食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
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63 巻, 4 号
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報文
  • 千葉 雄介, 藤原 茜, 𠮷野 典孝, 大阪 美紗, 佐藤 実佳, 高瀬 冴子, 土井 りえ, 大塚 佳代子, 島田 慎一, 石井 里枝
    2022 年 63 巻 4 号 p. 129-135
    発行日: 2022/08/25
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル フリー

    ヒスタミンは食品中のヒスタミン産生菌により産生されるため食中毒予防には微生物学的制御が求められる.ヒスタミン産生量は温度に影響を受けるため,食品の保存温度は4℃以下が推奨される.しかし実際には常に4℃以下を保つことは難しいことから,本研究ではヒスタミン産生菌7菌種について10℃でのヒスタミン産生能の評価を行った.緩衝液中でヒスタミン産生量の経日変化,菌数とヒスタミン産生量の相関,培地中での増殖速度について検討した.緩衝液中において増殖がない一定の条件下において5日保存してもほぼ一定量のヒスタミンを持続的に産生した.菌数とヒスタミン産生量は比例関係にあり,決定係数は0.97以上であった.また,10℃1日の保存により200 μg/mLのヒスタミンを産生するのに必要な菌量は4×107-4×108CFU/mLと算出された.また,培地中において初期菌量が102-103 CFU/mLであった場合,107 CFU/mL以上となるのに低温細菌で2, 3日,中温細菌で4日以上を要した.以上の結果から,ヒスタミン産生菌のヒスタミン産生能,増殖速度を把握することが食中毒の予防に重要であると考えられた.

ノート
  • 北原 悠吾, 野村 洸司, 西原 奈波, 上田 琢也, 渡邉 悟, 斎藤 勲, 上山 純
    2022 年 63 巻 4 号 p. 136-140
    発行日: 2022/08/25
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル フリー
    電子付録

    近年,持続的に調達可能な代替食料源の探索が進められており,栄養学的に問題がなく,大量生産が可能な食用昆虫に注目が集まっている.現在,日本では食用昆虫に対して,品質管理やリスク評価に関する法的な規制はなく,食用昆虫による健康影響への理解は十分とは言いがたい.本研究では国内で入手可能な食用昆虫14種を対象に,ヒ素・重金属および残留農薬の測定を行った.結果,各元素の最大値は,Asが6.15,Cdが0.82,Hgが0.50,Pbが0.67,Cuが297.7 ppmであり,残留農薬はGC-MS/MS分析にてフェノブカルブ(またはBPMC)を3.17 ppmの濃度で検出した.本研究は,日本国内で流通する食用昆虫中のヒ素・重金属および農薬の残留調査を初めて実施した例である.今後,日本国内においても昆虫食の摂取頻度の増加が予想されることを踏まえ,その安全性を確保するためリスク評価の取り組みを進めるべきと考える.

調査・資料
  • 吹譯 友秀, 榎本 啓吾, 吉野 宏毅, 内本 勝也, 西村 真紀, 穐山 浩
    2022 年 63 巻 4 号 p. 141-150
    発行日: 2022/08/25
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル フリー
    電子付録

    2014年度から2021年度に買上げした702製品の健康食品について医薬品混入の検査を実施した結果,28製品から14医薬品成分とインヨウカク,センナ葉軸およびセンナ小葉が検出された.検査はフォトダイオードアレイ検出器付き超高速液体クロマトグラフィーを用いたスクリーニング分析を行った後,医薬品成分の含有が疑われる製品については,超高速液体クロマトグラフ-四重極-キングドントラップ質量分析計で分析を行い,医薬品成分の含有を確認した.また,センナ葉軸やセンナ小葉の確認は実体顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて行った.健康食品に含有されていた医薬品成分には,1日の薬用量を超えている製品もあった.健康被害発生を防止するためには,医薬品成分が含有された製品の流通を防止することが重要であることから,今後も医薬品成分が含有された製品の流通を監視するための検体買上げ体制および検査体制を継続していく必要がある.

  • 榊田 希, 佐藤 実佳, 貫洞 里美, 鹿島 かおり, 島田 慎一, 石井 里枝
    2022 年 63 巻 4 号 p. 151-157
    発行日: 2022/08/25
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル フリー
    電子付録

    埼玉県内の市販国産鶏肉および市販国産豚肉を対象として,Campylobacter jejuni/coli,サルモネラ,腸管出血性大腸菌(EHEC),腸管毒素原性大腸菌(ETEC), Yersinia enterocoliticaEscherichia albertiiによる汚染状況を調査した.カンピロバクターは鶏肉の35.7%(60/168検体),豚肉の7.3%(14/190検体)から検出された.鶏肉においてはC. jejuniが優勢であり,豚肉においてはC. coliが優勢であった.サルモネラは鶏肉の58.1%(100/172検体),豚肉の19.9%(41/206検体)から検出された.検出率の高い血清型は,鶏肉由来株においてはS. Schwarzengrund,豚肉由来株においてはS. Typhimuriumの単相変異株であった.EHECは鶏肉82検体および豚肉124検体からは検出されなかった.ETECは鶏肉の0.6%(1/160検体),豚肉の2.4%(5/206検体)から検出された.Y. enterocoliticaは鶏肉83検体からは検出されず,豚肉の9.3%(18/193検体)から検出された.特にタンの検出率が21.0%(13/62検体)と高かった.E. albertiiは,鶏肉49検体,豚肉59検体からは検出されなかった.鶏肉はカンピロバクターおよびサルモネラによる汚染率が高いこと,また豚肉はカンピロバクター等に加え,ETECおよびY. enterocolitica血清型O3により汚染されていることが確認された.

  • 寺谷 清香, 紀 雅美, 村上 太郎, 高取 聡
    2022 年 63 巻 4 号 p. 158-162
    発行日: 2022/08/25
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル フリー

    育児用の調製液状乳は,常温で一定期間保存でき,育児負担の軽減や災害時の利便性から平成31年3月に国内での製造・販売が開始された.AFM1は発がん性を有するカビ毒であるアフラトキシンB1 (AFB1)の代謝産物であって,AFB1に汚染した餌を摂食した家畜の乳に含まれる.現在,調製液状乳はもとより乳児用粉ミルク(調製粉乳)では基準値が設定されておらず,乳児では体重あたりの乳製品摂取量が多いため,摂取量には留意が必要である.本研究では,乳幼児の摂取量の多い乳製品についてのAFM1含有量の実態調査を行った.調査の結果,検出された乳製品のAFM1は0.001~0.005 μg/kgとなり,これまでに報告されている乳製品中のAFM1と比較して,極微量であった.乳幼児の栄養は乳製品に依存し,成人より多く摂取する可能性が否めないため,継続して調査を行う必要がある.

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