 古賀 健一, 岩本 修平, 石田 裕貴, 村田 幹, 山岡 諭史, 長谷部 雅子, 福島 知穂, 八幡 兼成
    2024 年57 巻7 号 p. 319-323
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/28
    ジャーナル フリー

    症例は70代前半女性.50歳より統合失調症を発症した.腎硬化症による慢性腎臓病が進行し,70歳時に腎代替療法を希望した.統合失調症の陽性症状のコントロールが不良であることから,血液透析のための通院や自己で行う腹膜透析が困難であり,夫の支援によるassisted peritoneal dialysis(assisted PD)を希望した.尿毒症症状のため入院にて腹膜透析を導入し,夫への腹膜透析の手技指導,訪問診療・看護の調整を行った.退院後は腎臓内科専門医による訪問診療と3か月に1回の当院外来通院にてassisted PDによる腎不全の管理を継続している.重度の精神疾患をもつ患者に適した腎代替療法についてはほとんど報告がないが,本症例のようにassisted PDが有用である可能性がある.その実践には,精神科との併診や社会資源の調整,家族の理解や協力が重要である.

  • 森 聰博, 上松 克利, 山田 大介, 山成 俊夫, 石津 勉
    2024 年57 巻7 号 p. 325-330
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/28
    ジャーナル フリー

    症例は58歳男性.37歳時から維持透析を行っていた.スクリーニングCTで41 mmの右腎腫瘍を指摘されX年8月に当科紹介予定であったが,心タンポナーデを発症し治療を行ったため受診が9月になった.10月のMRIでは腫瘍径は90 mmまで増大していた.X年11月に腹腔鏡下右腎摘術を施行.腫瘍は一部肝臓への進展を認めた.病理組織は紡錘型細胞を伴う肉腫様腎細胞癌が主体であった.術後3か月目のCTで局所再発を認めたためPazopanib 800 mgを開始した.一時的に縮小効果を認めたが術後7か月目で病勢進行した.二次治療としてAvelumab 540 mg+Axitinib 10 mgを投与開始したが,急速な病勢の進行に伴い全身状態が悪化し,術後9か月目に死亡した.維持透析患者に発症する腎癌は緩徐な経過を辿ることが多いが,本症例のように急速に病勢が進行する場合がある.腫瘍を認めた場合は治療時期を逃さず治療を行うことが望ましい.

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