昭和医学会雑誌
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52 巻, 1 号
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  • 小井土 玲子, 新里 勇二, 須永 進
    1992 年 52 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ICR系マウス新生仔を用い, 日齢0で低酸素負荷を行ない, その後の脳発育や脳組織中のVitamin Eおよび過酸化脂質に及ぼす影響を生化学的に検討した.さらに低酸素負荷前にVitamin Eの投与を行ない, 低酸素性脳発育障害に対するその予防効果を検討し以下の結果を得た.1.低酸素負荷後の脳湿重量, 総DNA量, 総RNA量, 総蛋白量は, いずれも対照群より若干の低値を示し, 特に日齢15に目立ったが, 日齢21ではcatch upを認めた.脳組織中Vitamin E濃度は, 負荷直後に著減し (対照群値の約1/3) , 以後加齢による増加はみられなかった.脳組織中の過酸化脂質量は負荷直後に推計学的に有意な高値 (非負荷群の約3倍) を示し, その後も対照群より高い値で推移したが, 推計学的有意差は認めなかった.2.Vitamin E投与により, 低酸素負荷マウスの脳の総DNA量, 総RNA量, ならびに総蛋白質量は, いずれも非投与マウスに比べ早いcatch upを示した.また, 低酸素負荷直後の脳組織中の過酸化脂質量は対照群より有意に高いが (対照群値の約2倍) , Vitamin E非投与群より低い傾向 (平均で約1/4の減少) を示し, その後も同様な傾向で推移した.以上のことから, マウス新生仔期の低酸素負荷は負荷後に脳組織中の過酸化脂質の増加とVitamin E濃度の減少ならびに一過性の脳細胞増殖障害と脳蛋白質合成障害を引き起こすことが証明された.これらの事実から, 低酸素症による脳組織障害の病因の一部にfree radicalの関与による脳細胞機能障害が推測された.また, 低酸素負荷前にVitamin Eを投与されたマウスでは, 負荷による脳組織中の過酸化脂質増加に若干の抑制がみられ, 脳生化学的構成成分に対する大きな影響は認められなかったが, Vitamin E投与は低酸素性脳組織障害をある程度防御する効果をもつ可能性があると考えられた.
  • 信太 賢治, 小堀 正雄, 根岸 秀, 細山田 明義
    1992 年 52 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    我々は, 雑種成犬を対象に, dibutyryl cyclic AMP (DBcAMP) の投与量を三群 (A群: 0.05mg・kg-1・min-1, B群: 0.2mg・kg-1・min-1, C群: 0.6mg・kg-1・min-1) に分け, 各群で30分間持続静脈内投与し, 呼吸・循環器系に及ぼす効果を比較検討した.各パラメータの測定は, DBcAMP投与前を対照値 (S0) とし, 投与20分後 (S1) , 30分後 (S2) に行った.その結果, 心係数は, S0に対し, S2でA群110±5%, B群117±6%, C群155±10%と, 三群とも有意に上昇した.一回拍出量係数は, A群では有意差は認められなかったが, B群S2では, S0に対し, 118±5%, C群S2 136±10%と有意に上昇した.LVdp/dt maxも同様に, 各群で有意に増加し, 特にC群S2では, S0に対して, 163±16%と著明に増加した.これらのことから, DBcAMPは用量依存的に著明な陽性変力作用を認めることが判明した.体血管抵抗値は, 投与量を増加するに従い, 各群で次第に低下した.特にC群S2では, S0に比べ, 61±5%と著明に低下した.一方, 平均動脈圧, 肺動脈楔入圧, 中心静脈圧は, 投与量に関わらず, 有意な変化は認められなかった.心拍数は, AB両群とも, 有意な変化は示さなかったが, C群S2で, 115±5%と有意に上昇した.このため, DBcAMPは0.05から0.2mg・kg-1・min-1では, 効果的な陽性変力作用, 体血管抵抗低下作用を示し, 循環改善薬として有効であるが, 0.6mg・kg-1・min-1では心拍数の上昇を来たすため, その使用にあたり十分な注意が必要と考えられた.肺循環に対しては, 三群とも大きな変化は認められず, 今回の投与量では, DBcAMPの肺血管への影響は体循環系に対する効果に対して非常に小さく, 通常は無視できるものと考えられる.血液ガス所見やシャント率には, 特に大きな影響は認められなかった.また, SvO2がC群で有意に上昇したことから, 末梢循環不全時には特に有効であることが示唆された.以上から, DBcAMPは, 用量依存的に陽性変力作用, .血管拡張作用を示し, 肺循環やガス交換に対する影響は予想以上に軽度であることが示唆された.
  • 豊田 泉, 武重 千冬
    1992 年 52 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    低頻度 (1Hz) の経穴 (足三里の前脛骨筋) の刺激, 及び鎮痛抑制系 (視床正中中心核外側部, L-CM) を局所破壊した後非経穴部 (腹筋) の刺激で出現する鎮痛は, 刺激終了後も鎮痛が持続する後効果が現われる.後効果の出現には, 経穴・非経穴の刺激で下垂体から遊離されるβ-エンドルフィンやACTHが関与すると考えられるが, 視床下部弓状核において, 鎮痛を発現する求心路と遠心路を連絡するドーパミン・シナプスにこれらの物質はシナプス前性に働くことが明らかにされている.そこで鎮痛の様相, 特に後効果の現れ方と刺激時間との関係からシナプス前性に働くこれらの物質の作用方式を検索した.実験にはWistar系ラットを用い, 鎮痛は尾逃避反応の潜伏期の増加率とした.鎮痛抑制系の破壊はL-CMに径0.4mmのステンレス線を挿入する機械的破壊によった.経穴・非経穴の刺激は, それぞれ前脛骨筋と腹筋に2本の針電極を約10mmの間隔で挿入し, 筋が収縮する程度の強さの刺激を1Hzで与えた.経穴の刺激による鎮痛には有効性の個体差があるので, 有効群のみを用いた.刺激時間を5, 10, 15, 30, 45, 60, 120分として, 経穴及び非経穴刺激を与えると, 両鎮痛とも同じ様相で変化した.これらの変化は, 鎮痛の最大値が現われる時期と刺激時間の関係から, 三つの型に分類出来た.すなわち, 刺激終了後に鎮痛の最大値が現われるI型, 刺激終了時に鎮痛の最大値が現れ, その値がしばらく持続するII型, 鎮痛の最大値が刺激中に出現するIII型である.刺激時間45分で鎮痛の最大値が現れ, それ以上刺激時間を長くしても鎮痛の増大は現れなかった.45分間の刺激を与え15分停止する間欠的な刺激を3回行って得られた鎮痛と, 持続的に同時間刺激を与えて出現する鎮痛との間にはほとんど差異はみられなかった.以上の結果から, 経穴・非経穴の刺激による鎮痛は, 後効果を発現する機序と鎮痛を持続する機序の二つによって出現し, 前者は経穴・非経の刺激による求心性のインパルスでドーパミン・シナプスに促通が起こり, シナプス前性に働くβ-エンドルフィンや, ACTHによってドーパミンが遊離して出現し, これは短時間の刺激で完成する.後者は下垂体から遊離されるβ-エンドルフィンやACTHの量には一定の限度があり, 鎮痛が最大になった後は, 鎮痛を持続するように働いていると考えられた.
  • 荒井 強, 郭 試瑜, 武重 千冬
    1992 年 52 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    経穴部を刺激する時と同じ条件で, 非経穴部を刺激しても鎮痛は出現しないが, 鎮痛抑制系の視床正中中心核外側部 (L-CM) や視床下部後部の一部 (I-PH) を破壊するかcholecystokininの拮抗剤のproglumideを投与すると, 非経穴部の刺激で鎮痛が出現する.これは経穴部や非経穴部の刺激で鎮痛抑制系が活動し, 非経穴部に連なる中枢神経経路に抑制が加えられているためであることが明らかにされている.鎮痛抑制系がこれらの刺激でどの様に活動するかを鎮痛抑制系のニューロン活動から検索した.また鎮痛抑制系の伝達物質としてはCCK-8が同定されているが, CCKのAとBのレセプターの拮抗剤を鎮痛抑制系に微量投与して, 非経穴部刺激による鎮痛の出現の様相を検した.LCMのニューロン活動は, 非経穴部の刺激で次第に放電頻度を増大し, 約10分後に最大に達し, この値が維持された.Proglumide (20μg/kg, i.v.) を非経穴部刺激開始前に投与しておくと, ニューロン活動の増大は出現しなくなったが, 非経穴部刺激開始後の投与では拮抗作用は一過性であった.CCK-Bレセプターの拮抗剤のL-365, 260を鎮痛抑制系のL-CMやI-PHに微量投与し, その濃度を0.6, 6, 60, 600ngと変化させると非経穴部刺激による鎮痛は, 6ngで有意 (p<0.05) に現われ, 60ngで最大となり, L-CMへの投与で26.0±5.7% (平均±標準誤差, n=5) , I-PHへの投与で27.3±2.9% (n=5) の尾逃避反応の潜伏期の増大がみられた.CCK-Aレセプターの拮抗剤のL-364, 718を同じ様に微量投与したが, 60ngで僅かな尾逃避反応の潜伏期の増大 (L-CM: 12.3±1.3% (n=6) , 1-PH: 12.8±1.9% (n=7) ) が見られた.L-CMや1-PHの近傍への投与では非経穴部刺激による鎮痛は出現しなかった.以上の結果から鎮痛抑制系は経穴, 非経穴の刺激で活動し, この鎮痛抑制系の伝達物質はCCK-Bレセプターと親和性の高いCCKである事が明らかとなった.
  • 熊谷 一秀, 安井 昭, 西田 佳昭, 増尾 光樹, 吉利 彰洋, 広本 雅之, 唐沢 洋一
    1992 年 52 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    陥凹性早期胃癌は癌巣内潰瘍の消長による形態変化を観察することも稀れではないが, 多くは悪性病変としての診断は容易である.しかし皿型癌 (Hauser型潰瘍癌) は時に良性潰瘍との鑑別に苦慮した経過観察例も経験する.このHauser型潰瘍癌の陥凹性早期胃癌における位置づけを検討した.当科および関連施設で切除された癌巣内潰瘍 (瘢痕) を有する陥凹性早期胃癌136例 (: IIc+ (III) 型125例, III+ (IIc) 型11例) を対象とし, 癌巣内潰瘍の深さ, 占居分布, 占居腺領域などについて検討し, 以下の結果を得た. (1) III+ (IIc) 型癌の癌巣内潰瘍の深さはu1-IV9例, ul-III1例, ul-II1例, IIc+ (III) 型癌はu1-IIが78%と大部分を占めた. (2) 占居分布はIII+ (IIc) 型癌はM領域小轡に11例中9例と多く, IIc+ (III) 型癌はM領域に多いが, 前後壁に偏して占居するものが多かったが, 癌巣内潰瘍u1-IV例はM領域小轡に多く存在した. (3) 占居腺領域はIIc+ (III) 型癌は幽門腺領域が過半を占めたが, III+ (IIc) 型癌は中間帯領域および, その近傍癌が多かった.以上より, Ha-user型潰瘍癌は癌巣内潰瘍を有するIIc型癌と本質的には変らず, 占居分布の差, 癌巣内潰瘍の深さによる潰瘍の治癒度の差などにより特徴を現わすものと思われた.また, それらの診断にあたっては確実な生検はもとより, 経過観察においても潰瘍治癒過程における癌性再生上皮の認識が重要と思われた.
  • 小倉 享子, 九島 巳樹, 塩川 章, 太田 秀一
    1992 年 52 巻 1 号 p. 39-50
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨髄clot section 6, 225例を用いて, 臨床データとリンパ小節の出現状況にどのような関係があるかを検索し, その出現の意義について検討した.1.リンパ小節出現率は5.22%で, 女性に高く, 加齢に伴い上昇した (P<0.01) .また, 膠原病・類縁疾患や貧血で高く, 白血病で低かった (P<0.01) .胚中心出現率は, 全症例の0.11% (リンパ小節の1.24%) と低く, すべて女性にみられた.2.リンパ小節出現数は1~34個までであり, 1~3個が91.4%を占め, 平均1.99±2.54個であった.画像解析装置IBAS-2000 (Carl-Zeiss社) を用いて測定した結果は, リンパ小節最大径は, 82~989μm・平均313±126μmであり, リンパ小節面積は, 4×103~285×103μm2・平均54×103±45×103μm2, リンパ小節総面積 (一症例での各リンパ小節面積の合計) は, 4×103~2, 917×103μm2・平均106×103±105×103μm2であった.加齢に伴いリンパ小節面積は増加する傾向にあった (r=0.129, p<0.01) .3.リンパ小節のみられた群 (以下, LN (+) 群) とリンパ小節のみられなかった群 (以下, LN (-) 群) 間で比較すると, 末梢血リンパ球数はLN (-) 群が高く (p<0.01) , 血清ガンマグロブリン値はLN (+) 群の方が高い傾向にあったが有意差はみられなかった.末梢血リンパ球数, 血清ガンマグロブリン値とリンパ小節計測値 (リンパ小節出現数・リンパ小節最大径・リンパ小節面積・リンパ小節総面積) との相関はみられなかった.4.採取方法では, clot sectionの方がbiopsyよりもリンパ小節の出現率は高かった (p<0.01) .骨髄のリンパ小節の出現には多くの因子が関与していると考えられるが, 免疫の関与が重要と思われる.
  • 八木 秀文, 仲吉 昭夫
    1992 年 52 巻 1 号 p. 51-61
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胆嚢壁肥厚性病変の質的診断や胆嚢癌の深達度を知るうえで, 超音波像の層構造と組織学的所見との対比は重要である.超音波上胆嚢壁の層構造は, 一般に1層高エコー, 1層等~低エコー, 2層, 3層, 4層以上に分けられる.組織標本にて壁が3mm未満のものを正常型胆嚢とすると, この超音波像はほとんど3層構造を示した.壁肥厚性病変では, 組織像の変化により種々の超音波像を示したが, 特に1層等~低エコー, または2層を示し, さらに層構造の乱れ, 内腔不整の見られる場合には癌を考慮する必要がある.その他, 膿瘍型胆嚢炎や肉芽腫型胆嚢炎の一部もこれと類似した超音波像を示すことがあり, 癌との鑑別を要する.胆嚢壁の超音波像が3層構造を示す場合, 第2層は病理学的には, 固有筋層とそれに連続する漿膜下層の線維化に相当すると考えられ, 癌の深達度を診断する際には固有筋層, 漿膜下層との鑑別が困難である.
  • ―施灸, 施鍼および漢方方剤黄連解毒湯の免疫亢進マウスへの影響の比較検索―
    笠原 多嘉子, 呉 育興, 桜井 淑子, 真鍋 亜美, 小口 勝司
    1992 年 52 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    免疫抑制薬Cyclophosphamide (Cy) をPicryl chloride (PC) 感作2日前に腹腔内投与することにより, 遅延型過敏症 (delayed type hypersensitivity, DTH) 亢進モデルを作成し, 免疫反応亢進状態に対する東洋医学的療法の影響を検索した.東洋医学的療法としては, 生体直接刺激法の施灸, 施鍼および経口的全身投与法の漢方方剤黄連解毒湯を用いた.実験には6~9週齢のddY系雄性マウスを用い, 生体刺激部位はヒト命門穴相当部位とした.施灸は艾10mg/bodyを5個に分けて行い, 施鍼は鍼を30°の角度で約2mm刺入し, 低頻度通電刺激を行った.黄連解毒湯は自製し, ヒト投与量の5倍量を投与した.DTHは第1次, 第2次の2回の免疫反応について耳腫脹を測定した.施灸, 施鍼のPC感作前3日間処置は, CyによるTs機能抑制による耳腫脹亢進をさらに有意に増幅し, Cyの作用に協力的に作用した.惹起前3日間処置では, 施灸は第2次反応で, 施鍼は第1次, 第2次反応共に, Cyによる耳腫脹亢進を抑制した.黄連解毒湯は惹起前3日間処置で, Cyによる耳腫脹亢進を抑制し, それに加え正常のDTH反応も抑制した.Cyによる有意な脾/体重比増加, 末梢血白血球数減少に対し, 施灸感作前処置は, 好中球・単球数の減少を阻止しうる傾向を示した.以上, 黄連解毒湯は細胞性免疫抑制作用を有すること, また, 施灸, 施鍼は細胞性免疫変調作用を示すに際し, Cyの作用を修飾することが認められた.
  • 林 由里, 野津 史彦, 小沢 進, 八田 善夫
    1992 年 52 巻 1 号 p. 69-76
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Bombesin (BBS) のラット膵外分泌刺激作用と, その作用にcholecystokinin (CCK) が関与するか否かを検討した.In vitroの検討ではCCKの特異的拮抗剤であるL-364, 718は, CCK-8のアミラーゼ分泌を強力に抑制したがBBSの効果に影響はなかった.外分泌刺激作用はED50の結果からCCK-8がBBSの約6.8倍強力であった.意識下ラットで膵管より純粋膵液を採取し, BBSを6種の濃度 (10~1, 000pM/kg/h) を持続投与によりBBSの用量反応性を検討した.その結果より, 50pMと300pMのBBSを用い, L-364, 718前投与とBBS単独と膵外分泌反応を比較し, BBS刺激前後の血漿CCKをRIAで測定した.BBSの膵外分泌に対する反応は10pMより認められ, 用量に応じて増加し300pMで最大刺激濃度を示しそれ以上の濃度では軽度低下を示した.BBSの50pM及び300pMの刺激で, 対照群とL-364, 718投与群での膵外分泌に差はなく, 刺激前後の血漿CCKも変動を認めなかった.これらの結果よりBBSのラット膵外分泌に対する作用はCCKを介さず直接作用と考えられた.
  • 岡本 年弘
    1992 年 52 巻 1 号 p. 77-86
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    小耳症の耳介長軸の傾きを正常人と比較する目的で小耳症患者69名および正常人30名を対象として, 耳介付着線, 耳介長軸, 鼻梁線の三者のなす角度を調べた.耳介付着線と鼻梁線とのなす角度をX角, 耳介付着線と耳介長軸とのなす角度をY角, 耳介長軸と鼻梁線とのなす角度をZ角として計測し, 男女, 年齢による差異の有無, 正常人との比較検討を行った.その結果, 以下のことが示された.1) 小耳症患者の男女間でX角, Y角, Z角に有意差はない.2) 小耳症患者のX角, Y角は正常人のX角, Y角と比べて有意差がなく, 小耳症患者のZ角は正常人のZ角に比べて有意に大きく正常人より約5度前傾している.3) 5歳以上の小耳症患者においては, 年齢的因子によりX角, Y角, Z角は, ほとんど変化しない.
  • 渡辺 公博, 石井 誠, 舩冨 等, 八田 善夫
    1992 年 52 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年, 癌性腹膜炎に対しシスプラチン (cisplatinum: CDDP) の腹腔内投与 (ip) が試みられているが, その生体内薬物動態を知ることは効果の面からのみでなく, 副作用の面からも重要と思われる.今回我々は, CDDPの腹腔内投与と全身投与 (iv) 後の血中, 尿中および腹水中のCDDP濃度の変動を検討した.CDDPはip後に腹水中に高濃度に存在し, しかも血中にも十分量のCDDPが移行することから, 腹腔内での直接効果も期待できると思われた.また, この場合の副作用を抑制するためCDDP-ipにチオ硫酸ナトリウム (sodium thiosulfate: STS) を併用し血中, 腹水中のCDDP濃度をCDDP単独ipと比較検討したが, STS併用では血中遊離型CDDPは比較的早期に測定不能となるのに対し, 腹水中遊離型CDDPは比較的長時間存在した.これらのことから局所効果のみを期待する場合はSTSを併用し, 全身への効果も期待する場合は, 他の副作用抑制方法を考慮すべきと思われた.
  • 福地 邦彦, 高木 康, 五味 邦英, 山口 智子, 和久田 梨香, 田中 庸子
    1992 年 52 巻 1 号 p. 93-103
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年, 種々の重篤な基礎疾患に伴う免疫不全の患者, いわゆるcompromised hostの増加が大きな問題となってきており, 常在菌あるいは弱毒菌による重症感染症があらためてクローズアップされてきている.更に, ここ数年, MRSAに代表されるように, 各種抗菌剤に対する耐性獲得が顕著となってきている.我々の施設では1990年7月から自動細菌同定・感受性検査AUTOSCAN4 (Baxter) を導入し, 臨床細菌検査の迅速化に努めてきた.今回, 最近1年間の臨床分離菌の動向, 抗菌剤感受性について集計したので報告する.臨床に於ける, 感染症予防, そして, 抗菌剤治療の参考になれば幸いである.
  • 上原 喜夫, 坂本 仁, 渡辺 公博, 舩冨 等, 八田 善夫
    1992 年 52 巻 1 号 p. 104-108
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    膵炎発作を反復した膵管癒合不全症の一例を報告した.症例は55歳, 女性.約3年前より血中膵酵素上昇をともなう腹痛発作を繰り返し, 精査加療のため入院となる.内視鏡的逆行性膵胆管造影 (以下ERCP) では膵頭部領域のみの描出であったが, 体外式超音波検査および腹部CT検査では体尾部の存在も観察され, 膵管癒合不全症と診断した.ERCPにて, 再三副乳頭からの造影を試みたが不成功であり, このことは逆に, 背側膵からの膵液流出障害の存在を示唆するものとも考えられ, 膵炎発作の一因と推定された.内視鏡的超音波検査 (以下EUS) では, 腹側膵は正常であったが, 背側膵はびまん性の高エコーを呈し, 背側膵のみの異常が認められた.以上より, 本症は反復性背側膵炎の一例と考えられ, EUSは腹側, 背側膵を別個に詳細に観察でき, 膵管癒合不全症の有用な一検査法と考えられた.
  • 浅川 義夫, 広石 和正, 舩冨 等, 八田 善夫, 坂元 修, 竹内 治男
    1992 年 52 巻 1 号 p. 109-112
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    高脂血症を合併し, 膵炎発作を繰り返した慢性膵炎の一例を報告した.症例は56歳, 男性.心窩部痛, 左季肋部痛を主訴に来院し, 血中, 尿中膵酵素の上昇とともに血中コレステロール, 中性脂肪高値を指摘され入院となる.症例はアルコール多飲者であり, 同様の症状を数回経験しており, 4年前には某医より高脂血症を指摘されている.入院時のリポ蛋白分画ではカイロミクロン, pre-βリポ蛋白が増加しており, FredricksonV型と診断した.膵炎回復後のERCPでは慢性膵炎II群であり, 入院中食事脂肪を増量したところ血中中性脂肪の上昇とともに膵炎は再燃した.以上より, 本例における慢性膵炎の原因として, アルコールの関与は否定できないが, 高脂血症が主体と考えられた.
  • 斉木 賢治, 舩冨 等, 八田 善夫, 津田 紘輔, 糸川 正, 浜本 鉄也, 諸星 利男, 神田 実喜男
    1992 年 52 巻 1 号 p. 113-117
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胃ポリープが十二指腸球部に嵌入をくり返した症例を経験したので報告した.症例は57歳, 女性.突然に出現, 消失する悪心, 嘔吐, 腹部膨張感を主訴に来院.胃透視にて前庭部後壁にて山田IV型のポリープを認め, 胃内視鏡検査にて十二指腸球部に嵌入した胃ポリープが胃内に戻る様子を確認しえた.ポリペクトミーを施行し, metaplastic foveolar hyperplasia, Group 2であった.胃内視鏡検査が一般化された今日においては, 本症も散見されるが, なおまれと考えられ, また, 茎部より脱落し大出血をきたす例もみられる.突然発症し, 消失する上腹部症状を訴えた場合, 本症も念頭におき, 早急に胃内視鏡検査, ポリペクトミーを施行する必要があると考えられた.
  • 上田 和光, 安井 昭, 西田 佳昭, 熊谷 一秀, 真田 裕, 吉利 彰洋, 増尾 光樹, 広本 雅之, 西野 猛
    1992 年 52 巻 1 号 p. 118-122
    発行日: 1992/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 男性.主訴は咳嗽, 呼吸困難.1988年12月中旬に主訴が出現し, 近医で急性上気道炎の診断にて経過観察したが軽快せず, 当院に入院した.血性胸水を認めたが, 細胞診ではclass IIで胸部単純レ線像で肺野に, 異常を認められなかった.腹部は膨満しており, 精査にて脾臓に不整形の腫瘍を認めた.以上より脾臓原発腫瘍の診断で1989年2月15日に手術を施行した.腹腔内に腫大したリンパ節はみられず, 脾摘術, 膵尾部合併切除術を施行した.脾臓は24×11×10cm大, 1, 560gで, 病理所見はmalignant lymphoma large cell immunoblastic typeであった.術後CHOP療法を5クール施行し, 現在再発所見はみられていない.
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