日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
36 巻, 11 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 第47回日本透析医学会教育講演より
    本田 雅敬
    2003 年 36 巻 11 号 p. 1589-1597
    発行日: 2003/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 血管造影に代わるMR venographyの有用性
    矢田 菜穂子, 中西 浩一, 上村 茂, 石倉 健司, 幡谷 浩史, 池田 昌弘, 本田 雅敬, 吉川 徳茂
    2003 年 36 巻 11 号 p. 1599-1603
    発行日: 2003/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    小児腎移植にあたって, レシピエントに移植腎静脈を吻合する下大静脈の血栓や閉塞があると移植術中に術式を変更することになり危険性を伴う. 安全に移植術を成功に導くためには術前に下大静脈の評価を行うことが重要である. 今回, レシピエントの腎移植前検査として下大静脈・腸骨静脈描出に対して従来から行われていた血管造影に代わるものとして, 非造影非侵襲的検査法であるMR venography (MRV) による検討を行った. 対象は3歳から14歳までの慢性腎不全にて腹膜透析または血液透析療法中の4例. 方法は2D time of flight (2D-TOF) 法MRVにて撮影し, 動脈からの信号を抑制するためsuperior presaturation pulseを併用し, 得られた画像にtarget maximum intensity projection処理を行った. 検査と画像処理にかかった時間は30分以内であった. 以上の方法により4例全例とも下大静脈と腸骨静脈を明瞭に描出できた. 2例は生体腎移植を施行して, 下大静脈, 腸骨静脈の手術所見がMRV所見と一致していることを確認した. MRVは下大静脈描出に対する非造影侵襲的腎移植前検査として有用である可能性が示唆された. また, 今後さらに症例を追加して検討する必要があるが, MRVは侵襲のある血管造影に代わるものとして信頼できる検査であると思われた.
  • 大段 剛, 廣瀬 裕美, 雨宮 均, 奥山 寛, 小林 力, 小岩 文彦, 新倉 一彦, 出浦 照國, 大棟 英弘
    2003 年 36 巻 11 号 p. 1605-1610
    発行日: 2003/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    目的: バイフィル®-S (B-S) とバイフィル®専用炭酸水素ナトリウム補充液 (補充液) を使用したacetate free biofiltration (AFBF) 施行時における血液流量 (QB), および膜面積に応じた補充液の至適投与量について検討した. 対象・方法: 安定期透析患者6名を対象に1.3m2のPS-1.3UWと1.6m2のPS-1.6UWの膜面積の違う2種類を使用し, 週1回のみQBをそれぞれ100, 150, 175, 200mL/minと変化させた治療を行い, 血清ナトリウム濃度およびHCO3-のクリアランスを経時的に測定した. ヘマトクリット (Ht) 値はクリットライン®により経時的に測定し, その他の治療条件は一定とした. 結果: 血中HCO3-濃度を終了時に25.0mEq/L以上30.0mEq/L未満にコントロールする至適補充液流量は, QBの12.5-13.5%で設定可能であった. また, 同量の補充液の置換に伴う血清Na濃度の変動は認められず, 治療中の除水に由来したHt値の経時的な上昇を認めた. 結論: バイフィル®-Sとバイフィル®専用炭酸水素ナトリウム補充液を使用したAFBF施行時において至適補充液流量は, 血液流量の12.5-13.5%であると考えられた.
  • 鈴木 祥史, 有馬 聖喜, 伊藤 浩一
    2003 年 36 巻 11 号 p. 1611-1617
    発行日: 2003/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    体重増加量の多い患者に対し, 除水による血圧低下防止を目的として高ナトリウム (Na) 透析 (設定透析液Na濃度152meq/L) を施行していた. 透析後血清Na濃度は, Naイオン電極直接法による測定値では透析液Na濃度程度まで上昇していたが, 間接法による測定値は上昇せず, むしろ透析前値よりも低下することさえあった. その原因を確認する目的で, 当院で管理している外来透析患者40名を対象とし, 2000年1月から12月までの1年間, 両測定法による透析前後のNa値と透析除水量, 血清総蛋白濃度などの関連についてレトロスペクティブに調査検討した. 1年間の直接法と間接法によるNa測定値の乖離程度と除水による血清蛋白濃度の上昇との間には有意の正の相関関係が認められた (n=468) (r=0.404, p<0.001). 間接法の測定値が直接法よりも低いのは溶媒置換 (マトリックス異常) によるもので, 透析の除水による血清蛋白濃度の上昇が寄与していることが示唆された. 溶媒置換があると, Na測定値は見掛け上低い測定値となる. 高Na透析施行による血清Na濃度の変化を把握する場合, 間接法よりも溶媒置換の影響がない直接法による測定値の方が適切に表現されると思われた.
  • 守矢 英和, 根岸 康介, 麻生 邦子, 大竹 剛靖, 廣江 吉隆, 齋藤 滋, 小林 修三
    2003 年 36 巻 11 号 p. 1619-1624
    発行日: 2003/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析患者の冠動脈病変には高度石灰化病変やびまん性病変が少なくないが, 近年ロータブレータの使用によって経皮的冠動脈形成術の適応が広がっている. そこで, 今回当院におけるロータブレータの有用性を検討した. 対象は平成9年3月より平成11年9月までに当院でロータブレータを施行した血液透析患者 (HD群) 78名, 非透析患者 (非HD群) 319名について, 初期成績・遠隔期成績の比較検討を行った. 両群間で年齢, 性, 糖尿病や高脂血症, 心筋梗塞の既往歴などに有意差はなかったが, HD群に高血圧合併が, また非HD群にleft anterior descending (LAD) での病変が有意に多かった. 初期成功率はHD群94.7%, 非HD群94.6%, 6か月後の遠隔期成績では再狭窄率はHD群51.4%, 非HD群47.0%, 死亡はHD群で5名, 非HD群で5名, 急性心筋梗塞はHD群で0名, 非HD群で5名, 再血行再建率はHD群で45.3%, 非HD群で44.9%であり, いずれも有意差は認められなかった. 以上の結果から透析患者において, 初期成績, 遠隔期成績とも非透析患者と有意差はなく許容できるものであり, 透析患者に対しロータブレータが有効かつ安全であることが示唆された.
  • 岩津 好隆, 井上 真, 柳場 悟, 宮田 幸雄, 岡田 真樹, 永井 秀雄, 安藤 康宏, 本間 寿美子, 浅野 泰, 草野 英二
    2003 年 36 巻 11 号 p. 1625-1630
    発行日: 2003/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    塩酸イリノテカン (CPT-11) は, I型DNAトポイソメラーゼ阻害によりDNA合成を阻害し, 広い抗腫瘍スペクトラムを持つ. 血液透析療法中の患者ではCPT-11を減量し使用した報告は一例あるものの, その薬物動態, 透析性についての報告はない. われわれは, 維持血液透析中の大腸癌肝転移例にCPT-11を単回投与し, その薬物動態, 透析性について検討した.
    症例は58歳, 男性. インフォームドコンセントを得た後, CPT-11 50mg/m2を透析2時間前より90分かけて点滴静注し, 透析開始直後および0.5, 1, 2, 4, 8, 12, 24時間後にCPT-11およびその代謝物質 (SN-38およびSN-38G) の血漿中濃度を測定した. また, 透析開始0.5時間後のダイアライザー前後および透析液中の濃度も測定した.
    その結果, CPT-11およびSN-38Gは血液透析により除去された. 活性代謝物質であるSN-38は血液透析により直接的には除去されなかったが, CPT-11やSN-38Gが減少するため透析施行中に濃度低下を認めた.
    CPT-11は胆汁排泄が約80%, 腎排泄が約20%であり, 腎不全患者では投与量を調節する必要がある. 血液透析患者にCPT-11 60mg/m2 (週1回) は, 副作用をきたさず投与可能であった.
  • 平松 範行, 吉田 弘明, 根石 純子, 岡上 準, 山本 多恵, 石井 義孝, 黒岩 卓, 金子 和光, 廣村 桂樹, 植木 嘉衛, 野島 ...
    2003 年 36 巻 11 号 p. 1631-1635
    発行日: 2003/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    被嚢性腹膜硬化症は, 腹膜透析における重篤な合併症として認識されている. 発症時期としては, 腹膜力テーテル抜去後数週から数か月経って発症することが多いといわれているが, 3-5年後に発症したとの報告もまれではあるが散見される. われわれは, 腹膜透析中止から11年と非常に長い期間を経てから発症した被嚢性腹膜硬化症と思われる1例を経験したのでここに報告する.
    症例は56歳, 男性. 昭和60年12月腹膜透析導入. 平成2年11月除水不良となったため腹膜透析中止し, 血液透析へ移行した. 腹膜透析を行った5年間で腹膜炎は一度のみであった. 平成13年12月15日腹痛, 嘔吐, 食欲不振にて入院し, イレウスと診断された. 空腸造影にて狭窄病変あり, 12月25日狭窄解除のため開腹した. 空腸に狭窄病変を認めたのみでなく, 腸管は一塊となっており, 白色に混濁した厚い腹膜に被われており, 被嚢性腹膜硬化症と考えられた.
    当症例は, 被嚢性腹膜硬化症が腹膜透析中止から10年以上経ても発症しうることを示唆しており, 腹膜透析を行ったことのある症例の急性腹症を診療するにあたっては被嚢性腹膜硬化症の可能性を常に念頭に入れる必要があると思われる.
  • 山西 秀樹, 福田 恵二, 兼子 憲一
    2003 年 36 巻 11 号 p. 1637-1641
    発行日: 2003/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    難治性腹水, 肝硬変症を合併した慢性腎不全患者において血液透析と腹水透析の併用療法の効果を検討した. 症例は77歳, 女性. 10年前よりC型肝炎による肝硬変症を指摘された. 1年前より腎不全を指摘され内科的治療を続けていたが, 貧血, 尿毒症状, 腹水貯留が進行し, 透析導入を目的として当院に入院した. 左内シャント造設と同時に腹腔内に腹腔ポート (SMAP-27, Nipro) を植え込んだ. 血液透析中に, このポートに針を穿刺して腹水を抜き, 血液濾過および透析を施行して濃縮した. 濃縮した腹水を血液回路の動脈チャンバー側から点滴し, 30分から1時間ほど血液透析を続けた. 入院当初, 低蛋白血症 (TP 4.6g/dL) を認めたが, 蛋白濃度も6.0g/dLに上昇し, 腹部膨満も改善したので食事摂取も可能となった. 透析中の血行動態は安定し, 日常生活における活動性が向上した.
    腹水透析は, 腹水除去および体重管理を容易にし, 血液透析と併用することで全身管理が容易となった. 同時に加療できる時間的な利点とともに, 膨満感や尿毒症による症状から開放され肉体的, 精神的にQOLを是正したと考えられた. また, 腹腔ポートの使用によって腹水穿刺が容易となり, 腹水透析には有用なデバイスと考えられた.
feedback
Top