食品用として使用される可能性のある市販ポリ袋から,溶出が想定される物質についてLC-QTOFを用いたノンターゲット分析およびLC-MS/MSを用いた溶出量の把握を行った.LC-QTOFでの分析結果から推定された溶出物質を含む14物質について,移動相由来物質と試験溶液中のターゲット物質を分離するためのリテンションギャップ法を活用したLC-MS/MS分析法を構築した.本分析法を用いて市販のポリ袋9検体について溶出試験を実施したところ,最もIrganox 1076が溶出された試料では,EUのSMLの1/4の量が検出された.その他,Erucamide,Irganox 168-oxideの溶出が確認できた.
呈色反応によるツキヨタケの理化学的鑑別法を検討した.ツキヨタケおよび類似する食用キノコの子実体傘部に試薬を滴下し,呈色反応を観察したところ,ビーム試薬(5%水酸化カリウムエタノール溶液)によりツキヨタケのみが青緑色に呈色した.また,キノコ子実体傘表皮のエタノール抽出物においても同様の反応を示した.ツキヨタケ食中毒発生時の調理残品の鑑別を想定し,調理したツキヨタケに対し前述の呈色反応を適用したところ,生のキノコ同様の呈色反応を確認した.これらのことからビーム試薬による呈色反応はツキヨタケの鑑別に有用と考える.
ポリカーボネート製器具・容器包装の溶出試験の浸出用液がヘプタン,20%エタノール,4%酢酸における改良ビスフェノールA分析法を性能評価した.分析法の分析対象化合物はビスフェノールA,フェノールおよびp-tert-ブチルフェノールである.改良分析法の併行精度,室内精度,真度はそれぞれ0.2–1.8%,0.4–2.6%,95–102%の範囲にあった.これらの結果から,浸出用液がヘプタン,20%エタノール,4%酢酸における分析法として有用であると考えられた.さらに,蛍光検出器による測定法の適用性を検証した.分析法を性能評価した結果,本分析法の併行精度,室内精度,真度は,それぞれ0.1–2.9%,0.2–3.1%,94–101%の範囲にあった.したがって,蛍光検出器による測定も利用可能であることが確認された.