わが国における食品に関する表示のうち,遺伝子組換え食品の表示については,大豆,とうもろこし等の農産物およびこれらを主な原材料とする加工食品が対象となっている.遺伝子組換え食品の表示が適正になされているかどうかを科学的に検証するために,リアルタイムPCRによるDNA検査法が公定法として定められている.大豆およびとうもろこし加工食品からのDNA抽出精製方法として,公定法には代表的なものが示されているが,これら以外の方法についても同等性を確認の上使用することが認められている.本研究では,大豆およびとうもろこし加工食品からのDNA抽出精製方法について,新たな方法と公定法に示されている既存の方法との同等性確認試験を行った.この結果,新たな方法は既存の方法と同等かそれ以上であると考えられた.
2022年4月から8月に届出された機能性表示食品の届出資料を網羅的に解析し,機能性表示の根拠であるシステマティックレビュー(SR)の科学的な信頼性を検討した.398製品,611件の機能性表示を検討した結果,機能性関与成分121種,表示されているヘルスクレーム(Hc)は87種と多岐にわたり,複数の機能性を有する機能性関与成分が多数存在していた.機能性の根拠としてSRが87%,メタアナリシスが10%,最終製品を用いた臨床試験が3%届出されていた.これらのSRのうち,その39%が論文1報を採用したSRであった.また,採用論文が1報のSRのうち67%において,採用論文の著者の一部とSR実施者の所属が同一であるなど,利益相反が懸念された.また,SRに採用された論文の臨床試験参加者数の中央値は38人と比較的小規模であり,SRの延べ人数として最小は6人であった.このように,機能性表示食品のSRには,単一の論文のみを根拠としていたり,少規模の臨床試験に基づくなど,科学的根拠として信頼性が乏しいものが少なからず存在する実態が示された.