日本透析医学会雑誌
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57 巻, 10 号
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原著
  • ―月経と妊娠・出産に対する意識などの年代別解析に基づく年代毎の特徴と課題―
    上田 知未, 平野 寛子, 岩崎 祐子, 長井 幸二郎, 森 潔, 森 典子
    原稿種別: 原著
    2024 年57 巻10 号 p. 431-440
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/28
    ジャーナル フリー

    透析医療の進歩の一方で維持透析患者の妊娠・出産に関する実態調査は乏しく,患者への適切な情報提供や治療介入が難しい現状がある.われわれは本邦の維持透析患者で2012~2016年に15~44歳であった女性に月経や妊娠・出産に関するアンケート調査を実施し,対象者7,225人中1,026人(14%)の回答を年代別に解析した.回答時平均年齢は41.3歳,月経周期異常は64%と既報の健常女性より多く,無月経は年代の上昇に伴い増加した.妊娠・出産への興味関心は20歳台で85%,30歳台で73%,40歳台で55%であったが,妊娠希望は30歳台で21%,40歳台で9%だった.妊娠を希望しない理由は20歳台ではパートナーがいない,30・40歳台では自身の健康上の不安が最も多かった.妊娠可能年齢の維持透析患者の治療に関わる医療スタッフは妊娠・出産に関し時期を逸せず適切な情報提供と必要な治療介入を行うことが望まれる.

  • 水野 章子
    原稿種別: 原著
    2024 年57 巻10 号 p. 441-448
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/28
    ジャーナル フリー

    【目的】血液透析(HD)患者の静注鉄剤投与に伴う総体内鉄量(TBI),ヘモグロビン(Hb)鉄量,貯蔵鉄量の変化を検討する.【方法】HD患者42例に静注鉄剤40 mg,8~13回投与し,①総鉄投与量とΔTBI,ΔHb鉄量,Δ貯蔵鉄量,②フェリチン(Fer)とΔTBI/総鉄投与量比,③FerとΔTBI,ΔHb鉄量およびΔ貯蔵鉄量との関係をみた.【結果】静注鉄剤投与により,Hb,Fer は有意に上昇.ΔTBI/総鉄投与量比は0.50(0.322~0.851)であった.総鉄投与量が多い患者でΔ貯蔵鉄量は有意に上昇したが,ΔHb鉄量との関連はなかった.投与前後のFerとΔTBI/総鉄投与量比,ΔTBIには負の,ΔFerとΔHb鉄量には負の,ΔFerとΔ貯蔵鉄量には正の相関がみられた.【結論】機能性鉄欠乏を伴うHD患者に静注鉄剤で鉄補充した際,総鉄投与量が大きいほど造血に用いられない貯蔵鉄が多くなった.

症例報告
  • 今西 茜衣里, 坂口 美佳, 三木 美帆, 福田 雄基, 山根 雅智, 岡田 宜孝, 高橋 実代, 清水 和幸, 古林 法大, 中野 志仁, ...
    2024 年57 巻10 号 p. 449-454
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/28
    ジャーナル フリー

    糖尿病性腎臓病で末期腎不全となった81歳女性に腹膜透析(PD)を開始した.導入時には問題を認めなかったが,術後20日目頃から注排液不良が出現した.カテーテルの位置異常やフィブリン閉塞などはなく,PDカテーテル皮下トンネル部での高度の屈曲が注排液不良の原因と考えられた.ワイヤーでの修復が困難であったため外科的に屈曲部を切除し,両断端にチタニウムエクステンダーを用いて接続する屈曲部バイパス術を行った.術後は注排液不良が改善した.既存の報告では,カテーテルの機械的合併症による機能不全ではカテーテル抜去が不可避とされてきたが,われわれは今回カテーテル抜去を行わず,チタニウムエクステンダーを用いた屈曲部バイパス術にて機能不全を改善することができた症例を経験した.

  • 岩本 俊輔, 江橋 早苗, 佐藤 佐江子, 長岡 敦洋, 船積 雅登, 戸田 孝之, 岩本 均
    2024 年57 巻10 号 p. 455-462
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/28
    ジャーナル フリー

    49歳男性,慢性糸球体腎炎による慢性腎臓病にて透析歴12年がある.左外踝上部直径約3 cmの外傷性びらんが2か月で強い有痛性潰瘍に進行した.皮膚組織検査と臨床所見,血液検査からカルシフィラキシスと診断した.高圧酸素療法を予定したが入院承諾が得られず,外来治療を継続した.発症後10か月で潰瘍径約20 cm,アキレス腱露出まで増悪後,改善が乏しいため,発症14か月後より補助療法として吸着型血液浄化器(レオカーナ治療)を開始した.レオカーナ治療開始後7週目頃より潰瘍部の急激な縮小と疼痛減少を認め,同治療2クール目終了時32週目には約75%の面積縮小を認めた.レオカーナ治療中は初回時のみ血圧低下を認めたが,血流量調整にて安定した治療が可能であった.本邦においてカルシフィラキシスに対するレオカーナ治療の有効性を示した報告はいまだないが,本例によって有効な補助療法の選択肢になり得ることが示唆された.

  • 前田 大登, 山本 真由美, 中野 茉莉, 大石 かんな, 佐竹 惇子
    2024 年57 巻10 号 p. 463-468
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/28
    ジャーナル フリー

    77歳男性.原発性アミロイドーシスを原疾患に入院3年前に血液透析導入.誤嚥性肺炎を契機に寝たきりとなり当院に入院.全身の皮疹にステロイド外用剤を塗布しており転院後も継続.入院16日目に施設スタッフが疥癬を発症し,患者の皮膚病変が角化型疥癬と判明.隔離開始したが疥癬は伝搬しており18人が疥癬治療を要した.疥癬判明後にステロイド外用剤を中止したところ,続発性副腎不全となり循環不全,意識障害,低血糖発作を認めた.プレドニゾロン投与で全身状態は改善したが,重度の低血糖を認め不可逆的な意識障害に至る危険性があった.本症例では,入院時の早急な皮膚科医による疥癬の確定診断とその後の対応,長期ステロイド外用剤使用歴より中止による続発性副腎不全発症リスクを念頭におくことが重要であったと考えられた.皮膚掻痒・ステロイド外用剤長期使用の高齢者透析患者では,疥癬および続発性副腎不全リスクは考慮しておくべき病態である.

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