食品衛生学雑誌
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50 巻, 4 号
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報文
  • 柴原 裕亮, 山田 一多, 上坂 良彦, 畝尾 規子, 阿部 晃久, 大橋 英治, 塩見 一雄
    2009 年 50 巻 4 号 p. 153-159
    発行日: 2009/08/25
    公開日: 2009/09/10
    ジャーナル フリー
    非加熱の「えび」および「かに」の全身を検体としてELISAキットで測定したとき,頭胸部に含まれるプロテアーゼが抽出操作中にトロポミオシンを分解するために反応性が低下することが判明した.そこで,プロテアーゼの影響を回避するための有効な抽出方法として加熱抽出法を開発した.非加熱の各種甲殻類を用いて加熱抽出法を評価した結果,通常抽出法と比較して反応性の改善が確認された.また試料を加熱後に通常抽出法を行ったときの測定値を100%とした場合,加熱抽出法の測定値は93~107%であった.頭胸部を含む非加熱の「えび」および「かに」の測定には,本研究で確立した加熱抽出法が有効であると考えられる.
  • 六鹿 元雄, 李 演揆, 河村 葉子, 棚元 憲一
    2009 年 50 巻 4 号 p. 160-168
    発行日: 2009/08/25
    公開日: 2009/09/10
    ジャーナル フリー
    紙製品中の芳香族第一級アミン類25種類およびそれらを生成するアゾ色素類の高感度分析法を確立した.試料中の遊離アミンと総アミンを分析し,アゾ色素量は総アミンから遊離アミンを差し引くことで求めた.アミン類およびアゾ色素の溶出は,23℃の水に24時間浸漬して行った.遊離アミンは溶出液に水酸化ナトリウムを加えてアルカリ性とし,ジクロロメタンで抽出した.総アミンは溶出液中のアゾ色素を亜ジチオン酸ナトリウムでアミンに還元分解したのち同様に操作した.試験溶液はGC/MSで測定した.試料当たり 100 μg/kg相当量のアミン類を溶出液に添加した場合の回収率は,4,4'-oxydianilineと4,4'-diaminodiphenylmethaneで40%程度と低かったが,それ以外のアミン類は69~122%とほぼ良好であり,定量限界は4~20 μg/kgであった.本法を用いて原紙17試料および食品用紙製品16試料の分析を行ったところ,大部分の再生紙試料からアニリンが4~20 μg/kg検出されたが,それ以外のアミン類はいずれの試料からも検出されなかった.
  • 笠原 義正, 伊藤 健
    2009 年 50 巻 4 号 p. 167-172
    発行日: 2009/08/25
    公開日: 2009/09/10
    ジャーナル フリー
    LC/MS/MSを用いてツキヨタケおよびその食中毒原因食品に含まれるilludin Sの定量法を開発した.試料をメタノールで抽出し,Oasis HLBを用いて精製し,LCのカラムにはInertsil ODS-3を使用し,移動相には0.1%ギ酸-メタノール(7 : 3)を用いた.MS/MSの条件はESIポジティブモード,測定はMRMモードで行った.本法では他のキノコに添加した場合のilludin Sの回収率は84~94%で,検出限界は0.08~0.10 μg/gであった.食中毒原因食品からilludin Sの測定は可能であり,食中毒食品を想定したキノコ汁についてはilludin Sの回収率は74.8%であった.本法はツキヨタケおよび食中毒原因食品中のilludin Sの分析に有用な方法である.
ノート
  • 原 宏佳, 大橋 雄二, 櫻井 稔夫, 矢木 一弘, 藤澤 倫彦, 五十君 靜信
    2009 年 50 巻 4 号 p. 173-177
    発行日: 2009/08/25
    公開日: 2009/09/10
    ジャーナル フリー
    辛子明太子中のListeria monocytogenes の増殖に及ぼすニサプリン(ナイシン2.5%含有) の影響を検討した.L. monocytogenes に対するニサプリンの最小発育阻止濃度は800~1,600 μg/mLであった.また,60および600 μg/gのニサプリン添加により,4℃保存時における辛子明太子中のL. monocytogenes 菌数は減少した.
    以上の結果は,辛子明太子中に存在するL. monocytogenes の増殖を抑制することを目的としたニサプリンの添加が有用であることを示している.
  • 橋本 博之, 伊藤 歌奈子, 田中 裕之, 穐山 浩, 手島 玲子, 眞壁 祐樹, 中西 希代子, 宮本 文夫
    2009 年 50 巻 4 号 p. 178-183
    発行日: 2009/08/25
    公開日: 2009/09/10
    ジャーナル フリー
    市販食品を用いて特定原材料(小麦)の表示の妥当性検証を行ったところ,スクリーニング検査で陽性であったいくつかの食品において確認試験で陰性となることが確認された.両検査が一致しない場合には表示の妥当性検証は著しく困難となることから小麦のスクリーニング検査陽性モデル加工食品を11種類作製し,ネステッドPCR法による検出状況を調べた.比較対象として実施した通知法PCRでは8種類が,ネステッドPCR法では10種類のモデル加工食品が検出可能であった.検出不可能であったモデル加工食品では,鋳型DNAの増量により両PCR法で検出可能となった.しかし,過剰増量によるPCR反応阻害により増幅が不可能となることが,かまぼこおよびゼリーで確認された.以上の結果から,加工食品を対象としたPCR検査法を実施する際には,PCRに用いる鋳型DNA量を適切に増量することが有効な手段の1つになると考えられた.また,抽出DNA中に存在するPCR阻害物質の低減を図ることが今後重要と考えられた.
調査・資料
  • 高附 巧, 渡邉 敬浩, 坂井 隆敏, 松田 りえ子, 米谷 民雄
    2009 年 50 巻 4 号 p. 184-189
    発行日: 2009/08/25
    公開日: 2009/09/10
    ジャーナル フリー
    過塩素酸塩は,天然および人工物が存在し,ヒトへの健康影響は甲状腺へのヨウ素の取り込み阻害および甲状腺機能を抑制する.アメリカではさまざまな食品中から過塩素酸塩が検出されている.わが国における食品中の過塩素酸塩濃度の実態を調査するため,市販の葉菜82検体およびミネラルウォーター20試料中の過塩素酸塩濃度を測定した.過塩素酸塩の試験法はFDAの試験法を参考に18O4-標識過塩素酸塩を内部標準物質としたIC-MS/MS試験法により行った.葉菜82検体中,3検体がLOQ (0.3 ng/g)未満で,79検体から0.3~29.7 ng/gの過塩素酸塩を検出した.ミネラルウォーター20検体中6検体から0.14~0.35 ng/mLの過塩素酸塩を検出し,14検体はLOQ(0.1 ng/g)未満であった.
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