日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
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ISSN-L : 1340-3451
58 巻, 1 号
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委員会報告
原著
  • 清水 勇人, 児玉 晋一朗, 柿崎 順志, 島﨑 雅史, 河内 直樹, 釜谷 英治, 原田 尚重, 吉﨑 智也, 高橋 大栄
    2025 年58 巻1 号 p. 8-15
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/24
    ジャーナル フリー

    透析用カテーテル(VC)を用いた血液浄化療法では,再循環による透析効率の低下や血栓形成・回路閉塞によるダウンタイムは脱血不良に起因するため,VC先端を適切な部位に留置することは脱血不良の回避のため重要だが,VC先端位置とその脱血性能を多角的に評価した研究は乏しい.今回われわれは,178件のVC使用透析の記録を用いて,内頸静脈留置と大腿静脈留置それぞれについて,VC先端位置と脱血性能の関係を効率およびVC関連トラブル発生率の観点から評価した.最大有効血流量は最大脱血可能血流量から再循環分を差し引いて算出し,トラブル発生率は4段階に分類して検証した.その結果,内頸静脈では気管支分岐部より尾側,大腿静脈ではJacoby線よりも頭側への留置が,高い最大有効血流量と低いトラブル発生率に関連していた.VCを用いた透析を行う際は,これらの部位に先端を留置することで高い透析効率を得,またVC関連トラブルを回避できる可能性がある.

症例報告
  • 藤本 裕俊, 中森 悠, 髙橋 大輔, 下山田 高茂, 秩父 陽香, 高田 尚子, 櫻井 麻人, 権代 悠人, 野崎 有沙, 吉田 伸一郎, ...
    2025 年58 巻1 号 p. 16-23
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/24
    ジャーナル フリー

    溶血後のヘモグロビンがビリルビン(Bil)に代謝される過程で必要となるハプトグロビン(Hp)が恒常的に低発現な人に発症した血栓性微小血管症(TMA)の症例経験を報告する.症例は80歳,男性.数日で急速に腎機能が低下し当院を紹介受診した.血小板低下・破砕赤血球を伴う貧血・高LDH血症も認め,血清Hp濃度は検出感度以下だった.TMAが疑われ腎組織もTMAの所見だったが,血清間接Bil上昇や脾腫は認めなかった.支持療法として輸血・血液透析を行う過程で,TMAは沈静化し透析を離脱した.自宅退院後2年経過時でも血漿Hp濃度は通常のネフェロメトリーでは検出感度以下であり,高感度ELISAで何とか検出できる程度であった.TMAの急性期に黄疸所見を欠いた要因はHp低発現と推測されるが,今後TMAでこの非典型的徴候を認めた場合先天性Hp欠損症の可能性も考慮し,治療として選択され得る輸血や血漿交換においてはアナフィラキシー発生時の特別な対策が望まれる.

  • 有田 ゆい, 福井 明子, 河野 健太郎, 桃崎 征也, 名西 史夫, 占部 和敬, 中山 勝, 中野 敏昭, 北園 孝成
    2025 年58 巻1 号 p. 24-30
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/24
    ジャーナル フリー

    症例は44歳,男性.38歳で血液維持透析を開始.入院4か月前に発症した急性骨髄性白血病に対して3回目の地固め療法目的で入院中であった.入院第12病日より発熱と全身倦怠感を認め,発熱性好中球減少症の診断で抗菌薬投与を行った.抗菌薬を変更し免疫グロブリン静注療法を追加したが,症状の改善はなく,全身性の紅斑,水庖および口腔内びらんを認めた.皮膚生検での全層性の表皮壊死像と臨床経過を併せて中毒性表皮壊死(toxic epidermal necrolysis: TEN)と診断した.ステロイドパルス療法と,単純血漿交換療法(plasma exchange: PE)を合計3回施行し,第85病日に退院した.TENの予後は悪く,透析患者における死亡率は,非透析患者の10倍以上に増加すると報告がある.TENに対して集学的治療を行い,救命し得た症例を経験したので報告する.

短報
  • 岡田 一義, 田代 学, 清水 郁子, 井上 朋子, 水口 潤
    原稿種別: 短報
    2025 年58 巻1 号 p. 31-33
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/24
    ジャーナル フリー

    腸管でのNa/H交換輸送体3阻害薬(テナパノル)により厳格な血清リン濃度の管理が期待でき,今回,炭酸ランタンをテナパノルに切り替え,除外基準に該当しない維持血液透析患者27名を後ろ向きに検討した.下痢により,12例(44.4%)が脱落し,除外基準に該当した5例を除いた10例で解析した.リン低下薬錠数は,開始時4.6±1.9錠から12週後2.4±0.9錠と有意に(p<0.01)減少した.血清リン濃度は,開始時5.4±0.9 mg/dLから8週後4.2±0.5 mg/dL,10週後3.9±0.9 mg/dLと有意に(p<0.05,p<0.01)低下した.なお,テナパノルの最終投与量は29.0±13.7 mg/日であった.炭酸ランタンからテナパノルへの切り替えにより,血清リン濃度のコントロールが良好になるとともにポリファーマーシーも改善した.しかし,下痢が開始用量でも高率に発生したため,患者指導により忍容性を高めることが重要である.

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