日本透析医学会雑誌
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48 巻, 7 号
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原著
  • 齊藤 正和, 小川 真澄, 近藤 久江, 須賀 喜一, 宮本 みづ江, 田畑 陽一郎, 伊東 春樹
    2015 年 48 巻 7 号 p. 405-412
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    【目的】栄養障害 (MN) を呈する血液透析 (HD) 患者の身体機能, 栄養指標に対するレジスタンストレーニング (RT) の効果を検討した. 【方法】HD患者75例をGeriatric Nutrition Risk Index (GNRI) により, MN群19例 (GNRI<91), 対照 (C) 群56例 (GNRI≧91) の2群に分類し, Short Physical Performance Battery (SPPB), Life Space Assessment (LSA), 血清アルブミン (Alb), GNRIに対する9か月間のHD中のRTの効果を検討した. 【結果】MN群は, RT開始前のSPPB, LSA, Alb, GNRIがC群に比べて有意に低値を示したが, HD中のRTにより, 各指標とも有意に改善した (p<0.05). 【結論】MNを呈するHD患者へのHD中のRTは, 身体機能, 栄養指標の改善に有用である.
  • 辻 義弘, 吉岡 健太郎, 河野 麻実子, 鈴木 尚紀, 田尻 伸弘, 人見 泰正, 加藤 かおり, 吉田 俊子, 水野 (松本) 由子
    2015 年 48 巻 7 号 p. 413-422
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    腸溶性カプセル化ビフィズス菌製剤 (以下, カプセル化ビフィズス菌製剤) を透析患者に服用させ, 便秘症状の改善とそれに伴うQOL, および血液検査結果の変化について検討した. 透析患者24名を対象とし, カプセル化ビフィズス菌製剤を1日1包8週間服用させた. 便秘の尺度評価には日本語版便秘評価尺度を用い, QOLの変化にはThe Patient Assessment of Constipation Quality of Life Questionnaire (PAC-QOL) を用いた. カプセル化ビフィズス菌製剤摂取前と比較して, 21名 (87.5%) に便秘症状の改善とQOLの向上が認められた. また, 早期に便秘が改善した群では血清リン値が有意に低下した. カプセル化ビフィズス菌製剤摂取の効果が早発性に出現する透析患者では, 便秘症状の改善に伴うQOLの向上, および血清リン値の低下に有用であることが示唆された.
  • 上原 由美, 柳澤 和美, 竹内 茂, 諏訪 絢也, 内山 和彦, 石田 裕, 鈴野 弘子
    2015 年 48 巻 7 号 p. 423-429
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    筆者らは, 米のリン (P), カリウム (K) を低減させるための有効な洗米方法は, 米に水を加え20秒間かき混ぜ, 水を取り換える動作を5回繰り返すことであると報告した. 今回は, この洗米方法が臨床的に有効であるか検証を行うことを目的とした. 精白米を1日2食以上自宅にて摂取しており, 指導前の血清P値が5.0mg/dL以上の高リン血症の透析患者7名を対象として, 上記の洗米方法を指導し, 指導前と指導後の血液検査 (BUN, P, K, Alb, Hb) の変化を18週間比較した. 指導前後で, BUN, K, Alb, Hb値において有意差は認められなかったが, 血清P値は低下傾向がみられ, 10, 14, 16週目は有意に低下した (p<0.05). Alb, Hbに変化はみられず, 栄養状態の低下はなかった. この5回洗米食事療法は, 簡便, かつ継続可能であり, 血清P値を低下させる効果が期待できることが示唆された.
症例報告
  • 成山 真一, 田中 宏衛, 梶山 哲也, 福永 匡史, 三木 孝次郎, 堀松 徹雄, 野口 哲也, 澁谷 浩司, 杉木 雅彦, 澁谷 浩二, ...
    2015 年 48 巻 7 号 p. 431-436
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    本邦の血液透析患者数は31万人に増加し, これに伴い重症下肢虚血 (critical limb ischemia : CLI) も多くみられるようになった. CLIによる下肢大切断は生命予後に多大な悪影響を与えることが知られる. このためCLIの治療目標は下肢切断を回避し, 可能な限り歩行機能を温存させ生命予後の改善に繋げることである. 今回, われわれは維持血液透析患者に発症したCLIに対し外科的血行再建の一つである血栓内膜摘除術 (thromboendarterctomy : TEA) を行い救肢できた1例を経験した. 症例は64歳男性, 多発性囊胞腎由来の慢性腎不全のため2003年6月より腹膜透析導入, 2009年6月から血液透析に移行. 2014年に入り右下肢間欠性跛行が出現し, 同年5月頃には安静時疼痛へと病状が増悪した. 下肢血管造影で右総大腿動脈ならびに右膝窩動脈に限局性病変が認められたため, 同年6月にTEAを行い症状の改善に至った. 血液透析患者のCLIにおいて, TEAは限局性病変に対して今なお有効な治療選択肢の一つとなり得ることが示唆された.
  • 小島 圭太郎, 水野 正司, 服部 愼一, 蓑島 謙一, 山羽 正義, 堀江 正宣
    2015 年 48 巻 7 号 p. 437-441
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は45歳, 女性. 1987年に急性間欠性ポルフィリン症と診断された. 慢性腎不全のため2008年12月当院へ紹介. 翌年4月慢性腎不全が増悪し, 透析導入準備のため入院となった. ポルフィリン症は, 禁忌薬剤の使用により代謝障害を誘導し発症および増悪する. このため, 透析導入時には薬剤選択に注意する必要がある. 2009年6月透析導入基準を満たしたため, 薬剤の安全性を十分配慮した上で, アムロジピンおよびエポエチンベータの使用を開始し血液透析を導入した. その後, 上記薬剤使用下で維持血液透析を施行しているが特別な異常を認めていない. 新しく使用が可能であった薬剤について報告した.
  • 菅原 翔, 中澤 純, 富田 一聖, 高谷 季穂, 藤野 佳彦, 山原 康佑, 磯野 元秀
    2015 年 48 巻 7 号 p. 443-448
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は74歳, 男性. 糖尿病, 高血圧症, 脂質異常症で通院中に腎機能低下の進行, 蛋白尿, 血尿を認め紹介となった. 発熱と炎症反応, 血球減少から全身性エリテマトーデス (SLE) が疑われた. 次回外来の直前に著明な高K血症のため緊急入院となった. 腎障害に加え胸膜炎, 血液異常, 抗核抗体と抗ds-DNA抗体が陽性であり, 高齢発症のSLEと診断した. 持続的血液透析により高K血症の補正を行いながら, ステロイド療法を開始した. ステロイド開始後, 発熱や胸膜炎は軽快したが, 汎血球減少が出現し, 低補体血症は持続した. ミゾリビンを併用したが効果は乏しく, 易感染状態が懸念されたため, 免疫吸着療法 (IAPP) を開始した. IAPPを併用後, 汎血球減少や低補体血症は改善し, ステロイドを減量し退院となった. IAPPの併用は, 感染リスクが懸念される高齢発症ループス腎炎に対して有用な治療法である可能性が示唆された.
  • 坂口 大, 下稲葉 美佐, 見附 明彦, 米澤 智一, 石原 知明, 松下 良介, 速見 浩士, 榎田 英樹, 中川 昌之
    2015 年 48 巻 7 号 p. 449-454
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    69歳, 男性. 透析歴は23年 (原疾患 : 慢性糸球体腎炎), 67歳時に左腎細胞癌に対し左腎摘除術が実施され, 術後の定期造影CT検査で後天性囊胞腎 (ACDK) 内に造影効果を示す充実性領域が認められた. ACDK合併腎癌がもっとも疑われたため, 腹腔鏡下右腎摘除術が施行された. 病理検査において毛細血管性腎血管腫と診断された. ACDKを合併した透析患者では, 画像診断による腎血管腫と腎癌の鑑別は困難と考えられている. また透析患者に発生する腎血管腫はまれであり, 本邦の報告では本症例が5例目である.
  • 山本 直, 橋本 修
    2015 年 48 巻 7 号 p. 455-459
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    ジャーナル フリー
    症例は52歳女性. 10年前に胃癌に対し胃全摘術を施行後より食後に気分不良を伴うことがあったが放置. 2012年9月に末期腎不全 (原疾患不明, 糖尿病なし) のため血液透析導入となり, 当院で外来維持透析を継続していた. 2013年5月, 朝食後に低血糖昏睡をきたしブドウ糖静注により改善した. 入院精査を希望されず外来で持続血糖モニター (continuous glucose monitoring : CGM) を施行したところ食後低血糖を認め, 胃切除後であることから後期ダンピング症候群と診断. 治療として朝夕食前にボグリボース0.3mg内服開始し, 自覚症状およびCGMにおける血糖変動は改善した. 血液透析患者に合併した後期ダンピング症候群に対しボグリボースによる血糖変動改善効果をCGMで確認しえた貴重な症例であり報告する.
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