短時間血液透析 (HD) では, 単位時間当たりの除水量が大きく血圧変動をきたし易い可能性が考えられる. 透析液Na濃度はHD中の血圧変動に影響を与えるが, 短時間透析での適正透析液Na濃度の検討は行われていない. 本研究は, 透析液Na濃度135, 140, 145mEq/
l (135群, 140群, 145群) の条件下で短時間HDを施行し, 血圧, 水-Na動態などを観察し短時間透析を行う上での透析液至適Na濃度を検討した.
1) 血清Na濃度は, HD前後で135群では有意に低下, 140群では不変, 145群では有意に上昇した. 血清浸透圧は, 三群ともにHDにより有意に低下するが, その低下度は145, 140, 135群の順に軽度であった. 2) 食塩感受性 (salt sensitivity (SS): HD間の食塩負荷に対する血圧の上昇度) は145群, 140群, 135群の順に低下していた (p<0.05, 135群vs 145群). また, 体液量 (水) 感受性 (body fluid sensitivity (BFS): HD間の体液量の変化に対する血圧変化) においてもSS同様に145群, 140群, 135群の順に低下していた (p<0.01, 135群vs 145群). 1回のHDでの水分, 塩分 (NaCl) 除水量には三群間で差異を認めなかった. 3) 生食注入を要するHD中の血圧低下の頻度は, 145群で他の二群に比べ有意に少なかった. 4) HD中の下肢のつれや気分不快など臨床症状に三群間で差異は見られなかった. しかし, 145群で, 5件に口渇が出現した.
以上より, 短時間透析での透析中の血圧変動の予防, 自覚症状の改善の面から, 透析液Na濃度は140から145mEq/
lの範囲を採用するのが好ましいと考えられた. しかし, 145mEq/
lでは一部の患者で口渇が出現するため, 維持透析が長期に及ぶことを考えると短時間HDでの至適透析液Na濃度は, 142-143mEq/
lが推奨される.
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