マーガリン, ショートニング, ラード中の微量金属の定量法および市販品中のこれらの含量を調査するために家庭用マーガリン30種, 業務用マーガリン23種, 天然バター11種, ショートニング12種および精製ラード12種合計88種に対し, 鉄, 銅の定量を行ない, さらにそれらの品質に及ぼす影響について調査を行なった.
1) 定量法はいずれも灰化比色法によって行なった. すなわち鉄はチオシアン酸法, 銅はジエチルチオカルバミン酸ナトリウム (抽出法) 法によった.
2) 鉄の含量は予想外に少なく種類別では家庭川が比較的多く平均値 (X) で1.53ppmついで業務用1.33~1.37ppmであった. しかし油脂成分のみからなるショートニング, ラードは非常に少なく1.06, 0.99ppmであった.
3) 家庭用マーガリンのごとく製造過程, 添加成分の複雑なものほど含量が多く, また製造装置の材質に鉄を使用したと予想されたものは明らかに多かった.
4) 銅はほとんど1ppm以下で非常に少なく種類別でもいずれも0.5ppm以下であった.
5) マーガリンの場合, 油脂部と水溶部とに分けて測定したところ鉄, 銅とも油脂分は少なく, とくに銅は少なかった.
6) マーガリン製造前の原料油脂についてみると平均で鉄0.32, 銅0.31ppmであり銅は原料油脂自体, 鉄は製造時混入することがわかった.
7) マーガリンは鉄2ppm以上含んでも冷蔵すれば品質にはなんら影響を与えないが25°に保った場合に他の条件と重なったとき著しくPOVの上昇をみた. とくに業務用において激しかった. また銅の含量が少ないため今回はとくに銅の影響はあまりみられなかった.
8) ショートニング, ラードのオーブンテストの結果は2~3ppm程度ではとくに品質には影響しなかった.
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