日本透析医学会雑誌
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27 巻, 9 号
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  • 川真田 美和子
    1994 年 27 巻 9 号 p. 1203-1209
    発行日: 1994/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • (intact PTHおよびC末端PTH) の臨床評価
    杉本 徳一郎, 多川 斉, 西尾 恭介, 堀内 大太郎, 木村 典子, 佐藤 利知子, 灰田 公彦
    1994 年 27 巻 9 号 p. 1211-1214
    発行日: 1994/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性維持透析患者443名 (男:女=287:156) を対象とし, intact PTH (I-PTH; アレグロ社) とC末端PTH (C-PTH; INC社) を同時測定した. 両PTH測定値間の相関係数はr=0.78にとどまった. I-PTHは血清Caと有意な負の相関を示したが (r=-0.36, p<0.0001), C-PTHは血清Caと有意な相関を認めなかった (r=-0.05, n.s.). C-PTHは透析期間と有意な正の相関 (r=0.20, p<0.0001) を示したが, I-PTHと透析期間の相関は極めて軽度 (r=0.11, p=0.025) であった. このことから, I-PTHはPTH分泌動態をほぼ反映するのに対し, C-PTHは透析導入後の残存腎機能の低下に伴って増加することが示され, 透析患者の副甲状腺機能亢進症の診断のためには, I-PTHがC-PTHに比してすぐれていると考えられる.
  • 山口 美尚, 保元 裕一郎, 竹之内 賢一, 福元 まゆみ, 内田 義男, 有馬 暉勝, 吉留 悦男, 池田 徹
    1994 年 27 巻 9 号 p. 1215-1221
    発行日: 1994/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    我々は発作性夜間血色素尿症 (PNH) に合併した急性腎不全 (ARF) に対し血液透析を施行しARFより離脱し救命し得た二症例を経験したので報告する. 症例1は昭和61年にPNHと診断後, プレドニゾロン (PSL) 内服にて経過良好であったが, 平成4年に溶血発作後ARFに陥った. ハプトグロビン投与, 洗浄赤血球輸血, PSL 60mg投与および計8回のHDにてARFより離脱した. 症例2は昭和49年にPNHと診断され, 洗浄赤血球輸血, fluoxymesteroneやPSLの治療を受けていたが, 平成3年に溶血発作後ARFに陥った, Furosemide大量静注, fluoxymesteroneの増量, 洗浄赤血球輸血および計12回のHDにてARFより離脱した.腎生検を行い得た症例2の組織像は糸球体には異常を認めず, 尿細管上皮細胞内への著明な鉄沈着を伴う尿細管の変性が認められた.
  • 川西 秀樹, 森石 みさき, 丹治 英裕, 小川 貴彦, 土谷 晋一郎, 高橋 直子, 土谷 太郎
    1994 年 27 巻 9 号 p. 1223-1228
    発行日: 1994/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    CAPDにおいて血清アルブミンは罹病率推定因子として有用であり, その変化は安定した症例では腹膜透過性に多くを依存する. しかも腹膜透過性が経年的に亢進することは避けることができず低アルブミン血症も進行する. 今回, 非糖尿病の安定CAPD症例47名を対象とし血清アルブミンとクレアチニン透析液/血清比 (Cr-D/P) に基づいたStage分類を行い中止時期の推定が可能かについて検討した. 血清アルブミンを4.0g/dl以上, 4.0-3.5g/dl, 3.5g/dl以下の3段階に分け, さらにこれらをCr-D/P 0.8を境として2段階に分類し, No-problem, Stable, Pre-failure, Failure群とした. CAPD期間が増加するにつれStageは進行し平均37±28か月でPre-failureへ, 45±21か月でFailureへ陥った. Failure群は血清アルブミン3.2±0.3g/dl, Cr-D/P 0.86±0.20, β2-microglobulin-D/P 0.21±0.10, 透析液中蛋白量5.3±2.0g/dayと腹膜透過性が亢進し低アルブミン血症が進行しており, しかも入院率も高くなっていた. 以上の結果, 我々の分類でのPre-failure (血清アルブミン4.0-3.5g/dl, Cr-D/P 0.8以上) では腹膜機能の厳重な観察が必要であり, さらにFailure (血清アルブミン3.5g/dl以下, Cr-D/P 0.8以上) に陥った場合にはCAPD療法の中止も考慮すべきである. いたずらにCAPDを継続することは腹膜の不可逆性の変化をきたす可能性があり避けるべきといえる.
  • 横田 欣也, 松浦 達雄, 横田 武彦, 河野 明, 大谷 正樹
    1994 年 27 巻 9 号 p. 1229-1233
    発行日: 1994/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析患者35例の口腔内乾燥に対しS-carboxymethylcysteine (SCMC) の投与を行った. SCMC 750-1,000mg/日を1か月間経口で投与して, その有効性を判定した. また投与開始直前, および投与開始1か月後の透析の前後における唾液分泌量と唾液成分 (Na, K, Cl, Ca, BUN, Cr, amylase, pH) を測定し比較検討した. 35例中11例 (31.4%) が有効であり, SCMC投与に伴う明らかな副作用を認めた症例はなかった. SCMCの投与を開始する前の透析の前後における唾液の比較では, 透析前に比し透析後において唾液の分泌量が有意に増加 (p<0.01) していた. 一方SCMC投与による唾液の変化では, 全症例において分泌量が投与後に増加する傾向を認めたが有意差は認めなかった. また, 唾液中のいずれの成分においても投与前後で有意な変化を認めなかった. しかし, 有効症例にのみ限定すると, SCMCの投与後に唾液分泌量の有意な増加 (p<0.01) と唾液中pHの有意な上昇 (p<0.05) が認められた. 以上の結果から, 慢性血液透析患者の口腔内乾燥に対するSCMCの有効性と安全性が示唆された.
  • 三馬 省二, 影林 頼明, 米田 龍生, 福井 義尚, 吉田 克法, 平尾 佳彦, 岡島 英五郎, 新井 邦彦, 本宮 善恢, 佐藤 春彦
    1994 年 27 巻 9 号 p. 1235-1240
    発行日: 1994/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    維持透析患者34例を対象に, 骨吸収マーカーであるピリジノリン (Pyr), デオキシピリジノリン (Dpyr) の血中濃度を蛍光検出高速液体クロマトグラフィーにより測定した. 対照として, 正常腎機能を示す成人13例の血中Pyr, Dpyrを測定した. その結果, 対照ではPyrは13例中7例が測定感度 (3pmol/ml) 以下を示し, 最高値は7pmol/mlであった. Dpyrは対照全例において測定感度以下であった. 維持透析患者においては, 全例対照に比較し, 数倍から数十倍の高値を示し, PyrとDpyrとの間に高い相関が認められた (r=0.955, p<0.001). C-PTH値により対象をカットオフ値以上とカットオフ値未満で2群に分けて各群のPyr値, Dpyr値の平均値で検討したところ, カットオフ値2.5ng/ml, 5.0ng/ml, 10.0ng/mlのいずれの場合も2群間に有意の差を認めた. また, Pyr, DpyrのいずれもPTH, オステオカルシン, 酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼと高い相関を示した (p<0.001) が, 透析期間とは相関を示さなかった. 以上の結果より, RODマーカーとしての血中Pyr, Dpyrの有用性が確認されたと考える.
  • 本村 文一, 鈴木 唯司, 寺山 百合子, 舟生 富寿
    1994 年 27 巻 9 号 p. 1241-1245
    発行日: 1994/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    健常者における内因性エリスロポエチンの動態およびリコンビナント・ヒト・エリスロポエチン (rHuEPO) 投与によるエリスロポエチンの変動について検討した. 対象は健常男子13名, 女子15名で, 午前9時に採血し, 血漿エリスロポエチン濃度 (P-EPO) およびヘマトクリット値 (Ht) を測定した. さらに健常男子5名を対象に午前8時から翌朝8時まで4時間毎に採血, また4時間尿を採取した. 次いでrHuEPO 3,000Uを静注した. また他の健常男子4名に皮下投与した. 投与後, 翌朝8時まで4時間毎に採血, 採尿し, 2日, 3日, 4日, 5日, および7日目の午前8時に採血, P-EPO, Ht, 網状赤血球 (Ret) およびエリスロポエチン尿中排泄量 (U-EPO) を測定した. その結果, 健常者のP-EPOは男子で18.7±1.3mU/ml, 女子で15.5±1.1mU/mlであり両者に有意差は認められなかった. Htは男子45.2±0.9%, 女子38.8±0.6%で女子は有意に低かった. P-EPOの日内変動は午前4時に26.1±2.1mU/mlで最も高かった. Ht, Retは有意な変動を示さなかった. U-EPOは午前4時から午前8時に4.7±0.9U/4hで最高値を示した. なお24時間の排泄量は17.2±2.4U/dayであった. rHuEPO静注においては, P-EPOは4時間後351.4±32.1mU/mlと最高値を示した後, 急速に低下し48時間後には前値に復した. HtおよびRetに有意な変動は認めなかった. U-EPOは投与後4時間まで16.4±3.1U/4hであり, 以後は漸減し翌朝4時から8時は前値と有意差を認めなかった. 24時間排泄量は52.5±6.4U/dayで投与量の1.7±0.2%にすぎなかった. 皮下投与においてはP-EPOは緩やかに上昇し8時間後に最高値の46.4±4.3mU/mlを示し, 4日後には前値に復した. Htには有意な変動は認めなかったが, Retは投与5日, 7日目に有意に増加した. U-EPOは有意な変動はなく, 24時間排泄量は16.4±1.9U/dayで非投与群との間に差異は見られなかった.
  • 床尾 万寿雄, 小口 寿夫, 小林 衛, 矢崎 国彦, 山崎 徹, 林 圭介, 徳永 眞一, 洞 和彦, 川 茂幸, 古田 精市
    1994 年 27 巻 9 号 p. 1247-1252
    発行日: 1994/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析導入期における膵外分泌機能を十二指腸液採取による直接検査法により測定し, またアシドーシスとの関連を検討した.
    透析導入期の, 膵炎合併のなく, またアルコール過飲のない患者11例 (男性7例, 女性4例, 平均年齢45.5歳) を対象とし, 膵外分泌機能検査としてセクレチン100単位1回静注法による直接膵刺激法を施行した. 判定は, セクレチン静注後60分間の総液量 (volume, Vol), 最高重炭酸塩濃度 (maximal bicarbonate concentration, MBC), アミラーゼ総排出量 (amylase output, AO) の3因子を用いて検討した. また, セクレチン試験施行時に動脈血より血液ガスを測定し, 代謝性アシドーシスの程度を評価した.
    結果は, Volが4.7±1.0ml/kg, AOが3,396±2,038SU/kgと, 軽度であるが正常域値より有意に (p<0.05) 増加していた. しかし, MBCは97±37mEq/lで正常域値と差は認めなかった. 代謝性アシドーシスとの関係は, VolとpH値との間にr=0.819と有意な相関が認められたが (p<0.05), MBC, AOと代謝性アシドーシスとの間には相関は認めなかった.
    長期透析患者では膵外分泌機能の低下が指摘されているが, 透析導入期においては膵外分泌機能はむしろ過分泌であることが示唆されたことより, 今後, 透析の経過に伴う膵外分泌機能の変化を検討することが必要である.
  • 透析液Na濃度の至適性に関する検討
    栗山 哲, 友成 治夫, 宇都宮 保典, 小村 香與子, 今澤 俊之, 平野 景太, 酒井 紀
    1994 年 27 巻 9 号 p. 1253-1258
    発行日: 1994/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    短時間血液透析 (HD) では, 単位時間当たりの除水量が大きく血圧変動をきたし易い可能性が考えられる. 透析液Na濃度はHD中の血圧変動に影響を与えるが, 短時間透析での適正透析液Na濃度の検討は行われていない. 本研究は, 透析液Na濃度135, 140, 145mEq/l (135群, 140群, 145群) の条件下で短時間HDを施行し, 血圧, 水-Na動態などを観察し短時間透析を行う上での透析液至適Na濃度を検討した.
    1) 血清Na濃度は, HD前後で135群では有意に低下, 140群では不変, 145群では有意に上昇した. 血清浸透圧は, 三群ともにHDにより有意に低下するが, その低下度は145, 140, 135群の順に軽度であった. 2) 食塩感受性 (salt sensitivity (SS): HD間の食塩負荷に対する血圧の上昇度) は145群, 140群, 135群の順に低下していた (p<0.05, 135群vs 145群). また, 体液量 (水) 感受性 (body fluid sensitivity (BFS): HD間の体液量の変化に対する血圧変化) においてもSS同様に145群, 140群, 135群の順に低下していた (p<0.01, 135群vs 145群). 1回のHDでの水分, 塩分 (NaCl) 除水量には三群間で差異を認めなかった. 3) 生食注入を要するHD中の血圧低下の頻度は, 145群で他の二群に比べ有意に少なかった. 4) HD中の下肢のつれや気分不快など臨床症状に三群間で差異は見られなかった. しかし, 145群で, 5件に口渇が出現した.
    以上より, 短時間透析での透析中の血圧変動の予防, 自覚症状の改善の面から, 透析液Na濃度は140から145mEq/lの範囲を採用するのが好ましいと考えられた. しかし, 145mEq/lでは一部の患者で口渇が出現するため, 維持透析が長期に及ぶことを考えると短時間HDでの至適透析液Na濃度は, 142-143mEq/lが推奨される.
  • 渡辺 哲也, 丸山 行孝, 池谷 直樹, 中島 敏晶, 古橋 三義, 澤田 啓, 鈴木 和雄, 藤田 公生
    1994 年 27 巻 9 号 p. 1259-1262
    発行日: 1994/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者に発生したβ2-microglobulin (β2-MG) 由来の透析アミロイドーシスによる膀胱出血の1例を経験したので報告する.
    症例は64歳, 男性, 1974年慢性糸球体腎炎による腎不全のため血液透析導入. すでに無尿状態となっていた1992年12月頃より時折凝血塊を混じた肉眼的血尿が出現したため, 膀胱腫瘍を疑い膀胱鏡を施行. 生検組織よりβ2-MG由来のアミロイドーシスと診断された.
    膀胱鏡生検後, 血尿の増強と強度の膀胱刺激症状を認めたため, 膀胱内凝血塊除去および電気凝固術を施行. 血尿は消失したが膀胱刺激症状はその後約2か月続いた.
    維持透析患者の骨, 関節系をはじめとする諸臓器にアミロイドが沈着し諸症状を呈することはよく知られている. また二次性膀胱アミロイドーシスより出血をきたした症例も報告されている. しかしβ2-MG由来の透析アミロイドーシスにより膀胱出血をきたしたという報告例は現在まで見あたらない.
    維持透析患者が肉眼的血尿をきたした場合, 尿路系悪性腫瘍とともに本疾患も考慮するべきである. しかし, 検査を契機に止血不能な大出血をきたす場合も多く, 無尿の透析患者に対する膀胱鏡検査には細心の注意を払う必要があると考えられた.
  • 長根 裕, 藤島 幹彦, 鈴木 泰
    1994 年 27 巻 9 号 p. 1263-1266
    発行日: 1994/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は42歳, 男性. 多発性嚢胞腎にて1988年血液透析導入, 1991年4月よりCAPDを継続していた. 1993年11月17日夜, CAPDのバッグ交換を行い, 排液異常や混濁は見られなかったが, 排液バッグ内に白い糸状の動く生物を認めるため, 翌日バッグを持参して来院した. 患者は排液5時間前の夕食にサンマの刺身を食したが, 腹痛や消化器症状はなかった. 標本の精査では, アニサキスI型幼虫であった. 本症例の場合, アニサキス幼虫が経口侵入後, 胃または腸アニサキス症を発症することなく腹腔内に穿通し, 排液とともに排出されたものと思われる. 最近は海産魚を生食する機会が多くなり, アニサキス症は年々増加の一途をたどっており, 透析患者の食生活においても寄生虫感染症には十分注意する必要がある.
  • 堀井 昭, 鎌田 貢壽, 小久保 透, 小林 直之, 吉田 煦, 大久保 充人, 小林 豊
    1994 年 27 巻 9 号 p. 1267-1272
    発行日: 1994/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    抗リン脂質抗体症候群は, 1986年Hughesらによって提唱された疾患であり, リン脂質に対する抗体により, 血栓症, 習慣性流産, 血小板減少, 種々の神経症状, 凝固能異常等の臨床症状が引き起こされるとされ, また近年では末期腎不全に至る腎障害の報告もある. 我々は, 脳出血, 脳梗塞, 下肢深部静脈血栓症, 肺梗塞などさまざまな血管疾患の既往を持ち, ループスアンチコアグラント, 抗カルジオライピン抗体陽性から抗リン脂質抗体症候群と診断され, その後腎不全に至った一例を経験した. 本例に対し内シャントを造設し血液透析療法に導入したが, 頻回に内シャントが閉塞した. 抗リン脂質抗体症候群に対する治療として, ステロイド療法, 免疫抑制療法, 抗凝固療法などが挙げられる. 本例はステロイド療法, 免疫抑制療法に同意が得られなかったため, 血液透析療法と平行して, IgG免疫吸着療法を施行した. しかし臨床的, 血清学的にも効果は見られなかった. 頻回の内シャント閉塞と血管不良のため血液透析療法が困難となり, 腹膜透析療法へ移行した. 腹膜透析療法に移行後, 透析管理は良好となり, またワーファリンを併用することで血管病変などの合併症もなく経過し, 原病による血小板の低下も軽減した. 腹膜透析療法は, 末期腎不全に至った抗リン脂質抗体症候群に対して選択に値する血液浄化法であると思われる.
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