食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
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64 巻, 5 号
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報文
  • 古島 大資, 立山 未空, 千葉 剛, 石川 祥子, 薗畠 朝美, 萩原 美紀, 松谷 茉依, 豊倉 世梨佳
    2023 年 64 巻 5 号 p. 167-173
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/26
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は,保健師の健康食品に関する認識および特定保健指導における健康食品関連情報の利活用実態を明らかにし,健康食品の適正使用対策に向けた現状と課題を明らかにすることである.2022年9月に鹿児島県内市町村に勤務する保健師を対象に,健康食品の利用状況,地域住民からの相談状況,健康食品情報を利活用状況について無記名式質問紙を用いた調査を実施した.170名(回収率41.5%)の保健師から回答が得られた.保健師の健康食品の利用経験者は39.4%(67/170名)であった.地域住民からの相談経験がある者は43.5%(74/170名)であり,主な相談内容は,有効性について78.4%(58/74名),医薬品との相互作用35.1%(26/74名)であった.特定保健指導時における健康食品の利用の確認は,「必ず確認する」が10.2%(17/166名)であった.健康食品による健康被害確認時の対応として,都道府県・厚生労働省への報告義務を認識している者は36.3%(61/168名)であった.本研究により保健師の健康食品に関する認知度や理解度にばらつきがあることが明らかとなり,安全性や有効性に関する知識の習得や健康食品の健康影響に対する認識を高めていく必要性が示唆された.

ノート
  • 藤川 浩
    2023 年 64 巻 5 号 p. 174-178
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/26
    ジャーナル 認証あり

    食品試料の微生物コロニーカウントは微生物学試験において非常に重要な項目の一つである.計数する希釈での寒天平板当りの微生物コロニーカウントの確率分布はこれまで詳しく検討されて来なかった.最近,私たちは食品試料のコロニーカウントを数種類の確率分布に対し,“ 伝統的な” 統計学によるピアソンのX2 値をフィットの指標として用いて解析した(Fujikawa andTsubaki, 食衛誌60, 88–95, 2019).その結果,選ばれた確率分布は試料によって異なった.本研究では上記のデータに適した確率分布,すなわち統計モデルを確率的観点から最尤法を使って新たに選択した.そして,赤池情報量規準AICをフィットの指標として用いた.結果として,4つの食品試料すべてでポアッソンモデルが負の二項モデルよりも優れていた.さらに本モデルは4つの微生物浮遊液試料の3 試料で二項モデルよりも優れていた.また,ベイジアン情報量規準BIC を使うと本モデルは全ての試料において上記の2 つのモデルよりも優れていた.これらの結果からポアッソンモデルが食品試料のコロニーカウントを推測するための最適なモデルであることが示唆された.本研究はAICおよびBIC を使った食品試料のコロニーカウントに関する統計モデルの選択について最初の報告であろう.

  • 小林 直樹, 岡野 清志, 小西 良子
    2023 年 64 巻 5 号 p. 179-184
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/26
    ジャーナル 認証あり

    香辛料は,マイコトキシンの汚染が多いことが報告されている.Codex(2018)の報告によるとナツメグには特にアフラトキシン(AF)とオクラトキシンA(OTA)の汚染が多い.現在インドネシアでは,主として目視選別がおこなわれ,インドネシア規格によりABCD(whole 良品で虫食い,空洞率の低いもの),SS(しわが多いもの),BWP(割れ,虫食いが激しいもの)の3グレードに分類されており,日本に輸入されているグレードはABCD である.また,ABCD およびSS の劣化品とBWP を混合した製品としてCompany Brand がある.本研究では,穀物のAF 汚染選抜に利用されているBGYF 選別方法のマイコトキシン除去効果をナツメグで実証するため,4ロットのCompanyBrand をBGYF 選別により,陽性グループと陰性グループに分け,AF,OTA 濃度および真菌フローラを調べた.その結果,BGYF 陽性グループではいずれのマイコトキシンも濃度が高く,真菌フローラも陰性グループと違いがあった.本研究はBGYFによるナツメグのマイコトキシン汚染選別が,AFだけでなくOTAにも有効であることを実証したものである.

調査・資料
  • 西野 由香里, 下島 優香子, 福井 理恵, 黒田 寿美代, 山崎 華恵子, 畠山 薫, 横山 敬子, 貞升 健志
    2023 年 64 巻 5 号 p. 185-190
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/26
    ジャーナル 認証あり

    Campylobacter jejuni および Campylobacter coli の分離状況と薬剤感受性を把握するために,2010 年から2019 年に東京都内で流通した食肉(鶏肉,牛肉,豚肉,鹿肉,猪肉,馬肉,羊肉)を対象として調査を行った.さらに,エリスロマイシン(EM)耐性株の耐性機序の解析を行った.C. jejuni は国産鶏正肉(53.4%,334/626 検体),国産鶏内臓肉(49.3%,34/69 検体)および国産牛内臓肉(28.3%,47/166 検体)で,C. coli は国産豚内臓肉(31.7%,44/139 検体)において陽性率が高かった.また,C. jejuni 陽性率は国産牛内臓肉で,C. coli 陽性率は国産牛内臓肉と国産豚内臓肉において,正肉よりも有意に高かった(p<0.05).分離株の薬剤感受性は,C. jejuni の1.0%(6/631株)および C. coli の36.2%(55/152 株)がEM 耐性,C. jejuni の41.5%(262/631 株)およびC. coli の65.1%(99/152 株)がシプロフロキサシン耐性であった.EM 耐性株は,すべての株で23SrRNA 遺伝子のA2075G 変異が確認された.

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