食品衛生学雑誌
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64 巻, 4 号
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報文
  • 佐々木 貴正, 米満 研三, 百瀬 愛佳, 上間 匡
    2023 年 64 巻 4 号 p. 117-122
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/09/05
    ジャーナル 認証あり

    成鶏肉も人の食用に供されるが,カンピロバクターおよびサルモネラ汚染率や分離株の薬剤耐性に関する報告はほとんどない.そこで,成鶏胸肉における両菌の汚染状況と薬剤耐性状況を調査した.51鶏群に由来する胸肉を調査したところ,カンピロバクターおよびサルモネラの汚染率は,それぞれ92.2%および35.5%であった.Campylobacter jejuniはカンピロバクター株の87.5%を占め,薬剤耐性率はアンピシリンが最も高く(45.3%),次いでテトラサイクリン(14.3%),シプロフロキサシン(14.3%)の順であった.カンピロバクター腸炎が疑われる場合に第一次選択薬として推奨されるエリスロマイシンに耐性を示す株はなかった.サルモネラでは,Salmonella Corvallis (30.4%)が最も多く,次いでS. Braenderup (21.7%)で,サルモネラ株の30.4%がストレプトマイシン耐性であった.サルモネラ腸炎の第一次選択薬の1つであるシプロフロキサシンに耐性を示す株はなかった.成鶏肉は両菌に汚染されていたが,エリスロマイシン耐性カンピロバクターおよびシプロフロキサシン耐性サルモネラは分離されず,これら抗菌薬の有効性は維持されていた.

  • 山﨑 由貴, 鈴木 美成, 北山 育子, 布目 真梨, 近藤 翠, 坂井 隆敏, 根本 了, 穐山 浩, 堤 智昭
    2023 年 64 巻 4 号 p. 123-129
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/09/05
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    ジベレリン(GA3)は,農薬(植物成長調整剤)の主成分として,種々の農産物に用いられている.GA3の残留基準値が設定されていない食品においては,GA3の濃度が0.3 mg/kgを超えた場合以外は,行政処分または行政指導を行う必要はないとされている.0.3 mg/kgは,多くの農産物が天然由来のGA3を0.3 mg/kg以下程度含有することを基に設定された値であるが,個別の食品におけるGA3の天然含有量について,その詳細は十分に明らかとなっていない.そこで本研究では,バナナ,さくらんぼおよびキウイフルーツを対象食品としたGA3分析法を開発し,これらの3食品におけるGA3含有量の実態調査を行った.はじめに,固相抽出およびLC-MS/MSを用いたGA3分析法を確立し,各食品における分析法の妥当性を確認した.次いで,市場より入手したバナナ,さくらんぼおよびキウイフルーツ計253検体におけるGA3含有量を調査した.その結果,いずれの検体においても0.3 mg/kgを超えるGA3は検出されず,これらの食品においても,現行の規制は合理的であることが示唆された.

  • 岡部 亮, 根本 了, 青栁 光敏
    2023 年 64 巻 4 号 p. 130-135
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/09/05
    ジャーナル 認証あり

    畜産物中のフルベンダゾールおよび代謝物R35475の分析法として,試料からフルベンダゾールおよび代謝物R35475をアセトンで抽出した後,ベンゼンスルホニルプロピルシリル化シリカゲルカートリッジカラムで精製する方法を開発した.測定はLC-MS/MSを用い,イオン化はESI法(ポジティブモード)により行った.また,分析カラムはODSカラム(Inertsil ODS-4),移動相は5 mmol/L酢酸アンモニウム溶液および5 mmol/L酢酸アンモニウム・メタノール溶液を用いた.5種類の畜産物(牛の筋肉,牛の脂肪,牛の肝臓,牛乳および鶏卵)に対してフルベンダゾールおよび代謝物R35475を残留基準値濃度および定量下限値濃度(0.005 mg/kg)で添加し,開発した分析法により回収試験を行った結果,真度89.4~106.4%,併行精度1.7~7.8%の良好な結果が得られた.

調査・資料
  • 大久保 祥嗣, 岩本 朋忠
    2023 年 64 巻 4 号 p. 136-144
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/09/05
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    ヒスタミン等8種類の不揮発性アミン類を迅速に分析するため,試料のトリクロロ酢酸溶液による抽出液を希釈およびフィルター処理のみにより調製した試験溶液を,LC-MS/MSで測定する簡便な分析法の開発を試みた.

    鮮魚介類,魚介加工品,その他加工食品を含む11種類の食品による添加回収試験の結果,9種類の食品において,いずれのアミン類も70~120%の真度,15%未満の併行精度が得られ,定量下限値5~6 mg/kgとする分析法としての有効性が確認された.

  • 阿部 裕, 山口 未来, 片岡 洋平, 六鹿 元雄, 佐藤 恭子, 杉本 直樹
    2023 年 64 巻 4 号 p. 145-153
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/09/05
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    2019~2020年に市販されていたポリ塩化ビニル(PVC)製おもちゃ220検体を対象に使用可塑剤の調査を行った.その結果,15種類の可塑剤が同定された.この内フタル酸エステル類(PAEs)は4種類であった.また,本研究では同定に至らなかったが,PAEsと推定されるこれまで検出したことのない3種類の可塑剤も検出された.軟質PVC製おもちゃ209検体ではテレフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHTP)の検出率が最も高く,指定おもちゃでは71.2%,指定おもちゃ以外では88.9%であり,過去の調査から徐々に増加している傾向がみられた.その他の特徴として,アセチルクエン酸トリブチルやアジピン酸エステル類の使用量の減少が確認された.規制対象の6種のPAEsは指定おもちゃでは引き続き使用されていなかったが,フタル酸ジイソブチルの使用が増加した.一方指定おもちゃ以外ではPAEsのうち特にフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)の検出率が約1/10に減少した.1検体あたりの使用量は5年前の調査から継続して低いレベルを維持していた.このように,現在国内で流通するPVC製おもちゃに主に使用されている可塑剤はDEHTPであり,その他の可塑剤の使用は減少していることが明らかとなった.

妥当性評価
  • 片岡 洋平, 六鹿 元雄, 阿部 智之, 阿部 裕, 牛山 温子, 内山 陽介, 大野 浩之, 大橋 公泰, 風間 貴充, 木村 亜莉沙, ...
    2023 年 64 巻 4 号 p. 154-160
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/09/05
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    ポリカーボネート製器具・容器包装の溶出試験におけるビスフェノールA分析法の浸出用液がヘプタンである場合の改良分析法について24試験所が参加する室間共同実験を行った.濃度非明示で2濃度の試料を配付し,計画書にしたがい試料中の分析対象化合物(ビスフェノールA,フェノールおよびp-tert-ブチルフェノール)濃度を定量した.得られた試験所の分析結果を基に,国際的なハーモナイズドガイドラインに沿って統計的に解析した.共同実験の結果として推定された室間再現相対標準偏差(RSDR)とHorwitz/Thompson式により計算される予測室間相対標準偏差(PRSDR)からHorRat値を算出した.その結果,2試料のHorRat値は3化合物をとおして0.15~0.37となり,Codex委員会が分析法承認のために設定している性能規準の指標である2未満を満たした.したがって,本分析法は規格の判定を行う分析法として有用であると考えられた.

  • 櫻木 大志, 鈴木 昌子, 大野 浩之
    2023 年 64 巻 4 号 p. 161-165
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/09/05
    ジャーナル 認証あり

    各種ミネラルウォーター類(MW)における陰イオン性化合物(フッ化物イオン,塩素酸イオン,亜塩素酸イオン,硝酸イオンおよび亜硝酸イオン)および臭素酸の測定条件を検討し,妥当性が確認できた.MWには,炭酸含有の有無,硬度の高低など様々な製品がある.水道水質と同様の測定条件を用いた陰イオン性化合物試験では,高硬度のMW中のフッ化物イオンのピーク形状が非常に悪く,測定が困難であった.また,臭素酸試験でも同様に,高硬度のMW中ではピーク形状が非常に悪かった.そこで,試料を超純水で5倍希釈して測定するとピーク形状が改善され,希釈した試料中では各対象物質の標準溶液との保持時間のずれも確認されなかった.5倍希釈した試料を用いて妥当性確認を行ったところ,全ての対象物質で妥当性確認ガイドラインの目標値を満たした.これらの結果により,本法は様々な種類の市販MW中の陰イオン性化合物と臭素酸を精確に測定できる有用な方法であると考える.

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