食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
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65 巻, 1 号
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ノート
  • 梅垣 敬三, 伊藤 美香, 横谷 馨倫, 山田 静雄
    2024 年 65 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2024/02/05
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル 認証あり

    2,6-ジクロロインドフェノール(DCIP)滴定法を使用したアスコルビン酸の分析は,十分に確立された技術であるが,正確な測定にはビュレットの取り扱いに熟練が必要である.本研究では,ビュレットをスポイトに置き換え,電子天秤を使用して滴定量を重量で測定する改良DCIP滴定法を提案した.DCIP標準液を滴下するスポイトは柔軟に選択できるため,多量から微量までの幅広い滴下が可能であった.改良法では,ビュレット操作が不要となり,分析時間の43%短縮,サンプルと試薬の使用量の50%削減,分析対象サンプル中のアスコルビン酸濃度に合わせたDCIP標準溶液が,分析中に適宜希釈できるなどの利点があった.改良法により実際の食品中のアスコルビン酸を測定したところ,滴定終点の判断などに関係したDCIP法の本質的な問題は改善できなかった.しかし,改良DCIP滴定は,従来のビュレット法よりも簡便で利用しやすく,特に熟練していない分析者において,迅速かつ正確な分析を可能にする.

  • 佐藤 秀樹, 河野 嘉了, 田中 志歩, 常松 順子, 松永 美樹, 宮尾 義浩, 中牟田 啓子
    2024 年 65 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル 認証あり

    有毒植物による食中毒を想定し,LC-TOF-MSを用いた植物性自然毒16成分の迅速一斉分析法を確立した.試料に水–メタノール(1 : 9)およびn-ヘキサンを加え,ホモジナイズ抽出後に遠心分離し,精製操作を行わずにLC-TOF-MSで測定し,モノアイソトピックイオン[M+H]m/z)を用いた定性分析および定量分析を行った.カレーを用いた添加回収試験の結果,定性は保持時間±0.2分以内および質量確度5 ppm以下で可能であり,定量は回収率68~142%,併行精度1.4~10.1%であった.また,有毒植物を煮たときの,煮た植物と煮汁中の有毒成分量を測定した結果,有毒成分の煮汁への移行が確認できた.したがって,食中毒が発生した場合,植物が残っていなくても,煮汁が確保できれば有用な分析試料となる可能性がある.

  • 坂井 隆敏, 菊地 博之, 根本 了, 穐山 浩, 田口 貴章, 堤 智昭
    2024 年 65 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2024/02/25
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル 認証あり

    畜産物中の酢酸メレンゲステロールについて,既存の通知一斉試験法を用いて設定された基準値および不検出基準濃度の分析が可能であるか検証した.試料からn-ヘキサンおよび無水硫酸ナトリウム存在下,酢酸酸性下アセトニトリルで抽出し,オクタデシルシリル化シリカゲルカートリッジカラムを用いて精製した.測定はLC-MS/MSを用い,ESIによるポジティブイオンモードで行った.本分析法を用い,添加回収試験(各食品5併行)を実施した.基準値相当濃度(0.001~0.02 mg/kg)の酢酸メレンゲステロールを添加した畜産物4食品における真度および併行精度はそれぞれ82~100%および0.5~5.6 RSD%であった.また,定量下限値相当濃度(0.0005 mg/kg)を添加した11食品における真度および併行精度はそれぞれそれぞれ88~99%および1.3~5.4 RSD%であった.また,全ての添加試料においてS/N≧10のピークが得られたことから,本分析法の定量下限値は0.0005 mg/kgに設定可能と考えられた.

調査・資料
  • 湧井 宣行, 井之上 浩一, 布目 真梨, 鈴木 美成, 高木 彩, 伊藤 里恵, 岩崎 雄介, 杉浦 淳吉, 穐山 浩
    2024 年 65 巻 1 号 p. 20-23
    発行日: 2024/02/05
    公開日: 2024/03/02
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,残留農薬に対する正しい知識を消費者に普及啓発するため,リスクコミュニケーションの手法を基に公開セミナーを行った.さらに,セミナーの前後において,聴講者に対して消費者の意識に関するアンケート調査を行い,その有用性を評価した.回答は84名から得られ,対応のあるt検定を用いてセミナー前後の意識変化を分析したところ,「行政への信頼感」や「残留農薬に対する理解度」が有意に改善した.また,step-wise重回帰分析を用いてリスコミセミナーの満足度に影響する要因を探索したところ,「食品中の残留農薬の安全性に関する理解」の項目が抽出された.

    消費者にとって食の安全性への理解は日常生活を送る上での重要な関心事である.消費者が食品のリスクを正確に理解し,適切な判断ができるようになるためにも,今後もリスコミを続け,食の安心安全を伝えていく必要がある.

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