食品衛生学雑誌
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64 巻, 6 号
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報文
  • 志田(齊藤) 静夏, 齋藤 真希, 堤 智昭
    2023 年 64 巻 6 号 p. 191-199
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/28
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    電子付録

    クロレラ加工品中のフェオホルバイド等クロロフィル分解物試験法として通知試験法(環食第九九号,昭和56年5月8日)が示されているが,操作性に問題があるのに加え,飽和硫酸ナトリウム溶液の調製で使用する試薬(硫酸ナトリウム十水和物あるいは無水硫酸ナトリウム)の種類によっては試薬に含まれる不純物の影響によりフェオホルバイド等が分解し,分析値が大きく低下する場合があった.本研究では,通知試験法の各操作を見直し,操作性を改善するとともに,飽和硫酸ナトリウム溶液を用いない試験法を確立した.本法の性能を評価した結果,フェオホルバイドaは真度100%,併行精度1%,室内精度4%,ピロフェオホルバイドaは真度90%,併行精度3%,室内精度3%となり,良好な結果が得られた.本法は現行の指導事項の適否判定に用いることができる試験法であり,クロレラ加工品の品質を管理する上で有用と考えられた.

  • 外川 理絵, 金川 怜美, 福本 沙弥, Fia NOVIYANTI, 細谷 幸恵, 小泉 大輔, 庵原 啓司, 下平 潤, 川崎 晋
    2023 年 64 巻 6 号 p. 200-205
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    カロリメトリー法を用いてBacillus cereusの最大比増殖速度の測定とsquare-rootモデルによる増殖予測式の作成を試みた.SCD培地とマッシュポテトにB. cereusの段階希釈液を接種し,35, 25, 15℃の条件下でカロリメトリー法に供した.初発B. cereus濃度とカロリメトリー法で検出されるまでの時間との関係から最大比増殖速度を求め,最大比増殖速度と測定温度との関係式をRatkowskyのsquare-rootモデルで増殖予測式として導いた.SCD培地での試験では,√μCalmax=0.0354 (T-4.9)[R2=0.99]との予測式を得た.一方,培養法にて求めた予測式は√μCCMmax=0.0335 (T-5.0)[R2=0.99]と得られ,両者の式はほぼ等しく得られた.マッシュポテトの試験区では√μCalmax=0.0390(T-8.5)[R2=0.99]との予測式が得られた.30, 20℃で予測される最大比増殖速度の値は0.70, 0.20,実際に微生物試験により求めた値は0.63, 0.29と得られ,これも近似の値であった.カロリメトリー法ではサンプル数を大幅に削減した上での最大比増殖速度解析が可能であり,対象食品中におけるB. cereusの挙動解析に活用できると考えられた.

ノート
  • 福井 直樹, 藤原 拓也, 古田 雅一, 高取 聡
    2023 年 64 巻 6 号 p. 206-213
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/28
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    電子付録

    放射線照射は,食品の殺菌と殺虫,農作物の発芽防止を目的として世界中で広く使用されている.しかし,日本では馬鈴薯の発芽防止を除いて食品への照射は禁止されている.放射線の照射によってDNA中のチミジン残基から生成する損傷ヌクレオシドである5,6-ジヒドロチミジン残基を指標として照射履歴の検知を試みた.8種類の植物性乾燥食品試料をガンマ線照射(3.2~8.3 kGy)した.試料からDNAを抽出後,DNAを3種類の酵素でヌクレオシドに分解して試験液を調製した.LC-MS/MSを用いて試験液中のチミジンに対する5,6-ジヒドロチミジンの濃度比を測定し,これを検知指標とした.その値は照射した線量に依存的であった.冷凍保存条件下で試料中のチミジン残基に対する5,6-ジヒドロチミジン残基の比率は,照射後少なくとも890日間は安定であった.8種類の植物性乾燥食品試料の照射履歴を検知できた.

  • 佐々木 貴正, 米満 研三, 百瀬 愛佳, 上間 匡
    2023 年 64 巻 6 号 p. 214-217
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/28
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    鶏肝臓は,人のカンピロバクター感染症の感染源の1つである.我々は,市販鶏生肝臓中のカンピロバクター菌数を調べた.インターネット上の店舗および小売店で生の鶏肝臓製品33製品を購入するとともに,食鳥処理場において,消化管,肝臓および胆嚢内胆汁を採取した.市販33製品のうち27製品(81.8%)はカンピロバクターに汚染されていた.27製品から取り出した149検体の肝臓のうち138検体からカンピロバクターが分離された.汚染肝臓中の平均カンピロバクター数は,2.3 log10 CFU/gであった.138検体のカンピロバクター陽性肝臓のうち22(15.9%)検体では,カンピロバクター菌数が3.0 log10 CFU/g以上であった.食鳥処理場で採取した35羽の検体では27羽の盲腸内容物からカンピロバクターが分離された.そのうち24(88.9%)羽の肝臓からカンピロバクターが分離され,平均菌数は2.8 log10 CFU/gであった.肝臓からカンピロバクターが分離された24羽のうち13(54.2%)羽の胆汁からカンピロバクターが分離され,その平均菌数は3.5 log10 CFU/mLであった.2羽の胆汁中の菌数は,8.3 log10 CFU/mL以上であった.これらの結果は,カンピロバクター保菌鶏の肝臓は食鳥処理場における内臓摘出時にカンピロバクターに汚染されていることを示唆している.鶏肝臓の喫食を原因とするカンピロバクター感染症を防止するためには,肝臓を十分に加熱するべきである.

調査・資料
  • 曽我 慶介, 田口 千恵, 杉野 御祐, 江木 智宏, 成島 純平, 吉場 聡子, 高畠 令王奈, 近藤 一成, 柴田 識人
    2023 年 64 巻 6 号 p. 218-225
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/28
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    電子付録

    日本国内で安全性審査の手続きを経た旨の公表がなされたGMとうもろこし系統は増加しているが,近年の国内流通実態については情報が少ない.本研究では,現行GMとうもろこし定性および定量検査法(以下,現行法)が流通しているGM系統を検知可能か確認するために,国内輸入量の95%以上を占めるアメリカ合衆国(USA)およびブラジル産とうもろこしの実態調査を行った.2021年度のUSA産分別生産流通管理品および不分別品各5ロット,ブラジル産不分別品5ロットについて,GMとうもろこし25種類の系統特異的リアルタイムPCRを行ったところ,検出された単系統15種類は現行法で検知可能であったが,USA産不分別品からは現行の定量検査法で検知不能な害虫抵抗性(IR)Event5307が4ロットで検出され,ブラジル産不分別品からは現行法で検知不能な除草剤耐性(HT)DAS40278が1ロットで検出された.近年のGMとうもろこし栽培面積を調査すると,USAでは95%以上がHT単系統またはそれとIR系統の掛け合わせ系統,ブラジルでは95%以上がIR単系統またはそれとHT系統の掛け合わせ系統で占められている.Event5307およびDAS40278に関する掛け合わせ系統は現行法で検知可能なことから,検知不能な系統はEvent5307およびDAS40278の単系統のみで,その生産量は生産国全体の5%未満と推定される.したがって,実行性を鑑み,GMとうもろこし表示における現行法を維持することが妥当と考えられる.

  • 山本 純代, 田原 正一, 石井 悦子, 高木 優子, 小林 千種
    2023 年 64 巻 6 号 p. 226-231
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/28
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    食品中の亜硝酸根(亜硝酸イオン)分析における,食肉製品中の亜硝酸根およびその標準品の保存安定性を評価した.亜硝酸根は,酸化・還元を受けやすいため,標準液や発色剤が使用された製品の取り扱いには注意が必要とされる.本研究では,亜硝酸根の保存安定性や減少傾向の確認のため検量線用標準液の保存安定性,食肉製品細切後の保存状態の違いによる亜硝酸根の経時変化,試料液中の亜硝酸根の経時変化について検討した.検量線用標準液の保存安定性について,0.025,0.4 μg/mLとなるよう超純水で調製した標準液を冷蔵条件(5℃)で1年間保存した.結果,すべての標準液において経時的な増減は認められず,調製後1年間は用時調製が不要であると示唆された.食肉製品細切後の保存状態の違いによる亜硝酸根の経時変化について,冷蔵条件(5℃)では,亜硝酸根の減少が顕著に表れたが,冷凍条件(-20℃)では1日間まで,冷凍条件(-40℃)では14日間まで安定であった.試料液中の亜硝酸根の経時変化について,検討で用いた食肉製品中では抽出から7日間以内の定量値に変化を認めなかった.

  • 篠原 秀幸, 大河原 龍馬, 伊藤 育子, 石田 恵崇, 太田 康介, 長岡 由香
    2023 年 64 巻 6 号 p. 232-235
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/28
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    ツキヨタケを原因とする食中毒事例において,原因究明に呈色反応による簡易鑑別法を利用した.検体として確保された未調理キノコの子実体傘部にビーム試薬(5%水酸化カリウムエタノール溶液)を滴下したところ,一部のキノコで青緑色に呈色した.このキノコの子実体傘表皮のエタノール抽出物においても同様の反応を示した.未調理キノコに対しLC-MS/MSを用いた分析を行ったところ,各検体からツキヨタケの有毒成分の1つであるイルジンSが検出され,本事例はツキヨタケを原因とする食中毒であると断定された.以上のことから,当該鑑別法はツキヨタケ食中毒の原因究明におけるスクリーニング検査として有用であることが示唆された.

  • 辰野 竜平, 山崎 亮, 溝上 魁, 林 源基, 福田 翼, 古下 学, 髙橋 洋, 園山 貴之, 堀 成夫
    2023 年 64 巻 6 号 p. 236-239
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/28
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    日本では海産小型巻貝を原因とした重篤なテトロドトキシン(TTX)中毒が発生してきた.本研究では海産小型巻貝を原因としたTTX中毒発生を未然に防ぐため,山口県下関市蓋井島周辺海域にて採取したヨフバイNassarius sufflatusの筋肉と内臓のTTX含量を調査した.生きた個体から筋肉と内臓を摘出し,これらの部位から調製した試験液をHPLC蛍光検出法に供することでTTXを測定した.TTXは両部位から検出され,その含量は筋肉が<0.1–18.2 µg/g,内臓が<0.1–130.7 µg/gであった.この結果から,日本近海で採取したヨフバイは内臓のみならず筋肉にもTTXを蓄積することが明らかとなった.

妥当性評価
  • 佐藤 恭子, 寺見 祥子, 佐々木 隆宏, 櫻井 光, 下山 晃, 関戸 晴子, 田原 正一, 原 貴彦, 伊藤 拓土, 山本 信次, 吉田 ...
    2023 年 64 巻 6 号 p. 240-245
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル 認証あり

    「第2版 食品中の食品添加物分析法」に収載されている亜硝酸ナトリウム分析法(2版法)では,試料によっては試験溶液が混濁し,ろ過が困難となる場合がある.近年,これらの問題点を解消した改良分析法が報告された.そこで,その改良分析法について,2版法の改正を視野に,単一試験室による妥当性確認を行い,8機関で共同実験を行った.亜硝酸ナトリウム表示のないたらこ,魚肉ソーセージ,ハムを用い,使用基準の上限量を添加濃度として単一試験室による妥当性確認を実施した結果,真度88~92%,併行精度2.0~3.0%,室内精度3.2~4.3%と推定され,目標値(真度:70~120%,室内精度:15%未満,併行精度:室内精度以下)を満たしていた.また.共同実験では,同じ3試料を配布し,各機関において定量下限値の2倍および使用基準の上限量の2濃度を添加し併行分析(n=3)した.得られた分析値から推定された真度は82~95%,併行精度は2.3~5.8%,室間再現精度は3.5~11%であった.以上より,本研究で検証した分析法は,食品中の亜硝酸根の測定に有用と考えられ,2版法の改正法としても妥当であることが示された.

  • 小鍛治 好恵, 富澤 早苗, 上條 恭子, 中島 崇行, 山本 和興, 齋藤 友里, 髙田 朋美, 志良堂 裕子, 大澤 佳浩, 小山 彩音 ...
    2023 年 64 巻 6 号 p. 246-252
    発行日: 2023/12/25
    公開日: 2023/12/28
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    電子付録

    GC-MS/MSおよびLC-MS/MSを用いて玄米における残留農薬一斉分析法を開発し,妥当性評価と残留実態調査を行った.試料はシャフト型ホモジナイザーを用いてアセトニトリルで抽出し,脱水・塩析後,固相ミニカラムGCB/NH2(200 mg/200 mg, 6 mL)で精製して試験溶液とした.本分析法について,2濃度(0.01 μg/gおよび0.1 μg/g),2併行5日間の添加回収試験を実施したところ,283成分中250成分(88.3%)が妥当性評価ガイドラインの目標値に適合した.選択性および定量限界については,ブランク試験溶液および0.01 μg/g相当のマトリックス添加標準溶液のクロマトグラムを比較し,評価した.本分析法を用いて東京都内に流通する玄米の残留実態調査を実施した結果,59検体中44検体からジノテフランやトリシクラゾールをはじめとする12成分の農薬が検出された.なお,今回の調査において食品衛生法の残留基準値または一律基準値を超えて検出された農薬はなかった.

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