食品衛生学雑誌
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56 巻, 4 号
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報文
  • 鍋師 裕美, 堤 智昭, 植草 義徳, 蜂須賀 暁子, 松田 りえ子, 手島 玲子
    原稿種別: 報文
    2015 年 56 巻 4 号 p. 133-143
    発行日: 2015/08/25
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    平成23年3月に発生した福島第一原子力発電所事故(以下,原発事故)によって環境中に放出された放射性核種の1つである放射性ストロンチウム(90Sr)の食品中濃度の実態を調査した.その結果,セシウム(Cs)134および137がともに検出され,原発事故の影響を受けているとされた放射性Cs陽性試料(主に福島第一原子力発電所から50 ~250 km離れた地域で採取)では,40試料中25試料で90Srが検出された.一方,134Csが検出下限値未満であり,原発事故の影響を受けていないとされる放射性Cs陰性試料においても,13試料中8試料で90Srが検出された.今回の調査における放射性Cs陽性試料の90Sr濃度は,放射性Cs陰性試料の90Sr濃度や原発事故前に実施されていた環境放射能調査で示されている90Sr濃度範囲を大きく超えることはなかった.本研究の結果からは,放射性Cs陽性試料の90Sr濃度は過去のフォールアウトなどの影響と明確に区別ができない濃度であり,原発事故に伴う放射性Cs陽性試料の90Sr濃度の明らかな上昇は確認できなかった.
  • 芳野 恭士, 金高 隆, 古賀 邦正
    原稿種別: 報文
    2015 年 56 巻 4 号 p. 144-150
    発行日: 2015/08/25
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    スリランカのサラシア属植物であるSalacia reticulataの葉および幹の水抽出物について,その抗酸化作用を検討した.鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)を投与したマウスの血漿,肝臓,あるいは腎臓中の過酸化脂質レベルや肝障害マーカーは,対照マウスに比較して増加した.サラシアの葉および幹の抽出物を,100,200,400 mg/kg体重の投与量で経口で前投与したところ,Fe-NTA投与マウスにおける過酸化脂質レベルや肝障害マーカーの上昇は,投与量依存的に抑制された.Fe-NTA投与マウスの血漿抗酸化能の低下も,サラシアの抽出物の投与で抑制された.in vitroでの実験から,サラシア抽出物中の既知のポリフェノール成分がその抗酸化能の一部に関与しているものと思われたが,他の有効成分の存在も予想された.この研究の結果は,S. reticulataの葉および幹の抽出物が,酸化ストレスに誘発される疾病の予防に有効な食品素材であることを示唆している.
調査・資料
  • 清田 恭平, 竹元 晶子, 岡島 沙織, 森野 静香, 栫井 訓, 佐久間 淳子, 吉光 真人, 阿久津 和彦, 梶村 計志
    原稿種別: 調査・資料
    2015 年 56 巻 4 号 p. 151-156
    発行日: 2015/08/25
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    食物アレルギーを有する児童数は増加しており,学校給食におけるアレルギー物質を含む食品の誤食や混入の防止対策がより求められている.今回,大阪府東ブロック管内7市において,小学校給食における食物アレルギー対応の実態を明らかにするために調査を行った.アレルギー物質を含む食品の除去食は,5市で提供されており,このうち4市では,除去食とその調理器具の検査で卵の混入はすべて認められなかった.調査した全市では,一定水準の食物アレルギー対応が実施されていたが,その対応マニュアル策定の状況から,各市間において食物アレルギー対応の実態に差異があることが明らかになった.今後,各市の事情を考慮したマニュアル策定の促進が必要であると考える.
  • 佐藤 陽子, 村田 美由貴, 千葉 剛, 梅垣 敬三
    原稿種別: 調査・資料
    2015 年 56 巻 4 号 p. 157-165
    発行日: 2015/08/25
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    ワルファリンはビタミンKと相互作用を起こすことから,その服用者にはビタミンK摂取制限が指導されるが,制限を過度に意識すると摂取不足やQOLの低下を招く.そこで,ワルファリン服用者が許容可能なビタミンK摂取量の幅を検討するため,ワルファリンとビタミンKの相互作用による有害事象論文の系統的レビューを行った.論文は2014年10月に2つのデータベースにて検索し,採択した16報より摂取の上限量を,6報より下限量を検討した.その結果,ワルファリン服用者におけるビタミンK摂取量は,25~325 μg/日の範囲で,日ごとの変動幅は292 μg未満に収め,150 μg/日の摂取を目指すことが適切と考えられた.この結果から,日本人の主なビタミンK供給源のうち,禁止すべき通常の食品は納豆であり,緑黄色野菜は摂取量の調節をしながら摂取できることが示された.
  • 尾崎 麻子, 岸 映里, 金子 令子, 大嶋 智子, 清 水充, 河村 葉子
    原稿種別: 調査・資料
    2015 年 56 巻 4 号 p. 166-172
    発行日: 2015/08/25
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    ヘッドスペース-GCを用いたポリスチレン(PS)製品中の揮発性物質(スチレン,トルエン,エチルベンゼン,イソプロピルベンゼンおよびプロピルベンゼン)試験法を検討した.PS製の器具10試料について本法と公定法で測定を行い比較した結果,いずれの化合物もほぼ一致した測定値が得られた.また,本法の妥当性評価を実施した結果,真度は100.4~102.8%,併行精度は3.7~6.3%,室内再現精度は6.0~11.1%と良好であり,すべて目標値を満たしていた.本法は公定法と異なり機器の汚染もなく優れた分析法である.本法を用いて測定したPS製器具・容器包装58試料はすべて基準値を満たし,入手年や生産国による明らかな傾向は見られなかった.
妥当性評価
  • 山多 利秋, 嶋村 知紗, 浅尾 美由起, 會田 紀雄, 千原 哲夫
    原稿種別: 妥当性評価
    2015 年 56 巻 4 号 p. 173-177
    発行日: 2015/08/25
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    配合飼料中のノシヘプタイド(NH)のHPLC-FLによる定量法を開発し,試験室間共同試験を含む妥当性評価を行った.試料を酢酸に浸潤させた後,NHをアセトンで抽出し,HPLC-FLで分析を行った.種々のNH添加配合飼料(添加濃度:0.5~27 g (力価)/t)を調製し,添加回収試験を行った結果,平均回収率は91.4~103%,併行精度は7.8%以下であった.また,5種類の試料を用い,14試験室で共同試験を実施した結果,平均回収率は98.4~108%,併行精度および室間再現精度はそれぞれ8.1%以下および13%以下であり,HorRatは0.21~0.75であった.
  • 福井 直樹, 高取 聡, 山口 聡子, 北川 陽子, 吉光 真人, 小阪田 正和, 梶村 計志, 尾花 裕孝
    原稿種別: 妥当性評価
    2015 年 56 巻 4 号 p. 178-184
    発行日: 2015/08/25
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    電子付録
    GC-MS/MSを用いた残留農薬の一斉分析においては,マトリックス効果を補正するため,マトリックスマッチング法が多用される.しかし,多種類の試料の分析には,その種類ごとにマトリックスマッチング標準溶液を調製する必要があり煩雑で時間を要する.そこでマトリックス効果を補正し,かつマトリックスマッチング標準溶液に代用可能な,多種類の試料に共用できる標準溶液(汎用マトリックス添加標準溶液)を,ポリエチレングリコール,野菜果実ジュースおよびトリフェニルリン酸を活用し考案した.次に,ばれいしょ,ほうれんそうおよびりんごに168農薬を添加(添加濃度:0.010および0.050 μg/g)し,マトリックスマッチング法および汎用マトリックス添加標準溶液を用いた定量法(PEG-VFJm併用法)の双方で妥当性評価を実施した.これら3試料において,マトリックスマッチング法で目標値を満たした農薬数は144~158であり,PEG-VFJm併用法では129~149であった.汎用マトリックス添加標準溶液を活用すれば,迅速で効率的な分析が実施可能であることが示唆された
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